小さい、軽い、カッコイイ!なホンダ「XR100モタード」。しかし、同様のメリットを兼ね備えるモデルはホンダからのみならず、ライバルメーカーからも数多く生まれてきました。ビギナーには様々なことが学べるファーストバイクとして、ベテランならセルフでメンテやカスタムも楽勝だしコースでバトルしますか~的なサブマシ(ー)ンにもなる魅惑の“(主に12インチ)原付二種スポーツ”について語りおろし魔性!
●ヘッドライト下のエアスクープが笑っている口のように見えるので、『ミニオンズ』のスチュワートか『呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)』の漏瑚 (じょうご)に思えて仕方のない筆者(どちらかというと後者かな……。今さらハマってます“呪術”)。なお、左右に大きく張り出したシュラウドは、熱的に厳しくなりがちなエンジンヘッドへ走行風を積極的に誘導する形状となっております
XR100モタードという小さな巨人【中編】はコチラ!
ミニバイクなら手のひらの上で転がす感覚さえ味わえる!?
改めて述べる必要さえないことかもしれませんが、小排気量かつ小さくて軽いバイクというのは、取りまわしがベリーベリーベリー楽チンです。
●この人はペリーさん
もちろん「自転車並みに……」とは言いませんけれど、ふだん250クラス以上の車両と向き合っているライダーなら、何かのきっかけでミニバイク(今回ここでは125㏄以下の車両とさせていただきます)を取り回したとき、理屈抜きに「ワーオ、軽いぜッ!」という感動が心の奥底から湧き上がってくるはず。
そんな“コイツならどうにでもできそうだゾ感”が、駐車場からの取り出しから始まって、公道走行、ご近所探索、ひと目惚れ、プチ林道ラン、渋滞くぐり抜け、告白、ツーリング、通勤ング(?)、フェリー旅、しまなみ海道走破、
●四国:愛媛県今治市と本州:広島県尾道市を起終点に大島・伯方島・大三島・生口島・因島・向島という6つの島を7つの橋で渡る瀬戸内連絡橋ルート。なんと125㏄以下の原付バイクなら走行が可能ということで非常に人気のあるツーリングコースでもあるのです。電車で現地へ向かってレンタルバイクを駆る……という方法もありますが、やっぱり愛車とともに絶景を楽しみたいものですよね!
カスタム、プロポーズ、全塗装、チューニングに結婚、レース参戦等々、あらゆる「ライダーがやってみたいこと」のハードルをダダ下げしてくれることは間違いありません(何やら混線してバイクライフではなくライフ〈人生〉でやりたいことも混ざっていたようです、失礼 (^^ゞ)。
●昭和の時代にゃ「婚約指輪は給料の3ヵ月分!」なんてバブリシャスなテレビCMもガンガン流れておりましたが、景気の悪い話ばかり聞こえる昨今ではどうなっているのでしょうか……? ともあれナウなヤングたちよ、結婚は1度くらいしてみようね!?
ミニバイクだからこそ体験できる奥深い世界だってある
中でも難易度ダダ下がりの最たるものが「ミニバイクレース」ではないでしょうか?
単に「レース」と聞くと「いやいやいや、ボクには無理です、見るだけで十二分です~」と無条件に尻込みしてしまう方が大部分だと思われますが、そこへ「ミニバイク」という条件が付加されるだけで、
「んん~、ジツはちょっと興味あるんだよね、やってみようかな」となりがちなのは、本当に凄いこと!
●ストレートエンドでは軽く300㎞/hオーバー! まさに超人たちが鎬を削る世界最高峰クラスのロードレース(写真は2023年鈴鹿8隊で優勝したゼッケン33「Team HRC with 日本郵便」の高橋 巧選手の激走)は憧れに足る世界……。とはいえ、そこへ到達するべく本格的に始めることはナカナカに難易度が高いもの。駄菓子菓子、50〜125㏄クラスの軽量コンパクトなミニバイクなら心理的&経済的なハードルは一気に下がります(もちろんコース走行時のルールは厳守しないとダメ、絶対)
というわけで、ホンダ「NSR50/80」がメインとなって1980年代後半から1990年代にかけて大ブームを巻き起こし、近年はずいぶん下火にはなったものの根強い人気を誇っている「ミニバイクレース」は、当時を知る“熱い”現役ライダー諸兄諸姉なら、一度くらいは経験した人も多いはず。
●1994年1月に3000台限定、税抜き当時価格26万8000円(消費税3%込み価格27万6040円)で発売されたホンダ「NSR50スペシャルカラー」……実はコイツも購入したんですよ、ワタクシ(バブルだったなぁ)。しかし当然ながらこの貴重なロスマンズ外装のままミニバイクレースを走る勇気はなく、数年間保管したあと別のバイクを買うときに20万円くらいで下取ってもらったような記憶があります。そのときは「思ったより高く売れたなぁ」なんて考えていたのですが、が、が、が! 「反省はしても後悔はしない」が座右の銘である筆者なのですけれど、コイツを簡単に手放したことだけは非常に後悔しております(血の涙)。全長1580㎜、シート高665㎜、車両重量87㎏。49㏄水冷2スト単気筒ピストンリードバルブエンジンは7.2馬力/0.65㎏mのパフォーマンスを発揮!
