ジャンルがバラバラな5台が集まった

バイク選びは楽しいものだ。愛車を走らせて、メンテナンスして、じっくり愛でるのももちろん楽しいのだが、「もしもう1台増やせるなら?」なんて考えると、それだけで1時間や2時間が過ぎてしまうことも珍しくない。

そんな楽しいバイク選びを、自分の頭のなかだけで終わらせるのはもったいない(笑)。今回は「絶版車」という縛りを加えて、いま僕が本当に欲しい5台をセレクトしてみた。

 

Honda CB750FOUR

Honda CB750FOUR

言わずと知れた日本を代表する名車。初代モデル(K0)が登場したのが1969年。日本はまさに高度成長期真っ只中で、ホンダが世界最速の市販車としてリリースし、世界中を席巻したモデルである。

CB750フォアは今回リストアップした5台のなかで唯一の並列4気筒エンジン搭載モデルだ。とはいえ、現代の4気筒エンジンとはまったく違う荒々しい吹け上がりが魅力。野太いエキゾーストサウンドや、カワサキZのように洗練されたとは言い難い……だけど存在感に溢れるスタイリングなどが大好きなポイントだ。

で、このモデルをピックアップしたのは、じつは名車とか、ホンダの魂だから……なんてことではなく、単純にかつて僕が所有して気に入っていたから。

あれは1997年、僕が大学4年生のとき。ジレラ・サトゥルノ500のセパハンがしんどくて、次はアップハンドルのバイクが欲しいなー……なんて思っていたときに候補に上がったのがハーレーダビッドソン・スポーツスター883。しかし、当時のスポーツスターは中古車でも高くて、とてもじゃないが学生の僕が手を出せるものではなかった。そこで「そこそこの値段で、アップハンドル、のんびり走れるクラシカルなスタイルのバイク」と探していて、たまたま大学近くの中古屋さんで見つけたのがCB750フォアだったというわけなのだ。

今では信じられないが、当時はCB750フォアが「そこそこの値段」で、スポーツスターの代わりとして学生が買っちゃうような時代だったのだ(笑)。もちろん、当時から名車であることに変わりはないので、初期型K0は高価だった。だけど、僕が買ったのは1972年式のK2。ただし、シートやサイドカバー、マフラーはK0のものを使った「K0仕様」。外装もK0のレッドメタリックに再塗装されていた。

このバイクはとても気に入っていて、大学卒業後も乗っていたのだが、大阪の番組制作会社を辞め、放送作家を目指すために東京に行くと決めたときに、上京資金として手放すことに。これまで30台近くを乗り継いできた僕が、唯一“仕方なく”手放したのがこのバイクなのだ。

今ではK0はもちろん、K2やK4など、年式を問わずに高騰しているCB750フォアだけど、チャンスがあればもう一度手に入れたいと思っている。

 

YAMAHA SR500SP

これまでの僕の記事を見てもらえればわかるとおり、ヤマハSRが好きだ。いま、1993年式と2014年式の2台のSR400を所有しているが、他にもこれまで3台のSR400/500を所有したことがある。SRフリークだと言われることもあるが、自分ではそんなつもりはなく、いろいろと好きなバイクがあるなかで、SRが頭ひとつ抜けて相性がよい……それだけのことだと思っている。

で、そんな相性のよいヤマハSRのなかで、さらに「頭ひとつ抜けて相性がよい」「本当に欲しい」と思っているのがSR500SPだ。

まず、「499cc」というのがよい。よく「500は400のボアアップ版」と勘違いしている人がいるが、正しくはストロークアップ版だ。SRにビッグシングルならではの鼓動感を期待する人は多いが、じつは400は内径87.0mm×行程67.2mmのショートストローク設定。圧縮比は8.5で、意外とスポーティに回るエンジンである。対して500は87.0mm×84.0mm、圧縮比8.3で、これぞビッグシングル! 溢れる鼓動感とトルクがなんとも心地よいのだ。たった100ccの違いだが、その乗り味はまったく異なるものだと言ってよいだろう。

そして「SP」というのもよい。これはつまり、初期型に設定されたキャストホイール仕様ということ。ワイズギアからもSR用キャストホイールが発売されていたが、あちらは前後18インチ。対してSPの純正キャストは前19、後18インチの「ザ・70年代仕様」。2014年式の愛車にも、わざわざD.I.Dに発注した19インチリムを装着している僕としては、この19インチホイールは絶対的正義! ワイズギア製の方が軽いし、チューブレスで便利だけど、このクソ重たくて、キャストのくせにチューブタイヤ仕様のこの純正キャストホイールがよいのだ!

他にもSP(=初期型)ということで、燃料タンクは細身のナロータイプだし、キャブレターはダイレクト感に溢れるVMタイプと、まさにSRの美しさと楽しさを突き詰めたSR……それがSR500SPだと、僕は思っているのだ。

 

Honda XR BAJA

Honda XR BAJA
常に1台はオフロードバイクを手元に置いておきたいと思っている。高校生のときに漫画「キリン」を見てバイクに乗りたいと思った僕なので、オフロードバイクにはまったく興味がなかったのだが、2000年に月刊バイク雑誌「カスタムバーニング」を発行する造形社に入社して、その趣向が大きく変わった。

