日本のモータリゼーションの発展にともない、一般家庭にマイカーが普及していった昭和40年代。クルマを手に入れたら、どこかに行きたくなる。遠出をすれば、お腹もすく。じゃあ、どこで食事をする? というような需要が大量発生し、全国各地に生まれたのがドライブインです。今ではめっきり減ってしまった業態ですから、ツーリング先で見つけた時は、つい利用しちゃうのですよ。懐かしいよね、ドライブイン。
バイク神社のすぐそばに!
栃木県宇都宮市の東に位置する、高根沢町。この町に「バイク神社」があると聞き、いったいどんな神社なのかと行ってみた、というのが前回のお話。
今回ご紹介するドライブインは、そのバイク神社からバイクで2分、距離にして650mしか離れていない場所にありました。
栃木県道64号線・宇都宮向田線と、栃木県道156号線・石末真岡線がまじわる「上高根沢」交差点に面したドライブイン大泉(だいせん)。
お店は大きくないんですが、駐車場がやたらと広い。近くに工業団地があるので、大型輸送トラックに乗る利用客が多いってことなんでしょうね。
昔は大賑わいだったような風情がプンプン匂ってきますが、いまはひっそり。さっそく入ってみます。
懐かしき昭和の空気が今も
21世紀になって24年も経つのに、店内の雰囲気は前世紀。平成をすっ飛ばして昭和のまま。懐かしさに気持ちが安らぎます。
席に着けば、目の前には古ぼけた灰皿。昭和の大衆食堂は、どこもそうでした。注文した料理を待つ間に一服し、食後にまた一服。あのころはそれが当たり前でした。
メニューも昭和のまま
さて、何を注文しようかな。
壁に張られた献立表を見上げると、元は白い紙だったはずが完全なセピア色に。
ラーメン450円、チャーシューメン500円、肉丼600円って、安っ!
おひとりで店を切り盛りしていたご主人は不愛想でしたが、根はやさしい人っぽくて「書き換えるのがメンドくさいから、値段はずっと昔のまま」と教えてくれました。
このあたりに宿を取っているんだったら夕方やってきて、漬物100円を突っつきながらビール600円をグビリとやって、おでん定食600円とコップ酒300円で幸せに浸るところですが、お昼なので肉丼にしときましょう。
で、運ばれてきたのはこれ。
肉丼、600円。
厚めの豚肉をタマゴとじにした豚丼のほかに、さつま揚げや根菜がたっぷり入った味噌汁、その他に付け合わせの小皿が3種類。
「小皿は日替わりだから、その時あるもので出すからさ」とご主人。600円でこれだけ食べられるなんて、ありがたやー!
コロッケの横には昔懐かしい赤スパと千切りキャベツ、左奥の小皿は冷やし中華用に用意してあったであろうキュウリと薄焼き玉子のマヨネーズ添え、そして冷ややっこ。これだけでも白飯が食えるってもの。
肉丼は、カツ丼や親子丼の味付けに通じる、想像通り、期待通りの味。どんぶりワシづかみにしてバクバク食えちゃうやつ。三つ葉やナルトがいいアクセント。七味をたっぷりかけて一気に食いました。
デジャブな空間があちこちに
客が筆者以外にいなかったので、食後はご主人とおしゃべりを。
ご自分は二代目で、昔は駐車場の横の建物で地元の採れたて新鮮野菜なんかも販売していたそうです。
車の駅だいせん無料休憩所と書かれてありました。今は使われていませんが、けっこう大きな建物。昔は賑わったんでしょう。
建物の中には、かつてオートスナックだった無人食堂も。
「27秒で出てくる天ぷらうどんの自販機とか、アルミで包まれてるホットサンドの自販機とか、置いてたんですか?」
「そうそう(笑)。今はもう業者がなくなっちゃって、機械が壊れたらそれっきりだから」
今も稼働しているのは、缶飲料の自販機のみ。それでも、屋根のある巨大な空間が自由に使えるのはありがたいです、僕らライダーにとっては。
「ライダーの人は、よく利用してるよ。雨の日、屋根の下でカッパを着たり。あとは近所で働いてる人がタバコ休憩に来たり」
ドライブイン大泉。始めて来たのに、懐かしさや親しみを覚えます。デジャブってやつですね。過去のツーリング体験の中から類似した記憶がよみがえり、既知感に包まれるのでしょう。
古いドライブインの魅力は、そんなところにあるのかも知れません。
みなさんもバイク神社(安住神社)の帰りに、ぜひ!
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