すでに広く知られているとおり「ホーネット(Hornet)」とは英語でスズメバチを意味する言葉。実質的な先代車となる端正なスタイリングの「ジェイド」とは一線を画す“攻めた”デザインは、幅広いライダーの注目を集めて一躍人気モデルの座をGET! 後に600、900まで登場し、今また最新モデルに使用されるというブランドの礎となったのです。
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強心臓の250ネイキッド戦線へハチの一刺し!?
その名も「ホンダ HORNET」。
1996年の2月に発売が開始された本田技研工業株式会社期待のブランニューモデルには、排気量もCBウンタラといった表記もなく“スズメバチ”を意味する「ホーネット」という、ともすれば一部の人に忌避されそうな名前が付けられていました。
前身となったモデルが間違いなく多くの人に好印象を持たれるであろう「ジェイド(宝石の翡翠〈ヒスイ〉)」というネーミングでしたから変われば変わるものです。
というのも250㏄4ストロークレーサーレプリカ用に開発された並列4気筒エンジン(GSX-R250R向けですね)をヨーロピアンでシャレオツなネイキッドボディへ包み込んだスズキの「バンディット250」が1989年12月に登場してギョーカイの予想を上回る人気を獲得したことがひとつの契機に……。
同じ年、1989年4月にデビューしたカワサキ ゼファーの快進撃は250㏄クラスにもレーサーレプリカ→ネイキッドへの大転換をもたらしていたのです。
使い勝手を考慮したらソッポ向かれた翡翠の涙
先行したバンディット250へ対抗するかのようにホンダは1991年3月発売の新型車として「ジェイド」をリリースするものの、同時期に登場したカワサキ「バリオス」の後塵をも拝する結果を突きつけられます(同年2月にはヤマハから「ジール」もリリースされていました)。
バンディット、バリオスがネイキッドながらレーサーレプリカ群と同様の45馬力を絞り出していたのに対し、ジェイドは扱いやすさを高めるために低中速トルクを増強するべく、ベースとなったCBR250RR(MC22)のカムギヤトレーンエンジンをキャブレターからカムシャフト、吸排気系、2次減速比などに至るまで大幅に手を加えて40馬力までデチューン(ジールも40馬力組)。
実際にバイク雑誌の仕事として4車を乗り比べる機会に恵まれたのですが、ジェイドの乗りやすさが群を抜いていた記憶は鮮明に残っております。
派手(?)なツートーンカラーを追加するも……
スズカワ45馬力組はガンガン回せる状況下だと最高に楽しいのですけれど、街乗りでは多少気を遣う面もありました。
かくいうホンダの本気が詰まったジェイドは、しかしながら端正すぎるクリーンなスタイリングと最初期のカラーリングが悪く言うと“地味”そのもので、まだまだスペック至上主義の根強く残っていた時代背景までジェイドに仇をなしてしまった……と言えるのかもしれません。
なお、1993年型からはバンディット、バリオスともに(もっと言えば2ストレーサーレプリカ群も含めて250㏄の全モデルが)新馬力規制により40馬力化されました。
ライバル全車が最高出力的には同じ土俵に立ったものの勢力分布図が劇的に変化するまでには至らず、ジェイドは静かに姿を消していったのです。
いや、本当にジェイドは良いバイクでしたよ。
「やられたらやりかえす、倍(ク)返しだ!」
「吹っ切れたホンダは恐ろしい」とは、NSR250Rの回やCB400SFの回などでも述べてきたことですが、この250㏄並列4気筒エンジンネイキッドモデルのシェア争いでも、やはりホンダはライバル以上の魅力を放つモデルをブッ込んできました。
それがホーネット。「捲土重来、ホンダの好きな言葉です」(シン・ウルトラマン参照)。
開発のキーワードは「クラスを超えたインパクティブ・ネイキッド・ロードスポーツ」で、既成概念にとらわれないボリューム感がスタイリングのキモに。
すでに大ヒットモデルとなっていたCB400SFを彷彿とさせる肉感的な燃料タンク採用はもちろんですけれど、ホーネットのホーネットたるゆえんはリヤセクションにこそあり!
並列4気筒エンジンからニョキニョキ伸びる4本のエキゾーストパイプがエンジン下部で姿を消したと思ったら、銀色に光輝くアップマフラーのサイレンサー部分がシュッとテールカウルに沿って現れ、天に向かって突き出てくるではあ~りませんか。
まさにスズメバチが持つ毒針イメージの具現化です!
全身が“クラスレス”な魅力に満ちあふれていた!
そして何と言っても180/55ZR17という極太リヤタイヤの導入がホーネットの個性を形作る決定打となりました。
同ジャンルライバルのリヤタイヤ幅は140~150㎜がほとんど。
さらに言えば同時期のCB400SFも140㎜幅でバイアスタイヤだった時代です。
そこへリッタースーパースポーツ同等(CBR900RRファイアーブレードと同じ!)の“ゴツイ足”がドーンと組み込まれているわけですから、車体後方から眺めたときのインパクトは絶大。
マフラーで隠れることのないスイングアームも極太断面で鈍く輝くアルミ製がおごられていました。
いやもう抜群のバックシャン(英語のback〈背中〉とドイツ語のschön〈美しい、美人〉を組み合わせた和製語)ぶりです。
背中を貫く極太一本の鉄骨がホーネットの真髄
後ろ姿に興奮しながら「ほっほ~」と眺め、少し心拍数が落ち着いてきたころ視線を前方へずらしていくと、アレレのレ?
これまた銀色に輝くスイングアームピボッド部分はあれど、そこから続いているはずのフレームが見あたらない……????
そうなのです。
ホーネットは絶妙な剛性バランスとディメンション、そして特徴的な外観を実現するために新設計のモノバックボーンフレームを採用していたのです。
その構造が生み出すホーネットならではの個性的な走りや、デビュー以降の快進撃ぶりは次回紹介してまいりましょう。
あ、というわけで1990年代の250㏄クラスのメインストリームとなった並列4気筒スーパーネイキッド群はどれも一定以上の支持を獲得しており、中古車市場の在庫も豊富で程度の良い車両が令和の世にも多数存在しております。レッドバロンなら全国300店舗超の直営店が所有する豊富な優良在庫が瞬時に検索できますので、ぜひお近くの店舗へ足をお運びください!