分散形式で開催されたSSTR
浜辺を走る爽快感、この上なしです! 千里浜なぎさドライブウェイ(石川県羽咋市)に行ってきました。昨年も参加した「SSTR」(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)」に2年連続でエントリー。世界的なオートバイ冒険家・風間深志が発案したオートバイによる独創的なツーリングラリーです。
日の出とともに自身で定めた日本列島の東海岸、つまり太平洋岸や瀬戸内海側からスタートし、日没までに能登半島の千里浜にゴールします。
列島横断、1日で走り切る。
ロマンあふれるこの分かりやすさが、旅を好むライダーに火をつけました。2013年に初開催されて以来、参加ライダーが年々増え、今年も5000台を超えるバイク乗りたちが千里浜に集結。コロナ禍の中、昨年から分散型形式(MY SSTR)へ移行され、エントリーライダーは自身で千里浜へ向かう日を選択します。今年の「SSTR2021」は、10月2日(土)から17日(日)まで15日間で開催されたのでした。
ハーレー&BMWのアドベンチャー2台で
乗っていくのはハーレーダビッドソンの新型アドベンチャーツーリング『パンアメリカ1250S』です。ボクが編集長を務める『WITHHARLEY/ウィズハーレー』(内外出版社)にて、今年もレポートします。12月9日発売のVol10で記事になりますので、興味がありましたらぜひ手にとってください!
同行するのは『BMW BIKES』(日栄出版)編集長の櫻井伸樹さん。ご自身の『R1250GS』で行きます。じつは櫻井さん、ダイナ・ローライダーを愛車にするハーレー愛好家でもあり、BMW『R80』を10年間以上所有してきたボクとは馬が合うというか、いろいろとお仕事をご一緒させていただいております。
「SSTR行く?」
「おおっ、行こう!」
となり、出版社の垣根を越えた合同企画となったのでした。2台の車両、それぞれへゼッケンステッカーを貼り準備OK。パンアメリカ1250Sに乗るウィズハーレーの青木タカオ(筆者)が#5426番、R1250GSのBMW BIKES櫻井伸樹さんが#5427番です。
ゼッケンって、バイク乗りの気分を高揚させますよね。これはSSTRを立案し主宰する風間深志さんがおっしゃっていました。「ゼッケンを自分のバイクに貼ってゴールを目指す」「エントリーしているライダーが途中にいれば、連帯感も湧く」とのこと。言っていた意味が、SSTRに参加するとよ〜くわかります。知らない人でも「千里浜で会いましょう!」なんて、言葉をかわし合ったりするんです。
ちなみに、SSTRの公式ホームページでは参加者が自己紹介できるメンバーページがあり、千里浜を目指す仲間たちに“一言”メッセージを送ることができたりもします。途中で出会った人もゼッケンを覚えておけば、ここでまた見ることができるのです。
スタートは東京湾の最深部
出発地点に選んだのは東京湾の最深部、千葉県市川市の市川港。東の海からのぼる神々しい太陽をバッチリ見ることができました。いよいよ長い1日が始まります。
参加者はスマートフォンにてSSTRシステムが利用でき、地点登録の煩わしさがありません。WEB上にマイページがあり、まずはスタート地点を登録。これで自分が正式にSSTRをスタートしたこととなります。
千里浜レストハウスに日没までにたどり着く。そして、指定の立ち寄り地点で10ポイント以上を獲得すれば、完走扱いとなります。
立ち寄り地点は「SSTR温故知新」というテーマで選ばれています。かつて第2回大会までは「おみくじ」ポイントがあり、神社に立ち寄っておみくじを引き大吉なら10点、吉なら5点を加算というボーナスポイントが存在したのでした。
運に左右される面白いルールでしたが、残念ながら集計が煩雑で参加者の増加に伴い第3回から廃止に。そういうSSTRの歴史を懐かしみ、近くに歴史と伝統を有する神社がある道の駅を選定。ただし、道の駅が1ヶ所しかない東京都については、今回、道の駅ではなく「大國魂神社」となっています。
気がつけば少ない、自分で撮る写真
ボクたちはまず、その「大國魂神社」へ。御拝殿へ手を合わせ、カメラマンが写真を撮ったらすぐに出発。自分のスマートフォンやカメラで写真を撮る時間はありません。リアルなハナシをしますと、写真を撮るのは同行するプロのフォトグラファーの仕事でして、ライダーであると同時にいろいろと取材をするボク自身が写真を撮るチャンスはなかなかないのです。
それでもココでレポートするため、少しですがスマートフォンで写真を撮っておきました。これは道の駅「風穴の里」です。中央道を西へひたすら走って、長野自動車道・松本インターから20kmほどの場所にあります。
時間は11時頃。往路でしょうか、復路でしょうか、同じSSTR参加者がいらっしゃいます。首都圏から千里浜までだと、ちょうど中間地点の辺りとなる道の駅です。昨年、SSTRに参加したときも立ち寄りましたし、この先の安房トンネルを通るときはよく利用します。
安房峠を越え、飛騨地方へ!
