まるでカブのような存在!?
雑誌屋から大胆なジョブチェンジを行い、目指すは峻険なる東洋医学の山脈。自分自身は入り口に立って興奮しておりますが、一般的な人にとって,その世界はどう映っているのか? 少々気になったので大学時代の友人やライダー仲間に、改めて『東洋医学について知っていること』を尋ねてみると……。
「ええっと、ツボっていうところにハリを刺すと元気になるとか?」「最近NHKの番組でよく取り上げられていますね」「葛根湯(かっこんとう)と言う名前の漢方薬が風邪に効くことは知っている」「街で看板をよく見かける整骨院って関係あるのかな? どうなの!?」「う~ん東洋、トウヨウ……広島カープは関係ないよね」などなど、とてもフワッとした回答が返ってきました。
何となくではあるけれど広く浅く認知はされているようです(笑)。多くの人がその存在を知っているけれど実際に体験する機会は意外と少なく、しかしいざ経験をしてしまうと奥深さや面白さに夢中となってしまう……。まるでスーパーカブのようだなぁ、と個人的には思っています。
体に優しく働きかける伝統医学
辞書によると「東洋」とはアジア諸国の総称。そこで発生・発展してきたオリエントな医学なのですから広義にはインドのアーユルヴェーダ、イスラム圏のユナニ伝統医学、中国、韓国、モンゴルほかの伝統医学、そして日本の漢方などをまとめてそう呼ぶことも……。
ただし、筆者が現在学んでいる「東洋医学」とは、古代中国に発生した医学理論&技術をルーツに日本で独自の進化を遂げてきた伝統医学のこと。鍼灸、あん摩マッサージ指圧、漢方薬なども含めた「日本の伝統医学の総称」と定義して、以降ご紹介していきたいと考えております。
世界は多様な「気」にあふれている
さてここで突然ですけれど、アナタが現役バリバリのライダーだとしましょう。レッドバロンで購入したばかりの相棒はすでにガレージへと収まり、待ちに待った週末まであと数日というとき、最大の関心事は何ですか? ……そう、天気ですよね(あえて例外は認めません)。
ではお聞きします。天気の「気」って何のことでしょう?
「やる気! 元気! スズキ!」とはスズキのプレス向け新車発表会で必ず聞いたフレーズですが(笑)、ほかにも陽気、気象、磁気、病気、負けん気、移り気、気になる、気配り、気を回す……。ワンピースなら覇気、北斗の拳では闘気などなど、切りがないくらい「気」を含む言葉は我々の身のまわりにあふれています。それはそう、まさしく空【気】のように。
ですが、具体的にしっかり説明できる人は少ないのではないかと思われます。かくいう私も少し前まで「亀仙人が放つ、かめはめ波の原材料?」くらいの認識で、チコちゃんに叱られても致し方ナシ男でありました。
万物が有するエネルギーが「気」
またまた辞書をひもとけば、「気」の欄には、①息、呼吸 ②意識 ③物事に反応する心の働き ④精神の傾向 ⑤天地に生じる自然現象 ⑥匂い ⑦様子、趣きetcetcといった多彩な意味が列記されています。
往年から日本では「気=精神力」と考える向きも多いのですが、古代中国の思想をベースにした東洋医学がいう「気」にはもっと広い意味があり、この世にある「ありとあらゆるものが有しているエネルギー」とも「人体を構成し、生命活動を維持する極めて細かい物質。かつ機能を表す言葉」とも定義されています。
目には見えないけれどちゃんとあり、心と体の健やかさへも深く関わるエネルギー……気。この気を整えることが健康を維持するため非常に重要で、鍼やお灸、あん摩マッサージ、漢方薬などは、人体を流れる気を活性化させたりスムーズに流したりするのに、とても有効な手段たりえるのです。
なお、心と体は本当に強く結びついており、ストレスなどで過度に意気消沈すると胃を中心とした消化器系にすぐ悪影響が出てきます。かくいう例は枚挙にいとまがなく、それを思えば我々が物心ついたときから慣れ親しんできた「病は気から」という慣用句にも深く納得ができるのではないでしょうか。
人体の「ハーネス」に気を巡らそう
バイクで言ったら電装系が、体を循環する気の流れというイメージに一番近いのかもしれません。目には見えない電【気】は火花や光、熱、各種回路の制御ほか様々な状態へと変化して走行をしっかりサポートしてくれますよね。車体各部に張り巡らされたケーブル……ハーネスの断線などによる不具合で電【気】の流れが滞ると満足に走れなくなる。人間ならこれが病気の状態なのです。
「何だか調子が悪いな」「スッキリしたい」「気分を変えよう」というときに誰でも手軽にできてオススメなのが腹式呼吸です。お腹をへこませながらゆ〜っくり息を吐き、吸い込むときも鼻からゆっくりとお腹を膨らませるように……。鬼滅の刃よろしく「全集中」で行えば(笑)、数分もしないうち体がポカポカになってリラックスでき、気の滞りもほぐれていきますよ!
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