1982年に登場したジャメリカン「GN250E」をベースに低価格&カワイイ路線だけでなく高い実用性まで盛り込んで大ヒットした「ボルティー」(1994年~2004年)。その正統後継となる「ST250」は、先達から受け継がれてきた249㏄空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンを搭載していま……せんでした! なんと吸排気バルブの数まで酒米のごとく“磨いて(削って)”きたのです!! その驚きの内容とは!?

ST250 Eタイプ

●いやぁ〜Eですね〜、いや、いいですね〜。というわけで、2003年12月12日に発売されたスタンダードモデルたる「ST250」から1ヵ月遅れの2004年1月15日に登場した「ST250 E type」です。こちらはセルフスターターだけでなく、キックスターターやメッキマフラー、グラデーション入りタンクなどを採用し、税抜き当時価格はSTDより3万円ポッキリしか高くない37万9000円(消費税5%込み39万7950円)! なお、Eタイプはキック始動用のペダルが追加されたことなどにより乾燥重量はSTD比2㎏増の129㎏に……。今回の主役である新設計249㏄空冷4スト単気筒OHC2バルブエンジンは20馬力、2.2㎏mという実力。シート高は770㎜、燃料タンク容量12ℓ、60㎞/h定地燃費は55.0㎞/ℓで660㎞という理論上の満タン航続距離を誇りました!

 

 

ST250という美味しいゴハン【前編】はコチラ!

 

ST250という美味しいゴハン【後編】はコチラ!

 

日本酒とかけまして「ST250」と解く。そのココロは……!?

 

筆者(英検4級)が生まれ育った山口県は、今やウルトラワールドワイドスーパーグレイトフェイマスハイパーブランドになった「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造さんが存在しているのですけれど、いやはや日本酒の世界というのはとんでもなくベリーディープ(←しつこい)ですね……。

獺祭ウェブサイト

●1770年、江戸時代の明和7年に創業された旭酒造。以降200年以上の歴史を持つ銘柄「旭富士」を捨てて1989年に「獺祭」を誕生させて以来、驚きの急成長を遂げてきたことは、テレビ東京のビジネス番組や経済誌の特集記事などでご存じの方も多いことでしょう。ちなみに“獺”とはカワウソのことで、カワウソが捕らえた魚を岸に並べて、まるで祭りをするように見えることが「獺祭」の由来なのだとか。ちなみに旭酒造株式会社の所在地である山口県岩国市周東町越2167-4にも“獺”が入っているのです!

 

 

そんなJapanese Sakeを造るときには、まず原料である日本国内産の酒米を「精米」する必要があり、このことを日本酒造りのプロたちは“磨き”と呼ぶのだとか。

 

なんでもお米の表面部分には日本酒にしたとき雑味となってしまう成分があるため、周囲を機械で削って削ってクリアでスッキリ軽快……という味わいを実現させているのです。

獺祭コメ磨き

●茶色い果皮をかぶった玄米の状態から特殊な形状の砥石へ何百回、百数十時間も繰り返し繰り返し通すことによって日本酒では雑味の原因となるタンパク質や脂質、灰分の多い胚芽や胚乳を削っていくという気の遠くなるような作業……。そしてようやく“心白”というお米の中心にあるデンプン質の粒密度の粗い部分(←麹菌がサクサク入っていけるので良い麹ができる)へと到達! まさに小さく丸いビーズのような形状となるのです ※写真は旭酒造ウェブベージ「獺祭ができるまで」より

 

 

元の玄米(100%)から削って残った部分のパーセンテージを「精米歩合」といい、この精米歩合が60%以下の日本酒は「吟醸」、さらに“磨いて”精米歩合が50%以下のものが「大吟醸」と呼ばれている……なんてことは、左党(=お酒が好きでたくさん飲む)ライダーの皆さんなら当然ご存じのことでしょう。

大吟醸で乾杯

●楽しい宴の席、「とりあえずビール!」ではなく一杯目から旨い日本酒で……という人も増えましたね〜。これも獺祭効果!? あ、もちろんライダーならカンパイはその日の全行程を無事終了してからですよ。飲酒運転ダメ、絶対!

