前編に引き続き、20251218日(木)、群馬県総合交通センター(前橋市)で開催された「令和7年度 公立高等学校・中等教育学校(後期) 二輪車安全運転者講習会」の実技講習の模様からお届けします。

▲会場となったのは、群馬県総合交通センター(前橋市)の運転免許二輪車試験コース

一本橋では苦戦も… コースを広く使っての実技講習

▲時おり強い風が吹くなかで行われたウォーミングアップ走行

 

参加者全員で車両点検を行ったあとはウォーミングアップ走行となり、列になってコースを広く数周しました。インフィールドセクションも活用して行われた主な課題は4つ。

指定のパイロンに達した時点からブレーキをかけて止まる指定制動(ブレーキング練習)、並べられたパイロンの間をジグザグに走り抜けるパイロンスラローム、極低速でバランスを取りながら幅30cmのレーンから落ちないように進む一本橋(直線狭路コース)、パイロンを中心にクルッと進行方向を変えるUターン(小旋回)です。

▲パイロンの位置から前後のブレーキを同時にかける「指定制動」を行う生徒

 

▲連なって「パイロンスラローム」を練習する生徒たち

 

▲脱輪する生徒も多かった「一本橋」。低速バランスの難しさを体験しました

 

▲公道上と同じく右回りで行われた「Uターン」

 

各課題をつなぐルート上ではインフィールドセクションのクランクやS字も通過するので、全体的にはけっこうテクニカルなコースだなという印象を受けました。それでも、生徒も先生もバイクに乗り慣れている方が多いのかスムーズに周回されていましたが、一本橋では苦戦する姿も見受けられました。

▲ルート上のインフィールドセクションではクランクやS字も組み込まれていました

 

実技講習の最後には指導員からの総評がありました。指導員は、若い高校生の習得の速さに驚きつつも「安全な車間距離をとって、自分を自分自身で、安全なゾーンで守っていく。自己防衛ですね」と、急ブレーキをかけることのないよう自車の位置をよく考えて走るよう伝えました。また運転技術だけでなく、クルマとバイクの死角などさまざまな知識を持つことも安全運転に必要であると教えられました。

▲ウォーミングアップ走行後に指導員から言われたことは、走行中にひざを開かないことでした

 

▲一本橋が終わった生徒にコツを教える指導員。リヤブレーキを引きずること、ハンドルを鷲掴みせず小刻みに動かしてバランスを取ることなどが伝えられました

講義では二輪車の特性と死角、事故状況について学習

▲講義は群馬県警察本部交通部交通企画課の課員が担当しました

 

実技講習の後は建屋内に場所を移しての講義です。ビデオ視聴を交えながら県警本部交通企画課員による安全運転講話が行われました。主な内容は、二輪車が関わった県内交通事故情勢のほか、二輪車の特性と四輪・二輪乗車中の死角についてでした。

交通事故情勢については、群馬県での二輪車の関係する交通事故発生状況について、月別、年齢層別、違反別にどのような特徴があるのかを学びました。2025年の1月から11月にかけては約500件の人身事故が発生し、うち5人が亡くなっていました。二輪車交通事故のうち100件に1件は死亡事故となってしまう計算です。

また、二輪車の事故は34月、ゴールデンウイークあたりから増え始め、夏休み期間も多いままであり、結局12月のオフシーズン以外は高止まりしていることがわかりました。

年齢層別で一番多いのはリターンライダーの多い50歳代ですが、次いで多いのは40歳代と1624歳でした。

第一当事者だった場合に最も多いのは「前方不注意」

▲令和7年(2025年)の群馬県内二輪車死亡事故事例について、イラストを用いての状況・要因説明が行われました

 

法令違反別で見ると「交差点安全進行違反」が最も多いものの、バイク側は第2当事者(過失の少ないほう)での割合が多く、バイク側が第1当事者(過失の多いほう)だった場合で見ると最も多いのは安全運転義務違反での「前方不注意」でした。

