「昭和レトロ四番勝負」を終えた筆者に、新たな指令が! 新潟に何やらキッチュでポップなレトロ宿があるらしく・・・・・・? 道中のレトロスポットに立ち寄りながら下道ツーリングに出発だ!

オートパーラーとホテルが合体? オラ何だかワクワクしてきたぞ!

「沼尾さんに泊まってもらいたい所があるんです」
某日、ForRの担当者から電話で取材依頼があった。場所は新潟で「ホテル公楽園」なる場所らしい。私は知らなかったが、TVのバラエティ番組でも紹介されていたという。

嫌な予感がした(笑)。オートパーラーなど昭和レトロな施設を取材している私に依頼するのだから、(いい意味で)マトモな場所ではないハズだ。

あまり調べると新鮮さがなくなって面白くないので、チラリとネットを見てみると、確かに(いい意味で)マトモな場所ではない。レトロ自販機が置かれたオートパーラーとホテルが合体した古い施設で、何というか怪しい、怪しすぎる(笑)。昔旅行したアジア圏によくある素泊まりの宿みたいだ。

しかしながらネットによると「予約した方がいい」とのこと。チラ見した印象では、とてもそんな雰囲気ではなかったが、新潟まで行って「満室」じゃあ話にならないのでさっそく電話。

ホテルの人に日時を伝えると「ウチは初めてですか?」と聞かれた。おっと早くも面白そうな予感が(笑)。だが「チェックインは16時、チェックアウトは10時です」と非常に常識的な説明だった。

それにしても電話越しの相手はとても応対が丁寧だ。ホテルの雰囲気とはミスマッチな、好感の持てる方だった(失礼!)。

道中はもちろん、ただホテルに直行するのではなく、昭和レトロ的なスポットに立ち寄るつもり。さて、どうなるか……。

ひたすら国道17号を北上し、見えてきたのは「とうふ店」!?

数日後の10月某日、いよいよ出発。6時前に家を出たのだけど、もう空は明るい。

バイクは毎度おなじみのスーパーカブ110(JA44)。
埼玉県川口市から、ホテル公楽園のある新潟県燕市までおよそ300kmの行程。もちろん高速道路は使えないため、寄り道なしでも6時間かかる。

思い返してみれば、今までの私は高速道路でバヒュンと行くツーリングが多く、カブのような小排気量車でこれほどの下道ロングランは初めてだ。

↑出発前。6時前に妻を叩き起こして撮影! したわけではなく、前日に撮ってもらいました、ハイ。


ひとまず北上して、国道17号(熊谷バイパス)に合流。延々と郊外の道路をハイペースで走る。

↑国道17号を北上中。走るとちょうどいいけど、止まると暑い。そんな陽気。

 

↑埼玉県行田市あたり。稲穂が頭を垂れた田園地帯にさしかかったので記念撮影。ここから北は既に稲刈りした田んぼが多かった。


途中、行田市で反対車線に「鉄剣タロー」の巨大な看板が。レトロ自販機が揃う有名なオートパーラーで、2020年5月に惜しまれつつ閉店した。華麗にスルーしてしまったのだが、ナント今年9月に再オープンしていたのだとか! これを書きながら初めて知った次第……。後日チャレンジせねば!

↑ずっと17号。段々冷えてきた。30度近い気温との予報だったので、部分メッシュのジャケットにしたのだけど失敗だったかも。


それはさておき群馬県伊勢崎市あたりから、遙か遠くに谷川岳などを擁する三国山脈の稜線が見えてきた。俄然、自分の中のリトルホンダが唸りを上げてくる(比喩)。

↑どんどん山が近づいてくる。写真は前橋市。


コンビニで朝飯を食べたりして、自宅から約3時間30分ほどで最初の目的地「伊香保 おもちゃと人形 自動車博物館」に到着!
おっと、いきなり不思議な展示物が(笑)。

↑目的地に着いて、まず目に飛び込んできたのがコチラ!


道沿いに『藤原とうふ店』の展示があるのだ。知らない人には“?”でしかないだろうが、これはクルマの走り屋を題材にした人気漫画『頭文字D』(頭文字は“イニシャル”と読む 講談社刊)の主人公、藤原拓海の実家を再現したもの。作品は榛名山など群馬県が主な舞台で、伊香保からほど近い。

作者しげの秀一氏の名前は、バイク漫画の金字塔『バリバリ伝説』で知っている人も多いハズ(当webでも関連記事あり)。

こんな展示があるとは知らなかったので、またも私の中のリトルホンダが唸ってしまう! よく見ると「入館者のみ撮影可」との表示が。施設を見学してから記念撮影とシャレこもう。

さっそく昭和なスマートボールを満喫

↑「伊香保 おもちゃと人形 自動車博物館」 群馬県北群馬郡吉岡町上野田2145 9~18時(4/25~10/31)、9~17時(11/1~4/24) 大人1300円 http://www.ikaho-omocha.jp/