 

 

そして前述の「獺祭」は、なんとなんと大大大吟醸クラス(?)の「磨き二割三分」(つまりお米を77%削って、中心部の23%しか使わない!)を実現してギョーカイのドギモを抜き、そのフルーティな味わいで一躍世界に知られる大人気ブランドへの道を駆け上っていったのです。

獺祭2割3分

「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」は押しも押されもしない旭酒造の大エース。しかし今や、さらに上質な「獺祭 磨き その先へ」などもラインアップ。半面お手頃価格な日本酒はもちろん、焼酎、甘酒、梅酒、炭酸水、手指消毒用エタノールほかの“獺祭”もございますので、一度はチェックしてみてくださいね〜

 

 

狙ったテイストを実現するため、あえて削り、省き、磨いていく……。

 

まさに「ボルティー」から「ST250」へ代替わりするときスズキ開発陣が施した4バルブから2バルブへというエンジンを磨き抜いた大吟醸……いや、大改造に通じるところがありますね!(なんとかつながったかな?)

 

王ダイエーと星野阪神の日本シリーズが行われた2003年秋に……

 

さて、そのスズキ「ST250」について、今一度出自を振り返っておきますと、前述のとおり「ボルティー」の後継車種として開発が進められたモデルでありまして、2003(平成15)年10月24日からスタートした第37回東京モーターショーに、あの「G-STRIDER(ジーストライダー)」、「チョイノリSS」らとともにドドーンと参考出品されました。

Gストライダー

●「独自の電子制御式CVTを備えた900ccオートマチックエンジンを持ち、滑空するグライダーのように街なかを駆け抜けることを楽しむ、次世代のATモーターサイクル」……と当時のプレスリリースで紹介されていた「G-ストライダー」。ライダーの体格に合わせてハンドル位置とシート、フットレストの前後位置を調整できるポジション可変システムを採用していました。全体の雰囲気は2014年に登場したホンダ「NM4-01/02」にも通じるものがございますね(リスペクトされたのかな!?)。しかし、スズキのコンセプトモデル……「ファルコラスティコ」、「ヌーダ」、「ストラトスフィア」、「バイプレーン」、「クロスケージ」、「リカージョン」……どれも超絶魅力的で、いつか出してくれると期待だけはしたのですけれどねぇ(^^ゞ

チョイノリSS

●2003年春に出た「チョイノリ」の兄弟車としてショーに登場した「チョイノリSS」。こちらも「ST250」同様、同年12月に速攻で登場! 乾燥重量43㎏……!

 

 

正直、「えええええ~っ? もうボルティーを店じまいしちゃうの? もったいないなぁ……」と思ったのは事実です。

ボルティー2002

●2002年型「ボルティー」カタログより。モデル末期は「Type Ⅰ」と「Type Ⅱ」が統合され、「Type C」と「Type T」は消滅……。税抜き当時価格は35万8000円(消費税5%込み価格は37万5900円)とデビュー当時からすれば少々割高となっていましたが、それでも十分にリーズナブルなプライス! とはいえ200〜250㏄トコトコ軍団の王者ヤマハ「TW200E」は「TW225E」へアップグレードされ、高級路線はカワサキ「エストレヤ」シリーズがガッチリ占有。トリコロールが登場したホンダ「FTR」シリーズも人気急上昇、身内のスズキからは「グラストラッカー/ビッグボーイ」だけでなく「バンバン200/Z」まで登場していたので、そりゃぁ「ボルティー」ラインにテコ入れが必要なことは分かってはいたのですが……

 

 

しかし……、目の前にある「ST250」の実車をつらつら眺めていると「ほっほ~、なかなかイイんでないの? ボルティーで感じた寸詰まり感が……(以下前回の冒頭部分参照)」で、メキメキと株が上がっていったのもまた事実でありました。

