信州・長野の名物と言えば、蕎麦。
昼夜の寒暖差が大きく蕎麦の栽培に適した土地が多いのだそう。言われてみれば、長野県内をツーリングしているとそば畑をよく見かけるような気がします。
蕎麦は5~9月ぐらいになると一斉に開花し、まるで白いじゅうたんのようになります。信州に夏がやってきたことを実感させてくれる景色のひとつです。
当然ことながら蕎麦の名店も数多く存在し、中には朝から提供しているお店もあるのだとか。
先日筆者が長野にショートステイをした際のこと。ForR編集部から「せっかく長野に滞在をするなら蕎麦を食べにいくべき!」とのアドバイスをもらっていました。
ということで相棒のクロスカブを走らせ、美味しいお蕎麦を目指してレッツゴー!!
カイザーベルク穂高からのスタートです
スタート地点は、先日ご紹介したライダーのための宿泊施設 カイザーベルク穂高から。フカフカの布団でたっぷりと寝たので体力は満タンです。
昨晩はずっと雨が降り続いていたのですが、幸い朝には止んでいました。まだ濡れている路面が多いので気を付けて走りましょう!
道中は川を眺めながら
県外在住者である筆者が持つ長野県のイメージは、ズバリ「川」。
日本一長い信濃川、諏訪湖から太平洋まで続く天竜川、信州川の別名を持つ千曲川など数多くの河川が通っています。
県道275号線を走った筆者が通りかかったのは高瀬川。親柱(橋の両端にある太い柱のようなもの)に描かれたイラストによると「てるてる坊主のふるさと」なんだとか。
女の子とてるてる坊主の表情がちょっとシュール。味があるイラストです。
広い河原にはマレットゴルフ場や球技用のグラウンドなどがあります。平日だからか、主に高齢者を中心にスポーツを楽しむ市民の方々が見えました。
中でも「なんだこれ?」と気になったのがこちら。
調べてみたところ、安曇野郡 池田町が運営するマウンテンバイク練習場『ロケットパーク』でした。
初心者から上級者まで楽しみながら技術を磨けるそうで、利用料は無料。ただし運営のために100円以上の寄付がマストなんだとか。
これだけしっかりしたコースを格安で使える池田町民が羨ましい限りなのでした。
その後274号線は山道に入り、ちょっとした峠道に。昨晩の雨の影響か、木々の葉が鮮やかな緑色に輝いていました。
国道19号線沿いに出ると、隣を流れていたのは犀(さい)川。落ち着いて見えた高瀬川とは違い、茶色く濁った水が大量に流れています。
心なしか湿度が高くしっとりとした空気。しかしそれほど気温が高くなかったため、ミストが飛んでいるような心地でした。
手打ちそばが食べられる道の駅 長野市大岡特産センター
最後に岩肌が大迫力な道を通り抜ければ…目的地、道の駅 長野市大岡特産センターに到着です!
朝9時半から開店し、地元のそば粉をふんだんに使った手打ちそばがいただける道の駅です。
出発前にカイザーベルク穂高のスタッフさんとお話していたところ「大岡特産センターの蕎麦は美味しいですよ」ということで、お墨付きをいただいていました。
ちなみに玄関の右にある大きな顔は、『芦ノ尻道祖神(あしのしりどうそじん)』といいます。
無病息災と豊作を祈るもので、道祖神の石碑に神面を飾り付けて作るのだとか。1998年の長野冬季オリンピック大会の開会式にも登場し、注目を集めたのだそうです。
立派な眉毛の上には、この夏巣立ったばかりと思われるツバメが羽を休めていました。
店内に入ると、道の駅にありがちな普通の食堂に見えるのですが…
振り向くと目に入るのが、蕎麦打ち場です!よく見ると奥には臼のようなものも見えます。もしかして蕎麦粉も店内で挽いているの…!?
朝イチの入店だったため打ち場は無人でしたが、時間帯によっては実際に職人の方が蕎麦を打っているところが見られるのだとか。蕎麦打ちを見ながら食べられるなんて、どんな調味料にも勝るんだろうなぁ…!
今回筆者が注文したのは天ざる蕎麦(税込900円)。
受付で食券を渡すと「はいよ!」と元気よく声が返ってきます。地元のお母さんたちが働いているようで、エプロンを着けた姿が実家のような安心感。
セルフサービスの暖かい煎茶を飲みながら席で待っていると、すぐに天ぷらを揚げる音が聞こえてきました。朝からアツアツの天ぷら、個人的には滅多に食べない組み合わせなのでドキドキするな~!!
いよいよ蕎麦の登場!
