“class”さんの大ヒット曲『夏の日の1993』ではないですが、それまで眼中になかった地味子ちゃんがドレスアップ(歌詞だとおそらく水着にチェンジ)した途端に、「ウホ~ッ! 惚れたぜベイベ~♡」となってしまうのは、全生物にDNAレベルで刻み込まれた“業”なのでしょうか……。登場から10年近く質素に素朴に過ごしてきたシビ子はカラーリングの魔法をかけられ、一気にスターダムへと駆け上っていったのです!
●2007年10月15日に発売が開始された「CB750・スペシャル」のカタログより。こちらは「CB750F」のグラフィックではなく、1979年に輸出車として北米と欧州を中心に販売された並列6気筒1000㏄エンジン搭載のスポーツモデル「CBX」のカラーリングをイメージしたもの。この仕様だけの立体エンブレムがまたイケてますね〜。価格などの詳細は後述させていただきますが、もう「CB750」の後半戦は前半戦とは打って変わった“色変わり乱れ打ち(?)”状態だったのです……
CB750という地味めなシビ子【中編】はコチラ!
インパルスという繰り返す衝撃【前編】はコチラ!
網膜から脳に伝わる電気刺激でヒト(特に男)は恋愛状態に……!?
長年にわたる脳科学の研究によると「男性は視覚、女性は聴覚(五感・ムードとも)」で恋に落ちるのだそうです。
●Web辞書によれば、恋とは特定の人に強くひかれること。また、切ないまでに深く思いを寄せること……とありました。あのコのことを考えて身悶えた日々が今では懐かしいですなぁ!
アナタがもし筆者と同じく男性なら、思い当たるフシがありすぎるのではないでしょうか。
前述した大ヒット曲『夏の日の1993』よろしく、顔の造作やなだらかな曲線美、立ち居振る舞いといったパッと目に入ってくる情報によって、天使の放った矢が自らのハツ……いやハートにブスッと突き刺さりがち。
●ちなみにハツとは牛、豚、鶏などの心臓にある部位の肉で英語の「Hearts(ハーツ)」が由来なのだとか。56歳の小生、今回初めて知りました……
今まで何とも思っていなかったのに、ホンのささいなキッカケで怒濤の恋愛がスタートしてしまう……。
考えてみれば男女関係に限らず、バイク選びでもそんなことが多いですよね。
●相棒選びに最適な参考書といえば、ヤエスメディアムック871「最新バイク図鑑 2024-2025」2024年3月25日(月)発売/税込1980円(本体 1800円)でしょう! 私自身も過去、編集を経験したので思い入れもひとしお。写真がとても大きく視覚情報もバッチリ。ヒマさえあればペラペラめくって妄想サイクリストになりましょう
少なくとも筆者はこれまで、バイク雑誌で、ショップの在庫車で、インターネットで、カタログで、ひと目見てビビビビビッと来た車両を購入してきたことがほとんど。
何歳になってもフォーリンラブして恋い焦がれ、ドキドキワクワクしながら購入まで至る愛車への恋路は幾度経験しても楽しいものでございます~~。
平成の新CBとして“スーフォア”姉妹より早く世に出たのに……
閑話休題。
さて、ビビッドな黄色に赤にツートーンにと驚きの5色ラインアップでデビューした「CB400 SUPER FOUR」と、
●「CB400 SUPER FOUR」……写真の黄色、そして赤と黒のソリッドカラー(1992年4月23日発売)が58万9000円。黒×灰、銀×青のツートーンカラー(同6月1日発売)が59万9000円(ともに税抜き当時価格)。肉感的なタンクはガソリン18ℓを飲み込み、リヤ2本ショックの採用によりシート下には5.5ℓものユーティリティスペースを確保。荷掛けフックも4カ所に用意されるなど至れり尽くせりな“おもてなし力”もCB400スーパーフォアの真骨頂でございました。打倒ゼファーを見事に達成!
紅白まんじゅう……いや、色合い的には日本国国旗のように鮮烈な赤×白に黒×灰の2色展開で注目を集めた「CB1000 SUPER FOUR」は、まさしく視覚への訴えかけもバッチリに過ぎる仕上がり!