ST250 Eタイプ

●真横から眺めるとよく分かる「ST250」の伸びやかさ(写真はEタイプ)。ボルティー比で50㎜も長くなったホイールベース(ほとんどはスイングアームの延長分!)だけでなく、ボディ同色に塗られた立派なリヤフェンダー、そしてその上で鎮座している前後に長〜いタンデムシートが効いていますね。リヤウインカーがテールランプよりすっごく前寄りに付いて(タンデムシートの前後中央より運転席寄り!)、かくいうウインカーのステーにゴムひもを取り回せば、大きな荷物をタンデムシートの上へくくりつけることが楽だったなぁ……ということを、今思い出しました。ちゃんとした荷掛けフックがあればもっとよかったのですけれどね

 

 

 

白状しちゃいますと、ショーの会場ではエンジンが大改良されているだなんて、全く意識していなかったッス(汗)。

 

高回転(高出力)化こそ正義だった1980年代の呪縛から解き放たれた

 

そんな、入場者数の減少傾向へ12年ぶりに歯止めがかかり、142万人強が幕張メッセを訪れた第37回東京モーターショーの興奮も冷めやらぬ同じ2003年の12月12日、正式に発売が開始されたのが「ST250」でありました。

 

注目すべきはそのエンジン←おまいう〈お前が言うな〉)で、「ボルティー」だけでなく「グラストラッカー/ビッグボーイ(前期型)」にも搭載されていた249cc空冷4ストローク単気筒OHC4バルブエンジン(J424型)に、

2000年型グラストラッカー

●2000年2月にデビューした「グラストラッカー」の勇姿。黒く塗られたエキパイがしっかり2本、エンジン前方から飛び出しており4バルブエンジンであることが見てとれますね。「ボルティー」をベースにしたとはパッと見では思えないほど、スッキリした精悍なスタイリングはデビュー早々から市場に広く受け入れられました。当時は排ガス規制の影響もあり250/400のレーサーレプリカ群はすでに全滅。その心臓を受け継ぐ4スト250並列4気筒のカワサキ「バリオス」やホンダ「ホーネット」も存在していましたけれど、特段バツグンに有り難がられるという風潮はなかったと記憶しておりますので、世の中……いや、人のココロの移り変わりというのは本当に恐ろしいものでございます……

 

 

大改良を施した249cc空冷4スト単気筒OHC2バルブエンジン(J438型)が「ST250」へ新たに採用されたのです。

ST250エンジン

●写真はシリーズのSTDモデルとも言える「ST250」のエンジンアップ……ですので、キックスターターはございません。シリンダー冷却フィンの形状や大きさが変更されており、見た目の“押し出し感”がマシマシになっていますね。エンジン腰下に外観上の変更は見受けられませんので、「ボルティー」いや、さらに遡ったルーツである1982年デビューの「GN250E」と同じフレームがそのまま使用できるということ。「流石」と書いて「さすが」と読む……であります

 

 

バルブ数こそ違うものの、2つのエンジンはボア72㎜、ストローク61.2㎜という数値も一緒なら、最高出力20馬力/7500回転、最大トルク2.1㎏m/6000回転というカタログスペックも同一

 

ただ、同時に乗り比べることはできなかったのですけれど、クラッチをつないでから「ストトトトトトトッ!」と発進加速をしていくとき、2バルブ版のほうが小気味よく、さらに言えば騒音も少なめなまま速度をグイグイ増していったような印象が残っております。

バイク前から

●押し並べて20馬力前後に収まっていた200〜250㏄単気筒トコトコモデルたち……とはいえ、市街地の交通の流れをリードすることは簡単でしたね。そんな絶対的な走行性能よりスタイル、乗りやすさ、カスタムしやすさが選択の基準となっていたのです

 

 

