前回ご紹介したように国内主力モデルである400㏄&250ccクラスにおいて、1980年代中~後半まで栄華を極めたレーサーレプリカ路線からあえて距離を置く車種を展開してきたカワサキ。しかし1989年に突如4ストレーサーレプリカZXR400/250シリーズを発表してライバルたちと一気に肩を並べ、仁義なき戦いへ……。ただ、それゆえにZZ-Rブランドは筋が通ったものとなりました!

ZZ-R250という小粋な相棒【前編】はコチラ

 

ZZ-R250カタログ

●1994年型 ZZ-R250カタログより。この年のマイナーチェンジでヘッドライトが常時点灯式となり、メンテナンスフリーバッテリーも採用されました。評判の良かった外観は不変。こちらのつい数年前となる1980年代後半には毎年、いや遅くとも2年ごとに主力モデルのフルモデルチェンジが敢行されていたことを考えると、1990年代の到来とともに明らかに潮目が変わったのだなぁ、と感じざるを得ません

“秒進分歩”の性能アップこそが絶対的な正義だった!

空前のバイクブームににぎわった1980年代中盤から後半にかけて、ホンダはCBR(400ではVFRも)、ヤマハはFZR、スズキはGSX-Rと各メーカーは高回転高出力化に磨きをかけた4スト並列(V型)4気筒エンジンを搭載するスポーツマシンを続々に投入していきました。

女性ライダー

●レプリカに乗る女性ライダーが急増し、いいところを見せようと頑張る男性ライダーもまた増えて……。ともあれ熱い時代でしたねぇ

 

それらはすぐさまレースシーンへと持ち込まれ、SPクラスのバトルなどで華々しい戦績を残せば速攻で販売台数が跳ね上がる……という好循環さえバッチリ機能していた時代ですからタマリマセン

各メーカーは開発とプロモーションにしのぎを削り、毎年のようにサーキットバトルを視野に入れたモデルチェンジや特別仕様車追加を行なっていました。

 

……カワサキ以外は。

 

そうなのです。押しも押されもせぬレプリカ……いや、今ではスーパースポーツと呼びますねのNinja ZX-10Rで、ここ数年のSBK(スーパーバイク世界選手権)を席巻しているカワサキは1980年代の中盤、400㏄&250ccクラスのレプリカガチバトルから一線を引いて独自路線を突っ走っていたのです。

ZX-10R_2019

●写真は2019年型 カワサキNinja ZX-10R KRTエディションです。絶対的エースであるジョナサン・レイ選手は2015年から2020年までSBKを6連覇。精悍なカワサキレーシングチーム仕様も売れに売れています。そんなレーサーレプリカ界(あえて言う)の覇者にも雌伏の時代がありました

 

レプリカ路線から徹底的に遠ざかっていた時代……

その象徴がこれまで紹介してきたGPZシリーズ、GPXシリーズでした。

巡り合わせというものはあるもので、GPZ400がベスト&ロングセラーを記録し、250は「……」

GPZ1000RX

●大ヒットしたニンジャことGPZ900Rの後継機として登場したGPZ1000RX(写真は北米仕様のNinja1000R)。こちらのデビューが1986年なので、大ヒットしたGPZ400Rの1年後に登場したことになります。本来なら「GPX」ブランドでデビューしていたかもしれない……という話は広く知られていますね

 

後を継いだGPXは400が「……」で、250がヒット作になるというチグハグさが目立ちました。

GPX750R

●GPXを冠したリッターバイクが存在しないため、結果的にシリーズの旗艦となった「GPX750R」。いやぁ〜、今見ると非常に真っ当なカッコ良さを感じますね。友人が購入して大いに気に入っておりましたので、なぜヒットしなかったのか不思議です。やはりアルミフレームでなかったから……???

 

ライバルを徹底的に研究して大きく超える性能を実現!

少し引いた視点で当時の市場全体を眺めてみますと、400&250クラスのランキング上位はレーサーレプリカ群がガッチリとキープしており、特に250㏄クラスはホンダNSR、ヤマハTZR、スズキRG(V)-Γといった2ストレプリカ群も絶好調

対してカワサキは1984年にデビューした「KR250」、翌年に追加された「KR250S」、1988年登場の「KR-1」、翌年にフルモデルチェンジを受けた「KR-1S/R」と、どの2ストモデルも想定していたほどユーザーの支持を得られなかったため、4ストスポーツのGPX250R(-Ⅱ)のスマッシュヒットだけでは厳しいものがあったのでしょう。

KR-1R

●シリンダーが縦に2つ並ぶタンデムツインエンジンを採用していたKR250/Sから、並列2気筒エンジン+極太アルミツインスパーフレームという当時のトレンドに乗っかった構成で1988年に登場した「KR-1」。写真のKR-1Rは翌年、さらなるレースユースに対応した各部改良(クロスミッション、強化クラッチ、大径キャブ採用など)が施された仕様……なのですが、あまりに影が薄く知っている人は少ないかと

 

水面下で起死回生の策を練っていたカワサキ開発陣は、本気と書いて“マジ”と読む技術の研鑽を推進し、1989年2月に突如、同社では初となる250㏄並列4気筒エンジンを搭載した「ZXR250/R」をデビューさせます。

ZXR250

●レプリカ路線にソッポを向いていたと思いきや、突然ライバルを圧倒するハイメカニズム全部載せマシマシで登場してきた「ZXR250」(写真。ZXR250RはSPレース参戦を前提とした特別仕様)。2万1000回転まで目盛りが刻まれたタコメーターにはドギモを抜かれました。さらにフロントサスペンションに世界で初めて倒立式フォークを採用したのは400を含めたZXRシリーズの偉業。アッパーカウルからタンクへつながる“洗濯ホース”(K-CAS)や左アンダーカウルから走行風を導くラムエアシステム(K-RAS)、そしてなんといっても腫れぼったい!?丸目2眼のファニーフェイスにも注目が集まりました