●1992年11月24日から発売された「CB1000 SUPER FOUR」。フルカウルの「CBR1000F」内に隠されていたゴッツい水冷エンジンと23ℓ容量の巨大なタンクが醸し出すド迫力は圧倒的でした。それでいて、いざ走り出したら信じられないほど軽やかな操縦安定性! 心底脱帽したものです。税抜き当時価格は92万円
ウホ~ッ!と恋に落ちた(主に男性)ライダーは、先を争って“スーフォア”を買いにショップへと走りました。
嗚呼それなのに「CB400SF」のデビューより2ヵ月も前に登場していた「CB750」はカラスみたいな漆黒と、
●1992年2月21日、税抜き当時価格68万9000円(400スーフォア単色のちょうど10万円高)で発売がスタートした「CB750」。直前の水冷CBR……ではなく「CBX750F」譲りのパワーユニット……油圧式バルブクリアランス自動調整機構&自動調整カムチェーンテンショナーなどメンテナンスフリー化を推し進めた747㏄空冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンを復活させて採用(オイルクーラー標準装備)。75馬力/6.5㎏mのパフォーマンスと60㎞/h定地燃費で27.0㎞/ℓの燃費を両立。燃料タンク容量は20ℓ、シート高790㎜、車両重量233㎏ナリ
映画『ジョン・ウィック』シリーズでキアヌ・リーブスさん(←超絶バイク好き!)が着こなすスーツのような濃紺でストライプの1本も入らない良く言えばシック、悪く言えば地味~な出で立ちで市場へと舞い降りたのです。
●すぐ上で紹介している「CB750」の車体色は「ブラック」で、こちらが「センシティブブルーメタリック」。技術的な試行錯誤もほぼ落ち着いた平成生まれのバイクらしく、タイヤはフロントが120/70R17、リヤが150/70R17という現代にも通じる“前後17インチラジアル”を採用(まぁ、今の目で見るとリヤがちょいと細いかな〜)
●こちらは「CB750」の約半年前となる1991年7月13日から限定750台、税抜き当時価格63万9000円で発売された「ナイトホーク750」。ホンダはこちらを主に北米、「CB750」を日本と欧州に向けたスタンダードスポーツとして、しっかりと作り分けてきたのです。俗にいう“アメリカンタイプ”の車両らしく、フロント18インチ、リヤ17インチのバイアスタイヤを採用していました。1992年3月1日には弟分の「ナイトホーク250」も登場し、どちらも意外なほど街で見かけた記憶が残っております
これは多分に、先行していたカワサキ「ゼファー750」の影響が大きかったのかもしれません。
2年前に出ていた大ヒット先輩空冷ナナハンを徹底的に研究!?
1989年に登場してネイキッドブームを巻き起こした400㏄の「ゼファー」に引き続き、1990年8月に姿を現したカワサキ「ゼファー750」も当然のごとく大ヒット街道をばく進……。
●1990年8月20日にリリースされた「ゼファー750」。738㏄空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブエンジンは68馬力/5.5kgmの実力を発揮。燃料タンク容量17ℓ、シート高780㎜、車両重量216kg。当時価格は65万9000円。いやぁ、コイツも売れに売れましたね〜。1996年〜2002年にはスポークホイール仕様の「ゼファー750RS」まで登場。最終型となった2007年モデル火の玉タンクの「ゼファー750 ファイナルエディション」は、凄まじい争奪戦が繰り広げられたと聞いております……
両モデルともそれまでの派手派手レーサーレプリカ路線を全否定するような単色展開で、驚くほどのセールスを記録していったのですから、笑いが止まりません。
ホンダとしてもゼファー軍団対策として“スーフォア”を開発するも、水冷エンジンを搭載することが前提条件でしたので純懐古路線での後追いはできないし、したくもない。
そこで「プロジェクトBIG-1」という旗印のもと“セクシー&ワイルド”な肉感的スタイリングに派手な色も用意して……という方向性を推進していきます。
●前途多難、紆余曲折だらけのPROJECT BIG-1開発ストーリーは「モーサイ」にて是非。「CB-1」の骨格に「CB1100R」の赤白タンクを乗せてみたのが全ての始まりだったとか。開発初期段階のデザインスケッチには、多種多様な方向性が描かれていたんですね……
