今や“BANDIT”と言えば四輪のスズキが販売している小型車「ソリオ」のバリエーションネームとして広く知られておりますが(CMに出演されている橋本環奈さん、美し可愛いですね♡)、二輪好きなら並列4気筒エンジンを搭載した美麗なるネイキッドシリーズを想起してほしいもの。今回はその始祖となる400について、あれやこれやを語りおろしてまいりましょう。

バンディット400

●1989年11月に登場した「バンディット250」に先立つこと5ヵ月。後に1250㏄まで上方展開してスズキネイキッドスポーツの代名詞ともなった車名“BANDIT”は、同年6月に登場した「バンディット400」からスタートしたのです。なお、バンディットの正式型番は「GSF」なので筆者の愛車GSF1200Sも広義にはバンディットシリーズの一員ということですね。ともあれこのスタイリング……ど〜ですか、お客さん! エンジンを包み込むスチールパイプ製ダイヤモンドフレームといいハンドルをフルロックしたときの“逃げ”がエグリ込まれた燃料タンク形状といいエキパイの曲線美といい、細部まで神が宿っており広報写真写りもグンバツ(死語)!

 

GSR250という“アンチテーゼ”【後編】はコチラ!

開発時にバブルの恩恵を得たヴィンテージイヤー……

時は1989年

昭和が終わって平成が始まり、消費税(3%)がスタートし、トヨタ セルシオ、日産スカイラインGT-R(R32)、ユーノス ロードスター、スバル レガシィほかの名車が生まれ、ベルリンの壁が崩壊し、映画『魔女の宅急便』が公開され、『オレたちひょうきん族』が8年間の歴史に幕を下ろした激動の年(佐藤健さんやHIKAKINさん、中田翔選手らも生まれました)。

魔女の宅急便 キキ飛ぶ

●気がつくと毎年1回は金曜日にテレビで観ることができるため感覚が麻痺していたのですけれど、もう34年前の作品だったのですね〜“魔女宅”って。リラックスした前傾姿勢も美しい写真のキキさんは当時13歳でしたから今や47歳ですか(←違う)。このスタジオジブリ謹製のフリー素材を常識の範囲内で活用しつつ執筆中の現在、松任谷由実(荒井由実)さんの『ルージュの伝言』が脳内ヘビメタ……いやヘビロテしています(^_^;)

 

バイク業界でも後に空前絶後のネイキッドブームを巻き起こし、レーサーレプリカ軍団にトドメを刺すことになるカワサキ「ゼファー」が同年4月、ひっそりとデビューしたことは過去の回でも紹介したとおりです。

実のところ、ゼファー以前にも高性能車発祥ノンカウルのスポーツバイクは一定数存在していました(←詳細をまとめたのはコチラ)が、それらは文字どおりレーサーレプリカなどのハーフorフルカウルをひん剥いて……いや、ていねいに取り去って、タンクからテールランプへ至るパーツはそのままにヘッドライトへ独自の意匠を与えたものがほとんど。

FX400R

●一例として……ベースとなったGPZ400Rからフルカウルを奪い去り、フレームもアルミ→スチール製として裸(ネイキッド)姿に仕立て上げられた「FX400R」。1985年型からデビューし、ゼファーが登場する1989年に最終型(写真)がリリースされたという事実には数奇な巡り合わせを感じてしまいます。1988年型では56万4000円だった価格は最終的に52万9000円(税別:以下同)へ。エンジンにGPX400R用のパーツを多く導入して57馬力仕様としながら低中速トルクを充実させるなど多岐にわたる改良を施しつつ、3万5000円も引き下げてゼファーと同価格にしたという点もカワサキの巧みな戦略を感じさせました

 

エンジンこそ熟成の進んだスポーティな並列4気筒を流用するものの、独自開発されたスチール丸パイプフレーム丸型ヘッドライトとスタイリッシュかつ端正なタンク+シート+テールカウルを組み合わせるという、現在多くのライダーが思い描く落ち着いた“ネイキッドスタイル”が確立されたのは、まさに1989年だった!と言い切っても過言ではありますまい。