この博物館は、昭和の街並みを再現したゾーンがあるほか、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で使用した初代カブの“スーパーカブC100”をはじめとしたクラシックなバイク&クルマが展示されているらしい。

それに博物館のオープン時間はだいたい遅めだけど、9時開館というのがいい。

↑入口右手にはちょっとした休憩スペースがあり、ここにもバイクが。機種不明だが、中国製のようだ。

 

↑入口では巨大なテディベアとメッサーシュミットがお出迎え~。

 

↑入館料を支払ったら、記念のキューピー人形とマップをもらった。キューピーは無塗装だけど最後に色を塗ることができるとか。


受付を済ませて入場すると、いきなり鉄人28号などのオブジェとスネークモータースのバイクが!

↑所ジョージさんがプロデュースするTV/雑誌『世田谷ベース』から生まれた架空ブランドがスネークモータース。ビートたけし氏が考案したモデルのレプリカがこの「KITANO-SPECIAL」だ。2011年、500台限定で販売された。


続けて進んでいくとテディベアコーナーを経て、昭和レトロな街並みが出現した。

これまた懐かしい“スマートボール”のコーナーがあったので、思わず体験してみた。これは1950年代に流行ったピンボールのようなゲーム。今では温泉街などに置いてある。

↑ボールを穴から入れ、右のレバーで弾くというプリミティブなゲーム。7つある穴に入ればOKだ。1回300円。

↑プレイ中の筆者。従業員のお姉さんに撮ってもらいました。ありがとうございます。


ホーロー製のボールが釘に当たる「キンコン」という音が気持ちいい。10個の玉を9個以上入れれば博物館無料券、6個で“素敵なプレゼント”、3個で懐かしおもちゃがもらえる。

いいカンジで玉を入れていき、結果は……7個! よっしゃ~(笑)。

↑7個入れたので、“素敵なプレゼント”と懐かしおもちゃのどちらもゲット。ペーパーヨーヨーとゴムで飛ぶヒコーキだ。


さらに先に進むと、昔の生活用品が並んだコーナーに富士重工製ラビットが! 

↑ボディとフロントフェンダーが一体になったタイプが有名だが、こちらは別体式。昭和30年代の生産と見られる。

 

↑足元にブレーキを装備。

 

↑ハンドルまわり。走行距離は1万2000km台?


近くの駄菓子屋コーナーには、白黒ブラウン管TVや懐かしいアイテムがびっしり並んでいる。

 

↑鉄腕アトムを上映中。実際の画面より拡大するレンズがこれまた懐かしい!

 

↑年季が入ったプラッシーとミリンダ! よく米屋にあった。飲みてぇ!


おっと、続いて納屋に収納されたメグロ S3が見参!

↑メグロは大正14年に創業され、昭和39年、カワサキに吸収合併。令和3年(2021年)にカワサキからブランド名が復活した。展示されたS3は昭和35年型で250cc単気筒を搭載。

 

↑有名な七宝焼エンブレムもキレイな状態。

 

↑その近くに展示されたヤマグチモータースの車両は、空冷2スト単気筒の50ccRAIIだ(恐らく)。ヤマグチは昭和20~30年代(1950年代)にセールスを伸ばしたが、その後に倒産。

 

↑ハルナ書店には、おなじみの雑誌名が。


その先にはプロレスミュージアム(先日亡くなったアントニオ猪木氏の展示もあり)、おもちゃゾーン、自動車ミュージアムへと続いていく。

↑射的も300円。この辺りは平成時代の物品もまとめられている。

 

↑ゼファーやエリミネーター400SE、ZXR250などのカタログも発見。

↑自動車ミュージアムはまず軽自動車からスタート。マツダ・キャロル、スバル360などなど昔のコンパクトカーはカワイイし愛嬌がある。

 

↑ブリヂストンも昔はバイクを造っていた。


そして「ミニ」ゾーンへ。英国時代の様々なバリエーションが30台ほど展示され、館長のミニ偏愛が伝わってきた。

↑ポリス仕様ほか貴重なミニが並ぶ。

『頭文字D』ブースにモデルになった店舗の実物が!

2階に上がると……おっと、またしても藤原とうふ店、そしてハチロクだ~!
こっちは移築展示で、『頭文字D』のいわゆる主人公機であるトヨタAE86スプリンタートレノまである。

展示の説明によると、主人公の実家である藤原とうふ店は実在した群馬県渋川市の「藤野屋豆腐店」がモデルとのこと。しかし2006年9月に閉店し、取り壊されたという。

看板や外装、備品などをご家族が大切に保管していたところ、館長が縁あって譲り受けることになり、店舗正面外観を2012年に再現したという。
なお、屋外のとうふ店は2018年11月から設置されたとのこと。

↑ナンバーはアニメ版と同じ!