結果的にそれが大正解&大成功を収めたから良かったのですけれど、本当に予測が難しく思惑どおりになかなか進まないのがバイクビジネスというもの。
万が一、400&1000のスーフォアが総スカンを喰らった場合も考慮して、中間排気量であるナナハンはCBRの水冷エンジン……ではなくCBXの空冷エンジンを今一度引っ張り出し、端正かつ保守的なスタイリングでまとめ上げたのではないか? と筆者は考えております。
●1992年型「CB750」カタログより。実のところ「CB750」は「プロジェクトBIG-1」同様、 1991年の第29回東京モーターショーで披露されていたのですが、もう来場者の話題と注目は圧倒的に「プロジェクトBIG-1」(と「NR」)へ……。ちょうどリッターバイクの自主規制が1990年に解禁された流れもモロに被ってしまい「今さらナナハン?」という雰囲気すら当時の国内市場では流れておりましたからね。まぁ欧州では一定以上の支持を得て、エンジンなどを共有する「ナイトホーク750」も北米で人気を博したので、投資分は着実に回収していったのですけれど
ならば当然、カラーリングもゼファー軍団よろしく地味~な単色をまとって世に問われたのも納得がいくところですよね……まぁ、結果論かもしれませんが(^^ゞ。
ともあれ『紅の豚』が公開された1992年、その2月に「CB750」は比較的ひっそりと出航いたしました。
●1992(平成4)年の日本配給収入ランキング、堂々の第一位(28億円)に輝いた宮崎駿監督作品『紅の豚』は、呪いを受けた中年パイロットの活躍譚。主人公ポルコ・ロッソ(CV:森山周一郎さん)の美声に心酔しました。名台詞「飛ばねぇ豚はただの豚だ!」は今も筆者の心に刻み込まれております。いやしかし、もう32年前の作品ですか……。そして現在、2024(令和6)年に『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞長編アニメーション賞を獲得したのですから、宮崎監督は本当に凄い……
“国内市場はナナハンまで”縛りが解禁された大フィーバーの渦中で
……シビ子ちゃんには本当に申し訳ないのですけれど、当時アルバイトとして八重洲出版モーターサイクリスト(以下MC)編集部で働いていた筆者、「CB750」デビュー時のエピソードは全く思い出せません。
同じ年にデビューした「CB400SF」と「CB1000SF」、ついでに言うと(?)「NR」に関しては腐るほどの記憶と黒歴史があるのですけれど、初期型「CB750」(あえて言おう、CBセブンフィフティと!)は、ホンダ青山ビルまで広報車を取りに行った記憶すらないのです。
●1992年5月25日から税抜き当時価格520万円(消費税3%込み価格535万6000円……)で発売が開始されたホンダ「NR」。長径101.2㎜×短径50.6㎜という楕円ピストンを採用した747㏄水冷4ストV型4気筒DOHC8バルブ(!)エンジンは国内仕様で77馬力を発揮(海外仕様は130馬力)。センターアップマフラー、ウインカー内蔵バックミラーなど当時としては非常に斬新だった車体構成も採用。国内向けの販売計画台数は300台(限定)だったが、実際に世へ出た数はそれより大幅に少なかったとか。吸気と排気が4本ずつのバルブ直下にある1つの楕円ピストンが見えますか? なお、この透視図は完全なる手描き! 作画を担当した超人と2015年にまとめあげたムック「Technical Illustrations of HONDA MOTORCYCLE」を担当できたことも幸せでした
毎年4月と10月号のMCで展開していた発行部数を倍に引き上げる定番企画「国産車オールアルバム」の編集お手伝いで、広報用ポジフィルムを保管している棚から引っ張りだすくらいしか接点がなかったような……。
●当時は画像データなんてものは存在しておらず、新製品登場時にメーカーからいただいたポジフィルムをいちいち印刷所へ入稿しなくてはなりません。バイトとしてひたすら使用済み写真を収めた棚をあさってましたねぇ……
1992年の10月号は、デビューしたてだった1992年4月号の写真を流用。
以降1993年も、1994年も、そして1995年の4月号までず~っと同じ黒と紺の広報写真を使い続け(つまりマイナーチェンジどころか色変更すらなかったということ)、1995年の10月号でようやくカラーチェンジを読者へ伝えることができ、