筆者のような1980年代レーサーレプリカブームを引きずる、上っ面しか目に入らないスペック至上主義ヤロウは、「1気筒4バルブで成立していたエンジンを2バルブにするなんて技術の退化だ!」と勝手に憤ってしまいがちなのですが……。

 

高回転域までガンガンに回す必要があるなら確かに4バルブのメリットは出てくるのですけれど、最高出力20馬力やそこいらの250単気筒エンジンで低中回転域を充実させたいのなら、2バルブで何も問題はございません

文句を言う人

●35馬力より40馬力がエライ! 40馬力より45馬力が立派! 少しでも軽いことは正義! サーキットアタックタイムが0.1秒でも速ければ勝ち! 最高速は出れば出るだけ大勝利……。絶対性能の絶え間ない向上に脳内ドーパミンをドパドパ噴出していた筆者のような“スペックジャンキー”は、正気に戻るまでとても時間がかかりました(^^ゞ

 

 

逆に構造がシンプルになる→強力なバネの力で閉じられているバルブをカムシャフトの出っ張りで押し下げる労力も2分の1になる→混合気の急速燃焼による爆発的なパワーをより効率的に後輪へ伝えられる……というメリットは相当なものがあるのです。

 

みんな大好き「Vストローム250」や「GSX250R」だって2気筒ではありますが、ライバルメーカーが押し並べてDOHC4バルブを採用するなか、あえてOHC2バルブを貫いて中低速域のトルクや低燃費ぶりを充実させ、超絶に幅広い支持を得ているではあ~りませんか(バイクブーム時代、スペック至上主義ヤロウを率先して生み出してきた張本人メーカーであるスズキが……感涙)。

スズキのVストローム250、GSX250R

●見よ! このシンプル極まりないメカニズムの神々しさを……。こちらがまさに「GSR250」シリーズのために開発され、数々の改良を受けながら現在は「Vストローム250」と「GSX250R」に搭載されている248㏄水冷4スト並列2気筒OHC2バルブエンジン(J517型)です。最高出力24馬力/8000回転、最大トルク2.2㎏m/6500回転と必要にして十分なパフォーマンスを発揮しており、魅惑的な低中速トルクの太さが生み出す乗りやすさは特筆もの! 油冷単気筒でよりパワフル(26馬力/9300回転2.2㎏m/7300回転)な「Vストローム250SX」や「ジクサー250/SF250」が登場しても、その魅力は色あせないのです……

 

 

フリクションを徹底的に減らして日常使用域ファーストの好性能を実現

 

話を戻しますが、「ST250」向け新エンジンのフリクションロス低減への執念は2バルブ化だけに止まらず、外観的にも存在感を増したシリンダーの内部にも注入されており、ピストン(リング)がこすれ合う表面にSCEM(Suzuki Composite Electrochemical Material=直訳するとスズキ複合電気化学材料……ってナンヤネン(^^ゞ)めっきが施されております。

 

このSCEMとは……うろ覚えで恐縮なのですが、確か非常に硬質なシリコンカーバイト(SiC)というセラミック粒子をアルミ合金のシリンダー内面へ高速めっき(ジェット噴流を活用することで一般めっきより圧倒的に速く表面処理する技術)することで鋳鉄製のスリーブ(シリンダーを構成する円筒)を入れなくてもよくなり、軽量化と高い放熱性耐摩耗性気密性を実現するというスズキ独自のハイテクノロジー。

 

なお厳密には、そのめっき〈被膜〉に使われる材料〈めっき液〉をSCEMと言い、そのSCEMを高速でシリンダー内部へめっきする技術はSAP=Suzuki Advanced Platingと呼ばれているのだとか(コチラハシラナカッタ……)。

Vストローム1000めっきシリンダー

●写真は2014年5月「Vストローム1000 ABS」のプレスインフォメーションより。アルミダイキャストシリンダーにSCEMめっきを施すことにより、クソ重たい鋼鉄製の筒……スリーブ(シリンダーライナーとも)が不要になっていることがよく分かります。そりゃ軽量化などに効きますわ〜