 

↑うぉぉコクピットには紙コップが!!! 芸が細かい。知らない人はコミックスを読むべし!

 

↑実物の包丁とおたま。右側の写真は作者のしげの氏。

↑そしてライバルにしてチームメイトである高橋啓介のRX-7(FD)も隣に展示。胸アツ! 元のオーナーはしげの秀一氏というのがまた凄い。


『頭文字D』にハマっていた私だけに、展示物の数々にリトルホンダが唸りっぱなしだった。連載開始時は既に平成だったけど、バイク漫画で有名になったしげの秀一氏が「ついにクルマを題材にするのか~」と感慨深かったなぁ。

↑イニDの次はファミリーカーブース。1960~70年代のトヨタコロナ(今聞くとちょっと不思議なカンジがする)、日産ブルーバードなどが展示されている。

あのトヨタ2000GTに初代スーパーカブC100まで!

そして3階に上がると、正面にドーン!

出た~、日本が誇る名車、トヨタ2000GT! 3階はスポーツカーゾーンだ。フェアレディZ432(昭和44年)、スカイラインGT-R(昭和48年)と名だたる車両が居並ぶが、やはりレア度では2000GTが別格だろう。

1967~1970年に販売され、生産台数はわずか337台。ヤマハがエンジン開発に協力したのは有名な話ですね。

現在では1億円超の値がつくが、館長はさらにもう1台お持ちとか。何ともウラヤマシイ。

↑3階左手にはスズキのミニフリーも展示。最高出力2psの50cc空冷2スト単気筒を積むスポーツモデルだった。


見終わったかな、と思ったら、まだまだ展示は続く。1階に下りて、屋外展示へ。休憩所のほか、ビートルズブース、お化け屋敷、シネマワールドなどがある。

歩いていると「鈴木オート」が出現。昭和30年代を舞台にした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」に出てくる舞台セットを再現したゾーンだ。

ダイハツミゼットとスーパーカブC100は、実際に映画で使われた実物。C100は昭和33年に登場した初代スーパーカブだけに、カブ主のはしくれとしてリトルホンダが(以下略)。

↑カブ主憧れのスーパーカブC100。エイジングしたように見せているけど、実際はすごく状態がよさそう。49cc空冷4スト単気筒OHVを搭載し、4.5psを発生。当時価格5万5000円は、当時のサラリーマン平均月収約1万6600円の約3.5倍。今より高級品だったのだ。


館内に戻り、いよいよ展示も終わりか、と思ったら、まだある!
ガチャガチャがあるブースを抜けると「渋川モータース」が見えてきた。

↑ドリーム、ベンリィの書体に味がある渋川モータース。

 

↑内部はお宝ばかり! カワサキ・500SS(マッハIII)、ホンダ・ドリームC72、ヤマハ・305M2、ホンダ・ジュノオM85などが。


ちなみにマッハIIIは「当時価格29万8000円」との表示。その値段で売ってくれませんかねぇ(笑)。

その先に映画通り、アンティークベアブースなどを経てカフェへ。ついに展示が終わったが、物凄い見応え。既に1時間30分ぐらいかかっている。

先を急ごうと思ったが、カフェの「とうふジェラート」に目が奪われた。
もちろん藤原とうふ店に掛けたのだろうけど、個人的に一本取られたので(笑)、食べることに。

↑伊香保は豆腐も名物らしいけど、イニD好きとしては食べるしかない、とうふジェラート(400円)。


ウ、ウマい。甘みを抑えつつ、とうふのにがりが口に残って凄く美味しい。ジェラートだけに伸びがよく、後味もサッパリしている。や、やるなぁ。

↑最後に記念撮影! ハチロクよりコッチの方が似合うと思うのは私だけだろうか(笑)。

見ごたえアリすぎ(笑)、リピーターになってしまうかも

先日、那須でレトロな施設を見学したが、規模は断然こちらの方が大きく、展示物も多い。とにかくクラシックカーが充実しているのがいい。

施設は非常にキレイで展示のクオリティも高く、相当なコストがかかっているハズ。個人的には1300円が安く感じるほどの充実度だった(その代わり某昭和レトロ館のようにアクの強い館長はいませんが笑)。

なお、館長は年商10億円の建設会社社長だったが、会社を畳んで1994年に私費で博物館を設立。クラシックカー好きで、各種ラリーにも参加されている。いつかお話を伺ってみたいものだ。

おっと長居してしまった。もう11時を過ぎている。
――博物館を後にしてから、キューピーの絵付けを忘れていたことに気が付いた。そのうち、また友人や家族と来るのも面白そうだ。

<続編は鋭意執筆中、次回は峠越えとメシ!>

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