何と言っても前述の「ゼファー」(4月)はもちろん、

1989ゼファー

●写真は1989年型「ゼファー」(燃料タンク容量15ℓ・車両重量198㎏・シート高770㎜)。初期モデルはタンクの「ZEPHYR」とサイドカバーの「Kawasaki」ロゴもペラっとしたステッカーですしメーターも異径2眼式でメッキ加飾すらナッシング。しかし……改めて眺めてみると本当に“丸Z”でも“角Z”でもない絶妙なスタイリングですね。つまりは「Zではなくゼファーという独自のバイクを造ったのだ!」という開発陣の自負がうかがえます。なお、しつこいようですが価格は52万9000円で1995年の最終型までバリエーション追加や値上げは一切ありませんでした

 

ホンダからは「CB-1」(3月)が

1989CB-1

●「CB-1」はCBR400RRのエンジンを低中速寄りにファインチューンしたものをスチール製ツインチューブ式ダイヤモンドフレームに積んだ、今風で言えばストリートファイター的なモデル。写真の1989年初期型は64万6000円(燃料タンク容量11ℓ・車両重量183㎏・シート高775㎜)。1990年3月に登場したサスペンションなどを改良した仕様は60万9000円。1991年にはセミアップハンドルのtypeⅡも同価格の60万9000円で追加されました。さらにこちらはSTDより燃料タンク容量が2ℓ増やされて13ℓに……って改良されるごとに(実質)値下げってコスト計算が絶対におかしい

 

そしてスズキからは今回の主役である「バンディット400」(6月)が……、とエポックメイキングな3台が同じ年に相次いでデビューしたのですから!

1989バンディット400

●う〜ん、今こうしてゼファーと同列に並べてみると、CB-1よりもさらにバンディットはエンジンの存在感が薄い印象ですね、覆い被さったフレームパイプのせいとはいえ……。その分(?)繊細なカーブを描くステンレス製エキパイをバフ仕上げしてテカテカに輝かせておりました。写真のマーブルピュアレッドはフロントフェンダーやフレームはもちろん、スチール製角パイプのスイングアームとリヤブレーキロッドまでボディ同色に塗色。これで価格は59万5000円だったのです(燃料タンク容量16ℓ・車両重量188㎏・シート高750㎜)

 

レーサーレプリカを“カモれる”ネイキッドを標榜!

“突破者”スズキはシン・ネイキッドジャンルでも容赦ありませんでした。

まぁ普通なら「風防がないモデルなのだし、扱いやすさを重視ということでピークパワーは追わずにいきましょうかね……」と考えるもので、ホンダはベースのCBR400RR(当然59馬力)エンジンを低中速寄りに改良してCB-1では57馬力に。

CBR400RR

●1989年型「CBR400RR」。アルミフレームにアルミスイングアーム、そして量産4スト車として初めてアルミ製マフラーを標準採用したことでも話題となった生粋のレーサーレプリカ(燃料タンク容量15ℓ・車両重量179㎏・シート高765㎜)。搭載される水冷並列4気筒エンジンはカムシャフトをチェーンではなくギアで駆動するカムギアトレーンを採用し、最高出力59馬力を1万2500回転で発生。CB-1もそのメカニズムをそのまま受け継いで独特な高周波サウンドを楽しむことができました

 

ゼファーに至っては最高で54馬力を絞り出していたGPz400F向け空冷並列4気筒DOHC2バルブエンジンをなんと46馬力にまでデチューンして採用していたのですけれど、

GPz400F

●1982年にZ400FX(43馬力)の後継として登場したZ400GP(48馬力)は翌年1983年にGPz400(51馬力)となり、そのわずか8ヵ月後にGPz400F(54馬力)がリリースされました(写真はその最終となる1985年型。燃料タンク容量18ℓ・車両重量201㎏・シート高770㎜)。 レーサーレプリカブームに空冷マルチで対抗するべくパワーアップを繰り返しましたが、こちらが最高到達点。400㏄旗艦としてのポジションは水冷59馬力エンジンを搭載するGPZ400R(1985年)が引き継ぐこととなったのです。まさか4年後、世間から忘れ去られていた空冷2バルブエンジンがゼファー用として転生するとは!

