2001年8月29日にスズキとカワサキが共同発表した、二輪車の業務提携に関する基本合意へ基づく相互OEM供給は2002年の2月から無事にスタート! スズキは主にスクーターを、カワサキは250㏄クラスの並列4気筒ネイキッドとモタードモデルをメインに相手方へと提供し、Win-Winの関係はこれから幾久しく続く……と思われていたのですが!?

2004年エプシロン250

●2004年2月に配布されたカワサキ「エプシロン250」カタログより。下で紹介しているパールブレイジングオレンジ(2003年9月発売)に加えて、このシャンパンミストシルバー(2004年5月発売)が追加されて人気を博しました。当時の税抜き本体価格は57万円……5%の消費税が追加されたプライスでも59万8500円だったのですからブチ安い(突然山口弁)!? ちなみに令和7年9月25日に発売されたヤマハ「トリシティ155」が10%税込みで61万6000円となっております

 

 

アナタの知らないOEMの世界【その2】はコチラ!

 

アナタの知らないOEMの世界【その4】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

有名アフターパーツメーカーも巻き込む盛り上がりを見せた!

 

 

何はともあれ始まったうなぎパイ明石焼きのマリアージュ!?

明石焼き

遠江国である浜松と播磨国の明石……。風土も違えば暮らす人々の気質だって違う2つのバイクメーカーがガッチリ手を組むことはできるのか? 二輪ギョーカイ人のみならず企業アナリストたちも行く末に興味を持っていました。あ、だし汁をつけていただく明石焼きは本当に美味しいですね(←取って付けた補足)

 

 

カワサキ「D-トラッカー」のスズキ版「250SB」にはヨシムラも注目し、コンプリートモデル……ではなくあくまでマフラーと凝った外装を装着した特別仕様車といった趣きではございますが2004年には「ヨシムラスズキM250S」というイメージリーダーまで出現!

M250Sカタログ

●貴重な「ヨシムラスズキM250S」カタログより。こちら特別仕様者の5%の消費税抜き価格が59万8000円。ベースとなった「250SB」が同48万円でしたので単純計算した差額は11万8000円……。高品質なスペシャル外装塗装と新開発されたヨシムラトライコーンマフラー&アルミロゴプレートがセットになっていると考えればめちゃくちゃ割安感がありますね……

m250s在庫

●なんと! 2025年9月の段階でレッドバロンが誇る在庫のなかに「ヨシムラスズキM250S」がありました! 速攻で特別撮影会を敢行ッ!

M250Sエンジン

『闘う、4スト。』とのキャッチフレーズも勇ましく1998年に登場したカワサキ「KLX250」をベース車両とするだけに、水冷4スト単気筒DOHC4バルブの強心臓はSTDで29馬力/2.5㎏mのパフォーマンスを発揮(なお、写真のキックスターターは後付けのオプション品)!

M250Sマフラー

●「ヨシムラスズキM250S」に標準装着されていたトライコーンマフラーは性能こそ市販品と同じだったのですけれど外観には大きな違いが! よく見るとマフラープレートにスズキの「S」ロゴが配されており、このバイクだけのスペシャル感を出しまくっておりました〜

MS250Sシート

●一説によるとヨシムラでパーツを外して美しく塗装したあと再び組み付けたとされる逸品ムードあふれる外装! 当時はスズキからの委託販売というカタチをとって販売されていたとか……。「ヨシムラスズキM250S」に興味を持たれた方はぜひお近くのレッドバロン各店舗の受付にてご相談を。在庫がまだあるかもしれませんよ〜(^^ゞ

 

 

真のヨシムラコンプリートモデル「M450R」が放つ雰囲気をうまく落とし込んだカスタム内容は、広く注目を集めました。

YOSHIMURA M450R

2000年4月に発売されたスズキ「DR-Z400S」をベースにオーナーが望む仕様(SPEC-1、SPEC-2、SPEC-Rの3つから選べた)に応じてヨシムラ自身がパーツを組み上げて製作したという至高のコンプリート車両「M450R」。2003年にアナウンスされ、もちろん完全受注生産にて合計13台のみがこの世へ生み出されたという超レアモデルでもあります