造形社といえば知る人ぞ知るモトクロス&オフロードバイク専門誌「ダートスポーツ」を発行する出版社。当然、社内にはオフロード好きが多くいる。なので当然、林道ツーリングやコースに誘われる。僕はオフロードバイクなんて持っていなかったのだが、当時の上司(カスタムバーニング編集長)が「経験だから行ってこい」と、その愛車だったXRバハを貸してくれたのだ。

そこですっかりオフロードの楽しさに目覚めてしまった僕は、KLX250SR、セロー225WEと乗り継ぐことになった。つまり僕のオフロード体験の原点ともいえるモデルがXRバハなのである。

ここ数年は欲しいと思いつつもオフロードバイクを所有していなかったのだが、昨年、Beta ALP200を某ウェブメディア編集長と某カメラマン氏と3人で共同所有することに。それでまたすっかりオフロードの楽しさを思い出してしまった僕は「やっぱり自分だけの1台も欲しいなぁ」と思うようになってしまった。そこで今、猛烈に注目しているのがXRバハというわけだ。

今回紹介する5台のなかで、現実的に手に入れる可能性が高いのは、XRバハのような気がするなぁ(笑)。

……なんてことを書いていたら、良い車両と巡り会うことができて、本当に購入することになりました!

詳しくはこちらの記事をご覧ください。
>トレールバイクの名車・Honda XR BAJAを買う!

 

GILERA SATURNO 500

GILERA SATURNO 500
CB750フォアの項で触れたが、CBの前はジレラ・サトゥルノ500に1年ほど乗っていた。

若い読者には知らない方もいると思うので簡単に説明すると、イタリア最古のバイクメーカー・ジレラからリリースされたシングルスポーツモデル。同社のオフロードモデル・ダコタの水冷DOHC4バルブ単気筒エンジンをオリジナルフレームに搭載したカフェレーサーで、設計はなんと日本人が手がけたというもの。日本総発売元はレッドバロンであった。

さて、当時、19歳で大型二輪免許(当時は限定解除)を取得した僕は、意気揚々とビッグバイクを買ったものの、その大きさと重さに辟易していた。そこで「軽くて面白くて、それでいて大型免許でしか乗れないバイクはないかなぁ」と、いろいろなバイク屋さんを巡っていたのだが、レッドバロン大阪狭山(大阪府)で出会ったのが、このジレラ・サトゥルノ500(TT-4)だったのだ。

ちなみに学生のときは暇はあるけど、お金はない……そんな僕や友だちをレッドバロン大阪狭山の店長と50円の缶コーヒーが温かく迎えてくれたのを、今でもよく憶えている(笑)。

そんなジレラ・サトゥルノの魅力は、絶対的なパワーではなく、軽い車体とよく回るエンジン、そしていかにもイタリアンといった洒落たデザイン。「限定解除=でかいバイクに(無理してでも)乗らなきゃいけない」と思い込んでいた僕の固定概念を、みごとに吹き飛ばしてくれた。

バイクの楽しさに排気量は関係ない……そんな当たり前のことを教えてくれたのが、ジレラ・サトゥルノなのだ。

 

Honda CT110


「今欲しい」ではなく、「すでに持っている」のがCT110。ただし、持ってはいるが現在不動状態である。

もともと某雑誌のメンテナンス企画のために、「ネタにするからボロくていい」ということで某ネットオークションで“程度そこそこ”のCT110を購入したのが2年前。しかし、やってきたのは“程度そこそこ”どころか“程度サイアク”のCT110。それでもなんとかメンテ企画をはじめたのだが、状態が悪すぎて、ダメなところを修理するどころではなく、交換作業がメイン。企画は数回進めたのだが、結局、これでは「メンテナンス」という企画趣旨とあまりにもかけ離れているし、予算がかかりすぎるということで打ち切り。安全に走らせるにはまだまだお金がかかるため、今は途方にくれている状態なのだ。

だから、正確には「今欲しい」でも「すでに持っている」でもなく、「ちゃんとした車体が欲しい」ということ(苦笑)。

そう、今回は程度が悪くてもいいと覚悟して購入したにも関わらず、その覚悟を上回る車両を買ってしまったのだ。これがネットオークションや個人売買の怖いところ。特に絶版車ともなれば、年式も古く、どんな使われ方をしていたかもわからない。絶版車に限らず、自分の命を乗せるバイクを購入するのだから、やっぱりきちんとした整備をしてくれて、保証などもしっかりしているお店で購入しよう……CT110を通じて、僕はそんなことも思ったわけである。

……あぁ、この車両を早くどうにかして、ちゃんとしたCT110が欲しいゾ!!

 

「単気筒・空冷・Honda 多め」偏ってなさそうでじつは偏ってしまうのがバイクの好み!? 

あらためて自分が欲しいバイクをまとめてみると、往年の名車にシングルスポーツ、オフロードモデルにカブとみごとにバラバラ。……と思ったのだが、よくよく考えてみると、5台中3台はホンダで、空冷と単気筒エンジンがそれぞれ4台ずつ。絶対性能よりも日常での速度域が楽しいバイクが多いことにも気付く。

僕は以前から「バイクは分け隔てなく、いろいろなモデルが好きだ」と自負していたが、こうしてみると、たしかに車種やジャンル、排気量はバラバラだけど、自分でも気づかなかった(気にしていなかった)好みの傾向が見えてくる。

読者の皆さんも、ぜひ自身が考える「今欲しい絶版名車5選」をまとめてみてください。もしかしたら、気づかなかった自分の好みを発見できるかもしれませんよ!

 

【特集:今欲しい絶版名車5選 一覧を見る】

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