2023年の大河ドラマ「どうする家康」で盛り上がりを見せている愛知県岡崎市から、前編に続いてお届けします。

徳川家康公の生誕地であり、大河ドラマ館のある岡崎城(岡崎公園)を後にして向かったのは松平家・徳川将軍家の菩提寺である大樹寺(だいじゅじ)です。

10代の家康公、桶狭間敗戦後の再起の地

大樹寺は、1560年に、家康公(当時19歳)が今川勢として参加していた桶狭間の戦いで敗れ、自領・岡崎に逃げ帰った場所です。

しかし野武士の一団に寺を囲まれてしまい、死を覚悟して自害しようとしたところ、住職の登誉天室上人(とうよてんしつしょうにん)から「厭離穢土 欣求浄土(おんりえどごんぐじょうど)=穢(けが)れた国土を嫌って、仏の世界を願い求める」の教えを受けて励まされ、切腹を思いとどまったことから家康公再起の地として知られています。

境内には、松平家8代の墓(家康公は松平家9代目)や家康公の祖父・松平清康公が建立した多宝塔が残り、こちらは国の重要文化財になっています。なお、松平家は三河国加茂郡の松平郷(現在の愛知県豊田市松平町)が出自とされています。
また、三代将軍家光公の夢に現れた家康公の姿を絵師に描かせた「東照大権現霊夢像」を立体化した石像も建立されています。目がコワイです、目が…。
なお、大樹寺の総門・三門(下写真)・本堂は岡崎城の天守閣と南北一直線上に作られており、約3kmの直線は「ビスタライン」と呼ばれています。大樹寺が当時からかなりの勢力を誇っていたことを伺い知ることができます。
ちなみに、総門は大樹寺の正面にある大樹寺小学校の校庭の先に見えています。お寺の敷地の中に小学校が建ってるってすごいですね!
ところで、大樹寺には立派なバイク置き場があります。しかも無料! クルマは有料なのに… バイクは無料! 感謝感激!

岡崎市郊外の山中にたたずむ禅寺に伝わる伝説

岡崎市街地のスポットはここまでとして、次に向かうのは山中の禅寺の雰囲気をよく残している臨済宗妙心寺派の天恩寺(てんおんじ)です。室町時代(南北朝時代)の1362年、室町幕府3代将軍の足利義満が祖父・尊氏の遺命で建立したと伝わる名刹です。

ここには、家康公にまつわる「見返りの大杉」が立っています。
1575年、家康公が長篠城救援(長篠の戦い)のために出陣し、天恩寺に一泊して戦勝祈願をしましたが、その際、本尊の延命地蔵菩薩が「家康、家康」と呼び止めます。

家康公が驚いて振り返ると大杉の陰から武田軍の間者が矢を射かけるところでした。危うく難を逃れた家康公は礼拝ののち何度も大杉を見返りながら長篠の戦場に向かったと伝わっています。
見返りの大杉は岡崎市の指定文化財かつ天然記念物で、樹齢は450年ほどだそうですが、すごく元気そうでした。全体を眺めるなら石段を登った仏殿側からが見やすいですね。

現存する日本最古の薬医門(やくいもん)形式の山門と、入母屋(いりもや)造りの仏殿は共に国指定の重要文化財です。
観光客が押し寄せるようなお寺だと、修復が真新しいような建物をよく見ますが、天恩寺の山門と仏門は程よい具合です。

家康公が立ち寄った時点で築200年以上だったわけですが、往時の空気感を漂わせている建物です。虫食いの状態や石段のゆがみ具合など、本物志向の方にはかなりオススメです。
なお、天恩寺のバイク置き場は、県道37号線に面した広々とした駐車場です。キレイな公衆トイレもあって利用しやすいです。

三河エリアの良質なワインディングを楽しもう!

さて、最後は3ケタ県道と国道を走りつないで、山中にある三河湖(所在地は豊田市)へ向かいます。県道334号(上写真)は一気に標高を上げる区間など変化があって楽しめました。

ところで、山奥に進むほどに驚いたのが道路の舗装状態のキレイさです。さすがは自動車王国・愛知県ですね。当日は雨が降り続いていましたが、路面を気にせずに走れるというのはバイクにとってすごくありがたいことです。
三河エリアの山中には趣のある集落や場所もたくさん見られましたが、ほとんど観光地化されていない印象です。岡崎市の額田(ぬかた)地区などには、昭和以前のレトロな雰囲気が感じられるスポットが点在していました。

ツーリングの最後は、景勝地・三河湖へ

岡崎市から豊田市に入り、快適な国道走行をはさんだのち、県道363号で標高を一気に上げていくと、やがて三河湖に到着しました。遠くの山がガスっていますが、これはこれで良い雰囲気です。
ダム湖百選に選ばれている三河湖の別称は、羽布(はぶ)ダム。1963年に、農業用の利水ダムとして巴川の支流をせき止めて造られました。三河湖からの水は岡崎市内の一部にも使われているようです。
車両も通行できる天端(てんば)からの光景はなかなかの迫力です。

いかがだったでしょうか。岡崎市内から県道37号線で東に向かい天恩寺へ。そこからは県道334・333と走りつなぎ、途中で快適な国道301・473号をはさんで、最後は県道363号線のワインディングで三河湖へと至りました。

山深いルートですが、適度なアップダウンと心地よい道路線形、そして何より状態の良い舗装道路のおかげで楽しいツーリングルートになっています。ぜひ、家康公の足跡と併せて岡崎・三河ツーリングを楽しんでくださいね!

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