ジンギスカンって、おいしいですよね。本場は北海道だとお考えの方が多いと思いますが、民話の里として知られる岩手県遠野市でも、70年以上も前から市民に愛されてきました。人口約2万5千人の小さな市なのに、ジンギスカンの専門店は10軒以上! うまいジンギスカンを目当てに県外から訪れる客も多いという、ジンギスカン王国なのであります。
旧友Tと37年ぶりにツーリング
『ForR』で2023年5月6日に公開した記事「C125を購入し〈37年ぶりにリターンライダー〉となった旧友に指導(!?)を頼まれたのだが果たして」。たくさんの方にお読みいただきました。ありがとうございます。
その旧友Tも、リターンライダーとなって約半年が経過。「そろそろC125で本格的にツーリングがしたい」とのこと。よっしゃ、ならば付き合ってやろうじゃないのということで、旧友Tの暮らす岩手県盛岡市から遠野市まで、我がXSR700と旧友のC125で日帰りツーリングすることに。
遠野に着いたら、まずは国の重要文化財、約200年前に建てられた「南部曲り家 千葉家」の前で記念写真。平成28年から保存修理工事のため閉館中ですが、大切な馬と人間が一緒に暮らすための工夫が施された歴史的建造物ですので、詳しい話はいつかまた。
ちなみに岩手県盛岡市から遠野へは、ゆるやかなカーブが続く国道396号線(旧釜石街道)で向かいました。排気量700㏄と125㏄ではパワーの差があるものの、国道を制限速度で走っている限り、何の問題もありません。
しかも北東北の3ケタ国道ですから、信号機のある交差点も少ない。走り出せば、次の赤信号で停められるまで、けっこうな距離をノンストップで走り続けられます。
盛岡から遠野までの約65㎞を、秋のローカルでのどかな風景を眺めながら、わずか1時間ちょっとで走り切ってしまいました。
遠野といえば、ジンギスカン
さあ、遠野ジンギスカン、食うぞ!
向かったのは遠野ジンギスカン文化発祥のお店、「ジンギスカンのあんべ」。
以前、食べに来たときは、店舗が古く歴史を感じさせる佇まいでしたが、2023年10月20日、店名を「じんぎすかんあんべ」に変更し、フルリニューアルオープン。訪ねたのはその2日後、しかも日曜ということもあって激コミ! 席に案内されるまで約90分かかるということで、断念。
遠野にジンギスカンが根付いたのは、このお店の創業者のおかげ。戦時中、旧満州(中国東北部)で羊肉のおいしさを知り、昭和30年にお店を開業したのが始まりなんだとか。
「あんべがダメなら、食肉センターさ行くか」と旧友T。
「んだな、そうするべ」と筆者。
食肉センターとは、ジンギスカンのお店「遠野食肉センター 」のこと。その遠野本店が、すぐ近くにあるのです。
こちら「遠野食肉センター」も、創業60年の老舗。
もともと遠野地方は、羊毛を手つむぎして織るウール織物「ホームスパン」が盛んで、ヒツジの飼育が多かった土地。新鮮な羊肉を手に入れやすかったことから、家庭での食事や地域行事の際の料理として、ジンギスカン文化が広まっていった、とのことです。
こちらのお店も客がいっぱい。10分ほど待たされて、ようやく席へ。
お店の方が、ジンギスカン鍋を火にかけながら、「タレはよく振ってからお使いください」と。化学調味料や合成保存料を使っていない、自家製タレ。よく振ってから、というのは、おそらくリンゴや玉ねぎやニンニクやショウガなどがいろいろとたっぷり入っているから、ということなのでしょう。肉への期待も高まります。
生ラムだから「うまいっちゃ!」
さて、何を頼むか。ごはんと味噌汁と小鉢がセットになった〈遠野じんぎすかん定食〉は5種類あります。生ラム肩ロース定食、生ラムショルダー定食、生ラムランプ定食、味漬けラムモモ定食、味漬けラムショルダー定食。どれも肉の量は120gで、お値段は1,580~1,980円。
来た来た~! テーブルに運ばれてきたのは、筆者と旧友Tが頼んだ生ラム肩ロース定食と、生ラムランプ定食。
遠野食肉センターは精肉店も営業しているので、鮮度バツグン。特に「生ラム」は新鮮さが違うのです。それにしても肉が厚い!
ジンギスカン鍋は、やっぱり地元の南部鉄器かなあ、などと思いつつ焼いては食う、焼いては食う。うますぎてトングも箸も止まりません。
ラム肉は分厚く切られていますが、肉の繊維を裁ち切るように包丁を入れているので、噛み応えは柔らか。噛むたびにラムの旨味が口に広がり、ごはんが進む進む。自家製タレも絶品です。
遠野ジンギスカンは、ラム肉をタレに漬け込まず、そのままの状態で出されるのが基本。味付けされていない肉を焼いて、タレをつけて食べるスタイルです。
これは肉が新鮮だからこそ、できること。鮮度の悪い羊肉は臭みが出て、こうはできません。
いやあ、うまかった。あっという間に完食です。
ところで、この「遠野食肉センター」。メニュー表を見ると、ロースやショルダーなど〈ラム肉〉の他に、〈ラムホルモン〉なんてものも。羊肉のタン、ハツ、イブクロがいただけるんですね。羊肉のホルモンなんて初めて知りました。これは今度、注文しなくちゃ。
道の駅「遠野風の丘」
腹ごなしにバイクでブラブラ。大きな風車が目印の、道の駅「遠野風の丘」に立ち寄ります。
館内では〈ジンギスカンバケツ〉が売られていました。これは先述した「あんべ」の二代目が昭和30年代に考案したという、野外用ジンギスカン・アイテム。
鍋とバケツと固形燃料、すべて買っても4,470円。バケツに開けられた穴は、試行錯誤の末に大きさや数が決定した空気穴。固形燃料で熱したとしても充分な火力が得られるように考案されたのだとか。
こういうものが売られているとは、さすがジンギスカンの町、遠野です。
道の駅「遠野風の丘」は観光案内・道路情報はもちろん、遠野の農産物を直売する物産ホールやレストランを完備。
秋ですからリンゴが安く豊富に売られていました。
さらには、鹿の角まで! 道の駅って、その土地がどういうところなのか、学べる場所でもありますね。
トオヌップ(高清水)展望台
遠野で最後に立ち寄ったのは、遠野の町を一望することができる高清水展望台。通称「トオヌップ展望台」で、トオはアイヌ語で〈湖や沼〉、ヌップは〈丘〉のこと。
国道を離れて山道を分け入っていくと、道端でヤギが飼われていたりして、のどかな雰囲気。
日が差さず、ジメジメした細道をくねくねと登っていくと、やがて見晴らしのいい牧場に出ました。
さらにバイクで駆け上がれば、高清水展望台に到着。
トタン屋根の古い小屋が、展望台です。中に入ると、こんな景色が。
旧友Tと、37年ぶりのツーリング。遠野にジンギスカンを食べに行って、最後に遠野の全景を眺めて。いいツーリングになったなあ…。
C125を購入して半年が過ぎた旧友T。また今度、どこかへ行こう。来年かな?
「スゴー君よお、俺、来年になったら…」
「どうしたT」
「来年、大型自動二輪の免許を取ろうかな」
よくぞ言った、T。すっかりバイクにハマったな!
旧友Tのバイクライフは、ここからますます花開いていくんだなあ。なんてことを想いながら、C125とXSR700は盛岡への帰路につくのでありました。どんとはれ。
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