人身事故の8割でバイクの運転者にも違反があるという状態ですから、2当事者になってしまう可能性を考えても、万が一に備えたヘルメットとプロテクターは重要であるということを事故の数字からも学びました。

また、県内の二輪車死亡事故事例(転倒、追突、出会い頭、Uターン)についても、事故状況のイラストを見ながら説明を受け、事故防止のために注意すべきことを確認しました。

その後は、ビデオ映像を見ながら、車体の小さなバイクはクルマよりも遠くに、かつ速度が遅く見えること、クルマのバックミラーとサイドミラーには死角があること、カーブで速度を出しすぎるとスリップや転倒の危険性が高まること、ヘルメットの安全性と取り扱い、プロテクター着用の重要性などについて学びました。 

▲同じ速度で向かってくるバイクとトラックだと、バイクのほうが遅く遠くに見える。この遠近錯視が交差点での右直事故の大きな要因となります

クルマとバイクの死角を体験して防衛運転を考えた

▲屋外に置かれたクルマの周囲にバイクを配置し、それぞれのシートに座って死角を体験しました

 

運転中の死角については、建屋の外にクルマを囲むように複数台のバイクが置かれ、それぞれのシートに座ることで、双方のミラー越しの死角と視界について実際に体験できました。

「バイクの運転者からは、クルマの運転手の顔が見えるかどうか。運転手の顔が見えていれば運転手からも自分は見えています」

こうした白バイ隊員のアドバイスをもとに、様々な位置のバイクとクルマの運転席に座ることで、危険な走行位置について学びました。

その後、クルマの死角に入らないように運転するにはどうしたらよいのかなど、自分の身を守るための防衛運転について白バイ隊員も加わってのディスカッションが行われ、生徒自らも意見を出し合いました。

これをもって約2時間にわたっての実技講習と講義が終わりました。

閉講式では生徒と先生の双方に安全運転への心がけを伝達

▲閉講式の様子。白バイ隊員と二輪車安全運転指導員から総評が行われました

 

閉講式では指導担当者からの総評が行われました。自身もバイクが大好きでこの仕事を選んだという白バイ隊員からは「バイクは楽しく面白く素晴らしい乗り物だけど、事故に遭うと簡単に命がなくなってしまう」ことを踏まえ、自分が事故に遭わないために、他人に事故を起こさせないために「法令を守って、みんなの見本になるようなライダーになってください」と伝えられました。

また交通安全協会の二輪車安全運転指導員からは、県内で毎年年間5万件以上の交通事故が起きている現状を伝えつつ、道路上にはいろいろな人がいて、自分自身が安全運転をしっかり考えて行動しないと自分が悪くなくても事故に巻き込まれてしまうこと、危険を予測して行動しないといけないことを伝えました。

さらに、安全なバイク通学を目指すにあたり、必要にかられてバイクに乗っている生徒もいることを踏まえ、「先生方にもぜひ若者の命を守って頂きたい」と伝えていました。

まとめ(私感):先生が参加することに大きな意義 

▲先生は最初から最後まで生徒と一緒に実技と講義を受講しました。手前はスクーターのシートに座って死角を確認する先生

 

群馬県教育委員会による高校生への二輪車安全運転者講習会の模様をお届けしました。とにかく強く印象に残ったのは、先生が生徒と一緒にバイクに乗っている姿です。

前編の中でも書きましたが、先生が生徒と一緒にバイクに乗って受講することで、事故を防ぐために求められる考え方やノウハウ、さらには県内の事故状況やその特徴なども各校に持ち帰り、生の声で生徒に伝えることができるわけです。

教育委員会から各校へ書面を送って終わりではなく、地域の警察署からの座学だけでもなく、実践的安全教育の場として活用されている点にとても感銘を受けました。担当の先生は本当に大変だと思いますが、とても大きな意義があると思いますし、今後も末永くこの取り組みが続いてくれるといいですね。

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