一つのスペックに着目して、現行モデルのナンバー1を決めるのが「世界最強グランプリ」だ。ラウンド4は、走りを決める重要な「トルク」。力自慢のバイクは誰か!? 大調査してみた!

※ランキングは国内向け現行ラインナップから選出(2022年8月現在)。

トルクとは、エンジンが爆発するごとに車体を押し出す力!

馬力に比べて、「トルク」の意味がよくわからない人もいるのではないだろうか。
トルクとは瞬発的な力を示し、「エンジンが1回爆発するごとの力強さ」と言える。

イメージとしては、馬力が持続的なパワーなのに対し、トルクはタイヤが瞬時に車体を押し出す力。最高出力は高回転まで回さないと発揮できないが、最大トルクは特に実用域での力強さを比較するのに役立つ。

トルクは排気量と密接な関係がある。エンジンが1回転する力がトルクなので、ピストンの移動量を意味するストロークが多いほどトルクも大きい。排気量はボア(ピストン内径)×ストロークで決まるので、排気量が大きいバイクほど自然にストローク量が多く、トルクも大きくなりがちなのだ。

なお、トルクは「Nm(ニュートン・メートル)」または「kg-m」で表される。Nmの「N」は力の単位で、「1kgの質量を持つ物体に1m/s²の加速度を生じさせる力」の意。1kg-mは9.8067Nmで、Nmからkg-mに変換したい時は、Nmで表示されたエンジントルクを9.8067で割れば算出できる。

以前はkg-mで表記されていたが、2000年代からNmで表されるようになった。だが、昔ながらのライダーにとってはkg-mの方がメジャー。当記事もkg-mで表記する。

↑ピストンの上下運動が大きいロングストロークエンジンの方が、爆発1回ごとの力が強くなるため、一般的にトルクは太くなりがち。

3位は米国のスポーティVツインクルーザー!

さて、国内向けの'22ラインナップで最もトルクが太いのはどれか?

まずは3位から。インディアン・チャレンジャーシリーズの18.1kg-mだった。米国最古のブランドによるバガースタイルのモデルで、1767cc水冷Vツインを搭載。ボア108×ストローク96.5mmのスクエアに近い特性のエンジンは、わずか3800rpmで最大トルクを発生する。

最高出力も122psとなかなかで、アルミフレームと倒立フォークの車体、6軸IMU(慣性センサー)などの装備でクルーザーらしからぬスポーティな走りが特徴だ。

↑写真のチャレンジャーのほか、車体をブラックで統一した同「ダークホース」、クローム仕上げで豪華な同「リミテッド」が展開されている。

現行唯一の直列6気筒ツアラーが2位!

2位は18.3kg-mを発生するBMWの快速グランドツアラー、K1600シリーズだ。現行モデル唯一の直列6気筒を積み、排気量は1649cc。ボア72×ストローク67.5mmで、最大トルク発生回転数は5250rpmとなる。
BMWのクルマで培った6気筒は図太いトルクを伴い、実にシルキー。160psのハイパワーと高い防風性能、最新の電子制御サスを備え、高速クルーズが大得意だ。

'22年型で2度目のビッグチェンジを行い、BMS-Oと呼ばれるエンジン制御システムを採用。新排ガス規制のユーロ5に対応しながら、最大トルクが従来型の17.8kg-mから0.5kg-mアップを果たした。'21年時点で従来型はランキング3位だったが、新型では一つ順位を上げているのだ。

↑写真のK1600GTのほか、バックレスト+トップケース付きのK1600GTL、バガーのK1600B、K1600Bにトップケースなどを与えたK1600グランドアメリカをラインナップする。

20kg-mの大台を突破した怪物がダントツの1位

そして栄えある1位は……トライアンフのロケット3R! 唯一の大台である22.5kg-mをマークした。このトルクがどれぐらい凄いのかと言うと、2000ccクラスのスポーツカーや四駆と同等。250cc2気筒のバイクが2.3kg-m程度なので、250クラス10台ぶんとロケット3Rは同等なのだ。

Rd.1の「排気量」で1位を獲得したように、縦置き並列3気筒の排気量は現行バイク最大の2458cc。“ニーハン”と言っても、250ccではなく、2500ccだ! ボア110.2×ストローク85.9mmで、意外にも3位のチャレンジャーよりショートストローク。最大トルク発生回転数は4000rpmにすぎない。
最高出力は6000rpmで167psを発生。とにかく回さなくてもパワフルなのだ。

乗り心地はとても上質。大排気量車らしい余裕があり、走りは非常にジェントルだ。スロットルの動きに従順なリニアリティのある特性で、318kgという車重を感じさせない。

↑世界最強のトルクを発生するロケット3R。2021年型でユーロ5に対応し、当面ラインナップは安泰だろう。なお、手前に引いたハンドルとフォワードステップのGTは'21年6月に受注販売され、現在は発売されていない。

 

↑筆者作成のランキング。※無断転用禁止


トップ10のランキングはこんな結果に。米国ブランドであるインディアンとハーレーダビッドソンが多数ランクイン。国産車では唯一、ゴールドウイングが6位に入った。ちなみに国産勢の次点はハヤブサの15.2kg-mだ。

カテゴリー別でも見てみよう。リッタースーパースポーツ勢では、RSV4ファクトリー(アプリリア)の12.8kg-m、パニガーレV4SP2(ドゥカティ)の12.6kg-mが上位。
国産SS勢トップは、GSX-R1000R(スズキ)の11.9kg-m。CBR1000RR-RとYZF-R1は11.5kg-m、Ninja ZX-10Rは11.7kg-mで、可変バルブタイミングなどを備えたGSX-Rが一歩リードした格好だ。

アドベンチャー系ではR1250GS(BMW)の14.58kg-mがキング。ネオクラシック系ではスピードトリプル1200RS(トライアンフ)の12.75kg-m、ネイキッド系ではディアベル1260(ドゥカティ)の13.2kg-mが際立つ。

400ccクラスでは唯一の直4であるCB400SF/SB(ホンダ)の4.0kg-mがトップ。250ccクラスでは、直4のNinja ZX-25R(カワサキ 2.1kg-m)を抑え、CBR250RRの2.5kg-mがトルク王だった。

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