 

 

なお、「ヨシムラスズキM250S」は生粋のバイク好き芸人、レイザーラモンRGさんが今なお所有していることでも有名ですね(^w^)/。

 

 

ヨシムラが気合いを入れて「250SB」向けのマフラーやパフォーマンスを向上させる各種パーツを製作したことで、結果的にカワサキの「D-トラッカー」ユーザーもチューニングの選択肢が増えるという好循環が生まれたことになりました。

 

フルモデルチェンジも敢行されたKawasakiビッグスクーター

 

スズキ側としても「スカイウェイブ250タイプS」をカワサキが「エプシロン250」として売り出すことは、まさにWin-Win状態

エプシロン250

●いや本当に、今見てもガチ決まりでカッコいいカラーリングだなぁ、と思う2002年型カワサキ「エプシロン250」です。各種機能的には間違いのないスズキのメカニズムとカワサキならではのセンスが見事に融合……。他にもマリアージュしてほしかったモデルは沢山ありますな(遠い目)

 

 

2000年前後から始まった空前絶後のビッグスクーターブームに乗って、2003年9月には「エプシロン250」もフルモデルチェンジが敢行され新型へと移行!

2004年型エプシロン250

●2003年9月に2004年モデルとして発表されたカワサキ「エプシロン250」。ちょうどマツダ「ユーノスロードスター」のスタイリングを取りまとめたデザイナー、田中俊治氏ががカワサキ入りしてデザイン&カラーリング革命を起こしていた時期。過激なデザインに鮮烈なオレンジをまとって世界中のドギモを抜いた2003年型「Z1000」を彷彿させる色遣いが注目を集めました

 

 

……ただし、ちょっと気になったのは、そちらのベースとなった「スカイウェイブ250タイプS」は2002年12月、すでに新型となっていたのですよね。

2002年型スカイウェイブタイプS

●2002年には販売がスタートしていたスズキ「スカイウェイブ250タイプS」……。上のカワサキ版と全く同じカタチなのに色と写真の撮り方で受ける印象は大きく変わってくるのだなぁ、と思わず感心しちゃいました。

 

 

かくいうタイムラグにどのような思惑と背景があったのか今となっては分かりませんが、カワサキ側の販売店からすれば一番ビッグスクーター市場が盛り上がっている時期の春〜夏商戦に、ベースが少々古めなモデルで戦わなければならなかったハンデ(転じて不信感)を感じていたのかも……!? 

ビッグスクーター

●1990年代の末期からくすぶっていたビッグスクーター人気は、まさしく1999年10月にヤマハが2代目「マジェスティ」を発売したことで大爆発! 2002年6月にはカスタム仕様と言える「マジェスティC」がリリースされて手のつけられない状況へ……。本当にウソや誇張ではなく渋谷の坂という坂は趣向を凝らしたビッグスクーターで埋め尽くされ、改造を請け負うショップも雨後のタケノコのごとく生まれてきていたのですヨ!

 

もちろん海外向けの車両でも相互OEMを展開してました!

 

と、我々はどうしても日本国内での動きばかりを追ってしまいがちですが、スズキとカワサキの業務提携は全世界を相手にしたハナシです。

 

 

海外向けの競技専用エンデューロマシンとして2003年にはスズキ「DR-Z400」のカワサキ版である「KLX400R」がデビュー! 

2003_KLX400

●2003年型カワサキ「KLX400R」。レーサーですので当然、保安部品は付いていません

KLX400SR

●2003年型カワサキ「KLX400SR」……。出自はまんまスズキ「DR-Z400S」と同じですね

 

 

あと、正直ちょっと追い切れてないところもあるので恐縮なのですが、海外向けATV(All Terrain Vehicle……どんなところも走れる乗り物の意で四輪バギーとも呼ばれる)でも、数機種ほど相互の車両供給がなされていたようです。

2004_KFX700 V FORCE

●2004年型カワサキ「KFX700 V FORCE」。スズキでは「LT-V700」として販売していました。ATVでは他の排気量でもOEM関係があったとか

 

ビッグアドベンチャージャンルでも車両が融通されていた!

