長生きのカギを握るのは強靱なハート♡!

「120歳 現役ライダー」を実現するためには、とにもかくにも、その日まで元気ハツラツに生きていなくてはなりません(笑)。

しかし、視力、聴力、筋力、判断力、記憶力……華麗に加齢を重ねるたび、全身の生理的機能を減退させていく“老化”や、死神の所業か痛みや苦しみとともに、リアルにライフを削って強制終了しにくる“命にかかわる病気”などが健康長寿ライダーの達成を執拗に妨害してくるのです。

筋トレするおじさんのイメージイラスト

●「人類が“自然”に生きた場合、本来の寿命は37.8歳」。DNA情報を最新技術で解析したところ、そのような結果が出たとか。しかし一方で、「日々鍛錬して養生すれば人間の寿命は100〜175歳、通常120歳」という説も。この連載ではもちろん後者を熱く支持し、目標にしたいと思います!

 

今回から少しだけ趣向を変え、幾久しくバイクに乗り続けるために知っておきたい人体各部の仕組みについて、東洋医学修得のため解剖学や生理学などを学び直している、いちバイク好きの視点からご紹介していきましょう。

まずは、生きている限り常に動き続ける、逆に言えばストップすると現世からオサラバという最重要な胸腔内臓器【心臓】についてです。

“心臓”が止まれば体もバイクもジ・エンド

アナタの生物学的なご両親が“契り”を交わし、卵子と精子が奇跡的に出会って受精卵となるやドカスカと倍々ゲームで細胞分裂がロケットスタート。3週目の終わりごろには機能する器官として心臓が最初に形成され、ドックンドックンと拍動を開始するのです。

胎児のイメージイラスト

●お母さんのお腹の中で、魚類→両生類→爬虫類→哺乳類という人類進化の歴史を再現するとも言われる胎児。生命というのは本当に神秘的です……

 

それから約9ヵ月間で37兆個(!)まで増えた細胞をまとってアナタは生まれ落ち、それなりに波乱万丈な人生を送り、少しできた空き時間で「For R」サイトをのんびり眺めている今この瞬間に至るまで、実年齢+胎内約9ヵ月もの間、アナタの心臓は1秒たりとも休むことなくリズミカルに血液を全身へ送り続けてきました。そしてこれから先、命の炎が燃え尽きる瞬間まで動き続けます。

よくバイクのエンジンを心臓にたとえる表現が雑誌や映像作品などで使われていますが、こと耐久性やメンテナンスフリーぶりに関しては比べることすらおこがましいレベル。お母さんのお腹の中からずっと24時間レース(1日だけで拍動数は約10万回!)をピットインすらしないで走り続けている無敵無双のパワーユニットなのですから。

ただ、その心臓の構造はバイクの4サイクルエンジンと似通っている部分も見受けられるのです。

心臓もエンジンも「弁」の働きがとても大切

シリンダ-の内部をピストンが上下し、ガソリンと大気がミックスされた混合気を吸気→圧縮→燃焼→排気することによりバイクを駆動するパワーを生み出しているのがエンジン。

燃焼室へ混合気を流入させ、高い圧縮力が発生しても漏れ出すことを防止し、燃焼が終わった排ガスを速やかにエキパイへと送り出す精緻なる働き。それらをつかさどっているのが燃焼室の上部に設定された弁……吸排気バルブです。

刀のエンジン

●スズキKATANAの998㏄水冷4サイクル直列4気筒DOHC4バルブエンジンの透視図。1ℓの牛乳パック同等の排気量からウマ148頭分のパワーを生み出すために(148ps/10000rpm)、合計16個の“弁”が爆発的に燃焼する混合気を緻密に制御しているのです

 

対して心臓にも4つの弁があり、それらが血液の逆流を防ぐことによって体のすみずみまで栄養と酸素などが運ばれていくのです。

ご存じのとおり心臓には4つの“部屋”があります。「生物」の授業を思い出してください(笑)。

心臓のイラスト

●体を巡ってきた静脈血は肺へと送られ(肺循環)、肺から戻ってきた動脈血は左心室から全身へと拍出されます(体循環)。すぐ近くの肺に血を送る右心室より全身に血を押し出さなければならない左心室の筋肉はとても分厚くなっているのです。なお、イラストだと静脈血は青色になっていますが実際には暗赤色。対してガス交換が終わった動脈血はとても鮮やかな明るい赤色となります

 

全身を巡って酸素と栄養を供給し、疲れ切って戻ってきた色も暗い静脈血が集まる「右心房」と、スカスカなその静脈血を肺へと送り出す「右心室」が前半戦の主役です。肺ではバイクのラジエターが行なう熱交換のように、主に酸素を中心とするガス交換が行なわれ、「左心房」に元気いっぱいになった動脈血が集められます。そして、その鮮血を心臓の中でも一番強力なポンプである「左心室」がドックン!と全身へと送り出すのです。

心臓にカムシャフトはもちろんありませんが、それぞれの部屋を区切る“弁”は各心室&心房が絶妙な連携を取り合う筋肉の働きによって、規則正しくも美しい開閉動作を遂行しているのです。

「ドックン!」は心臓の弁が開閉する音

アニメや映画で緊迫したシーンなどで前述の「ドックンドックン……」と表現される心臓の音が効果音として多用されていますが、あれはまさしく心臓の中の弁がドアを閉めるようにバタン!と閉じるときに発生するサウンド。

ちなみに「ドッ!」は僧房(そうぼう)弁、三尖(さんせん)弁という弁が閉じる音、「クン」は大動脈弁、肺動脈弁が閉じる音。お医者さんは聴診器でこの音を聞くだけで心臓周辺に潜んでいる病気の存在を察知できるのですから、本当にすごいですね。

心臓の弁を紹介するイラスト

●非常に大ざっぱにイメージをするなら、逆さまになったパラレルツインの灯油ポンプ……といったところでしょうか。手でムギュッとつぶす部分が右&左の心室。全身を相手にする左心室のほうが仕事が大変なぶん、分厚い筋肉で形作られています

心臓の若さを保つのはアナタ自信の努力!?

30年以上前の2サイクルエンジンや40年以上前の4サイクルエンジンでは、「焼き付き」や「オーバーヒート」などのトラブルで壊れることもたまにありましたが、イマドキのモデルは定期的なメンテナンスと常識的な使用方法を守る限り、機械的なトラブルが本体に発生することは皆無と言っても過言ではございません(今や電装系の不具合のほうが多いはず)。

対して心臓は健康体でいる限り10年、20年、30年は放っておいてもトラブルなく動いてくれることがほとんどですが、それ以降の年月を重ねると日頃の生活習慣によって、不具合の発生確率が低いままだったり跳ね上がったりと、大きく変化していくのです。

そのあたりを次回はご紹介していきましょう! (後編へつづく)

神門のツボイラスト

●手の少陰心経「神門」は心臓の痛みや動悸、不眠、物忘れほかに効くツボです。手のひらのすぐ下、小指側の端にある凹みがそれ。神経が高ぶって眠れないときなど、揉みほぐしたりセルフ灸などを試してみてください

 

> 120歳まで乗り続けるために〈第11話〉 ライダーのための「不定愁訴について」

> 120歳まで乗り続けるために〈第13話〉 「体のエンジン:心臓(後編)」

> 120歳まで乗り続けるために〈第14話〉「体のエンジンオイル!?:血液(前編)」

 

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