●1995年9月25日から発売されたカラーリング変更版「CB750」。品のある落ち着いた雰囲気の「キャンディリバイヴレッド」が採用され、タンクサイドにはウイングマークではなく「HONDA」ロゴを配してレトロ&スタイリッシュな雰囲気を演出……。口の悪い先輩編集部員は「ま〜たゼファー750(1991年モデルで赤が登場済み)の後追いかよ!」とホンダ広報部から送られてきたポジフィルムをひと目見るなり苦笑い。なお、税抜き当時価格は初代と変わらず68万9000円のままでした
ホッとした(?)のもつかの間、1996年、1997年、1998年、1999年、2000年と見事なくらいの放置プレイが延々と続きます(ず〜っと赤1色……)。
片や「ゼファー750」は頻繁にカラーチェンジや小変更を繰り返していたので、
●1999年型「ゼファー750」。ハンドルスイッチの表示方法やターンシグナルのインジケーターランプが橙から緑に変更されるなどの小変更を行いつつ、昔のZ系をイメージさせるカラーリングを登場させてきました。この路線がまた当たるんだなぁ……。なお、税抜き価格は1990年の登場以降、1991モデルまで65万9000円で、1993年モデルから1999年モデルまで66万5000円
「まさしく大ヒットが続いている継母?(CB1000/1300SF)と妹?(CB400SF)の間に挟まれて、立つ瀬のないシンデレラのようだなぁ……」と勝手に同情していた記憶はしっかりと残っております。
●派手な注目を浴びることなく地味な一張羅をあてがわれたままで、ラインアップにとどまり続けたシビ子ちゃん。そんな忍従の日々が報われるときがやってくる……のでしょうか!?(^^ゞ
実のところ1996年の運転免許制度改正により、ビッグバイク免許が「指定自動車教習所」でも取得できるようになることを受けて同年1月に登場した「CB750L(教習所仕様)」を成り立たせるためだけに生産を続けていたのかな、とも勘ぐってみたり……(そんなことはないでしょうけれど(^^ゞ)。
●1996年1月に発売された初代から最終型となった2007年モデルへ至るまで、頻繁な細部改良とカラーリング変更が実施されていった(苦笑)「CB750L(←LはライセンスのL)」。モデル後期に登場した赤×白ボディの教習車で大型自動二輪免許を取得した!という読者の方々も非常に多いのではないでしょうか。エンジンはデチューン版で(圧縮比9.3→8.8・最高出力75馬力→73馬力・最大トルク6.5kgm→6.3kgm)。クラッチ機構はワイヤー式から油圧式に変更され、低速走行が主体のため電動ファンも装備可能な大型オイルクーラーを装着。丸型ミラー+ライトスイッチ+ローシート+アップハンドル+大型エンジン&マフラーガード+黒塗装マフラーなどなど。リヤブレーキも1ポット→2ポットへ強化されているなど内容はとても趣深く、この仕様のパーツ類を適宜愛車へコンバートする人も意外なほどいたとか
モデルライフ始めてのマイナーチェンジが行われたのは、実に登場から9年近く経ち、世紀も改まった2001年1月のこと。
より厳しくなった排出ガス規制に対応するため、エキゾースト・エアインジェクションシステム(二次空気導入装置)を採用し、色は……精悍なブラックへ(さらに地味……というか真っ黒くろすけに!)。
●2001年型「CB750」カタログより。二次空気導入装置とは排ガス浄化装置の一種で、シリンダーヘッドの排気ポートに外気(酸素)を積極的に送り込むことにより、エンジンの排出ガスに含まれる未燃焼物質……HC(ハイドロカーボン)やCO(一酸化炭素)を完全燃焼させるもの。これにより1999年の平成11年排出ガス規制をクリアして、21世紀も堂々と販売できるようになりました。税抜き当時価格は70万9000円となり2万円の値上げ
2001年モデルのリリースに記載された年間の販売計画台数は限定車でもないのに200台ポッキリと、いよいよ終焉の時が近づいてきたのかとばかり思っておりました。
そこからまた2002年、2003年と放置プレイが続いたので疑念は確信へと昇格。
「ああ、これはもう数多の不人気車が辿ってきた、知らないうちにラインアップ落ちしているというフェードアウトパターンだな」とばかり……。
2004年に突然の路線変更。地味めなシビ子に何が起こったか!?
