バッテリーが上がったら、エンジンはかからない!

バッテリーが上がる(セルモーターを回せなくなるほどバッテリーの電圧が弱くなる)と、エンジンがかからなくなる。原付スクーターなどキックスターターを装備しているバイクでなければ、他車のバッテリーとつなぐことでエンジン始動時の電気を分けてもらう「ジャンプスタート」をするか「押しがけ」をすることになる。

バイクの扱いに慣れている方なら押しがけ自体は難しくないだろう。ギヤを2速か3速に入れてバイクを押し、ある程度速度が出たところでバイクに飛び乗ると同時にクラッチレバーをポンと離す。こうすることで、押されて回ったリヤタイヤがクランクを回しオルタネーターで電気を発生させてプラグに火花を飛ばす…。
インジェクターしかし、近年、この押しがけが難しくなっている。ひとつは燃料供給装置が機械式のキャブレターから電気式のフューエルインジェクションになったこと。キャブレター車の押しがけは、バッテリーがほぼ完全に死んでいても可能だが、フューエルインジェクション車の場合は押しがけ時に燃料ポンプや電子部品を動かす必要があり、より多くの電気量を必要とするため、バッテリーにある程度の電圧が残っていないと失敗することが多い。上の写真はケーヒン製の二輪車用小型インジェクター(燃料噴射装置)。

スリッパ―クラッチ採用車両は、押しがけができない!

スリッパ―クラッチ概念図また、ここ数年で増えている「スリッパ―クラッチ」搭載車両は、構造上、押しがけができない。急激なシフトダウン時などリヤタイヤの回転する力がエンジン側(クランクシャフトの回転力)に勝った時に起こる、リヤタイヤのホッピングやロックを防ぐための機構であるスリッパークラッチだが、押しがけ時にはリヤタイヤの回転力をクランクシャフトに伝えられないため電力を発生できない。上の写真はHonda「CBR600RR」のスリッパ―クラッチ概念図。

クラッチレバーが軽くなり、指が疲れにくくなるなど恩恵の多いスリッパ―クラッチだが、バッテリー上がりの時には致命的となる。さらに、キックスターターのないスクータータイプ(ビッグスクーター等)はそもそもクラッチが無いので当然押しがけができない。ちなみに、スーパーカブは押し掛け可能だ。

このように、近年のバイクは「押しがけができない、しにくいバイクが増えている」ので、バッテリーの状態には細心の注意が必要だ。また、「バッテリー上がり=その場から動けなくなる」ので、居場所によっては命にも関わる(怖いこと言ってゴメン)。バッテリー上がりの危険度は昔より高まっているのだ。

モバイルジャンプスターターを常時携帯しよう!

そこで、常時携帯をお勧めしたいのが、モバイルジャンプスターター(ポータブルジャンプスターターとも言う)だ。スマホ充電用のモバイルバッテリーと変わらない手の平サイズなので、バイクによってはシート下収納スペースにも入れておける。もちろん、平常時にはスマホ用モバイルバッテリーとしても使えるので、使い勝手もコスパもいい。

モバイルジャンプスターター2使い方は簡単。モバイルジャンプスターターにケーブルをつなぎ、上がってしまったバッテリーのプラスとマイナスの端子にワニ口クリップをそれぞれかませる。次に、モバイルジャンプスターターの電源を入れてから、バイクのイグニッションキーをONにしてセルボタンを押す。すると、キュルルッとセルモーターが回って、あっという間にエンジンがかかる。

もし、1度でかからない場合は、続けて何度もセルボタンを押すのではなく、1分程度などしばらく時間を空けてから再度セルボタンを押すこと。かからないからと言ってセルボタンを連続して押したり、寿命を迎えて完全に死んでいるバッテリーに対して何度もセルボタンを押してしまうと、モバイルジャンプスターターがパンクしてしまう恐れがあるので注意しよう。

電源ON状態モバイルジャンプスターターは3,000~5,000円程度で購入できるし、クルマにも使えるので買っておいて損はない。ツーリングクラブのリーダーが常に携帯していれば、ツーリング中にメンバーの誰かがバッテリー上がりを起こしても、その場でエンジンを始動し、ツーリングを続行できる可能性が高い。ぜひ購入を検討してほしいアイテムだ。

 

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