ボクサーツインの気持ちよさは下道で最大化、そして意外な発見に遭遇する

前回公開したvol.1では、私がBMWのR100GSを愛機に選ぶ経緯を振り返った。これに長年乗っている理由は、BMWのRシリーズが搭載するボクサーツインエンジンの鼓動感がとても気持ちいいから。これを味わうために気が向いた時に気の向くままに走り、私はヤングマシン編集長時代のストレスを打ち消していたのだ。

私の乗るR100GSが搭載するのはOHVボクサー。または、2バルブボクサーという直接は1970年代にルーツを持つエンジン。当時は高性能でも現代においては性能はそこそこ。古い分、鼓動感は強めなので、スロットルの開け閉めを繰り返すカーブのある一般道を走っている時が最も気持ちいい瞬間となる。

そういう道を探し続けて私の地元・千葉の道をひたすら走り回っていると思わぬ発見があり、これが今回のテーマになる。気ままな単独行動のショートトリップ、適当にグーグルマップでこれはと思う道を繋げて走るだけの行き当たりばったりだからこそ? 見つけられた食堂が「くにおか」だ。

くにおかの看板は、田んぼのあぜ道の入口にあるにはあるが、走っているとほとんど見つけられない大きさ。見つけられたとしても、そこにはまず行こうとは思えない砂利道が一本あるだけ。こんなに敷居の高いお店はなかなかないのだが、なぜか吸い込まれるように入口を曲がってしまったのだった。

最初にくにおかに行ったのは2015年のことだった。この看板は2021年6月頃のもので文字は「OPEN!」のみ。このあぜ道の先には何が待っているのだろうか!? とテンションが高まる。

あぜ道の奥のカーブを2回曲がるとくにおかが見えてくる。この日は、私を入れて満席で今や人気店になっていた。

くにおかは木~日の週4日営業で食事については予約制となる。事前にネットか電話で予約してから出かけたい。

ただ美味しいだけではない、気持ちも癒やされる「くにおか」

2015年に偶然たどり着いたくにおかは、里山の小さな食堂だった。千葉市に住んでいたご夫婦が移住して開いたそうで、地元店ではない。外観やインテリアは洗練されつつも木の素朴な温もりがあり、接客からお客を緊張させる要素が全くない。最初は入口から店までの距離に怯んでしまうが、内容は正反対だった。

ここではランチが食べられるのだが、食事のお昼膳は二種類あり、私は「ごはん膳」一択。土鍋で炊いたごはんと味噌汁におかずが七品。他にも塩豚のスライスがついている。食後のコーヒーまで含めて1870円と決して安い訳ではなく、かといって超高級な訳でもない。言ってみれば、とことんこだわった家庭料理という感じだ。

味はどれも優しさに満ちていて「美味しい」という味覚だけでは表し切れない。一品一品に手間と時間をつぎ込んで調理されたことが分かる既製品にはない素朴な味に、癒されるとしか言いようがない感想がこぼれる。

くにおかの立地は市原市という千葉県の中心地の隣ではあるが、あえて奥地へ、より不便なところへ引っ込んでいる分、店主の料理に対する気持ちが強いと感じる。不便な立地での生活と同じように料理にもとことん時間をかけ、儲けることなんか考えてないのかも知れない(そんなはずはないと思うが)。くにおかのそんな空気とやさしい昼膳が、仕事漬けの私を瞬間的に解きほぐしてくれたと思う。

ボクサーツインの鼓動を感じるために切り開いたルートの果てにくにおかがあったのは、何かの巡り合わせとしか言いようがない。バイクにも食事にも癒される素晴らしいツーリングコースだとつくづく思う。

2021年のごはん膳。地元の食材を素朴な味わいへ昇華するように料理し、一つ一つの「食べる」を何よりも大切にしたいというくにおか。その言葉通りの一膳だ。

現在くにおかでは、チョコレートも自家焙煎しておりこんなお楽しみも。左がペルー産、右がエクアドル産のカカオ豆を使用したもので産地によって異なる香りが新鮮だ。

>くにおかのホームページへ

くにおかを通過する千葉の秘境ルート!? 県道172号~32号

今回紹介したくにおかへは、東京の自宅から有料の京葉道路に乗って向かっている。ただし、vol.1にも書いたが、R100GSは一般道の方が楽しいので高速は最低限しか利用しない。千葉東金道路へ乗り継いで高田インターで降りたら、そこからはひたすら一般道で大多喜まで南下し、県道172号を西に向かうのが私が勝手に名付けた千葉の秘境ルートだ。

道幅が極端に狭くなったり、山の上から雄大な景色が見下ろせたりと東京から1時間半ほどの距離にあるとは思えない旅感覚が味わえるので、わざわざ伊豆や長野まで足を伸ばす気になれない。また、しつこいほど続く低速のカーブが、ボクサーツインを味わうのにちょうどいいのだ。

途中、月出工舎(つきでこうしゃ)という廃校を再利用したアート工房があり、そこにカフェ「ヤマドリ珈琲」が併設されている。施設もユニークだが、ここの珈琲はかなり評判がいいので是非味わってみたいと思っている。取材時はコロナ禍で営業を休止していた施設も10月からオープンすることが決定。くにおかへの道すがらヤマドリ珈琲が加わると、私にとって完璧な黄金ルートになるに違いない。

そしてくにおかに到着し、帰路は来た道を戻らずそのまま県道32号を西へ進み久留里に向かう。ここにはノマド女子が営む「たいやき晴」があり、夏を除いた季節に営業している。店主の晴さん(仮称)は、バイク乗りで、夏の間は北海道をツーリングする生活をもう10年ほど続けている。もう秋になったので、そろそろ営業を再開する頃だろうか……。

大多喜から県道172号に入るとすぐにこんな状況に。先に進むとガードレールのない部分やさらに道幅が狭くなる箇所もあって、冒険のような気分になる。

172号を西に進みくにおかの手前に現れるのが月出工舎。ここの統括ディレクターさんは私が長年探しているクルマを所有していて、初めて現車を見せてもらえたのも巡り合わせか。いつか売って欲しい。

くにおかを後にしてさらに西に進むと小湊鐵道の月崎駅を通過する。この駅は有村架純さんがSR400に乗り旅をする映画「夏美のホタル」のロケ地でもある。

月崎から32号線を西に向かう途中。ちょっと脇道に逸れるだけでこんな景色になる。この一帯は素掘りトンネル地帯として有名。

県道32号の終点、信号「久留里」のT字路にあるたいやき晴。夏に北海道へ行くためたいやき屋を仕事にしたという店主はバイク女子であり筋金入りのキャンパーだ。

私にとってのツーリングは線の中に出現する点

私は、自分をツーリングライダーと思ったことは一度もない。日常こそが旅の道のりで日常の中で違った景色を見たい思っているので、ツーリングに時間はかけない。また、目的は走ることなので、このくらいの行程で十分以上に満足してしまう。それでも線の中に点ができてくるのは面白い。線は少しずつ変化させているので、今後新たな点が見つかるかも知れない……、つまりこれこそが旅!?

172号から見るくにおか。今は住んでいない私の地元・千葉には奥地まで地元外の人が進出しているので意外な発見に事欠かない。

>私が編集長時代からBMW R100GSに乗り続ける理由【ボクサーツインって横に張り出してジャマじゃないの? vol.1】

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