 

 

SCEMめっき技術はGSX-Rシリーズやハヤブサを筆頭にスズキが誇る数多くのモデルへ採用されており、それが「ST250」の新エンジンにも満を持して導入された……ということなのですね。

 

2バルブ化による副次的な効果としては、当然ながらエンジンのエキゾーストマニホールド周辺がシンプルになり、エキパイも2本から1本へ減るわけですから軽量化並びにコストダウンまで図れます

 

「ST250」の本命“いいタイプ”(?)は、ちょっとだけ遅れてやってきた……

 

なお、「ST250」のリリースから年も明けて約1ヵ月後の2004(平成16)年1月15日、「ST250 E type」が追加されました。

2005年型ST250

●写真は2005年型の「ST250 Eタイプ」の「マーブルアステカオレンジ×ファントムグレーメタリック」。ビビッドな色遣いもさりげなく着こなす「ST250」……。以降オレンジは2014年の最終型に至るまで折に触れて採用されていき、イメージカラーのひとつとなりました。いまだ街で見かけることも多く、思わず「ハッ!」とさせられます

 

 

ご覧のとおり、こちらのEタイプはセルフスターターに加えましてマニュアルデコンプ式のキックスターターまで装備しており、さらにヘッドランプやウインカー、メーターケース、マフラーなどにはメッキ加飾が施され、ガソリンタンクにはグラデーションや塗り分けを受けたペイントが多く採用される……という、ちょいとシャレオツな仕様でありました。

2004リミテッド

●「ST250 Eタイプ」がデビューした2004年には写真のリミテッドカラーも2色追加され、さらに販売店による特装モデルとしてこちらをベースにしたカスタマイズ仕様まで登場! 気合いが入っておりましたね〜

 

カスタマイズ仕様

●あの名車(?)「SW-1」を彷彿とさせる「ST250 Eタイプ Sカスタマイズ」! レッグシールドやキャブトンタイプのマフラー、ディープフェンダー、オサレなタンデムシート周りのパーツなどを備えたクラシックスタイルがこちら。令和の今なら、メチャクチャ“映え”ること間違いなし

Cカスタマイズ

●「ST250 Eタイプ Cカスタマイズ」は、ミニカウル、セパハン、シングルシート、バックステップ、ゼッケンプレートなどをまとい、往年のカフェレーサー風に仕立てられた仕様でした。……どちらのカスタム仕様とも、この年だけのスペシャル版としてではなく細々とでもずっと選べるように(たとえ部品だけでも)定番化させておけば、カワサキが「W800」や「Z900RS」で展開してきた“CAFE”シリーズのように人気を博したのではないか、と妄想してしまいます。スズキはいつも10年以上早い(汗)

 

 

「ST250」とはエンジンパフォーマンスやガソリンタンク容量、シートなどのスペックについては変わりないのですけれど、マニュアルデコンプ式キックスターターを装備することにより重量はSTDの127㎏より2kg増加して129㎏へ(ともに乾燥重量)。

 

また、セル・キック併用となったため、点火方式は「ST250」のフルトランジスタ方式からCDI方式に変更されていました。

 

 

なお当時価格は「ST250」が税抜きで34万9000円(消費税5%込み36万6450円)だったのですが、それから3万円高い37万9000円(消費税5%込み39万7950円)というプライスタグをつけられて広く世の中へ。

 

 

う〜ん、約20年前は高速道路も(何とか!?)走れる250ベーシックスポーツモデルが税込み40万円を切る価格で売られていたのだなぁ、と思わず遠い目になってしまいます。

遠い目

●同時期のホンダ「FTR」なんて、STDなら税抜き32万9000円でしたからね……。現在の「クロスカブ110」の税抜き33万円とほぼ同等ではナイデスカ!?