駄菓子菓子!
2004年のマイナーチェンジで地味めなシビ子は、まさしくシンデレラのような大変身を果たしたのです。
●2004年型「CB750」カタログより。カラーリングの大胆チェンジだけでなく、スロットルポジション付きキャブレターやリザーバータンク付きリヤショックユニット、マルチリフレクターヘッドライトなどを新採用し、ハザードランプ、メーター&ウインカーボディのクロームメッキ化、アルミダイキャスト製ヘッドライトブラケットまで新たに導入……。突然のテコ入れには驚かされたものです。それでいて税抜き当時価格は従来型から2万円しかアップしてない72万9000円だったのですから、お買い得感が俄然マシマシのマシになったのです
身も蓋もないことを書いてしまうなら、「CB750F」のカラーリングをモディファイして塗っただけ……なのですが、これが大当たりしました!
●みんな大好き「CB750F」の1982年モデル……俗に言うこの“FC”がまとったツートーンカラーが「CB750」の新色モチーフになったのは一目瞭然ですね。伸びやかなスタイリングに見えますが、実際に「CB750F」の全長×全幅×全高(各㎜)は、2180×800×1125(「CB750」は2155×780×1100。以下同)、ホイールベース1515(1495)、シート高800(795)、車両重量は250㎏(235㎏)と少しずつ大きくて重いのです。当時価格は64万円。リリースに記載さえれていた年間の販売計画台数はなんと8000台でしたから、文字どおりのケタ違い……
●「CB750」の“FC”然としたカラーリング。赤×白と青×白は有名ですし、よく見かけたのですが、今回資料をまさぐっていて「へぇ、こんなツートーンカラーもあったのか……」と感動したのがブラックとグレーのこちら。なお、「CB750F」ではタンクに「HONDA」ロゴが入っていたのですが、「CB750」ではウイングマークに置き換わっていますね
もともとバイクの出来としては素晴らしいものを持っていた「CB750」です。
●2004年型「CB750」……前述した新装備のほかに、盗難抑止機構としてH・I・S・S(Honda Ignition Security System)の標準装備と、アラームキット(オプション設定)を装着可能な配線が用意されるようになりました。なお、数少ない弱点として挙げていたのが「シート下小物入れスペースの狭さと、ヘルメットホルダーの使いづらさ」。特に後者はあごひものリングをフレームに設けられたフックに引っかけ、シートをロックするというタイプなので荷物満載時は大変……。市販品を用意して別の場所にホルダーを付ける人も多かったと聞いております
オーナーの皆さんが口を揃えて絶賛するのは、ニュートラルなハンドリングと必要にして十分なパワー&トルクが織りなす卓越した乗りやすさ!