 

スズキは「GSX-R400R」のパワーユニットへ低中速を重視したセッティングを施しつつも、当時の馬力自主規制値上限である59馬力を死守してバンディット400へとブッ込んできました

GSX-R400R

●写真は1989年型「GSX-R400R」(燃料タンク容量15ℓ・車両重量177㎏・シート高730㎜)。前年型との主な違いはスイングアームの上にサブアームが取り付けられたこと(苦笑)。とにかくこの時期のレーサーレプリカは1年……ヘタすると数ヶ月ごとに仕様が変更されていったりするので追っていくのも大変……。それだけライバルをサーキットで打ち負かすべく秒進分歩で改良が施されていった“熱い”時代だったということです。

 

その車名「BANDIT」=英語で山賊無頼漢の意味に相応しいハジケっぷりです。

山賊イメージ

●タイトルで「妖艶な山賊」なんて謳っちゃったのでキングダムの楊端和(ようたんわ)さんのようなフリーイラストを探しましたが……お察しください

 

そのころ筆者はゼミバイトバイク惰眠に明け暮れる大学3年生で、

コンパ

●いやぁ飲んだ飲んだ飲んだったら飲んだ。ちょうどアサヒのスーパードライ大ヒットに起因する“ドライ戦争”が巻き起こった時代でもあり、バイト代や仕送りを突っ込み、先輩や友人たちと浴びるように毎日ビールを飲んでましたネ。酒を飲まずに貯金していたらホンダNRを買えたかもなぁ

 

モーターサイクリストとミスターバイクを中心に他のバイク誌も愛読していたのですけれど、CB-1、バンディット、ゼファーを取りそろえた、お約束的ガチンコライバル比較試乗対決記事ではバンディットが走行部門において(当然ながら)ブッチギリの高評価をどの媒体でも獲得していたことが強く記憶に残っております。

その性能を支えたミクニのBST……“スリングショットキャブレター”と今聞いて、胸を熱くするご同輩も数多いのではないでしょうか?

下写真のとおりフレームには剛性の高い鋼管製ダイヤモンドフレームを採用し、デザインキーワードを“艶”としてボリューム感や曲線美を意識しつつ遊び心を持たせたスタイリングを構築しており、特にフューエルタンク、テールカウル、エキゾーストパイプなどの緻密な造形は眺めているだけでホレボレしてしまうほど!

バンディットV部分

●1994年型「バンディット400V」カタログより抜粋。低く構えたセパレートのハンドル、ヘッドランプ、ステップ、メーター、ミラー、ステンレス製マフラーなど各所に質感の高いパーツを惜しげもなく採用していたのも特長で、バイクに近寄るたびにオーナーは所有欲を深く満たされたはず。特に燃料タンクハンドル側の“エグリ”やあえて右手側へオフセット配置されたエアプレーンタイプのガソリン給油口と、それを成立させる非対称の造形(一番最初のタイトル文字が載っている写真もご確認ください)にはグッとくるものがありました

 

速い! カッコいい!(内容を考えれば十分)安い!」とくれば、こりゃ大ヒットモデルとなるのは確定ですよね~~と、スマホなんて影も形もなくケータイすら高嶺の花だった時代、ながら食いの友であるバイク雑誌をめくりつつ、学食で250円の獨協ランチをほおばりながらニヤニヤしていた平成最初の初夏を筆者は今でもよく思い出します。

ケータイ

●NTTによる携帯電話サービスが始まったのは1987年4月。1989年当時、一介の学生が“ケータイ”を個人所有するなんて夢のまた夢でした。ちなみにmova(ムーバ)シリーズが発売されたのは1991年です……

 

あらゆる手段は試してみた。なのに何故アイツに勝てない!?

