埼玉から新潟まで下道ツーリングに出発した私。ようやく目的地である昭和レトロな「ホテル公楽園」に到着した。外観は異様に圧があるが、中身はもっとスゴかった。その一部始終を見よ!

<これまでのおさらい>
【昭和レトロ紀行 群馬~新潟編①】日本一有名な? 「とうふ店」に寄ってみた!
ンマーイ、長岡醤油ラーメンの本家で優勝!【昭和レトロ紀行 群馬~新潟編②】

迫力ありすぎ、ホラー映画の舞台ですか!?

既に周囲は暗い。恐らく田んぼと思われる土地にホテルが点々としている。暗闇の中、浮かぶように「ホテル公楽園」の看板が見えた。

↑国道116号線沿いに煌々と光る看板! 「一泊2880円」!

↑そしてドーン! 圧が強い。いいカンジに月も出ている。周囲は何もなく、この公楽園だけがポツンと建っている。■新潟県燕市熊森1283-1 TEL:0256-97-1575 24時間営業(ゲームコーナーは24時頃まで)


何だろう、ホラー映画で惨劇の舞台になるモーテル(?)みたいだ。思わず笑ってしまった。バイクを停めて物色していると、外側右手にフロントがあった。中の従業員さんに話しかけると、第1回に登場した電話の人だった。

「沼尾さん、お待ちしていました。ゆっくり休んでください」

おぉ一流ホテルのようなホスピタリティだ。
本日は「特別室」に泊まれることになった。事前調査によると、なかなか泊まれる部屋ではないらしく、そもそも「特別室」という名前がワクワクする(笑)。電話予約した際にリクエストしたのだけど、「特別室」はベッドがツインで二人客用なのだとか。「当日もし空いていたら」とお願いしていたところ、念願が叶ったのだ。

1泊分の料金は2880円ではなく、2900円だった。「なぜ20円値上げ?」と思いながら現金で支払い、どちらにしても安い。安すぎる……。

せっかくなので少しお話を伺う。

「建物はずいぶん古いみたいですけど、どれぐらい営業されているんですか?」
「50年ぐらい前からですね。建物は古いんですけど掃除は頑張っています」

・・・・・・なるほど、プライドを持ってらっしゃる!

従業員さんが経営者なのか尋ねてみると「管理人です」という。元々この建物は米問屋で、前のオーナーがホテルに改装したらしい。

突然「もうギリギリでやっているんで」と話す管理人さん。
「コッチの方ですか」と私が思わず親指と人差し指で円をつくると「ソッチもそうなんですが、人がギリギリで」という。どうやらスタッフ三人が交代で運営しているらしい。

でも人気があるんですよね、と言ったら、
「いやぁコロナ禍以降、客が減ってしまったんです。コロナが落ち着けば、全国からマニアが戻ってきてくれるかもしれませんけどね」
そういう捉え方をされている自覚をスタッフの方も持っているんだ、と笑いそうになる。なお、今では夏休み期間に満室になることもあるが、他は比較的空いているそうだ。

シャンデリアにソファ、これが「特別室」だ!

さっそく部屋へ。建物の外にある階段を上がった2階がホテルの入口。昔ながらのアパートみたい。入口は簡素なガラス戸で隔てられているのみだった。

↑入口手前にある自販機。本麒麟170円、一番搾り340円はなかなか良心的(急遽値上げに対応したためか値段が手書き)。

↑廊下の両側に部屋が並ぶ。狭いのにタバコの自販機があって一段と狭くなっている(笑)。壁は立体感があるけど実は平面だ。


緑色のカーペットとメタリックな壁が昭和っぽい。客室は全部で9室あり、各部屋の上には「和室」「洋間」「公室」と書いてある。……「公室」って何だ?

そして我が部屋「特別室」である。

↑「特別室」!!!


扉を開けると「?」小さい土間のようなスペースが。

↑玄関スペース? ここで靴を脱ぐのか、土足でいいのか戸惑う。昔よく見たガラスの模様にも注目。


だいたいのホテルは土足だし、土間と客室の段差があまりないので「土足でOKなのか?」と思ったが、たぶん脱ぐのだろうと思い、靴を脱いで入室。

ドアを開けると、またしても「?」。シャンデリアとソファが備え付けられているが、妙にチープ。まさに昭和レトロ、炸裂だぁ~。

奇妙な室内を徹底チェック、ソファよりバイクの方が快適?

スリッパがないので靴下のままカーペットを歩き、さらに部屋をチェックしてみた。
百聞は一見に如かず。ここからは写真とともに見ていきたい。

↑何だこの箱は? と思ったら……。

↑クローゼットだった。奥行きは20cmぐらい・・・・・・薄い。ハンガーが斜めにしか架けられない。ただし浴衣とタオルは完備。

↑エアコンと換気扇が並んでいる。コンディションした空気が抜けちゃわないか?

↑電気のボリュームが意外と現代っぽい。暖房専用スイッチは……壊れているようだ!

↑洋室だけど、絵は和風。二宮金次郎か?

↑床に黒いモノが。ゴキかと思ったら、コゲのようだ。

↑フロ。浴槽の内部はキレイに掃除してあるけど、外側の下部がガビガビに剥がれている。床に黒い動く物体が! ゴキかと思ったら、ハサミムシだった。

↑狭いトイレ。入口を斜めにして必死にスペースを稼いでいるのがオモシロイ。

↑丸い鏡がまたレトロ。洗面所に手を洗うセッケンがないので、風呂場からボディソープを持ってきて代用した。歯ブラシと歯磨き粉、バスタオル&フェイスタオルはしっかり用意されている!