●写真は2005年型「CB750」のトラディッショナルかつ質感も高いメーターまわり。速度計内にある液晶部分はオド&トリップメーター(1、2あり)だけでなく時刻も表示してくれました。あ、そういえば「燃料計が欲しかった〜」という声もちょくちょくありましたね……
私も遅ればせながら2004年型以降、さまざまな取材でじっくり「CB750」と付き合える機会が増え、その素性の良さに「ウンウン、ユーザーさんの評価は本当に正しい……」と深く首肯したものです。
動き出した瞬間に分かる“ホンダの良心”が結実したバランスの良さ
車格も大きすぎず小さすぎず、押し歩く取りまわしなどでは若干重いかな?と感じる場面こそあったものの、絶妙なライディングポジションに感動しつつ、いざクラッチをつないで走り始めたら極低速域から高速巡航時まで意のままに振り回せる自由自在ぶりに驚かされます(ジムカーナでの大活躍も納得!)。
●「温もりという伝統」とは、よくぞ言ったもの(^_^)v。空冷モデルであることを逆手に取って、“ナナハン”という代名詞を築き上げた「ドリーム CB750フォア」の血脈であることを高らかに謳ったカタログのコピー。温故知新を肯定的に捉えて以降、地味めなシビ子こと「CB750」怒濤の快進撃が始まったのです
この操縦安定性は、まさに筆者が「CB1000SF」に初めて乗ったときにチョー感激した挙動そのままで、開発陣のマーベラスな調教ぶりに脱帽するしかありませんでした。
燃料タンクは安心の20ℓ容量で一般道+高速のミックスでも、のんびりめに走れば20㎞/ℓオーバーは確実ですから、ロングツーリング用途にもジャストフィット(センタースタンドも標準装備〜!)。
●グッと張り出し、ウイングマークが終わったところからシートへ向かってシュッと絞り込まれていく有機的なガソリンタンク。ニーグリップもしやすい形状なので、膝で挟み込みつつの車体振りまわしがとてもしやすい
もともと全方位にバランスのとれた良いコだったのに、地味な外観ゆえ損をしていた優等生が、母親(元祖シビ子ちゃん!?)のドレスを着てお目々キラキラ(マルチリフレクターヘッドライト新採用)させつつ同窓会に出席したら、ハイパーモテモテになってしまった……というところでしょうか。
●もともとの整ったバランスが適切なメイクアップによって、とても引き立ったということか……。視覚的効果は抜群ですね
厳しい排ガス規制を受けての終焉を前に豪華絢爛な大盤振る舞い!
ホンダも「これはイケる!」と確信したのでしょう。
●マルチリフレクターヘッドライトとは電球の背後にあるお椀のような反射鏡に細かい凹凸をつけることで一定の配光を保つヘッドランプのこと。“素通し”のガラス(or樹脂)が使えるため従来のカットレンズによる配光より照度を高くすることが可能で、ランプシェードを軽く薄くできるためデザインの自由度が広がるなどのメリットがある……。まぁ理屈はどうあれ、このお目々キラキラ感がタマリマセンよね〜
2004年型でそれまでの3倍……一気に600台へ増やされた年間の販売計画台数は、黒×灰を廃止し、青×白を追加した(赤×白は継続)2005年モデルで800台となりました。
●2004年1月30日に赤×白(正式名「キャンディブレイジングレッド」。以下同)と黒×灰(「ブラック」)を発売したと思ったら、同年12月11日に黒×灰を引っ込めて、写真の青×白(パールヘロンブルー)をローンチした「CB750」。同時にホイールとリヤショックのリザーバータンクにゴールドカラーが採用され高級感も大幅アップ! なのに税抜き当時価格は1000円しかアップしない73万円に抑えられていましたから、同2004年に誕生した「mixi」や「Facebook」でも大いなる話題に!?
そちらに黒×赤×金を加えて3色展開とした2007年モデルでも800台を維持。
●2006年の12月20日に2007年モデルとして追加設定された黒×赤×金こと「グラファイトブラック」。「蒔絵(まきえ)」のような色遣いがマーベラスですね〜。なお、2006年は「Twitter」がリリース(日本語ローカライズは2008年〜。「YouTube」は2005年12月15日から正式サービスを開始)されており、ネットでの口コミがバイクの販売に大きな影響を与えるようになってきていました。「CB750」はその波にもうまく乗った……!?
ちなみに2007年にはあの“スペンサー・カラー”も登場しているので300台をポンと上乗せですね!