筆者も八重洲出版モーターサイクリスト誌のアルバイト時代に縁あって参戦経験を得られました。
●モニターを挟んで30年以上前に撮影された自分のアホ顔(ナイキのキャップをかぶっているほうです、念のため)と向き合うというのは涙が流れてくるくらい趣深いものでございますね。というわけで、バイク雑誌の企画も兼ねてスタートしたミニバイクレース体験。「オレって実はうまいんじゃね?」という全く根拠のない“謎自信”は走り出して1周もしないうちに瓦解し雲散霧消いたしました。パワーが少ないからこそ、スロットルワーク、ブレーキング、バンキング、コーナリングほか、全ての所作がスムーズかつ的確でなくてはなりません。テクニックのなさは周回タイムにハッキリと表れるので言い訳もできない……
「たかがNSR50……ちっこい原チャリのレースでしょ? 楽勝楽勝ッスよ」
なんて軽~~~い気持ちでお誘いを受けて、最初の練習でヒザスリできたことに有頂天となっておりましたら(さすが前後12インチタイヤのコンパクトな車体!)、チームのエースが30秒ソコソコで駆け抜けるコースを同じマシンなのに40秒以上かかったという事実にビックリ仰天!
体重とスキルの差が如実に出過ぎることへ愕然といたしました。
●「いやぁ、遅いのは体重がありすぎちゃってぇ〜〜」とヘラヘラみんなに弁解しているそばから、もっと太くてデカいグリズリーのような他チームのライダーが、よりドノーマルのNSR50で自分より好タイムをマークし、な〜んも言えなくなりましたね。ミニバイク、いやバイク全体に言えることなのですけれど、マシンの持てる性能を引き出せるかどうかは本当に乗り手の技術次第なのだ……と思い知りました。なお、編集部の大先輩はこの写真を見て「ボリショイサーカスの熊がNSR50に乗ってるみたいだな」と一刀両断!
それから厳しくも優しい後輩エースくんのご指導ご鞭撻のもと、バターになるくらいグルグルと周回をいたしましたら自分なりに少しずつタイムが削れてきてモウ夢中に……!
●幼少期、夢中になって読んだ絵本『ちびくろ・さんぼ』に出てきた「トラがぐるぐる回ってバターになる」という表現にはトラウマ級の衝撃を受けました。それでママが作ったホットケーキもうまそうだったなぁ(涎)
スタート前の逃げ出したくなるような緊張感、コーナーごとに繰り広げられる肉弾戦(カウルどうしの衝突なんて日常茶飯事)、似たようなウデの前走車からジリジリ引き離されていく悔しさ、自分より遅い人をパスしたときのドス黒い優越感、チーム一丸で耐久レースを走り切ったときの歓喜、アライヘルメットの「衝撃をかわす性能」を実体験した派手な転倒も……(3回)。
●2ストミニバイクレースシーンを語る上で欠かせないのはヤマハ「TZM50R」の存在。1987年6月にデビューして以来、ミニバイクレースの皇帝として君臨し続けた「NSR50」に対抗するべく、ヤマハが総力を挙げて開発、そして1994年2月に発売された超本気カウンターマシンです。F16/R17インチタイヤを持つフルサイズボディの「TZR50R」用として改良を受けたセル付き49㏄水冷2スト単気筒エンジンをさらに磨き上げて(ポート拡大、キャブ大型化(16φ→18φ)、クラッチ強化、大型ラジエター&クロスミッション採用ほか……。7.2馬力/0.63㎏m)、シャシーも当時考えうる限りの最上性能を実現。税抜き当時価格27万9000円(消費税3%込み価格28万7370円)でリリースされたのですけれど、ブーム沈静化のアオリを受けて1997年型が最終モデルに……。もう数年早く世に出ていたなら全く違う世界線になっていたはず!
