バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は坂道発進が苦手なライダーにうれしい電子制御『ヒルホールドコントロールシステム』だ。

そもそも『ヒルホールドコントロールシステム』とは?

メーカーやシステムの世代の違いによって、ヒルスタートアシストとか、ビークルホールドコントロールといったりするが、ここではそれらを集約して『ヒルホールドコントロールシステム』と呼ぶことにする。

『ヒルホールドコントロールシステム』は、坂道など傾斜した場所でブレーキをかけて停止し、そのままブレーキレバー(ブレーキペダル)を強く握るとシステムがONになり、ABSユニットがキャリパーにかかる油圧をロック。ブレーキレバー(ブレーキペダル)をリリースしてもブレーキのかかった状態が続くので、“次の発進までブレーキレバー(ブレーキペダル)を操作し続ける必要がない”という電子制御システムだ。

『ヒルホールドコントロールシステム』のシステム概要を文章にするとなんだか複雑だが、動画で見てもらった方がてっとり早いので、ドゥカティのムルティストラーダV4sにヤングマシンの企画で試乗した時の動画をまず見て欲しい。『ヒルホールドコントロールシステム』についての説明は9分30秒くらいからだ。

車両メーカーによってシステムが作動する傾斜の角度が違ったり、解除方法が“ブレーキレバー2回握り”だったり、秒数管理だけだったり若干の味付けが違うものの、『ヒルホールドコントロールシステム』はどれもほぼ同様の効用・操作方法と思っていいだろう。

 

ヒルホールドコントロールシステム

IMUなどを使ってバイクの停止と傾斜を感知し、ABSの油圧コントロールシステムを使って後輪ブレーキのロックを保持する。この『ヒルホールドコントロールシステム』は、電子制御スロットルCANを搭載するモデルに搭載が進んでいる。

『ヒルホールドコントロールシステム』のここがスゴイ!

坂道発進がものすごく簡単になる!

『ヒルホールドコントロールシステム』最大の効用は、みんなキライな坂道発進の克服にある。教習所時代に誰もが苦労し、多かれ少なかれ苦手意識を感じるのが坂道発進である。というのも坂道発進はとにかく、操作が複雑で緊張感を伴うからだ。その作業を箇条書きで書き出せば……

①坂道の途中で停車後、②バイクが後ろに下がらないようにリヤブレーキを踏みながら、③スロットルとクラッチレバーを操作し、④徐々にリヤブレーキを解除しながら、⑤バイクを前へ進ませる……ということになるが、同時に②③④を行う必要があり、ギヤチェンジ操作やスロットルワークを覚えたばかりの初心者にはとても難しく感じるのだ。ところが『ヒルホールドコントロールシステム』を搭載したモデルなら、②と④の作業をバイクが勝手に行ってくれるため、ライダーは①③⑤の作業にだけ集中すればよくなる。

ヒルホールドコントロールシステム

停止後、強くブレーキレバーを握ると後輪ブレーキがロックされ、発進すると自然にブレーキのロック解除されるのが、『ヒルホールドコントロールシステム』の大まかな仕組み。

 

考えてもみよう。③の“スロットルとクラッチレバーを操作”だけでも、繊細なスロットルワークとクラッチレバー操作が必要であり初心者のうちはエンストの可能性がある。それをいつもより足つきが悪い坂道で行うとなれば発進作業のハードルはそれだけでかなり上がる。加えてバイクを左足だけで支えながら、“スロットルとクラッチレバーを操作”と同時に右足はブレーキをペダルを微妙な加減でリリースする必要があり、しかも失敗すればエンストするのはもちろん、最悪バックしながら転倒するかもしれない……なんてプレッシャーもかかってくる。

まぁ、バイクに乗ってるうちにこれらの操作は何も考えずに自然と行えるようになるのだが、免許取りたての頃はそうはいかないもんだ。なんせ操作の手順を頭で考えながら一つ一つ行うことになるため、両手と右足で複数の操作を並行して行う必要がある坂道発進はパニックを起こしやすいのだ。ましてやバイクが重く大きかったり、足着き性が悪かったりすれば尚更である。

そんな場合にも、『ヒルホールドコントロールシステム』搭載モデルなら、停止中にブレーキペダルを踏み続けたり、絶妙な加減でリリースする必要がなく、スロットルとクラッチの操作だけに集中すればいいというわけ。

ヒルホールドコントロールシステム

『ヒルホールドコントロールシステム』作動中はメーターのインジケーターが点灯するようになっている車両が多い。またシステムそのものを解除して作動しないようにもできるモデルが大半なので、必要ないというライダーは解除しておこう。

 

地味だがものすごく実用的な『ヒルホールドコントロールシステム』

実際使ってみると、『ヒルホールドコントロールシステム』の自然なブレーキリリース具合に驚かされる。決して後ろに下がるような気配がないまま自然な坂道発進が可能なのだ。もし免許を取ってしばらく経つけど、未だに坂道発進に苦手意識がある……、もしくは足着きが悪くてマシンを支えたり、踏みかえたりするのに苦労しているというライダーは『ヒルホールドコントロールシステム』付きのモデルの購入を検討してみると格段にバイクが楽しくなるかもしれないぞ!

特に足着き性が悪いバイクに『ヒルホールドコントロールシステム』が搭載されていると、それなりにバイク経験がある僕らでも、その快適さを実感させられるし、操作も“強めにブレーキレバー(ペダル)を握るだけ”なので、長めの信号待ちなどで何気なく使える便利な機能であると感じる。

ただ、この『ヒルホールドコントロールシステム』の注意点としては、駐輪場などで取り回し時にも作動してしまう場合がある。駐輪場などのクローズドな場面なら、自動解除されるまで30秒待ったり、一度イグニッションオフにすればいいのだが、路上でスイッチバック転回をしている最中などに不意に作動してしまうと焦りやすい。“ブレーキレバー2回操作”などの任意解除方法も事前に取扱説明書で調べて習熟しておこう。

 

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