CB400 SUPER FOURという英雄【その1】を読む

2022年の夏現在、400㏄クラスで4気筒エンジンといったらCB400スーパーフォア&スーパーボルドールのみ。しかし、その初代が登場した1990年代初頭は、ネイキッドジャンルに話を絞っても各メーカーが複数の直4モデルをラインアップしていたという夢のような時代でもありました。個性が咲き乱れる中でも強かったスーパーフォアの秘密とは?

CB400SF_1995

●1995年のカタログより。同年改良ではシリンダーヘッドカバーが大型化され、クランクケースカバーのデザインと配色にも手が入れられるなど初代デザインの集大成的な仕上がりに……。車体色はソリッドカラー3色のみになり税抜き58万9000円という価格は不変。実は同時に「バージョンR」という仕様が追加されており、そちらについては次回以降、紹介いたします

 

とにかくスーフォアは○○○で×××だった(個人の感想)

最初に結論めいたことを述べてしまうと、直4ネイキッド界でCB400スーパーフォアが並み居る好敵手たちを相手に、いつだって互角以上の戦いを繰り広げることができたのは、

「カッコよくて、異常にタフだったから」

という2つのポイントに尽きるのではないかと、個人的に考えております。

スタイリングの優劣に関しては、各ライダーそれぞれの美的感覚に大きく左右されますので明言はしづらいのですが、少なくともCB400スーパーフォアの姿を見て、

「うわっ、キショッ! ダサすぎるカッコ悪さ……」

と感じる人は、全宇宙でもごく少数なのではないでしょうか。

CB400SFレッド

●嗚呼、何回見ても美しい初代の勇姿。サイドカバーの色も車名ロゴの配置もこれがベストではないでしょうか。ソリッドカラーが映えるのも初代のデザインならでは(筆者の印象です)

 

これまた個人的な意見で恐縮ですが、特に初代CB400スーパーフォアの美しさ神がかっていると思っており、グラマラスなタンクからつや消し黒のサイドカバー~さりげないダックテールぶりも可愛いテールカウル(シート込み)への流れは、ユーノス・ロードスターのリアコンビネーションランプ同様、ニューヨーク近代美術館 (MoMA) に展示・永久収蔵されるべきレベルではないかと前々から考えております。

ユーノスロードスター

●端正、かつ微妙な曲面で構成されたスキのない美しさ……。初代CB400スーパーフォアの美麗さは、世界的に評価が高い「ユーノス・ロードスター」にも負けていないと筆者は思うのです。なお、このNAロードスターのデザインを担当した田中俊二さんは、2000年代初頭からカワサキで腕をふるい、初代Z1000(2003年)以降、エッジの効いた目の覚めるようなデザインを連発されました

 

レースシーンで徹底的に鍛えられた心臓がベース

そしてタフだという一面

CB400スーパーフォアエンジンのベースはCB-1 TypeⅡですが、さらにそのルーツをたどっていけば1986年発売の「CBR400R(NC23)」へ搭載された、NC23E型エンジンに行き着きます。

CBR400R

●「CBR400Fの次は当然“R”。どんなレーシーなモデルが出てくるんだろう?」とワクワクしていたら、紅白まんじゅうのようなフルカバードデザインでの登場で腰が抜けた記憶がございます。「AERO」はエーヤロと言われてもコレジャナイ感が半端なく……。アルミツインスパーフレームにカムギアトレーンエンジンという最高なパッケージだったのですけれど、全く見えません(汗)

 

こちらは高回転時のより正確な弁駆動と摩擦抵抗の低減を図るため、カムシャフトをギア……歯車で駆動する“カムギアトレーン”システムを採用しており、ハイパワーを絞り出すのに有利だとされていました。

1988年デビューの「CBR400RR(NC23)」でも当然のごとく使われ、

CBR400RR

●エアロの次はハリケーンときたもんだの“ヨンダボ”ことCBR400RR前期型。もうどこをとってもレーサーレプリカ文法どおりの仕上がりで当然ながら人気も爆発。ファイアーブレードことCBR900RRより先に出ていますので、ダブルアールの元祖ということにもなりますね。2眼ライトの黒い縁取りが小林まこと先生の漫画「ホワッツマイケル」で出てくるポッポ(♀)の顔に見えたものです

 

同じ車名ながらさらに進化を遂げた1990年式CBR400RR(NC29)」にも継続採用。

1990CBR400RR

●ダイレクター(DIRECTER)とのキャッチコピーも印象的だったヨンダボ後期型。先進的なLCG(Low Center of Gravity=低重心)フレームとガルアームとの組み合わせにはグッときました。なんとこのバイク、シート高が750㎜だったんですね。知り合いの小柄な女性ライダーも購入して、「足着き性は抜群だし、すっごく乗りやすいの!」とメチャクチャ喜んでおりました

 

細かい改良を積み重ねたカムギアトレーン直4パワーユニットは1万3000回転で最高出力59馬力1万回転で4.0kgmの最大トルクを発揮する領域へと到達していました(NC29デビュー時)。

SPレースでの成績が販売に直結する熱い時代、全開全開また全開というサーキットの使われ方でも絶対に壊れない信頼性を確保するため、エンジンの各部にばく大なノウハウが注入されたことは想像に難くありません。

83万㎞を走行した400スーフォアが存在する!