 

 

2024(令和6)年の現在、安い安いと言われた「ジクサー250」でさえ48万1800円(消費税10%込み)となり、40万円では買えない原付二種バイクも山ほど……。

2020年型ジクサー250

●2020年型「ジクサー250」は新開発(新概念)の249㏄油冷4スト単気筒OHC4バルブエンジン(26馬力/2.2㎏m)を抑揚あるボディに搭載した期待のニューカマー。発売当時、当然のごとくABSも標準装備していながら税込みで45万円を切る44万8800円という価格にはギョーカイ挙げて大喝采を送ったものです。仕事いや私事ながら、我が家にも1台やってまいりました〜(油冷☆夫婦誕生秘話はコチラ!)

 

 

と、過去をどうこう振り返ったところで何も始まりませんね、失礼しました。

 

先行き不透明な現代、「バイクは欲しくなったときが一番安い!」と断言できるのかもしれません。

 

閑話休題。

 

ここまでちょこちょこ名前が出てきましたが「ST250/E type」がリーズナブルな価格で提供されたのも、当時の“トラッカーブーム”に(スズキとしては珍しく!?)うまく乗った「グラストラッカー」&「グラストラッカー ビッグボーイ」の存在があってこそ。

2000年型グラストラッカー

●2000年4月に発売開始された「グラストラッカー」(上で紹介したのと同じ写真で恐縮です)は、1970年代に米国などの草レースで使われた車両のシンプルかつ精悍なイメージを取り入れつつ、1990年代後半から若者の間で流行していたストリートバイク風の小型部品を装着するなどファッショナブルさを追求したモデルとして登場いたしました。小ぶりなフューエルタンクは割り切った6ℓ容量! スリムなシート(シート高は745㎜)、コンパクトな249cc単気筒4バルブエンジン(20馬力/2.1㎏m)、2本式リヤサスペンションなどの採用により、すっきりシンプルなカッコいいスタイリングだったため人気はすぐに着火! ワイルドな幅広ハンドル、フォークブーツ、スポークホイールなどもイケておりました。 税抜き当時価格は38万4000円ナリ

グラストラッカービッグボーイ

●上で紹介している「グラストラッカー」から遅れること約1年。2001年3月末に登場したのが「グラストラッカー ビッグボーイ」でした。フロントフォークとスイングアームを延長して前後のタイヤ径を拡大。具体的には「グラストラッカー」が前3.00-18、後ろ120/80-17だったのに対し、「グラストラッカー ビッグボーイ」は前100/90-19、後ろ130/80-18と、前後とも1インチずつ拡大! そのためシート高は785㎜となり乾燥重量も2000年版“グラトラ”の124㎏より3㎏多い127㎏へ。ハンドル幅は20㎜広く、高さは30㎜も低く設定、テール周りの意匠などにも変更を受けています。税抜き当時価格は39万4000円。ちなみに同2001年の11月に「グラストラッカー」は、セル始動のみになるなど装備を簡素化することで税抜き当時価格33万9000円を実現! 見事な棲み分けにも成功したのです〜

 

 

こちら「ボルティー」のエンジン、フレームなどをまんま流用しつつ、ダートトラックレーサーイメージの凝縮感ある外装をシュパッとまとったモデルたちで、前者が2000年4月、後者が2001年3月に登場。

アイスマン

●そんなリーズナブルになった「グラストラッカー」にはレッドバロン限定カラーが販売されていました! 写真はその第一弾「グラストラッカー アイスマン」(通称:アイスマン1)で2003年7月に500台限定で発売開始。以降、アイスマン2は2006年7月から300台限定で、アイスマン3は2012年1月より180台限定でリリースされました。アイスマン2&3に関しては、ご興味があればググってみてくださいませ〜。しかし、アイスマン……やっぱり由来は映画『トップガン』のほうですよね、アルプスの氷河で見つかった男性ミイラのほうじゃないですよね(^^ゞ

 

 