●マニュアルミッションではないため紹介しようかどうか迷ったのですけれど、ここでお披露目しておかないと22世紀まで取り上げることはないなと思ったので……。ハイ、みんな大好き変態(←とてもイイ意味で)メーカー、スズキが放った奇天烈スクーター「ストリートマジック」……その原付二種バージョンである「ストリートマジック-Ⅱ 110」です。スクーターが持つ手軽さにロードスポーツ車の性能を加味したRV(Recreational Vehicle)発想の斬新なスタイリングを追求した新発想モデル。ロードスポーツ車のような剛性の高いツインチューブフレームを採用し、エンジンはスムーズかつパワフルに最高出力10馬力を発生する113cc空冷2スト単気筒で、変速機はVベルト無段変速方式! 制動力の高いフロントディスクブレーキ、12インチと大径で太い前後タイヤ、アルミキャストホイール(ENKEI製!)、倒立式フロントフォークなどを装備しておりスポーツスクーターらしい高性能と面白さが味わました……って、あらゆる状況下でメチャクチャ激速だった印象しかありません
●角形ヘッドランプやロードタイプのフロントフェンダーを採用した「ストリートマジック110」を追加発売……そうなんです、“50”では標準車的な「ストリートマジック」とその上級モデル「ストリートマジックS」が1997年2月に発売され、RV車的な「ストリートマジックⅡ」は4ヵ月遅れの同年6月にリリースされたのですけれど、なぜか“110”は「Ⅱ」が1998年6月に登場して写真の標準車が同年8月に販売開始……。まぁ、そんなことはともかく、伝説の“通勤快速”として名を馳せた2スト版「アドレス110」の心臓に高剛性なフレーム&フロントフォークが組み合わされた車体構成は手軽にスポーツ性の高い走りを楽しめるもので、一時期はワンメイクレースまで開始されたものです。当時価格はSTD・Ⅱともに24万9000円でありました。あ、“50”の広告宣伝には元TOKIO、かつバイク好きな長瀬智也さんをイメージキャラクターとして起用していましたね。カッコイイAD写真に載っていたキャッチコピーは「オレ、マジ スト、マジ」……(^^ゞ。2000年代の中盤まで細々と売られていた記憶がございます
そしてミニバイクレースは4ストマシン隆盛の時代へと変化
いろいろあって正味2年ほどでチーム活動は終わりを告げてしまったのですけれど、そこで得た膨大な知見は以降の安心安全バイクライフの大いなる糧となっております。
かくいう「ミニバイクレース」。ベース車両の生産終了に伴い2スト勢がフェードアウトしていくのに代わって人気を集めてきた4ストモデルによるレース(モトGPにあやかってか“Mini-Moto”、他には“4MINI”なんて呼ばれていますね)では、まさしくホンダの「XR50/100モタード」や「エイプ50/100」、「グロム」。
そしてカワサキ「KSR110」、
●2002年11月に登場したカワサキ「KSR110」は、111㏄空冷4スト単気筒OHC2バルブエンジン(8.4馬力/0.83㎏m)のミッションに自動遠心クラッチのボトムニュートラル4段変速を採用し、スーパーカブなどと同じくクラッチ操作なしの発進&ギヤチェンジができる仕様。ただ、ミニバイクレースを戦う人は市販パーツを活用してマニュアルクラッチ化する場合が多かったそうです。倒立式フロントフォークや前後ディスクブレーキ&12インチホイールを採用しており、税抜き当時価格は24万9000円(消費税5%込み価格は26万1450円)。2004年からは色変更のみでモデルイヤーを重ね、2009年4月にファイナルカラーを発表(モデルイヤーは2008年)したのち、日本国内のラインナップから姿を消しました
他にも「Z125プロ」といった前後12インチタイヤを履くコンパクトモデルたちが思い思いのモディファイを受けつつ、今もサーキットを全開で駆け抜けているのです!