かくいう苛烈なバトルフィールドをくぐり抜けてきた強心臓を時代の要請に合わせて穏やかな特性へと仕立て直し、CB400スーパーフォア(NC31)では、53馬力を1万1000回転3.7kgmを1万回転で発揮すればオーケーオーケーOK牧場!としたのですから、潜在的な余裕があるなんてものではございませんね。マージンありまくりです。

二輪雑誌の編集部員だった時代に、関東圏内のバイク便ライダーが絶大な信頼を寄せている“駆け込み寺”的な激しいバイクショップ(アトラクティブ)を何度となく取材させていただだいたのですが、手がけている車両の走行距離をランキング形式にすると上位は全てCB400スーパーフォアで占められ、中でも頂点は“83万㎞”に達しているのだとか(令和4年6月現在)。

割れたディスク

割れたダイアフラム 

焼けたコイル

オイルでドロドロ

すり減ったプラグ電極部

●(場合によってはメンテナンスを怠りつつ)地球20周近い距離を走るとバイク各部はどうなるか……という実例を知り尽くしているアトラクティブの後田さん。興味深い事象の数々はまた別の機会に紹介できればと考えております

 

アトラクティブ代表の後田吾郎さんいわく「とにかくCB400SFは丈夫そのもの。特にVTECの付いていない初期モデルの信頼性は絶大なものがありますね」と太鼓判。

誰が言ったのかは知りませんが「スーフォアは400のスーパーカブ」との評判も、よく聞いた記憶がございます。

全方位にスキのない400㏄NK界の「出木杉英才」クン

なおかつ“本気を出せばメチャクチャ速い”というのも特徴で、ヤマハXJR400、スズキGSX400インパルス、カワサキZRXらが出そろった1994年から鈴鹿サーキットを舞台に開催され始めた、まさしく400㏄ネイキッドモデルのガチンコバトル「NK4レース」でもCB400スーパーフォアは圧倒的な強さを発揮(前述モデル群の紹介はコチラをご覧ください)

年を経るごとにワンメイクレースと化していったことは伝説となっております。

基本的な心臓、骨格、足周りがしっかりしている端正なスタイリングの超人気モデル……ということは、カスタムの可能性が無限に広がるということ。

表情豊かな陰影ある外装を好みのカラーリングに染めるだけでもよし。

マフラー、セパハン、バックステップといった定番パーツで峠仕様にするもよし。

CB400SFカスタム

●人気車かつ長い歴史を持つモデルというのは、イジりたいとき本当に助かります。まぁ、ほぼほぼ国内専用車種だけに海外パーツメーカーの製品は限られてしまいますが……。ともあれ、中古車を買って思う存分自分色に染めることができるのです

 

はたまた磁石式タンクバッグや荷掛けフックを活用するシートバッグも装着しやすいので、バイク旅仕様に変貌させるもよし……。

バイクのことをあまり知らないオジちゃん&オバちゃんたちには「コレ……ナナハン?」と言わせる直4マシンならではの威風堂々さがありつつ、いざまたがれば非常に扱いやすいシート高(770㎜[NC31])とライディングポジション

CB-1の反省も生かされた18ℓ容量の燃料タンクでロングツーリング時の安心感にも対応。

真夏の苛酷な状況下でも安心な水冷システム。

そしてさらに教習所でお世話になった縁で、そのまま初ヨンヒャクとしてご購入……という例も少なからずあり、そこまで汎用性が高く、外堀まで埋められてしまってはライバルがCB400スーパーフォアの牙城を切り崩すのは、相当にインポッシブルなミッション。実際、英雄の覇道は長く続いていくこととなります。

王者

●襲いかかるライバルをことごとく退けて400㏄クラスに君臨してきたCB400シリーズ。気が付けば唯一残った直4エンジン搭載車になってしまいましたが

 

とはいえ、CB400SFも人気にあぐらをかいていたわけではなく、ライバルの動向も注視しながら数々のアップデートを行っていったからこそ高い人気を維持できたのです。次回はそのあたりを紹介いたしましょう。

あ。というわけでCB400スーパーフォアは相当な低年式のモデルでも信頼性が高く、レッドバロンの良質な中古車なら部品供給の心配も不要! 人気車=タマ数も豊富、ということですので、冷やかし気分ででも各店舗受付で在庫をチェックしてみることをオススメいたします!

CB400 SUPER FOURという英雄【その3】を読む

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