イギリスで創業したトライアンフは2022年、モーターサイクル初号機の発売から120周年を迎える。そんな節目を控えたタイミングで、零号機ともいえるプロトタイプが現存することが明らかになった。プロトタイプは保存状態が非常に良好で、トライアンフの社史はもちろんのこと、世界のモーターサイクル史に燦然と輝く記念すべきリアルビンテージだ。
トライアンフの歴史の出発点となるプロトタイプが発見され、レストアされた!
▲TRIUMPH 1901 Prototypeプロトタイプの話をする前に、トライアンフ創業の経緯について簡単に触れておこう。
トライアンフの前身は自転車メーカーだった。産業革命にわいていた当時のイギリスへ夢を抱いてわたってきたドイツ人、ジークフリード・ベットマンが1885年に創業した輸入貿易会社『ジークフリード・ベットマン&カンパニー』を興したことにはじまる。ベットマンは自転車やミシンといった機械製品を輸入販売していたが、その自転車に『トライアンフ』の名を冠したことで大ヒットしたのである。これを機とし、自転車のみならず自動車や航空機、工作機械などの製造業が集中していたイギリス中部のコベントリーに1887年、『トライアンフ・サイクル・カンパニー』を設立したのである。
そのころ、すでに自転車にガソリンエンジンを積んだモーターサイクルも登場しており、新時代の乗り物として注目を集めていた。トライアンフもこれに追従するかたちでモーターサイクル開発に乗り出し、1902年に完成させて発売した製品が、初号機となる『ナンバーワン』と名づけられたモデルだ。
このたび発見されたのは、このナンバーワンに先駆けて製造されたプロトタイプだ。トライアンフによれば、1901年に発行された広告などに登場しており、その存在は認められるものの実車は未確認のままだったという。
そんな幻のトライアンフ・プロトタイプを所有していたのは、ビンテージトライアンフの収集家であるディック・シェパード氏だ。
「最近亡くなったコレクターの友人から、古いトライアンフの査定を依頼されたのです。実車をたしかめに行った私は、そのバイクがトライアンフ創成期のマシンにはないディテールを持っていることに興奮を隠しきれませんでした。彼はマシンだけでなく、1937年と記されたトライアンフからの手紙も受け取っており、そこにはこのマシンのユニークな出自と重要な詳細が書かれていたのです」
創業時のトライアンフは、まだエンジン製造に至っておらず、国内外のメーカーからエンジンを取り寄せて自転車に搭載していた。プロトタイプに載っているのは、ベルギーのエンジンメーカー『ミネルバ』が作った298cc空冷単気筒だ(ミネルバ製エンジンは、ナンバーワンにも搭載されている)。
「ミネルバ社の記録にある、1901年の初代トライアンフのエンジン番号と一致していることから、このマシンがプロトタイプであるという確証が明らかになりました。プロトタイプを発見できたことは、熱烈なトライアンフファンとして生きてきた私にとって計り知れないほど幸福な出来事でした。トライアンフのためにも、そして世界のモーターサイクル史のためにも、私はプロトタイプをていねいにレストアし、1901年当時のように復元することができたのです」
英国モーターサイクルライブショーで初公開されたこのプロトタイプは、12月14日にトライアンフ・ファクトリー・ビジター・エクスペリエンス(イギリス・ヒンクレーにある本社に併設されるミュージアム)で開催される120周年記念イベントで、トライアンフにとって100万台目となるマシンと共に披露される。トライアンフによれば、プロトタイプは走行可能状態に復元されており、イベントではデモンストレーション走行も示唆されている。100年の時を経て一般公開されるプロトタイプの勇姿となれば、トライアンフオーナーならずとも興味をひかれるというものだ。走行場面がインターネットで動画配信されることに期待したい!
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