●カワサキ製12インチホイールモデルの血脈を受け継ぐべく2016年4月から国内導入がスタートした「Z125 PRO」。124㏄空冷4スト単気筒OHC2バルブエンジン(4段変速マニュアルミッション)は9.7馬力/0.98㎏mの実力.「KSR110」とは違って2人乗り仕様で登場。以降、カラーリングチェンジのみを繰り返し、2020年10月発売の2021年モデルが日本向けの最終モデルとなりました……が、カワサキウェブサイト上にある最新ラインアップにはまだ残っております。そちらの消費税10%込み価格は35万2000円ナリ。新車をGETしたい方は、お近くのレッドバロンへ急ぎましょう!
素晴らしいのがチューニングのお手軽さ……というか間口の広さ。
スペシャルパーツ武川、
●法人設立は昭和47年4月。長年にわたってミニバイク向けを中心に高精度なカスタムパーツを愛好者へ供給し続けてきた「スペシャルパーツ武川」さんには本当に感謝しかありません。写真はXR100モタード、エイプ100、NSF100ほかに対応する「Sステージボアアップキット115㏄(カム付属)」で税込み価格は4万1250円。ほかにも山ほど珠玉のキットがそろっております〜
キタコ、ヨシムラ、デイトナ、OVER Racing、POSHほか数多くのメーカーから出ている多種多様なパーツを選べ、メカに詳しい人のアドバイスを受けつつ懇切丁寧な説明書どおりに慎重な作業を心掛けていけば、バイクの心臓……エンジンすら自分自身の手で組み上げる(しかもパフォーマンスアップできる!)、という得難い体験までGETできてしまうのですからシビれます。
各車ともシンプルな空冷単気筒かつ比較的軽量なパワーユニットだからこそ可能な芸当ですよね(冬の間、取り外したエンジンをコタツに載せてヌクヌクとじっくりイジっていた知り合いもいたなぁ……)。
●来年……2024年は辰(たつ)年ですよ! というわけでコタツとかけて眠る辰……龍の可愛らしいイラストで人気取りをしてみました
二輪×四輪は8倍遊びが面白い!(=初代ホンダCITYのコンセプト)
小さく軽い車体のメリットはそれだけではございません。
クルマに載せて移動することも現実性の高い話となるのです。
●ホンダの誇る軽バン「N-VAN」なら、もはやミニバイクとは呼べないサイズのモトクロッサー「CRF125F」と装備一式、なおかつ発電機などまでが楽勝で積載可能! 助手席側のセンターピラーがなく、助手席とリヤシートがフルフラットに格納できるので積みやすさ、荷物へのアクセスがメチャクチャ簡単なのです
もちろんハイエースや(軽)トラックなら全く問題はないのですけれど、自家用で所有している車両がミニバンや軽ワンボックスなら、ラダー類を購入して車内にちょっとした工夫を凝らすだけで「XR100モタード」のようなサイズ感なら積載&固定は十分に可能だったりします。
●いやマジでいいです「N-VAN」。軽自動車だから維持費も割安だし、高速道路巡航もラクラクだし、荷掛けフックもやたらと装着できるし、CB1300スーパーフォアだって飲み込むし……。車検時に代車としてしばらく付き合ったときは冗談抜きで買い換えする直前までいってしまいました
話はズレちゃいますが、デッカイ大排気量車やモトクロッサーなどをこんなコンパクトなクルマの中に……!? といったアンビリーバボーな実例はいくらでも出てきますので“トランポ バイク”などでググってみてくださいね~。
レーサーを積んでクローズドコースへGO!……というのは当たり前の話なのですけれど、車内に積み込むのがナンバー付きの(ミニ)バイクならバヒュン!とクルマを走らせ、到着した先で相棒を下ろしてツーリングをエンジョイする……なんて芸当も思いのまま。
●高速道路を使えば時間を買うことができます(125㏄以下のミニバイクでは走れない……)
「またまたまたエイプ100積んで、しまなみ海道近辺を楽しんできたよ~」と千葉県に住んでいる友人が帰宅がてら土産と自慢話を持ってくるたび、ちょいと口惜しい気分を味わいます(筆者はいまだ実現できておらず……うーむ)。
●友人(独身貴族)はテレワークが常態化した大企業に勤務しているので、ノートパソコンひとつあれば宇宙どこでも仕事ができるという羨ましさ……。ちくしょう、モチベーションが上がるぜッ!