一息つこうとソファに座ったら……クタクタでスプリングが死んでいる。

↑昔ながらのホテルのカギと灰皿がいい味出してます。

↑スプリングが死んだソファ。15分も座っていると尻に痛みが。スーパーカブの方がよっぽど座り心地がいい……。奥にあるベッドはシーツがキレイなのだが、土台がボロボロ。


うーん、色々奇妙だ。そして、なんとなく不気味な雰囲気がある。部屋に入ってから感じていたのだが、外は涼しいのに室内が妙に暑い。網戸があればちょうどいい温度になりそうだけどないので、エアコンを点けた。
気を紛らわそうとTVのスイッチを入れるが……どうやっても映らない。

まぁいい。長旅の疲れをフロで落とすとするか。
浴槽を使う気にならなかったのでシャワー。ハサミムシは見あたらなくなっていた。
お湯はちゃんと出る。サッパリして風呂を出るけど、足を拭くマットがない。ビチャビチャの状態でカーペットの室内に戻るハメになるかと思いきや……。

↑足拭きマットがないので備え付けのフェイスタオルを敷いて解決。


それにしても靴下でカーペットを歩くのがイヤンなカンジ。スリッパがあればなぁと思う。
まぁいい。オートパーラーを探索だ。酒とつまみを買って宴会としゃれこむぜ!

オートパーラーを見学、新潟の地酒と海の幸で乾杯だ

1階に下りるとオートパーラーというのが新感覚(笑)。こんなホテル、他にあるのだろうか? 食堂のスペースとゲームセンターが併設されており、自販機はトースト、カップラーメン、冷凍食品がある。

↑時が止まったような、いい雰囲気。カップラーメン自販機は2台あるが、1台は故障中だった。他にカップ酒、つまみの自販機もある。

↑冷凍食品用の電子レンジを設置。持ち込みはNGだ!


店内をまわってみる。現在20時ごろ、スロット機で遊んでいる客が二人いる。UFOキャッチャーの景品をよく見てみると、アダルトDVDが景品……。

↑まさに「夜のUFOキャッチャー」。夜のオカズをキャッチせよ。


さらに入口脇にあるクレーンゲームも何かがオカシイ。よく景品を見てみると……。

↑アダルトグッズの「テ○ガエッグ」と下着のクレーンゲームだった。


ゲームコーナーはスロット機のほか、麻雀、将棋、パズルゲームなど。もう一つの入口を出たところに銀色の自販機が鎮座していた。

↑出たぁ~銀色の自販機(コチラの記事でも自販機が登場)。中身はエロ本ではなく、DVDだった(一枚400円)。性癖に偏りがある気がするなァ。

↑室内の片隅にジョンとヨーコのポスターが。どこか悲しげに見えるのは気のせいだろうか。


一通り見たので、自販機コーナーに戻って着席。自販機で買った地酒と新鮮な海の幸で一杯やるとしますか!

↑昔ながらのテーブルクロスとイス! マジックの字「60.5.11」は昭和60年5月11日の意か?

↑新潟に来たからには、米所が生んだ美味い地酒と寺泊港直送の海の幸で宴会をやるのは当然だ。

公楽園のホスピタリティはホンモノ、だが・・・・・・

……酔った。朝早かったし、眠気が。部屋に戻ろうとしたら、管理人さんが偶然オートパーラーに来たので「TVって映らないんですね」と言うと、修理に来てくれると言う。

遠慮すると「いえいえ、せっかくなので!」との御返事。さすが接客は一流ホテル並みである。

先に階段を上がって廊下に行くと、先程の「公室」から管理人さんが出てきて驚いた。1階のフロントと公室は中でつながっているらしい。ちなみに公室は管理人部屋とのこと。

↑懸命に修理してくれる管理人さん。


TV線を外したり色々やってくれたのだけど、結局映らなかった。「他の部屋は映るんですけどね」とのこと。前の宿泊者は別に気にしなかったようだ。管理人さんは、丁重に謝って退室していった。

TVがないと・・・・・静かだ。遠くでかすかにクルマが通る音がする。今晩、私を含めて3人が宿泊しているという。近くの部屋からベッドか何かがきしむ音がする。意外と壁は薄いのか。

まぁいい(何度目だ?)。寝るとしよう。おぉ、ベッドマットは寝心地が良好だ。

↑ベッド側から見た部屋の眺め。右側が入口。10月なのに冷房をフル稼働し、ようやく涼しくなってきた。


おっと忘れていた。枕元にはトイレットペーパーがある。ボックスティッシュではなく、ロールというのが公楽園スタイルだ!

↑枕元にトイレットペーパー。


当webのプロフィールで「趣味はユーラシア横断」と書いたけど、アジアで数え切れないほどの安宿に泊まった経験がある。今はわからないが、20年前は一泊500円が普通だった。それらに比べれば、公楽園は極上の部類。ただ、アジアでは感じなかった一種の不気味さはやっぱりあるが……。

事実、この夜、とんでもない事件が起きるのだ。

<後編はコチラ!>

 

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