はじめに。冬の北海道ツーリングには大きな危険がともないます。
ほぼすべての路面が凍結し、天気や除雪状況によって大きくコンディションが変わります。

記事中では筆者 高木はるかが実際に使った装備やルートをご紹介しますが、絶対的な正解ではなく、その日その時の状況に合わせて対応する必要があることをご了承ください。

前回の記事はこちら
年越し北海道ツーリングに再挑戦:1 極寒を走るためのバイク装備をご紹介!

年越し北海道ツーリングレポートの第2回目である本記事では、ライディングウェアや持ち物、もしもの時のための準備などに関してご紹介します。
すべて筆者自身が実際に使用したものですが、北海道の厳しい環境の中、絶対的な正解というものはありません。

バイクや環境によっては適さない可能性があることをご承知ください。

極寒を耐え抜く服装と持ち物


年末年始の北海道は、基本的に気温が氷点下。つまり、雪と氷だらけの極寒の地が広がっています。

おまけにバイクで走っている時は、体感温度が10~15度ほど低くなるといわれています(時速30~50kmで走った場合)。
対策なしでは一瞬で体が冷え切ってしまい、最悪の場合は低体温症で命を落としてしまうかもしれないのです。

服装選びのポイント&実際に使用したウェア

服装選びで特に大切なのは、しっかり防風した上で保温をすること。もちろん通常のツーリングと同様に、体を守るプロテクターも大切です。

筆者が使用したものは以下の通りです。

【インナー】
保温機能が高く、汗をかいてもサラッとしやすいものがおすすめです。筆者はメリノウール製を中心にそろえました。

  • 上半身:モンベル/スーパーメリノウール M.W. ラウンドネックシャツ Women's
  • 下半身:モンベル/スーパーメリノウール M.W. タイツ Women's
  • 靴下:モンベル/メリノウール トレッキング ソックス Women's


【ミドル】
保温性能が高いものがおすすめですが、今回は防風・保温性能をアウターに全振りしたため、なるべく動きやすいものを選びました。
(ただし保温力が足りなかった時のため、予備としてダウンジャケットを用意しました)

  • 上半身:普段使いの薄手セーター
  • 下半身:ワークマン/AERO STRETCH (エアロ ストレッチ)クライミングパンツ(秋冬向け)


【アウター】
防風性能が高くバタつきが少ないものがおすすめです。今回は保温もしっかりできるアイテムを選びました。

  • 頭:モンベル/スーパーメリノウール バラクラバ
  • 上半身:ラフアンドロード/WSプリマロフト ポーラージャケットFP
  • 下半身:ラフアンドロード/WSプリマロフト ポーラーカーゴパンツLF
  • グローブ:ROM/ゼロスグラブ ヒート2
  • 靴:ソレル/カリブー WP


これらの装備で気温-16~2度の中を走行し、ほとんど寒さを感じずに走り切ることができました。

ただし気温が高い時(-1~2度ほど)は逆に暑さを感じてしまい、汗をかくシーンも。
服やシューズの内部が濡れると、汗冷えや凍結のおそれがあります。汗をかかないよう、気温に合わせて体温調節をするべきだったという反省点が残りました。

ちなみに、ブーツにはキャプテンスタッグの滑り止めスパイク『滑らんぞー』を装着しました。

例えば信号待ちの時に「おっとっと」とバランスを失った時、靴用のスパイクは最後の砦。あるとなしでは、踏ん張り度合いが大違いなのです。

また意外なことに、車道よりも歩道の方がツルツルに凍結していることは珍しくありません。
凍結路を歩き慣れない筆者のような人間は、徒歩の時こそスパイクがあると安心だと思います。

そのほかの持ち物

今回はすべての日程においてホテルに宿泊し、野営はしませんでした。
そのため持ち物に関しては、防寒アイテムを中心にご紹介します。

  • レインウェアのパンツ …下半身が寒い時や、激しいウェット路面だった場合の予備として
  • モンベル/スペリオダウンジャケット Women's …上半身が寒い時の予備として
  • ショーワグローブ/防寒テムレス …バイクに乗っていない時の手の防寒
  • 作業用手袋 …テムレスではできない細かい作業に使用


  • ベンジン …白金カイロの燃料
  • 白金カイロ …ベンジンで発熱する携帯カイロ。発熱に酸素が不要なため、防風性能が高いウェアの中でもポカポカに。使い捨てカイロの約13倍暖かいのも心強い
  • 使い捨てカイロ …気温が低い場所では、ナビやスマホなどの電池持ちが悪くなってしまう。使い捨てカイロを貼って温めて使っていました(動作や故障に関する保証はできません)
  • 靴下用カイロ …足の防寒が足りなかった時に使用


  • ゼロスグラブ ヒート2の追加電池&充電器 …バッテリー式の電熱グローブを使用したため、電池切れが起きないようにバッテリー&充電器を追加。詳細はこちらの記事をご覧ください

このほか3日分の着替え、洗面用具、大容量のモバイルバッテリー(スマホの充電用)などを持っていきました。

ヘルメットの選び方

ヘルメットに関しては、ウェアのように特別防寒性が高いアイテムを準備する必要はありません。
ただし防風性能が重要なので、ベストはフルフェイスヘルメットです。

ピンロックシートはマストアイテム

ヘルメットのシールドには、必ずピンロックシート装着をする必要があります。

ピンロックシートとは、シールドの内側に貼りつけてシールドを2重構造にする透明なシート。

冷たい外気と暖かいヘルメット内の空気の間に空間を作ることで、強力な曇り止め効果を発揮します。

冬の北海道はとても気温が低く、シールドが曇りやすい条件がそろっています。
ノーマルのシールドではたちまち目の前が真っ白に曇るだけでなく、そのまま凍ってしまうため使い物にならないのです。