そう、お察しのとおりリリースからしばらくは「ボルティー」譲りの“TSCC”4バルブエンジンだったのですけれど、新生2バルブエンジンを搭載した「ST250」が2003年12月に販売開始したのを受けて、2004年の4月に仕様変更された「グラストラッカー」シリーズは両モデルとも、2バルブ化を果たしました。

2004年型グラストラッカー

●2004年4月のマイナーチェンジを受けた「グラストラッカー」がこちら。エンジンは「ST250」同様の2バルブ版へと換装され、そのほかエキパイのシンプル化、フロントブレーキのローター変更、メインステップの形状変更、フレーム改良(タンデムステップ取り付けステーをフレーム溶接からボルトオンタイプに←マフラー交換などが容易に……)、バッテリーをこれまでの開放型からメンテナンスフリータイプ(密閉型)に変更するなどもあり、乾燥重量は2001年仕様の123kgから120kgへ軽減! それでいて税抜き当時価格は33万9000円に据え置かれるなど、スズキ魂が炸裂していました

2004年型グラストラッカービッグボーイ

●同じく2004年4月にマイナーチェンジを受けた「グラストラッカー ビッグボーイ」! 「ST250 E type」と共通の軽量で放熱性の高い高速めっきシリンダー(SCEMを塗布)を採用した新設計エンジン(引き続きセル始動に加えてキック始動を併用した仕様)を搭載。その他の変更点については先述した「グラストラッカー」とほぼ共通しています(乾燥重量は123㎏)。こちらも税抜き当時価格はマイナーチェンジ前の37万4000円が堅持されたのです

 

 

面白いのが、やはり「グラストラッカー」が「ST250」のセルのみエンジン、「グラストラッカー ビッグボーイ」が「ST250 E type」のセル・キック併用式エンジンを採用してきたこと。

 

いっそエンジンの仕様を同じにしたほうが量産効果でコストも下げられる……と思うのですが、妙なところ(?)でこだわってくるのもまた、スズキの愛すべき“社風”なのでしょう。

ジェベル200

●写真は筆者所有の最終型(2005年式)「ジェベル200」。はい、しっかりSCEMめっきシリンダーが採用されておりますよ(ちょいと自慢)。なんで突然出てきたかというと……セル・キック併用式はとてもいいぞ!とひと言物申したいがため。現在、ワケあってバイクになかなか乗れない日々が続いており、ンヵ月ぶり、思い出したようにジェベルの虫干しランをしようとしても当然ながら「プスン」とセルは回らず……。駄菓子菓子! そんなときメチャクチャ有り難いのがキックペダルの存在!!! 何度コイツに窮地を助けられたことか(←ちゃんとバッテリー管理をすればいいだけの話でもあるのですけれど、そこはそれ、にんげんだもの……)。そんなズボライダーを助けると思って、スズキほか各メーカーの皆さん、ぜひセル・キック併用式バイクの復権を……m(_ _)m

 

 

というわけで次回は、厳しい環境諸規制の荒波へ「ST250/E type」&「グラストラッカー/ビッグボーイ」連合が、どう対応していったのかを中心に語らせていただく予定です。

2008年型ST250Eタイプ

●ハイハイハイハイッ! 厳しくなる一方の環境諸規制、環境諸規制でありますよ。特に排ガス中に含まれる有毒成分を低減するにはフューエルインジェクション化(=多大なるコストアップ)が避けられないところ……ハテサテどうなった!?

 

 

あ、というわけで「ST250」も「グラストラッカー/ビッグボーイ」も、そして同時期を生きた“銀シャリ”のように素朴で味わい深い250トコトコ軍団たちは、どれも「シンプル イズ ベスト」をリアルに体感させてくれる魅力にあふれております。レッドバロンの『5つ星品質』な中古車群から相棒となる1台を見つけ出し、安全安心安楽なバイクライフを存分に楽しみましょう!

 

 

ST250という美味しいゴハン【後編】はコチラ!

 

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