駄菓子菓子、人気に火が付いた……いや、超絶ハイパービッグバン大爆発を起こしたのはゼファーのほうでした。

「何故バンディット400はネイキッドジャンルの盟主となれなかったのか」

……これはいまだに自分のなかで「CB400SFバージョンRはナゼ売れなかったのか?」に続くバイク業界七不思議の2位なのですけれど、理由をいろいろ考えてみたところで最終的には「時代がゼファーを選んだ」としか言えないところがなんともはや。

ゼファー

●いや、実際のところ本当にいいバイクでしたよ、ゼファー。のんびり走って様になるというか、エンジンに急かされないというか。それでいてワインディングを気合い十分で駆け抜けてもフワリフワリと余裕を持って対応してくれるというフトコロの深さはさすがでありました。その点バンディット400は、まさにスポーツライディングのための道具!的な側面が強めで、正しく荷重をかけて適切に操作するほどにグイグイ曲がっていくという快感はツボにハマると病みつきに。VCエンジン搭載の「V」は“バシュン!”とカムが切り替わる瞬間が刺激的だったなぁ

 

発売当時の車両本体価格はゼファーが52万9000円、バンディット400が59万5000円で、その差額は(たったの)6万6000円……13馬力もの差をお金で割ると1馬力≒5076.923円デスヨ(←少し錯乱中)。

もちろん、一番悔しい思いをしていたのはスズキ開発陣だったのでしょう。

発売2ヵ月後の1989年8月には一部色変更を行い、教習所仕様(63万9000円)も登場。さらに……

約1年後の1990年7月には「セパハンゆえ(ゼファー比で)ハンドルが低すぎるのが悪かったのか?」と、前傾姿勢が緩くなる「バンディット400[アップハンドル仕様]」が追加され、

バンディット400アップハンドル仕様

●セパレートハンドルのSTD比でグリップエンドを上方へ100㎜、後方に50㎜も移動させるパイプハンドルを採用してライディングポジションは飛躍的にアップライトなものへと変貌! 左右フルロックターン時にハンドルと燃料タンクに手が挟まれるのを回避する“エグリ”の意味がなくなってしまう点はご愛敬ですな。価格はSTDと変わらず59万5000円

 

1990年11月には「レトロムードが足りなかったのか?」とばかり、懐古主義満載のロケットカウルを装備した「バンディット400リミテッド」を投入し、

バンディットリミテッド

●いやもう、たまらなくないですか? FRP製ロケットカウルを装着した完璧なるメーカー純正カスタマイズモデル。1990年……そう、スズキ創業70周年を記念したモデルとして登場し、エンジン各部はバフ掛けされてなおかつクリアー処理が施され、カウル内のメーターも水温計を追加した3連式へ変更(よく見るとミラーもソレっぽい形状に変わっている)。なおかつゴールドチェーンも採用しており、トドメはスズキ70周年メモリアルキーホルダーの付属ッ! それで価格は66万6000円ポッキリですよ、ど〜ですか、お客さん!! もう1色、銀×青もカッコよかった……

 

さらにさらに1991年6月には「ええい、もう知らんわ。だったらこっちはハイメカニズムの極致を見せたらぁ!」……と、開発陣がついにキレたかどうかは分かりませんけれど(苦笑)、現在に至るまでバイク業界では空前絶後となる可変バルブタイミング・リフト機構を組み込んだVCエンジンを搭載した「バンディット400V」をリリース。

バンディット400V

●VCエンジン(Variable Valve Control=可変バルブタイミング・リフト機構付エンジン)とは、エンジン回転数に応じて高速用カムと低速用カムを自動的に切り替え、吸排気バルブのタイミングとリフト量を変化させる機構。なんと1気筒あたり吸気側、排気側にそれぞれ、高速用カム2個、低速用カム1個の計6個を配列するという精緻かつ画期的なメカニズムで、低中回転域でスムーズで力強いうえに高回転域まで滑らかに吹け上がり(切り替えタイミングは約9000回転でハイカムはローカムより約15%トルクを上乗せすることができる設定)、強力なパワーを感じられるエンジンでありました。あ、価格は63万6000円。つまりSTDに4万1000円追加するだけでVCエンジンを手に入れられたということ……コスト計算が絶対におかしい

VCエンジン解説

●1992年型「バンディット400・400V」カタログより。1ページ丸々改行スペースもなく文字ビッシリでVCエンジンの解説ですよ。さらに凄いのはこの複雑な機構を後日、250㏄並列4気筒エンジンにも導入したことで、そのあたりは次回お届けします。なお、ホンダCBR400Fが採用した“REV”やCB400SF・SBの代名詞ともなった“ハイパーVTEC”は4つあるバルブの2つを回転域によって動かしたり休ませたりする“回転数応答型バルブ休止システム”ですから「VC」とは全く違うものなのです