ただしピンロックシートも万能ではなく、曇りを防ぎきれない場合もあります。
絶対に曇らせないためには電熱シールドを使うしかないのですが、製造しているメーカーが少なく高価なため、まだ使っている人が少ないのが現状です。

オフヘルメット+ゴーグルがおすすめできない理由

今回の年越しツーリングで筆者が使用したヘルメットは、SHOEIのEX-ZEROです。

フォルムはフルフェイスヘルメットに近いのですが、シールドが小さく完全に閉めることができません。
顔にビュウビュウと風が当たるため、機能的な意味ではオフヘルメットと同じようなイメージです。

実際に走って感じたのは、年越し北海道ツーリングにゴーグルは向かないということでした。
理由はふたつあります。

①隙間風が多い
氷点下の風は、寒いというよりもはや痛い!
今回はバイクに取り付けたスクリーンに頭まで隠れることができたので大丈夫でしたが、スクリーンなしでは耐えられなかったと思います。

②片手で開閉できない
特別なこだわりがない限りは、フルフェイスヘルメットの方が断然おすすめです。

ちなみに筆者の場合、EX-ZEROを使うために2点のDIY加工をしました。

1点目は、隙間風を減らすためのノーズディフレクターの装着。
正規品がないため、AraiのVクロス2用のノーズディフレクターを太いマスキングテープで貼りつけています。


2点目は、ダブルレンズゴーグルの入手と滑り止め加工です。
ダブルレンズゴーグルとは、その名の通りレンズが2枚取り付けられた構造のゴーグル。ピンロックシートと同じ仕組みで曇り止め効果を発揮します。

今回使用したのはスノーボード用のゴーグルですが、バイク用のゴーグルとは違い、バンド裏に滑り止めが付いていません。
そのためホームセンターでシリコン剤を購入して、DIYで滑り止めをつけました。

防カビ剤が入っていないシリコン剤を購入します。

 

マスキングテープを使ってまっすぐ平たく塗り広げ、乾燥させればDIY滑り止めの完成!

緊急時の対処も自力ですべし

年越し北海道ツーリングでは、トラブルが起きた時に極力自力で対処できるよう準備をしておくことも大切です。
というのも、年末年始はバイク屋やガソリンスタンドが休業したり、レッカー車の手配に時間がかかったりすることが考えられるのです。

筆者が用意したものは下記の通り。

  • シュラフ NANGA/オーロラ450と、AEDISMAX/WINDHARD …立往生や事故などで動けなくなってしまった時に暖をとるため
  • ガソリン携行缶 アストロプロダクツ/ボトルタイプ 1L&3L …年末年始、北海道では多くのガソリンスタンドが休業します。特にタンク容量が少ないバイクには必須アイテム
  • 誘導棒ライト&非常信号灯 …吹雪で前が見えなくなる “ホワイトアウト” が起きた時、他の車に存在をアピールして事故を防ぐため。ただし、走行中に点滅させるのはNG
  • アルミ毛布
  • 各種工具


  • 軽トラックサポートカー
    万が一自走できなくなってしまった時に、バイクを積んで避難できるよう4WDの軽トラックで北海道に渡りました。
    特に初めてチャレンジする場合は、どんなに念入りに準備をしてもトラブルがつきものです。
    なるべくバイク単身ではなく、(トラックとまではいかなくても)友人や家族にサポートカーを依頼することを強くおすすめします!

なるべく体力をつけておこう

最後にご紹介するのは、ライダー本人の技術と体力に関する内容です。

冬の北海道では、アイスバーン・新雪・ウェット・解けかけの雪、ガタガタの氷など…場所や状況によってさまざまなコンディションの路面が待ち受けています。
無事に走り切るためには瞬時に路面を判断し、スリップしたりやタイヤがとられたりしてもパニックを起こさず対処しながら、最後まで走り切る能力が必要です。

しかし残念ながら、筆者のライディングスキルは一般的。ずば抜けて高い能力は持ち合わせていませんでした。

そこで、普段から下記のような点を意識して過ごしていました。

①未舗装路を走ってスリップとガタガタ道に慣れる
②バランスボールで体幹を鍛える
③ランニングをして疲れにくい体をつくる

付け焼き刃ではありましたが、大きな事故なく無事に走り切ることができたのは、これらの準備があったからなのではないかと思っています。

いよいよ走り始めます!

──以上、年越し北海道のツーリングに向けて筆者がおこなった準備でした。
年越しツーリングの雰囲気を知りたい方や、装備に悩んでいる方の参考になれば幸いです。


次回の記事からは、いよいよツーリングレポートの本編をお送りいたします。
どうぞお楽しみに!

※冒頭でもお伝えしている通り、本記事の内容はあくまで一例です。バイクや人によって適した装備があるため、ご紹介した内容がすべてのライダーに当てはまるわけではありません。


【関連記事】
年越し北海道ツーリングに再挑戦:1 極寒を走るためのバイク装備をご紹介!
冬の北海道ツーリングでレッドバロンの電熱グローブ『ゼロスグラブ ヒート2』を使ってみた!
高木はるかの年越し北海道ツーリング:1 はじまりは寒波

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事