バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はみんな苦手な電装系。バイクの始動用バッテリーとして広く普及している『MFバッテリー』だ。
そもそも 『MFバッテリー』とは?

『MFバッテリー』の内部構造図。鉛バッテリーとしての電気を発生させる仕組みは開放式バッテリーとさほど変わらないが、とにかく密閉性が高いのが特徴。そのため『MFバッテリー』は、“密閉型バッテリー”とも呼ばれる。
『MFバッテリー』のMF(エム・エフ)とは、“Maintenance Free”であり、つまり“メンテナンス不要”の鉛バッテリーということ。実際には全くメンテナンスが必要ない訳ではないが、“それ以前のバッテリー”に比べればメンテナンスの手間が大幅に減ったことで、メンテナンスフリーバッテリーと呼ばれるようになったのだ。
“それ以前のバッテリー”とはいわゆる開放型バッテリーのこと。鉛バッテリーは大前提として、内部の希硫酸が電極の鉛を溶かす際に電気を発生させる。その際には水や水素ガスが生まれるのだが、開放型バッテリーは内圧が高まらないように水素を大気解放する仕組みになっている。この構造から、MFバッテリーと区別する意味で開放型バッテリーと呼ばれる。

開放型バッテリーの内部構造図。鉛バッテリーは、希硫酸が電極板の鉛を溶かす過程で電気を発生させる。つまり電気を使うと希硫酸の酸性が中和され、水や水素が発生。これが熱などで気化した場合に大気開放して内部の圧力を抜いているから“開放型”なのだ。
ただ、発生した水や水素を大気解放してしまうと困るのは充電時である。バッテリーを充電しようと電気を流して逆の化学反応を起こそうとしても、大気開放してしまった水素や水は戻らない…。このため開放型バッテリーの液は徐々に減っていくため定期的にバッテリー液を補充する必要があったのだ。
また開放型バッテリーは内部の水素が抜けてしまえば、それだけバッテリー液の酸性が弱まり、電気を貯めておく能力が落ちるということである。比重計と呼ばれる測定器具で、満充電時の液の酸性具合を計り、きちんと充電が行われて比重が高くなっているか? の確認も必要…と、とにかく開放型バッテリーは管理に手間がかかった。
『MFバッテリー』のここがスゴイ!
とにかく手間がかからない!

密閉したことで搭載の向きを選ばないのも『MFバッテリー』の長所と言える(厳密には100%の性能を発揮できないこともある)。開放型バッテリーは液漏れの観点から車両に横倒し搭載はできないが、『MFバッテリー』ならこんな感じで横倒し搭載も可能。写真はホンダのVTR。
『MFバッテリー』の特徴は、とにかく手間がかからないということ。このメンテナンスの少なさを実現した理由はその密閉性の高さにある。理論的には、放電時の化学反応で発生した水や水素がバッテリーの外部に放出しなければ、充電時に化学反応する際もその水素や水を使って電気を蓄えられる。“質量保存の法則”に則り、内部の密閉性を高めて物質の流出を防止、バッテリーの充放電時の循環サイクルを良くしようというのが『MFバッテリー』の根本的な考え方だ。
このため開放型バッテリーのように液の補充や比重計測が必要ない。ただ『MFバッテリー』といっても、その寿命を伸ばすためには定期的な充電や満充電での保全作業は必要となるので、その点はお忘れ無く。バッテリーの日常的な管理保全には、『ROM-オプティメート4DUAL バージョン3』がとっても便利だぞ!

ちなみにバッテリーというと、目に見えない電気を扱うためなんだか苦手という人も多いとは思うが、バイクに搭載される12Vぐらいの低い電圧では、金属でショートさせない限り“バチッ!”となることはほぼない。もちろんある程度の注意は必要だが、こんなふうにプラスとマイナスの電極を指でつまんだところで、乾電池同様“ビリビリ”とはならないのでご安心を(笑)。
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