前回の朝飯ツーリングで「オートパーラー」の魔力に取り憑かれてしまったワタシ。調べてみると、前回行った埼玉県上尾市の北、久喜市にもう一軒ある!? ならば行かない手はない、というワケでさっそく出発だ。

「二匹目のドジョウ」ではなく、魅せられて

昭和の香り漂うレトロ自販機がある「オートパーラー」。前回の取材でディープな空間を初体験し、素朴に他の店はどんなカンジなのか気になっていた。そんな矢先、“朝飯ツーリング第2弾”企画のお話が!

ネットを検索してみたら、前回訪れた「オートパーラー上尾」から30分ほど北上した地点に「オートパーラーまんぷく」なるお店があるらしい。現存するオートパーラーは全国的に見ても少ないのに、この密集度は何だろう(笑)。それに店名が既に何とも言えない脱力感とペーソスを醸し出している。

もちろん、この店にも珍しい自販機のそば&うどんがある。前回はうどんだったので、今回はそばにしよう(我ながら安易だ)。期待に胸をふくらませ、寒空の朝、愛車で出発した。

↑またも出勤前の妻に頼んでパチリ。気温7度なので重装備でゴー。


東北道に沿って延びる国道122号を北上していく。さいたまスタジアムを越えて、国道16号と交わる辺りは相変わらずの渋滞だ!

↑蓮田市の辺りまで、右手に高速道路、左手に田んぼを眺めながら運転。

「関東最古」に寄り道、映えるスポットだ!

1時間ほど下道を走り、久喜市に入る。目的地の手前でちょいと寄り道してみた。有名な鷲宮神社である。
初めて訪れるのだが、なにしろ「関東最古の大社」らしい。大社とは、各地の神社を取りまとめるエラい神社の意。日本武尊が戦勝祈願したことでも知られる……などとネットで調達したウンチクを語ってみたが、私が知ったきっかけは某アニメ。鳥居が印象的でずっと記憶に残っている。某アニメの放映は2007年だから、14年前か! と思わず遠い目になってしまう。

ところで皆さん、神社の名前を読めますか? 私はずっと「鷺(さぎ)宮神社」だと思い込んでいたのだが、実際は「鷲(わし)宮神社」。今回初めて知ったのは内緒だ。

↑道の奥に鷲宮神社の大鳥居が見えてきた。街中に出現する鳥居とは、なかなか珍しい光景だ。

 

↑鷲宮神社。バイクと比べると鳥居の巨大さがよくわかる。


2018年に鳥居が倒壊し、ようやく2021年12月、再建に至ったらしい。看板によると、取材日の4日後(12月4日)から鳥居前のバリケードがなくなるとか。自分の引きの弱さを露呈してしまったが、これはこれで貴重かも。

それにしても、バイクと一緒に撮影するのにこれほど適した神社も珍しい。たいていの鳥居は敷地奥にあってバイクは入れないものだが、鷲宮神社は道路に面していて、駐車スペースがすぐ脇にある。

↑境内も広々としていい雰囲気。

↑おみくじ(100円)を引いたら「吉」。仕事運には「全て採算倒れになる危険性があるので、この点を念入りに計算せよ。傍がみるほど内情はよくない」と書かれていた。不吉な!

↑絵馬。イラスト入りの絵馬がズラッと並んでいるかと思ったらそれほどでもなかった。


さて、帰るか……。いやいやこれからが本番だ。

自販機そばが2台? アレ、前回より美味いゾ

着いた! 鷲宮神社から10分も走れば「オートパーラーまんぷく」だ。

↑外観から実に味わい深い「オートパーラーまんぷく」(埼玉県久喜市栗橋東4丁目19-11)。幹線道路沿いで、近くにはファミレスが多く並んでおり、競争は激しそう。


建物は、見れば見るほど不思議な構造だ。L型ツインエンジンが2つくっついた形とでも言おうか。ざっとチェックしてみると、左側がコインランドリーとシャワー室と自販機、麻雀などのゲーム機が3台ある。右側は自販機オンリーでやや狭い。中央にあるのは管理室。なんだか銭湯みたいだ!?

左ブロックでは、妙齢の女性がコインランドリーの乾燥機前でパンパンと服をはたき畳んでいる。右ブロックでは若いサラリーマンや作業着のオジサン2人組が休憩中。生活感があって、オートパーラー上尾とは雰囲気がまったく違うぞ。

↑さっそく目的のブツを発見。おお、「おすすめ一番 天ぷらそば」とはちょうどいい。相当な自信があるのか!


店内は細く長く、上尾のような開放感はないが、とても不思議。2ブロックに分かれているため、ジュース、お菓子など同じような自販機が各々のブロックに一つずつ置いてあるのが特徴だ。
貴重なうどん&そば自販機も2台あるし、両替機もテレビも2台ある。

↑なぜか同じ自販機が2台ずつある。これまた最近見かけない「明るい家族計画」も2つ設置されている! 1台じゃダメですか? この絶倫め!