鮮烈な印象を残して嵐のように去って行った“ヒャクモタ”
さて、そんな数あるミニバイクの中で個人的に一番カッコいいと思っている(そりゃあオーナーですから!)「XR100モタード」は、【前編】で述べたとおりホンダ☆モタード大・攻・勢の一環として2005年2月に初代が登場し、
●購入から18年以上が経過した愛車の姿。ヨメさんの練習用マシンとしても大活躍してくれました。個人的にカラーリングはこの初代の塗り分けが一番いいかなぁ〜(そりゃぁオーナーですから!)。縁あってヨシムラマフラーを入手し、装着したらエンジンフィーリングが一変! 今も乗るたびに新鮮な気持ちで走り回っております。しつこいようですが税抜き当時価格は29万円(消費税5%込み価格は30万4500円)でした
2006年12月にはカラーリングチェンジを受けました。
●タイトル写真にも使用した猩猩のような真っ赤っか(エクストリームレッド)仕様とともに登場した、こちらはヤタガラスのような漆黒のブラック。マグテックゴールドメタリックに塗装されたホイールが全体を引き締めています! 税抜き当時価格は29万3000円(消費税5%込み価格は30万7650円)
……と、ここまでは“50”も同タイミングで同様の変更だったのですけれど、“50”のほうは、その2007年版が最終型に……(涙)。
というわけで、2008年1月には“100”のみが2度目の色変更を実施したものの、その2008年モデルにて生産が終了してしまいました。
●赤(炎)、黒、白、金のカラーが見事に調和している最終型「XR100モタード」のロスホワイト。フロントフォークのボトムケースが黒く塗られると、全体の印象は大きく変わるものですね。税抜き当時価格は30万3000円(消費税5%込み価格は31万8150円)
お察しのとおり、その背景には平成19年自動車排出ガス規制が深く関わっております。
“ヒャクモタ”の魂は「エイプ」と「グロム」が受け継いだ!
ん? ということは、同じエンジンを搭載している「エイプ100」も消滅してしまうのか……?
と、ヒヤヒヤいたしましたが、なんと「エイプ」シリーズは“50”も“100”もキャブレターに代えて電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)を採用し、さらに排ガスを浄化するキャタライザー(触媒装置)をエキゾーストパイプ内に装備することで厳しい排出ガス規制をクリアしてきたのです!
●2008年9月から発売がスタートした「エイプ100」。エンジン下部でエキパイがブワッと膨らんでいる部分にキャタライザーが2コも詰め込まれているのです。バッテリー+FI化関連の補機類を新たに装備した関係上、従来モデルではスカスカだったサイドカバーの周辺がカバー類の拡大によりムチムチとボリュームアップ! あ、電源は搭載されましたがセルモーターは付かなかったので始動はキックのみです(汗)。で、税抜き当時価格は29万9000円(消費税5%込み価格は31万3950円)。その8ヵ月前に発表されたキャブレター(バッテリーレス)仕様の標準車が税抜き当時価格25万5000円(消費税5%込み価格26万7750円)でしたので、ちょっとだけ「おお!」となりましたが、すぐ「消滅するよりは百万倍いいよな」と思い直しました。なお、従来型(キャブ仕様)では7馬力/0.71㎏mというエンジンパフォーマンスでしたが、排ガス対策版(FI仕様)は6.3馬力/0.67㎏mとなっております。パワーダウンは致し方ないところではありますけれど、逆に燃費は1.8㎞/ℓ向上し、55.0㎞/ℓ(60㎞/h定地燃費)に……。あ、バッテリーが装備されたことにより、盗難防止に効果的なアラームキットを取り付けることができるようになったこともグッドニュースでしたね〜
FI(フューエルインジェクション)に燃料を噴射させるため必要不可欠な電気式燃料ポンプなどを作動させるため、バッテリーも新たに(相当にムリヤリ!?)装着されており、車両重量は3㎏増、税抜き価格で“100”は4万4000円、“50”が5万円(標準車で比較)もアップするという結果に!
残念ながらそれらの改良は「XR50/100モタード」へは施されなかったのですけれど、「エイプ」シリーズだけでも残してくれたホンダの英断は素晴らしいものでした。
さらにさらに、「XR50/100モタード」の特徴でもあった前・後輪ディスクブレーキとアルミ製キャストホイールを移植した「エイプ50/100 Type D」まで登場ッ!