 

そのまた2ヵ月後の1991年8月には、ハーフカウル+VCエンジンの「バンディット400リミテッドV」まで登場……と、

バンディットVリミテッド

●「スズキ創業70周年だからこそのリミテッドじゃなかったんかい、ワレェ!」というスズキ愛のない外野からの雑音も一部聞こえておりましたが、スズキは何をしたっていい〜んです(GSX1100S KATANAだって……以下略)。価格は72万7000円。陰の濃いフレームの奥からチラリとのぞく赤ヘッドと“VC”の文字がタマリマセンなぁ〜

 

小技から大技、技術の粋を集めた新兵器までフル投入するものの、同時期タンクエンブレムの立体化やメーター変更、シート表皮の材質改善といった極小改良だけで、まだまだ高い人気のあったレーサーレプリカの雄、ホンダ「NSR250R」すら凌駕する販売台数を叩き出していたゼファーの牙城を脅かすことはできませんでした。

その難攻不落ぶりは大阪城か全盛期の北の湖や白鵬か、はたまた白色彗星帝国か……(古い)、ナウな事例なら将棋タイトル七冠を決めた藤井聡太名人クラスでしょうか。

ともかく手がつけられないほどの無敵ぶりを誇ったのですよ、1990年代初頭のゼファー(シリーズ)は!

過去作品のオマージュなら当社にもいい題材があるぞ!?

本筋とは少し離れるのですけれど、「ゼファーの大ヒットは往年のZ1&Z2イメージをうまく反映させたからだろう。だったらウチは……」と考えたスズキ関係者がいたのでしょう(いなかったとは言わせません)。

1992年4月によもやよもやの「GSX400S KATANA」が降臨いたします(次回お話する250版は1991年に登場済み)。

これがまた250版カタナ以上に狂気の沙汰とも言えるほどのこだわり集合体で、エンジンはバンディット400と同じGSX-R系の水冷並列4気筒をベースとしつつ、低中速域でのトルクアップを果たすべくロングストローク化(40.4㎜→47㎜)が実施され、エンジンヘッドとシリンダーの縦横比がオリジナルのGSX1100Sと同じになるようリビルド!

GSX400Sカタナ

●バンディット400リミテッドが完璧なるメーカー純正カスタマイズモデルなら、400カタナは完璧なるメーカー純正リプロダクションモデル! 成型用の型代もかかる外装類はもちろん、エンジンとフレームなどの根幹部分まで再構築しておきながら65万9000円というプライスタグを付けてくるなんて、人気漫画「賭博黙示録カイジ」風に言うならば悪魔的暴挙ですよ(ざわ……ざわ……)。これもバブル時代の好影響があったからこそ!?

 

いかにも空冷風なフィンも新たに施されてレトロな雰囲気が全開に……。

なおかつ、フレームはもちろんヘッドライト、カウル、タンク、シート、マフラー、ホイール形状に至るまで、GSX1100S KATANAのエッセンス400の車格にマッチングさせるという“完コピ”ぶり。

GSX400Sカタナ グレー

●総排気量399㏄の水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは、馬力の自主規制値を受け入れて最高出力53馬力/1万500回転、最大トルクは3.8㎏m/9500回転、車両重量205㎏、シート高750㎜……。燃料タンク容量は17ℓを確保しておりツーリング派もご納得。初期型バンディット400シリーズより1ℓ多かったんですね〜。なお、最初期型「GSX1100S KATANA」は22ℓ、現行ラインアップ車である令和の「KATANA」は12ℓとなっております。それはともかく写真の400カタナ、デューングレーメタリックは本当にいい色ですよね。その色と合わせるためにエンジンも黒く塗装され……価格は銀と同じ65万9000円ナリ!