腹が減ったし、探索は後にしてメシを食おう。そば、うどんともに値段は200円。前回の上尾より50円安い。

↑上尾と同様、500円玉はNG。左ブロックの自販機では10円玉と50円玉がOKなのに、なぜか右ブロックの方は100円玉しか使えない。おっと、またしても小銭がないのはお約束。今度は両替機がすぐ見つかった。

 

↑料金を投入すると、昔懐かしいニキシー管のカウントダウンが開始。25秒でブザーが鳴って完成だ。

 

↑取り出し口。うむ汚い(笑)。

 

↑本体内のスペースに箸と唐辛子を内蔵! オールインワン設計だ。

 

↑今回の朝食。ぐぬぬ、痛恨のピンボケ! 200円のせいか麺の量が少なめではある。


いただきます。……アレ、美味いぞ(笑)。前回のうどんは「まぁこんなものかな」といった味だったけど、今回は普通に美味い。麺も適切な味わいとゆで加減だし、ツユの濃度も温度もイイ感じだ。そして何より天ぷらがナイス! 分厚くて玉ねぎのシャッキリ感まであるし、上尾みたいにフニャとして冷たくない。

↑見よ、この分厚い断面を! ただし上尾のような、うずらの卵とわかめはなく、至ってシンプル。


あまり「まんぷく」にならなかったので、うどんもいってみるか。上尾との比較もできるし。
食べてみると、やはり麺も天ぷらも美味い。なぜかそばより天ぷらがペラペラだったけど、たまたまだったのか?

↑うどんも食べてみた。上尾よりやっぱり麺は少ないけど、味がイイ!


麺の量や具の種類は少ないが、麺と天ぷらに一点集中したコンセプトと見た(笑)。「エンターテイナーの上尾」、「職人肌のまんぷく」と言えそうだ。

↑食器置き場。網があってスープを捨てる仕組み。上尾と違って合理的。

シャワーあり! 下道ツーの拠点としても活躍

もう一つ、まんぷくの大きなポイントがシャワー。北に延びる国道4号(旧日光街道)から500mほど入った立地のため、下道で長期ツーリングするライダーにとって憩いのオアシスになるハズだ。

スポンジ、せっけんが売ってるし(若干高いけど)、たまった洗濯物をキレイにできるコインランドリーもある(週刊誌まで完備!)。イスで仮眠するのもアリだろう。何しろ24時間営業だから、いつ立ち寄ってもいいのがうれしい。車中泊にもよさそうだ。

↑コイン式のシャワールーム(これも2台)。約6分で200円なので、そばと同じ値段だ! ドアはロックでき、脱衣は15分以内、シャワー後の着衣は15分以内とかなり時間に余裕がある。テーブルの造花が不思議。

 

↑カミソリ150円、タオル+ソープ200円、シャンプーリンス120円、ボディソープ+スポンジ170円。これも当然自販機だ。そして右手に造花が。

 

↑アルコールの自販機までアリ。つまみ付きと至れり尽くせりだぁ! 他にもお菓子や冷凍食品、カップ麺などなど自販機デパートの様相。

 

↑トイレは中央ブロックの外側に完備。丸見えじゃないですか! 妙に和風で申し訳程度の目隠し、「お手洗」の看板とやたらに多い電球(昔のスナック風?)、日本庭園にありそうな巨石……とツッコミどころ満載!

 

↑このご時勢なのに喫煙スペースがそこかしこに(また造花)。ただしコインランドリー周辺は禁煙だ。


おっと、右ブロックに2階があることを忘れていた。階段の前に「小中学生の入場は固くお断りします」と書かれている。なにやらアダルトな香りが!

↑なぜかやたらと「10時のみ」の貼り紙が。昔のサウナとか健康ランド風の看板もイイ味出してます。そして、ここでも造花。

 

↑隠し部屋? 右ブロックの2階は30台ほどのゲーム機がある。多くはスロットやメダルゲームだ。午前10時前からスロットに興じる紳士が2名もいらっしゃる。あ、またもや造花が。


そろそろ帰るかと思ったら、日清カップヌードルしょうゆ味をすすっている作業着姿のオジサンがいた。年齢は60歳手前ぐらいだろうか。食べ終わった頃合を見計らい、思い切って話しかけてみた。
「こちらにはよく来るんですか」
彼は、虚を突かれたような、鳩が豆鉄砲くらったような顔をして一瞬固まった。無理もない。ここは店員さえいない、絶対に話しかけられることのない空間だからだ。

彼は薄く笑って「ああ、まぁ休みの日とか」その答えを聞いて、今度はコチラがフリーズしてしまい、二の句が継げられなかった。が、何とか「すぐにメシが食えていいところですよね」と返答すると、おじさんは無言でジュースを買って自分のクルマに戻っていった。

不思議空間で孤独をエンジョイせよ!

↑帰路。思わず、抜けがいい景色を見たくなって、まんぷく近くの利根川河川敷へ。


外観やそば&うどんの自販機はレトロだが、それ以外はわりと現代的で、利用者も多い「まんぷく」。それにしても建物の構造と「自販機2台ずつ」、あちこちにあるおもてなしの造花などなど摩訶不思議なセンスが光る店だった。
「オートパーラー」ならではの自由な空間は共通しているものの、上尾のような“わびさび”や昭和感は思ったほどなく、地元民の生活や憩いの場として根付いているようだ。うーん奥が深いぞ。

ところで、オジサンに話しかけてフリーズしたのは、オジサンの深い孤独が伝わってきた気がしたから。でも、どう行動しようが大きなお世話だし、何をしたって自由だ。誰にも干渉されないオートパーラーに、オジサンも孤独を楽しみに来ていたのかもしれない。それを邪魔してしまったかな、と反省した。

心も体も「まんぷく」になった……などと最後に上手いことを言おうと思ったのだが、そうもいかない(苦笑)。
「あいまい3センチ!」、鷲宮神社が出てくる某アニメのOPテーマを歌いながら帰ろう。

 

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