 

いやぁ、ZXR250/Rは本当に衝撃的でしたね。

高校時代、陽だまりの教室で熱く川崎重工業への思いを語っていたKくんからも、

「オガワ元気か? カワサキがぶちすげえ250を出したでよ~」と埼玉の下宿に電話がかかってきたほど。

大学進学を契機に疎遠となっていたためピンク電話の受話器を握ったとき、「え? Kくん? 下宿の電話番号を実家に問い合わせてまでの話ってナンダ? ……新興宗教の勧誘かなぁ?」と警戒し、真意を疑ってしまったことは墓場まで持っていく秘密です(苦笑)。

宗教勧誘

●冗談抜きでKくん事件?が起こる以前に、怪しげな勧誘を受けたことは数知れず……。美人さんが籠絡しにくると、抗うことも大変でした

 

そんなことはさておき、Z250FT以降、「250㏄スポーツ車はツインがベスト!」というポリシーのもと、時代の流れに沿いつつ空冷から水冷となっても、180度クランクの並列2気筒エンジンにこだわり続けてきたカワサキ。

かくいうメーカーが一念発起して作り上げた250㏄並列4気筒エンジンですからハンパなものではありませんでした。

 

なんと同社初(ZZ-R1100より前!)の“ラムエアシステム”を搭載し、当時の250㏄クラスの馬力自主規制値である45馬力を1万5000回転にて余裕で(?)発生。

レッドゾーンが1万9000回転からスタートするというギンギンの超高回転高出力型エンジンをクラスを超えたハイレベルな車体へ搭載して、一躍レーサーレプリカの最前線へと躍り出たのです。

パワー競争から身を引いたからこそ到達できた境地へ

これまでカワサキ250の“顔”として第一線で争い続け、“直4ライバル”とも互してバトルするべく一時期は45馬力までチューンアップされたパラレルツインエンジンですが、すでに1989年、45馬力のZXR250/Rが登場した翌年にデビューするZZ-R250では、その数値にこだわる必要もなくなりました。

メーター

●最高出力40馬力を1万2500回転で発生していた1994年式ZZ-R250のメーター。レッドゾーンは1万4000回転からでした。ちなみにZXR250/Rの最高出力45馬力は1万5000回転で生み出されておりましたから、まさしく“レベチ”ですね……

 

逆にツアラーを標榜するバイクがスーパースポーツと同じ馬力を出していたのでは、販売戦略上もよろしくありません

GPX250R-Ⅱのとき1万3000回転で45馬力を絞り出していたパラレルツインの最高出力は、ZZ-R250に相応しい出力特性を実現しつつ5馬力ダウンの40馬力/1万2500回転仕様に最適化。

一部カタログスペック絶対論者のガールズ&ボーイズからは「せっかく出していたものを下げなくても……」という声が出たものの、奇しくもZXRシリーズと同じ1989年に出たゼファー“パワー至上主義”を崩壊させはじめており、これ以上ないタイミングで1990年にリリースされたのがZZ-R250だったのです。

ZZ-R250カタログ

●1998年型(ZZ-R400との合同)カタログより。デジタル式のイグナイターや低速域を充実させたカムシャフトの採用により「さまざまなスピードでの安定した走行を実現」していることを標榜。「数値では表現されない特色ある魅力が隠されている」との文面も、カタログスペック至上主義者への牽制だったのか……

 

“飛び道具”を持つ同世代ライバルとのバトルもスタート!

なお、ZZ-R400にスズキRF400Rがいたように、ZZ-R250にもスズキから同じ250ツアラージャンルを狙い撃つ刺客が解き放たれました。その名もRF250R……ではなく「ACROSS」! 

アクロス

●♪ア〜クゥ〜ロス、ア〜クゥ〜ロス、ア〜〜〜〜クゥ〜ロォ〜スと、記事で紹介するたび某ロボットアニメーションの主題歌が頭をヘビロテしはじめる楽しい車名、SUZUKI アクロス。まさしくZZ-Rシリーズ、もっと言えば兄貴分?となるRF400Rと同じ1990年にデビューしたスポーツモデルです。なんとこちらは並列4気筒エンジン!

 

今で言えばホンダNC750S/X同様、通常のバイクだとガソリンタンクが設定される部分にフルフェイスヘルメットさえ収納可能な大容量パーソナルスペースを備えたスポーツ車で、今なおコアな人気を誇る……いや名車です。

次回はZZ-R250対アクロスからNinja250R前夜へ続く軌跡まで一気にお届けいたしましょう。

ニンジャ250R

●250フルカウルスポーツ中興の祖、ニンジャ250R! ZZ-R250からバトンを受け継いだ長寿命のパラレルツインを搭載したこのバイクがなければ、令和に続くCBR250RRもYZF-R25もGSX250Rもニンジャ250も、さらにはNinja ZX-25Rすら生まれることはなかったでしょう……スゴイ!

 

あ、というわけでロングセラーとなったZZ-R250はもちろん、フルパワー45馬力を絞り出す往年の250㏄並列4気筒マシンでも、レッドバロンが販売する良質な中古車なら長く乗り続けられること間違いなし! まずはお近くの店舗のスタッフに尋ねてみてくださいね!

(つづく)

ZZ-R250という小粋な相棒【後編】はコチラ

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