メンテナンスをしていると緩みづらいボルトに出くわすことがあります。古いバイクであれば特にその傾向が強くなります。
無理やり緩めようとするとボルトの頭が壊れてしまう、いわゆる「ナメる」ことになりかねません。ボルトやナットを緩める際は、なるべく瞬発的に緩める力を加えるのが理想的ですが、ハンドツールではなかなか難しいものです。
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ハンマーで打撃を加えることで瞬間的に緩める「ショックドライバー」
ショックドライバーは固着したボルトを緩めるための専用工具で、様々な工具メーカーから販売されていますが、今回は購入しやすくライダーにとって馴染みの深い「デイトナ」の商品を紹介します。
「バイク用ショックドライバーセット」は、バイクの整備によく使用するプラスやマイナス、ヘックスなどのビットがセットになっています。
緩めたいボルトに合ったビットを差し込んで使用します。
このデイトナ製ショックドライバーの特徴は、ビットホルダーを外すと先端が3/8インチの差し込み角になっている点。つまり、同サイズのソケットを利用できるのです。
ショックドライバーの実際の使用手順を解説!
緩めづらいプラスビスの代表格がマスターシリンダーのリザーバータンクのビス。錆びて工具のかかる部分が崩壊しかかっていることもあるので、長期間緩めていない場合は特に注意が必要です。
こうしたプラスビスはドライバーを使って手の力で緩めるよりも、最初からショックドライバーを使った方がよい場合が多いです。
プラスビットを緩めるビスにハンマーで打ち込みます。この時点で、ガッチリ食い込まない場合は、ビスの頭が変形して工具のかかりが甘くなっていると考えられます。
その場合、ビスの頭をハンマーで叩いてある程度修正できることがあります。
今回はガッチリかかりました。ビットのガタはありません。
デイトナ製ショックドライバーは左右に回転方向を変えることができます。つまり、正ネジだけでなく逆ネジにも対応しているのです。逆ネジが使用される箇所は多くはないですが、役立つ場面に出くわすかもしれません。
回転方向の変更は、本体を手で保持した状態で先端部分を回転させておこないます。
回転方向をネジの緩む方向、つまり左回転(L)に指定してビットにセット。本体を握って軽く左回転のテンションを加えつつ、後端をハンマーで叩きます。ハンマーはウエイトがある方が回転力が強くなるので、プラスチックハンマーよりも鉄ハンマーがおすすめ。
「押す」「緩める」を同時に行うことができる!
ハンマーで叩くと瞬間的にビット先端が押し付けられながら左回転するので、ナメるリスクを軽減しつつ確実に緩める方向へ力を伝えることができます。
無事に緩んだら通常のドライバーでビスを抜き取ります。
ショックドライバーが使えない部分もある!
強度の低いパーツをとめているボルトにショックドライバーを使用すると、衝撃に耐えられず折れたり曲がったりすることもあります。例えば上の写真のボトムケースのステーはアルミ製で折れる可能性が非常に高いので、使用はNGです。
ヘックスボルトも緩められる!
クランクケースカバーのボルトにはヘックスボルトが使われることが多いですが、頻繁に緩める部分ではないので固着することがあります。そんなときにもショックドライバーは大活躍。
ボルトに合ったビットを選んで。
ショックドライバーをセット。
回転方向が緩める方向になっているのを確認して。
ハンマーで一撃を加えます。
ショックドライバーを早い段階で使うと、ボルトの頭をナメるリスクが低減します。しかし、ショックドライバーは決して万能ではありません。事前に潤滑浸透剤を塗布したり、熱や衝撃を徐々にを加えたりというテクニックも場合によっては必要となります。どうしても緩まないボルトは、完全にナメたり折れてしまう前にしっかりとした資格を持ったプロに助けを求めましょう。その方が安心・確実です。
また、ショックドライバーは使い方に慣れる必要がありますので、いきなり緩まないボルトに挑むのではなく、事前の練習をおすすめします。
使いこなせるようになると確実にメンテナンスに役立つので、ご自身の工具のラインナップに加えてみてはいかがでしょうか。