●上で紹介した標準車と同じタイミングで登場した「エイプ100 Type D」。タンクとサイドカバー上のグラフィックはもちろん、エンジンやホイールなどの配色も差別化されているので高級感はマシマシに! 税抜き当時価格は34万9000円(消費税5%込み価格は36万6450円)
これにはもう、一般ユーザーのみならず、サーキットで限界バトルを繰り広げる“Mini-Moto”レース関係者も大喝采でしたねぇ~。
結局、「エイプ」シリーズは2000年代後半に行われた排ガス規制対策のマイナーチェンジ+Type D追加以降はカラーリングチェンジすらないまま粛々と生産が続き、“100”は2016年、“50”が2017年に生産を終了したと伝え聞いております。
●2008年に配布された排ガス規制対応版「エイプ100/Type D」カタログより。小さくなってしまい恐縮なのですけれど、右下にはMFバッテリーを横倒しにして搭載している写真が掲載されていますね。もともとそんな予定のなかった車体によくぞ押し込めたものだなぁ、と。その分、補機類が周囲へ追いやられてしまいましたが(^^ゞ。スペック数値上は0.7馬力のパワーダウンでしたが、いざ走らせてみれば気持ちよくガンガン吹け上がっていくフィーリングは不変で、一般道路の流れを気持ちよくリードすることができました
とはいえ2013年6月には125の「グロム」が日本デビューを果たしており、スポーツできるホンダの4ストミニバイクの血脈は途切れることなく、現在まで続いているというわけなのです。
●はい、コチラが2013年6月から発売開始された初代ホンダ「グロム」です。生産国のタイでは同年1月から「MSX125」としてリリースされたことは有名ですね。横型124㏄空冷4スト単気筒OHC2バルブのエンジンは最高出力9.8馬力/7000回転、最大トルク1.1㎏m/5250回転を発揮するもの(4速マニュアルミッション)。全長1760㎜、シート高750㎜、車両重量は102㎏で燃料タンク容量は5.5ℓ(60㎞/h定地燃費は63.2㎞/ℓ)。1個の光源でロービームとハイビームを切り替えできるという「コンバインドプロジェクターヘッドライト」が独特でファニーな顔の表情を醸し出しておりました。登場時の税抜き当時価格は29万5000円(消費税5%込み価格は30万9750円)と、なんと「エイプ100」より税抜きで4000円安いという衝撃的プライスは瞬く間にライダーのなかへ浸透していったものです
●はいはいっ、コチラが2016年6月から発売開始された外装一新マイチェン版……通称2代目ホンダ「グロム」です。生産国のタイでは「MSX125SF(ストリートファイター)」としてリリースされたことは有名ですね。エンジンがらみの性能は不変ながら全長1755㎜、シート高760㎜、車両重量は104㎏で燃料タンク容量は5.7ℓ(60㎞/h定地燃費は62.7㎞/ℓ)と数多くの項目が微妙に変化。LED化された小ぶりなヘッドライトによる「VF-1Dバルキリー(by『超時空要塞マクロス』)」ライクなフロントフェイスを始めとして、エッジの効いた外装類、ダウンマフラー、シュッと尻上がりなテール部分に至るまで個人的には一番好みなスタイリングです。登場時の税抜き当時価格は32万円(消費税8%込み価格は34万5600円)。2021年3月にエンジンと外観を一新した通称“3代目”「グロム」の写真と情報については【中編】をご覧ください
かくいう波乱に満ちた歴史において、生産期間こそ短かかったものの鮮烈な印象を残したホンダ「XR50/100モタード」。
●ブロックタイプのパターンを持つタイヤが標準だった「XR100モタード」。ハイグリップタイヤを履いて走行会を楽しんだりちょこまか峠最速マシンを目指すもよし、オフロード志向のタイヤを履いて林道ちょこまかファンマシンを実現させるもよし、楽しみ方は無限大!
読者の皆さまにおかれましては、記憶の片隅にでも留めておいていただけると幸いでございます。
さて、次回からはガラッと趣向を変えて、ホンダ「VFR1200」シリーズについて語らせていただきましょうかね!
●アフリカツイン、レブル1100、NC750X、X-ADVなどに採用され、人気を集めてきたホンダの二輪向け有段式自動変速機の一種……DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を最初に搭載したのが「VFR1200F」なのですよ! ご期待下さい。
あ、というわけでアナタがミニバンやワンボックスカーのオーナーなら、車内に招き入れて高速移動することもやぶさかではない「XR100モタード」を始めとしたミニバイクの数々。レッドバロンの良質な中古車なら、4スト、2スト、年式を問わず、パーツやアフターサービスの心配はご無用となりますよ~。まずはお近くの店舗まで足を運び、どんなことでもスタッフへ相談してみてくださいね!
VFR1200FというV4最高到達点【前編】はコチラ!
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