 

スズキ&カワサキのOEMモデルは、ざっとこんなものかな~と安心(?)していたら、ラスボスを発見……。

 

 

スズキ「Vストローム1000」のカワサキ版「KLV1000」ですと~ッ!? 

klv1000

●ベースとなったスズキ「Vストローム1000」は2002年に海外市場向けモデルとして登場。まだアドベンチャーという呼び名よりアルペンツアラーという言葉が一般的だった時代に生まれたVストロームの始祖たる存在……。そちらへ鮮烈なオレンジ色を塗り込んでカワサキブランドからリリースされたのが「KLV1000」だったのです!

 

 

2004年から欧州向けとして販売が開始されており、これまたパールブレイジングオレンジの車体色が目にも鮮やかですね。

KLV1000

●まぁ、メカニズム部分は全て「Vストローム1000」と同じ……なのですが、デュアルアップマフラーだったのかぁ! 完全に失念しており今回写真を引っ張り出してきたとき改めて驚きました

KLV1000フロント

●色といいヘッドライト形状といいK○M風味を強烈に醸し出しているフロントフェイス。アレ? クチバシがないぞ(笑)

 

 

今となってはつい忘れてしまいがちですけれど、当時趣味性の高い海外向けモデルは逆輸入車として入手するしかなく「Vストローム1000」でさえ超ホソボソ……といった時代。

2002_Vストローム1000

●ここでカワサキもOEMとして欲しがった(?)スズキ「Vストローム1000」について解説しておくと……。リッタースーパースポーツ「TL1000S」に端を発し「TL1000R」&「SV1000/S」で改良&熟成を重ねた高性能996㏄水冷4ストV型2気筒DOHC4バルブエンジンを堅牢なアルミフレームに搭載し、アップライトなライディングポジション、優れた防風効果を生み出すスクリーン、荒れた路面もしなやかにいなす前後サスペンションなどが高い次元でパッケージングされた万能車だったのですね。当然のごとく欧州でヒットをかまし、現在に続くVストロームブランドを築き上げました。2004年には弟分となる「Vストローム650」も登場して人気は加速。ともに逆輸入してでも手に入れたいユーザーが増えたことから2013年からは650が、2014年からは1000が晴れて国内導入ッ! 2017年には250まで登場したのです(以下略 (^^ゞ)!!

 

 

 

カワサキ「KLV1000」が日本導入されたという話は聞いた覚えすらありません(存在していたことも知らなかった!?m(_ _)m)。

 

 

残念ながらカワサキ「KLV1000」はデビューした2004年モデルが最終型になってしまったのですが(以降数年間は生産分を販売していた模様)、今回この欄でタップリ紹介できてよかったです……。

KLV1000真横

●ちなみに2004年型「KLV1000」は最高出力98馬力/7600rpm、最大トルク10.3㎏m/6400rpm。燃料タンク容量22ℓ、シート高840㎜、乾燥重量208㎏(!)というスペックでした(欧州カワサキサイトより)

 

 

さて次回はOEMなんてレベルではなく真の共同開発がなされたモデルについても語ってまいりましょう!

2004_RM-Z250

●製造を担当するカワサキがイニシアチブを取りつつ共同開発されたとされる2004年型スズキ「RM-Z250」。世はまさに2ストモトクロッサーから4ストモトクロッサーへの過渡期。莫大な費用のかかるエンジンを筆頭にマシン開発を一本化して2社で分け合えば、モロモロがWin-Win状態になること間違いなし……と思われたのですが!?

 

 

あ、というわけで「250SB」や「GSX250FX」、「エプシロン250/150」はまさしく時代の貴重な証言車メカニズム的には安心のスズキorカワサキ製ですので、レッドバロンの『5つ星品質』中古車をチェックして、あえて狙ってみるのもアリですよ!

 

 

アナタの知らないOEMの世界【その4】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

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