●2007年3月13日〜4月10日の期間限定受注(上限300台)として3月22日に発売が開始された「CB750・スペシャルエディション」(由来はコチラ)。デジタルシルバーメタリックの車体に紺と青のストライプが施され、車名ロゴも往年を彷彿させる袋文字を採用。タンクにもウイングマークではなく「HONDA」と入ったり、リヤショックのスプリングが鮮やかなファイティングレッドに塗られるなど芸の細かい仕上がりが特徴でした。税抜き当時価格は76万円
最後の最後には「CBX(1000)」トリビュートまでやっちゃった!
そして空冷キャブレター大排気車では通過できないほど厳しい排ガス規制が課されたため、残念ながら最終型となった2008年モデルではスタンダードと
●従来とは比較にならないほど厳しい数値レベルが課せられた「平成17年度二輪車・新排出ガス規制」が、小型自動二輪車の継続車には平成20(2008)年9月1日から適用されるのを受け、2007年10月1日にスタンダードが、同年10月15日にスペシャルが相次いで怒濤のエクストリーム発売! スタンダードたる「CB750」は税抜き当時価格75万円ナリ
●2種類のシート表皮を座面と側面に用い、パイピングを施した質感の高いシートと、ゴールドのフロントフォークのトップボルト、そして“スペンサーカラー版”でもおなじみファイティングレッドのリヤショックスプリングがおごられた「CB750」最終形態。お時間があれば今一度、上へ上へとスクロールして地味め時代のシビ子ちゃんと比較してみてください。笑っちゃう……いや、感動してしまうほどレベチですよ
スペシャルを各2色ずつ用意するという大盤振る舞いで、くだんの台数は1500台へ……!
●「CB750・スペシャル」は1979年に輸出車として北米と欧州を中心に販売した1047㏄空冷並列6気筒エンジンを搭載した「CBX」のカラーリングをイメージさせ、タンク上面とリヤカウルにはブラックのストライプを採用して高級感を演出していました。税抜き当時価格は78万円。写真は「キャンディーブレイジングレッド」
●シルバー塗装が施された前後ホイール、燃料タンクとリヤカウルに採用された軟質の立体エンブレム、クロームメッキのハンドルウェイト、グレーアルマイト仕上げのリヤショックユニット・リザーバータンクなども「CB750・スペシャル」だけの専用仕様でした。こちらのカラーが重厚感あふれる「デジタルシルバーメタリック」
●なお、これがオリジナルの「CBX」です……。うまくリスペクトしていますよね〜(^w^)!
閉店寸前、ジャンジャンバリバリ大フィーバー状態で約16年にわたるモデルライフを全ういたしました。
●これがまた閉店間際の大フィーバースタートというのもパチンコあるあるでして。「なんで明るいうちに来ないんだよぉ!」と心の中で絶叫したことが2回だけですが経験あり……って何のハナシでしたっけ?
……いや本当に(ほぼ)カラーリングだけの変更で、これほど尻上がりに人気が沸騰していったモデルを筆者はほかに知りません。
それもこれも、もともとの完成度が非常に高かったがゆえですね。
地味めなシビ子ちゃんは色の魔法でシンデレラ級の変身を果たし、我々の視覚情報を手玉にとって(笑)実力に見合った人気を勝ち取ったのでした……。
●シンデレラの足のサイズは何㎝だったのだろう?と幼少期に深く考えた記憶がございます。メチャクチャ小足だったのか、よほど特殊な形状をしていたのか。でなければガラスの靴とはいえ合致する人はいるよなぁ、と……。あ、シビ子ちゃんの足は前後17インチです(^^ゞ
めでたしめでたし。
では次回からは、ネタも豊富なスズキ「インパルス」シリーズについてお届けすることにいたしましょう!
●色の魔法を最大限活用した「GSX400インパルス」もあったのですよ〜(^0^)/
あ、というわけで「CB750」は高年式になるほど中古車数が多いのですけれど、今や人気もすごいことに……。あえて相場が落ち着いている地味め時代のシビ子ちゃんを狙うのもアリかな!? シンプルかつ熟成を極めたメカニズムは耐久性もバツグンですし、アフターサービスも万全なレッドバロンなら、安心の中古車ライフを送ることができますよ~!
インパルスという繰り返す衝撃【前編】はコチラ!
CB750という地味めなシビ子【中編】はコチラ!