ホンダのCRF250L、CRF250ラリーだけでなく、2024年末にはカワサキからKLX230、KLX230シェルパが登場。2025年には久々の400ccクラストレールとなるスズキ・DR-Z4SやKTM・390エンデューロRが登場し、ヤマハも2026年1月から久々のトレールモデルとなるWR125Rを発売!!
こんな感じで近年にわかに盛り上がりつつあるのがオフロードバイクというジャンルだ。ただこのオフロードバイク、いざ始めようとするとちょっとばかし特殊でエントリーユーザーにはわかりにくいことも多い。そこでオフロードバイク遊びをするためのハウツーや用語を毎回少しずつ紹介していく本企画。今回はオフロードバイクの種類、ジャンルのお話で、『ビッグオフ』とはなんなのかを説明していこう。
その名の通り『ビッグオフ』は大きなオフロードバイク

かつて逆輸入車として発売されていた660ccの単気筒エンジンを搭載したヤマハ・XT660Rは大排気量による分厚い低速トルクがその持ち味。 モタードモデルのXT660Xもあり、筆者は2005年モデルへの試乗経験があるが、 エンジンの一発一発の鼓動感が感じられるようなキャラクターで、スロットル操作ひとつで軽々とフロントタイヤが浮き上がったのを覚えている。
『ビッグオフ(ビッグオフローダー)』、直訳すれば“大きなオフロードバイク”ということになるが、いったい何が大きいのか? これはズバリ排気量のことだ。ナンバー付きのトレールバイクをはじめとするオフロードバイクは、フロント21インチ/リヤ18インチホイールを持つモデルがフルサイズの車格とされているものの、排気量に関しては250ccクラスが一般的。これは舗装路のロードセクションはともかく、滑りやすいオフロードセクションでは、排気量250ccくらいのパワーが万人に扱いやすいとされているため。世界最高峰のモトクロスレースであっても、4ストローク450ccエンジンのクラスが最高峰であり、1000ccクラスがメインのロードレースに比べると随分と排気量が小さく設定されている。
では『ビッグオフ』と呼ばれる大きな排気量のオフロードバイクは、いったい何ccくらいのモデルを指すのか? 明確な定義はないものの、ルーツを辿れば500cc、一般的には600ccあるいは650cc以上のオフロードバイクを指すことが多く、DR-Z4Sのような400ccクラスのオフロードモデルを『ビッグオフ』を呼ぶようなことはあまりない。やはり、かつて逆輸入車として存在したカワサキ・KL600Rやホンダ・XR650R、スズキ・DR650SEあたりの排気量クラスが『ビッグオフ』のイメージが強い。

BMWは2007年に652ccの単気筒エンジンを搭載したG650Xシリーズを展開。写真はビッグシングルらしい鼓動感と地面をかきむしる強烈トルクを持ったG650Xchallenge(クロスチャレンジ)。この他にモタードモデルのG650Xmoto(クロスモト)、スクランブラータイプのG650Xcountry(クロスカントリー)があった。BMWというと、どんなモデルも“快適で長距離ツーリングがとにかく楽”というイメージがあるが、乗ってみるとコイツはかなり異色のキャラクター。“G650Xシリーズはエンジンパワーのスパイシーさが楽しい一方で、なんだか疲れるバイクでBMWっぽくない!”……なんてインプレッション記事を当時書いた記憶がある(笑)。
では、最近流行りのアドベンチャーバイクは排気量も650cc以上のモデルが多く、中には1000ccを超えるモデルもあるがこれらは『ビッグオフ』なのか? と言われると、大排気量のアドベンチャーバイクを『ビッグオフ』と呼ぶことはあまりない。あくまでアドベンチャーバイクはアドベンチャーバイクなのだ。アドベンチャーバイクについては、このコーナーでも取り上げたが、その定義に“長距離ツアラー”的な要素が含まれているのがアドベンチャーバイク。あくまで世界一周に代表されるような“ロングディスタンスな旅の道具として生み出されたバイク”がアドベンチャーバイクというわけだ。

オフロード走破性の高いフロント21インチホイール系アドベンチャーバイクの火付け役となったヤマハ・テネレ700の排気量は688ccでエンジンは270度クランクのパラレルツイン。その乗り味は、ダブルクレードルフレーム由来のしなやかな車体は悪路でしっかり路面を捉えて踏ん張りがきく。アドベンチャーバイクというよりオフロードバイクのフィーリングに近い。
では『ビッグオフ』とはどんなキャラクターのバイクなのか? ズバリ、あくまでオフロード走行での性能を主眼において、大排気量化されたトレールバイクということになる。もちろん『ビッグオフ』でも長距離ツーリングはできるし、250ccクラスのオフロードバイクに比べたら、常用できる速度レンジも高く高速道路の移動も快適。……ではあるのだが、アドベンチャーバイクで感じるような旅向きの心地よいエンジン特性でなかったり、ロングツーリングに対応するような大量の積載物を考慮した車体でなかったり……。なんというか、感覚的な話で申し訳ないのだが『ビッグオフ』と呼ばれるモデルはアドベンチャーバイクに比べて“旅感”が薄めなのだ。
一方、アドベンチャーバイクの中でも、フロント21インチホイールのヤマハ・テネレ700やアプリリアのトゥアレグ660などは、人によっては『ビッグオフ』に定義することもあるようだが、それはオフロード性能の高さゆえ。名前にもその性格が現れており、テネレはアフリカのテネレ砂漠のことであり、トゥアレグはアフリカの砂漠の民・トゥアレグ族のことで、両車の名前の由来は“世界一過酷なモータースポーツ”といわれるパリ・ダカールラリーにある。

ヤマハ・テネレ700が切り拓いた“オフロード性能の高いアドベンチャーバイクの世界観”をさらに突き詰めたような走破性が与えられたアプリリアのトゥアレグ660。乗ってみるとより軽く、車体の挙動もクイックでエンジンも高回転型。そのぶんアドベンチャーバイクの本分である旅感はテネレ700よりも少なく、より『ビッグオフ』寄りのキャラクターな印象を受けた。排気量は659ccでパラレルツイン。
ただでさえシートが高く足着き性が総じて悪いオフロードバイクであるうえに、さらにシートが高くなったり車幅が増える傾向にあり、日本ではあまり人気がないのが『ビッグオフ』。2026年1月現在、国内4メーカーの国内ラインナップに『ビックオフ』のモデルはなく、KTMをはじめとする外車メーカーのモデルが『ビッグオフ』市場の中心となっている。

692.7ccの単気筒エンジンをKTMが得意とするトラスフレームに搭載した690エンデューロRは、現行モデルでは数少ない『ビッグオフ』の選択肢。しっかりオフロードバイクとして作られたしなやかなトラスフレームのおかげで車格の割に意外なほど悪路での走破性が高い。この車格でありながらガレ場のような荒れた林道もスイスイ走る!! ただ、ロードセクションのコーナリングでエンジンパワーに任せて強い応力をかけるとフレームのしなりを大きく感じることもあった。

KTM・690エンデューロRと車体を共用するハスクバーナモーターサイクルズの701エンデューロ。社名は701だが、排気量は690エンデューロRと同じ692.7cc単気筒。ただ“足つき性を考慮しないハスクバーナモーターサイクルズらしく”、シート高はさらに6mm高い935mmとなっている。

ガスガスも現在はKTMファミリーであり、ハスクバーナの701エンデューロ同様、ES700もKTM・690エンデューロRがベースとなっている。給油口がシートの後ろにある特徴的な構成も一緒だ。シート高は935mm。
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