ジャジャーン!出てきたのはザルの上に盛られた蕎麦と、4種類の天ぷら(さつまいも、かぼちゃ、春菊、えのき)です。
先ほどご説明した通り、大岡特産センターの蕎麦は店内で手打ちしたもの。予想していたよりも白めの色をしています。
蕎麦の実は全体的に真っ黒だと思われがちですが、中心部に近い胚乳は小麦粉に近い白さを持っているのだそう。殻の除去度合によって、蕎麦の色は黒から白まで様々あるんですって!
よ~く見ると表面には黒い点が見られます。これは蕎麦の殻や枝に繋がる付け根の部分の色で、蕎麦好きの人たちは「ホシ」と呼ぶのだそうです。
まずは一口、つゆにつけて食べてみると…
おぉぉぉ~~!これは美味しい!!!
ツルツルした滑らかな舌触りでありながら、噛むとモチッ、ムチッとしっかりした弾力。
口いっぱいに蕎麦の香りが広がり、さすが本場の味!と思わずウンウンとうなずきながら食べてしまいました。水がキレイだからでしょうか、味まで透き通っているように感じるのは気のせいかな?
薬味はネギ、大根おろし、ワサビの3種類。
今の筆者に一番ピッタリだと思ったのは大根おろし。冷たい蕎麦と大根、寝ぼけた胃袋を起こすにはピッタリなサッパリテイストでした。
胃の調子が上がってきたら今度は天ぷらを食べてみましょう。一番好きなのは、春菊!
噛むと「サクサクサクッ」と軽やかな食感で、ふんわりと菊のような独特の香りと苦みが広がります。春菊が苦手という人は少なくないらしいのですが、無類の葉もの野菜好きな筆者は昔からずっと大好きなのです。
カラっと揚がったえのきは、たっぷりとおつゆをつけて口に入れると朝からお酒を飲みたくなってしまいました。フルーティな飲み口の日本酒が合うだろうな……しかし帰りの運転もあるので、今日は我慢するとしましょう。
サッパリな蕎麦と、ガッツリな天ぷら。交互に食べながら、15分ほどをかけて完食です!
ざる蕎麦って、水分が切ってあるからふやけにくいんですね。食べるのがゆっくりな私でも最後まで弾力を楽しむことができました。
これまでは暖かいかけ蕎麦を好んで食べることが多かったのですが、ざる蕎麦もお気に入りになりそうです。
食後におすすめの展望スポット
ご飯を食べ終わったら、北アルプスの山々と信州の街を眺められる展望スポットへ行ってみましょう。目指すのは鷹狩山(たかがりやま)。
カイザーベルク穂高の支配人に教えてもらった場所で、標高1164mの山頂に展望台があるのだそうです。
大町市街地から鷹狩山へ向けて、博物館通りという道を登ります。場所によっては路面に落ち葉や土が積もっているため、飛ばさずトコトコとゆっくり進んでいくのがベターです。
博物館通りという名前は、道の途中に大町山岳博物館という施設があることから。北アルプスの動物が見られる展示が人気ということで、この日もたくさんの学生さんが見学に訪れていました。
噂によると展示物が多くてかなり見ごたえがあるのだそう。残念ながら時間が無くて寄れませんでしたが、次回は行ってみたいな!
10分ほど走ったところで山頂付近の駐車場にクロスカブを停め、最後は歩いて展望台へ向かいます。
木々が風でそよぎ、鳥たちは大合唱。録音して就寝時に聞きたいほどの癒しサウンドに囲まれています。
ただし、当然のことながら虫はたくさん。運よく虫よけスプレーを持っていたので、手や首に念入りに振りかけて歩き始めました。
展望台にはすぐ到着しました。先客は3人ほどと穴場的な雰囲気です。
北アルプスを一望できるこの場所は、日本に100カ所以上ある「恋人の聖地」のうちのひとつなのだそう。記念撮影用のハート型オブジェがありましたが、ひとりで撮るのも寂しい気がしたのでパスすることに。
コンクリート造りの展望台は3階建て。屋上から景色を楽しむことができます。
階段で展望台へ登って景色を眺めてみると…この通り!美しい景色が広がっていました。
なんて見晴らしが良いのでしょう…!
大町の上空に浮かぶ雲が影を作り、東に向かって流れていくのが見えます。まるで筆者自身も雲になって眺めているみたい。1164mという標高よりも高い場所にいるように感じます。
深呼吸をすると、下界よりもヒンヤリとした空気が肺いっぱいに入ってきました。昨晩の雨のおかげで空気がキレイなのかとも思いましたが、きっと鷹狩山の山頂はいつも澄んだ空気が流れているのでしょう。
蕎麦と展望台。信州の美しい水と空気を堪能したツーリングでした。
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