 

フロントのタイヤサイズこそオリジナルの19インチから、より汎用性の高い18インチになっていましたけれど、個人的にはかえって収まりがいいくらいに思えました。

馬力低下と同時に各部も細かく見直されて完成度アップ

もちろん400カタナが出たからといってバンディットがお役御免になることはなく、1992年10月からは馬力の自主規制値変更にも粛々と従い、59馬力エンジンはVC仕様も含めて53馬力化され、

バンディット400 グリーン

●単にエンジンの最高出力を下げただけでなく、低中速域のトルクを充実させるためにカムシャフトのプロフィールが見直されて6速の変速比と2次減速比も変更。ヘッドライトは常時点灯化、かつウインカーレンズの形状もモディファイされるなど広い範囲で改良が行われました。配色も大人な味わいを感じさせるものに……(写真はトライアルグリーンメタリック、イイっすね!)。ちなみにレッドバロンはこのような微に入り細をうがつ変更点を取り扱う車両ごと独自にデータベース化しており、ストックしている膨大なパーツと整備車両とのマッチング精度を向上させ続けているのです

 

[アップハンドル仕様]は[コンチネンタルハンドル仕様]へとオシャレに改名(笑)されると同時に、価格を2万円ダウンして57万9000円に! 

バンディット400 コンチネンタルハンドル

●上で紹介した[アップハンドル仕様]と見比べていただければ分かるのですが、この“コンチハン”はグリップの位置がさらに見直されて若干低くなっているのですよ。前回、GSR250の巻においてもスズキ開発陣が「STD」と「S」と「F」とでライポジやカウルを細かく作り分けた話をしましたが、ライダーと車体とのインターフェイス部分をゆるがせにしないDNAが色濃く流れているのでしょうね〜

 

以降もネイキッド版、ロケットカウル版ともに配色を中心に美しさへ磨きがかけられていったのです。

現在、この原稿を書くためにネットの世界を漂っている当時の広報写真を眺めまくっているのですけれど、本当にため息が止まりません。「どれも妖艶だなぁ」と……。

バンディット400V キャンディアンタレスレッド

●1993年11月に登場した「バンディット400V」のキャンディアンタレスレッドです。ず〜っと上のほうで紹介している最初期型の派手なマーブルピュアレッドもこちらの色も、一般的な会話ではどちらも「赤いバンディット」で片付けられてしまいがちですけれど、受ける印象は全く違いますよね。フレームの色って大事……

 

このように手を替え品を替えて商品力をアップさせていったバンディット400シリーズは、もちろん一定以上の支持を着実に得ていきました。

シン・ネイキッドバトルは第二段階へ。バンちゃんはどうなる!?

駄菓子菓子(←しつこい)、ゼファー旋風がなかなか収まる気配のないなか、

1992年4月からはホンダ「CB400SF」が、

CB400SF

1993年3月にはヤマハ「XJR400」が、

XJR4001994年2月にはカワサキから水冷かつ“角Z”イメージの「ZRX」が、

ZRX

同じ1994年2月にはスズキから「GSX400インパルス」まで登場してきて、

インパルス400

バンディット400シリーズは野比のび太のパパ(←名前を言えますか?)並みに影が薄くなるばかり。

「嗚呼、完全にゼファー対抗馬チックなインパルスも出てきたし、こりゃスズキもバンディット400を見限ったな〜」と、思・っ・て・い・た・ら……というわけで、この続きは【後編】にて。

次回、バンディットという美学【中編】では、400クラス以上に波乱万丈となったバンディット250愉快な仲間たちの動向についてお届けする予定です。

バンディット250

●1990年型「バンディット250」カタログより。ああ〜っ、もう何というか写真の使い方といいキャッチコピーの内容といいレイアウトといい、全てが“あのころ”を醸し出していますね〜。本当に往年の雑誌を含め、紙媒体は“時代”を封印するタイムカプセルです。では次回、末っ子バンちゃんの大冒険にご期待下さい

 

あ、というわけで生まれてくるのが30年以上早かった(?)バンディット400シリーズは、今でこそ輝く妖艶なスタイリングを持つ“大穴”名車。年式が低くても膨大なパーツストックを持つレッドバロン太鼓判の良質な中古車なら、日本全国に広がるサービス網と相まって絶大なる安心感とともに乗り続けることが可能です。ぜひお近くの店舗へ足を運び、スタッフと在庫確認からスタートしてくださいね!

GSR250という“アンチテーゼ”【後編】はコチラ!

バンディットという美学【中編】はコチラ!

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