安房トンネルを抜けるとき、ボクはとてもワクワクします。飛騨と信州をワープしますから、ここで一気に文化圏が変わるのです。長野・岐阜県境の安房峠直下で短絡する5.6kmにも及ぶ長いトンネルで、中日本高速道路(NEXCO中日本)が一般有料道路として管理。ETCも利用可能です。岐阜県側の平湯料金所を越えると、旅情が湧くのはボクだけでしょうか。
1998年の長野オリンピックに間に合わせるべく、97年12月に開通。それまで北アルプスを越えて岐阜県と長野県を結ぶ道路は少なく、安房峠は有名な難所。観光客の多い時期には通過に5時間以上、長い時には8時間かかることもあったと言われます。道幅がせまく、大型車どうしがすれ違うには、どちらかが道幅の広いところまでバックし続けなければなりません。
トンネル開通後もボクは安房峠の旧道を何度か走ったことがあります。岐阜県高山市(旧上宝村)から長野県松本市(旧安曇村)の間にある安房峠の最高標高は1,790m。毎年11月中旬から翌年5月中旬までは深い雪のため通行止めになる険しい峠です。
これがバイクで走ると、安房峠の旧道がとてもいい。コーナーが連続し、奥深い自然も堪能できます。ボクの場合、急いでなければ安房トンネルではなく迷わず安房峠道路ですが、今回は千里浜の夕陽に間に合わなくてはなりませんから、残念ながらトンネルを通過、その一択でした。
「旧道」に心惹かれるのは酷道険道マニアの根本的資質であり、旅好き、バイク乗り、ツーリング好きなら共通するところではないでしょうか。道幅が細く、きついカーブが続く。アップダウンも激しく、路面は荒れ、そして何より歴史があるんです。
ツーリング中、新しいトンネルをくぐろうとする瞬間にちらっと見え隠れする旧道。トンネルをやめて、あの細く荒れた道へ入りたいと、ついつい思ってしまうのはボクだけではないはず。移動することが目的であれば、快適な新しい道を走ればいい。ただ、そうではないのが、ボクたちバイク乗りなんですよね。
安房峠はそんな旧道ファンを唸らせる代表格。首都圏のライダーには、軽井沢へ至る碓氷峠もついつい旧道に入りたくなる道として知られていますが、みなさんの身近にもありますよね。ボクがまだ行ったことがなく、体験したい旧道は兵庫県宍粟市と鳥取県八頭郡若桜町との間に位置し、両県の県境を成す戸倉峠。歴史があり、分水嶺であることも地理学科を大学で専攻したボクにはたまりません。
ハナシがまただいぶそれて、深みにハマりそうなので今回はココまで。さぁ、次回はいよいよ飛騨側、そして千里浜へ! 最終回は感動のゴールです。今回も最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました!