クォーター(quarter)」とは4分の1を意味する言葉で、1ℓ(1000㏄)の4分の1=250㏄ということから、1980年代初頭のバイク雑誌は「VT250F」や「RZ250」や「GSX250E」や「GPz250」などのことを「スーパークォーター」なんて呼んでいた時期もあったのですよ(「レーサーレプリカ」はその後……)。いつの世も人気の高いこのクラス。しかし、壊滅状態だった時期も存在してたりして!?

ST250 Eタイプ 赤

●大胆な仕様変更を受けて2008年2月に登場した新生「ST250 E type」。249㏄空冷4スト単気筒OHC2バルブというエンジン本体は踏襲しつつ、吸排気系を大幅にモディファイすることで厳しい排ガス規制をクリアした記念碑的なモデルです。FI化とバーター(?)で残念ながらキックスターターは省かれましたが、マフラーへ遮熱板が追加されている部分には新たに“三元触媒”が組み込まれており、熱を活用する化学反応によって排ガスの有害成分をグイグイと浄化してくれました。気がつけばフレーム塗色も黒から銀になっており、タンクのグラフィックはもちろん、地色の奥行き感もグレードアップしているような……(もろもろの説明は後述!)

 

 

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最近ちっとも聞かなくなった、あのお米ブランドは今!?

 

メインタイトルの「美味しいゴハン」と導入文で書いた「壊滅状態」という言葉がふと繋がり、ふよふよふよ~と筆者の灰色脳細胞に浮かび上がってきたのは……「そういえば一時期隆盛を誇ったお米、“ササニシキ”ってどうなったんだっけ?」ということ(汗)。

稲作イラスト

●改めて言うまでもありませんが、日本人にとって「お米」とは単なる農作物ではなく、魂のよりどころと言っても過言ではない存在……。その有り難さはDNAレベルで体へ刻み込まれているのです。ん? 何のハナシでしたっけ(脂汗)?

 

 

というわけで、またしばしネットの荒波へ飛び込んでみると……。

 

 

かつては東の横綱と呼ばれ、西の横綱“コシヒカリ”と人気を二分していたお米ブランド“ササニシキ”

BE FREE!単行本表紙

講談社 モーニングKC「BE FREE!(1)」著:江川達也 こちらが発売されたのは1984年10月16日……表紙のビジュアルを見て思わず涙が出ました。ちょいと暗黒気味だった筆者の高校時代、この作品でどれだけスカッとして心が救われたことか〜! カッコよくキメている主人公の名前が「笹錦 洸(ささにしき あきら)」で、ライバル(?)が「虎子光 秀一郎(こしひかり しゅういちろう)」という、まさにお米の品種名対決(笑)。予想もつかないストーリー展開、興奮度1000%のバイクアクション、登場する女の子(だけではないけれど)の可愛らしさ&セクシーさ……。電子版もありますので、ぜひ一度はチェックしてみてください!   m(_ _)m

 

 

1963年に宮城県の県立農業試験場古川分場で生まれ、そのさっぱりとして優しく上品な味わいがジワリジワリと人気を集め、1970年代後半から大ブレイク! 

 

1980年代には作付け面積が二次曲線的に増えていき、ピークを迎えた1990年には全国的な作付け割合が11.3%となり、押しも押されもしない2位を獲得いたしました(1位はやっぱりコシヒカリ)。

1990年型NSR250R SP

●1990(平成2)年と言えばホンダ「NSR250R SP」が2500台限定(!)で発売されたことが忘れられません。同年2月にモデルチェンジを受けた「NSR250R(MC21)」をベースに乾式クラッチ、マグネシウムホイール、減衰力調整機構付きの前後サスペンションを装備した4月発売のモデルで、瞬時に完売したと聞いております。出力特性に優れた強力な45馬力のエンジンとしなやかなシャシーとのバランスはまさにレーサーレプリカの最高到達点だったと個人的に思うところ。なお、BE FREE!の笹錦 洸センセが愛用していたバイクは「VT250F(MC08/MC15)」でしたけれど……(^^ゞ

 

 

しかし、1991年のいもち病多発、1993年には記録的に夏が寒い冷夏(冷害)の影響もあり、病気だけでなく気象変化にも弱いササニシキは軒並み大不作に……。

 

結果としてタイ王国などからお米が緊急輸入されるなど、我々の記憶に新しい“平成米騒動”の一因にもなってしまったのだとか。

タイ米イラスト

細長い形状で甘みや粘り気も少ないことが特徴的なタイ米(インディカ米)。パサパサとした食感のゴハンをいかに美味しくいただけばいいのか……。1993(平成5)年、米騒動当時のマスコミは、そればかり伝えていたような記憶が残っております。原因の一端がササニシキの凶作にもあったとは、今回初めて認識しました

 

 

その異常気象による凶作ぶりをキッカケにササニシキの栽培をやめる農家が続出し、現在では市場の0.5%を占めるのみ……という、ほぼ壊滅状態になってしまったということです。

米のイメージ

●ちなみに2022(令和4)年度の作付面積では1位コシヒカリが33.4%で圧倒的なトップに君臨。2位ひとめぼれ 8.5%、3位ヒノヒカリ 8.1%、4位あきたこまち 6.7%、5位ななつぼし 3.2%……。しかし、この2位から5位もルーツをたどれば必ずコシヒカリが出てくるため実質「日本のお米と言えばコシヒカリ」状態なのです!

 

 

まるでバイク(レーサーレプリカ)ブームと呼応するかのような隆盛と衰退ぶりを示した、お米の品種だとも言えますね。

 

 

まさしく250㏄バイクの世界も、1992年の馬力自主規制値強化により最高出力が45馬力→40馬力となり、これにより2ストはもちろん4ストも45馬力を誇っていた高性能モデルたちはポロンポロンと牙を抜かれて人気が凋落していったのですから、ササニシキの動向とほぼ完全にシンクロしています(?)。

田植機

●なお、さっぱりとした味わいのササニシキは繊細なネタの風味をジャマしない!と、今でも多くのお寿司屋さんが好んで使っており、その個性が一般のお客さんのなかでも再評価されつつあるそうです。なるか、反転大攻勢!

 

 

ローパフォーマンス、ロープライスが市民権を得た世界で……

 

ともあれ、長きにわたり絶対王政を敷いていた“レーサーレプリカ”軍団が1990年代の中盤から急速に衰退していったため、250㏄クラスの市場はパイこそ縮小したものの個別ジャンルは「何でもあり状態でヒャッハー!」という不思議なフィールドが形成されたことは覚えておいて損はないでしょう。

 

“レーサーレプリカの大嵐”以降、局地発生したブームをざっと列記してみますと……。

 

特異な太〜いタイヤを持つヤマハ「TW200」に目を付けたカスタマーが、シンプルさを強調する“スカチューン”をしてみたところから「TWブーム」が巻き起こり、それが転じて2000年代まで続く「トラッカーブーム」へと発展。

1998年TW200E

●1998年型「TW200E」。もともとは道なき道を走破するTrail Way(トレールウェイ)マシンとして1987年に登場した「TW200」がルーツで、正直10年近く忘れ去られていたような存在だったものが街乗り&カスタム素材として大化け! 写真の“E”はSTDの角形ヘッドライト&ウインカーをともに丸型とした仕様で人気はさらにヒートアップしていったのです。2002年からは排気量を拡大した「TW225E」となり相変わらずのモテモテぶりを披露しました……が、排ガス規制強化を受けて2007年型で国内向けは生産終了

 

 

1995年に登場したヤマハ「マジェスティ」から「ビッグスクーターブーム」も到来しました。

1995年型マジェスティ

●1995年7月に登場するや「利便性の高い大人の移動手段」として人気に火が付き、1999年10月に発売された2代目(2000年モデル)からナウなヤングがバイブスをアゲる(合ってる?)ド派手カスタムの素材としても大ブレイク! 冗談抜きで一時期は渋谷の街が全てマジェスティを筆頭とする改造ビッグスクーターで埋め尽くされていましたからね……。ただ、2006年6月から駐車違反の取り締まり業務が民間委託され、路肩や歩道を占有していた“ビクスク”が狙い撃ちをされだすや、アッという間に姿を消したのには驚かされました……

 

 

1992年リリースのカワサキ「エストレヤ」が「ネオレトロ趣向」の扉を開き、

1992年エストレヤ

●ホンダ「NR」と同じ(!)1992年5月に登場した小粋な懐古的250モデル「エストレヤ」(詳細はコチラ)。バリエーションを拡大したり、特別仕様車を投入したり、厳しくなるばかりな環境諸規制にも真摯に対応していき、2017年のファイナルエディションまで実に四半世紀……約25年にわたるモデルライフをまっとうしたスーパースターであります!

 

 

1998年に姿を現したカワサキ「D-トラッカー」が全世界的な「モタードムーブメント」を日本のライダーへ分かりやすく伝えてくれました。

1998年D-トラッカー

●1998年2月、「闘う、4スト。」とのキャッチコピーも印象的だった「KLX250」をベースに、前後17インチホイールへオンロードタイヤを履かせた「D-トラッカー」が颯爽と登場! このモデルがヒットしなければホンダXRやヤマハXT/WRといったブランドを冠した250モタード群、さらにはスズキ「DR-Z400SM」というバケモノも国内デビューすることはなかったのかもしれません

 

 

それなのにカワサキ「バリオス」を筆頭にしたレーサーレプリカ軍団の置き土産的並列4気筒エンジンを積む「250ネイキッド」は、まぁソコソコの人気に終始していた……というのも面白いところ(今考えるとアンビリーバブルなことですが)。

1995年バリオス

●バリバリなレーサーレプリカ「ZXR250」向けの水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジン(45馬力)を搭載して1991年にデビューした「バリオス」(写真は1995年モデル=40馬力仕様)。ネオレトロな外観で400㏄市場を席巻した「ゼファー」とは異なり、絶妙に新鮮なスタイリングで勝負に出たカワサキの英断は見事に当たり、1997年にリヤ2本サスとなった「バリオス-Ⅱ」も一定以上の人気を保持。排ガス規制強化を受けての最終モデルとなった2007年型に至るまで堂々のロングセラーモデルとなったのです(詳しくはコチラ)

 

 

そんな中、スズキは1994年にライダーのドギモを抜く低価格ベーシックスポーツという戦略で「ボルティー」を投入し、バリエーションモデルの展開や特別仕様車の順次投入などで2000年代初頭まで確たる存在感を見せつけます

ボルティー タイプ Ⅰ

1994年11月の登場時、税抜き当時価格が“ニッキュッパー”(29万8000円という常識破壊なロープライスで一躍注目を集めた「ボルティー Type Ⅰ」(詳しくはコチラ)。この後、紆余曲折こそあったものの「ボルティー」というブランドは約10年間続くものとなり、後継車となる「ST250」へしっかりバトンをつなぎました

 

 

性能を競わないトコトコのんびりジャンルで“推される”存在に!

 

そして今回の主役「ST250/E type」が2004年モデルとして登場し、前回紹介した「ST250 E type S/Cカスタマイズ」の投入もあって広く話題となり、順調なスタートを切ることができたのです。

ST250ブラック

2003年12月12日に発売された2004年型「ST250」のソリッドブラック。税抜き当時価格34万9000円というのは、約10年前の「ボルティー」登場時の黒1色バージョン(タイプⅠ)と比べても5万1000円しか値上がっておらず(エンジンを4バルブ→2バルブ化するという大改造を筆頭に、外装全取っ替え、足周りも適宜改良を実施しているというのに!)、スズキの低価格提供路線にかける執念がヒシヒシ……いやビシビシと伝わってくるようですネ。本当にトコトコトコトコ、のんびりどこまでも走っていける気持ちよさがありました〜(But、本気と書いて「マジ」と読むモードになると、意外なほど俊敏な運動性能を発揮!)

 

 

その後2005年、2006年と“STD”&“Eタイプ”ともにカラーリングチェンジが実施され、目論見どおりのコンスタントな支持を受け続けていきます。

2006年ST250E

●資料を見ていて、「へぇ〜、こんな色あったっけ?」と新鮮な驚きを得たのが2006年3月に発表された「ST250 E type」のパールシャイニーベージュ×ファントムブラックメタリック。まぁベージュは伝説の……いや名車「SW-1」、だけでなく「ヴェルデ」や「レッツ」ほか原付スクーターなどにもちょくちょく採用されてきた色なのですけれど、やはり「ハッ」とする目新しさがありますね……

 

 

そして2008年2月、「ST250 E type」のモデルライフ唯一にして最大のマイナーチェンジが敢行されました。

 

 

フューエルインジェクションの採用です!

2008年ST250 E

●「スマン! 排ガス規制への対策でど〜してもお金がかかっちゃうから致し方なく値上げはしたけれど、その分質感もド〜ンと上げてきたんで、どうかこらえてぇや……」というスズキ開発陣、魂の弁明心に聞こえてくる気がした2008年型「ST250 E type」のカタログ表紙です。キャンディソノマレッドの塗色に抑えた色調のタンクグラフィック、そして銀色に変更されたフレームの輝きが互いを引き立てあっていて非常に映えます

 

 

高くなるばかりな排ガス規制のハードルを実直に技術でクリア!

 

……これまで何度もこのコラムにて述べてまいりましたが、「ゼファーχ」、「XJR400R」ほか数多くの空冷キャブレター車両を葬り去った(?)非常に厳しいレベルとなる「平成18年国内新排出ガス規制」が250㏄、つまり軽二輪クラスの継続生産車には平成19(2007)年9月1日から適用され、有害物質の規制値をクリアしていないと以降は生産ができないことに……。

高いハードル

●平成18(2006)年の排出ガス規制が求めてきた有害物質の規制値は、ホントにこのイラストのような雰囲気でした。例えば1998年規制(4ストローク)のCO値は13.0でしたのにそれを一気に2.0へ落とせと! 12.0ではありませんよ、2.0ですよ!! 逆に言えばよくぞまぁクリアできたものです……(驚)!

 

 

技術的に困難かどうか、または費用対効果を考慮した結果、泣く泣くモデルライフを終了させる車両が続出するなか「ST250/E type」の動向が注目されましたが、前述のとおりフューエルインジェクション(FI)システムを採用しての登場となったのです。

 

 

従来型では当然ながらキャブレター(気化器)が大気とガソリンとを適宜混合してエンジンへ供給していたのですけれど、機械制御のアナログな装置ゆえに「(気と)(料の)(率)」が常に理想の状態になっているとは限りません。

 

燃料の比率が濃い混合気を燃焼させると窒素酸化物(NOx)の発生こそ低いものの一酸化炭素(CO炭化水素(HC)がドバドバ出て逆に薄いとCOとHCは抑えられるけれど、NOxがバリバリ発生……という厄介さ

燃焼イメージ

●燃料(ガソリン)が計算上、完全燃焼する割合=理想空燃比は燃料「1」に対し、空気が「約14.7」とされています。すると無害な水と二酸化炭素、窒素が多く発生するのですが、割合が増えたり減ったりすると、とたんに有害物質がズドドドド〜ッと発生してしまうのです

 

 

そりゃあもう、気圧、エンジン温度、スロットル開度、排ガス内の残留酸素量などを各部に取り付けられたセンサーで検知し、データを瞬時に解析&フィードバックしつつコンピュータがエンジンへの燃料供給噴射を厳密にコントロールするFIシステムのほうが、幅広い条件下で適切な空燃比の混合気を燃焼室へと送り込めるため、キレイに燃えて排出ガスも有害物質の発生が少ないものとなるのは当然のこと。

メーター FI

●シンプル極まりない「ST250 E type」のメーターまわり。オドメーター下のスズキマーク、その右下に「FI」とあるのがフューエルインジェクションシステムに異常が発生したときに点灯する警告灯ですね。光ってしまったなら、早急に購入したショップへ持ち込むようにいたしましょう!

 

 

さらにマフラー内へ三元触媒(貴金属を媒体とする酸化&還元反応によって上記3種類の有害物質を同時に浄化する装置)を組み込むことによって、キャブ時代とは次元が異なるほどクリーンな排ガスにしてしまおう、ということです。

 

 

ただ、すでにお察しのとおり、FIの導入には大幅なコストアップが不可避なんですね。

お金イメージ

●何をするにしてもお金が必要……。ならばモロモロ頑張ってマネーを大量にゲットし、パァ〜ッ!と使ってしまいましょう(笑)

 

 

燃料を物理的に噴射させるにはガソリンに圧力をかける電磁ポンプが別途必要ですし、混合気がよく燃えるよう細かく霧化させるにはインジェクターの噴出部へも高精度な加工が求められます。

 

絶え間なく変動し続ける燃焼状況の推移まで検出していく各種センサーや、それらから得た情報を迅速に判断して燃料噴出量を指示する頭脳(コンピュータ)だって、そりゃ相当な値段となりますわな……。

 

さらに大問題は三元触媒へ使われている素材ですよ! 

マフラー部分

●三元触媒が排ガスを浄化していくという機能を発揮するには350°C以上の温度が必要だと言われています。つまり冷えている状態では有害物質がスルーしていってしまうのですね。ですので、すぐ温まるエキゾーストパイプ(複数気筒のエンジンならその集合部)と消音部の間に設定されることが多く、マフラーの形状によってはこの「ST250 E type」のように“遮熱板”が追加されることも……(熱がこもるため)

 

 

なんと言ってもプラチナ(白金)、パラジウムロジウムといった貴金属ですから安いわけがないっ(現在、それらをよりリーズナブルな素材に置き換えられないか、世界中で研究が進められているのですけれど……)!! 

 

 

幸いにして「ST250 E type」は地味ながら安定して売れ続け、兄弟車である「グラストラッカー」&

2009グラストラッカー

●2008年2月にFI化を受けた「ST250 E type」から遅れること約7ヵ月……。同年9月にマイナーチェンジを受けた「グラストラッカー」は、FIを採用すると同時に燃料タンク容量を6ℓから8ℓへと拡大! 燃料警告灯が新採用されるとともに、シートの厚みも増されて快適性が大幅アップしており、街乗りだけでなくロングツーリングにも対応できる能力をGET! 税抜き価格は従来型の33万9000円から39万9000円となり、こちらも大幅アップ……

 

 

「グラストラッカー ビッグボーイ」も息の長いトラッカーブームを背景に販売が好調でしたので、

グラストラッカービッグボーイ

●「グラストラッカー」と同じく2008年9月にマイナーチェンジを受けた「グラストラッカー ビッグボーイ」。FIエンジンを新たに搭載し、燃料タンク拡大、シート厚の増大などの改良点は同じながら、こちらはキックスタート機構の廃止フロントフォークブーツの標準装備化、ボディカラーの変更&追加も行われました。価格は従来型の37万4000円から42万9000円へ上昇(ともに税抜き)……

 

 

原価の上昇を大きな(生産台)で割ることによって、1台当たりのコストアップ比率を少なくすることができます。

 

しかしそれでも……(以下は「ST250 E type」マイナーチェンジ時のあれやこれや)

 

エンジンの構造を同一とするため、セル・キック併用仕様は廃止してセル始動のみに(細かいところですが点火方式もフルトランジスタに統一) 

結果的に「ST250」の存在意義がなくなるため売れ筋でもあった「ST250 E type」のみに統合

最高出力は20馬力から19馬力へダウン(実用域でのトルクはちょっと向上

FI化により車両重量は3㎏ほど増えて146㎏

 

結果として、新生「ST250 E type」の価格は税抜きでも42万9000円(消費税5%込みで45万450円)となり、従来型の37万9000円から一気に5万円(ともに税抜き)上昇したことになります。

2012年型ST250E

●2012年3月に配布されたカタログより。すでに単体ものではなく「ST250 E type」+「グラストラッカー」+「グラストラッカー ビッグボーイ」+「バンバン200」の4機種が一緒くたになった全8ページのうちの1ページがこちらです。右下の価格欄をよく見れば税抜き価格が44万9000円となっており、消費税5%込み価格は47万1450円……。このころは色変更や小変更を実施するたび、ちょこまかと価格を上げていくモデルが非常に多かったと記憶しております。リーマンショックを引きずる不況が長引き、販売台数が減っていくと1台当たりのコストアップが避けられないという悪循環……

 

 

当時のスズキができうる限りのことをしても、それだけ値上がってしまうのですからキャブレターからFI化への過渡期、2000年代後半に“バイク大量絶滅(特に250㏄クラス)が巻き起こったというのは、なんの不思議もないことなのですね。

 

 

ちなみに2008年4月、そんなペンペン草も枯れ果てたような荒れ地が広がる250クラスの市場へフルカウルをまとって降臨し、現在まで脈々と続く250スーパースポーツ大爆発のきっかけとなった救世主がカワサキ「ニンジャ250R」でした(詳しくはコチラ!)

●2008年4月5日、消費税5%込みの当時価格で49万8000円!というサプライズプライスで登場したカワサキ「ニンジャ250R」。搭載された水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブエンジンの最高出力は、往年の「45馬力」を知る世代にとってはちょいと物足りない「31馬力」だったものの、待望久しいスポーティなフルカウルフォルムが復活したというだけでギョーカイ全体が「感謝感激! 31馬力でOK牧場!」という雰囲気になったのですから、まさに時代ですね……。あ、ちなみに「ニンジャ250R」も小変更のたびにガシガシ値上がっていきました。まぁ、その背景には円高もあったのですけれど(^^ゞ

 

 

250シングルスポーツの新展開に期待してますよ、スズキさん!

 

さて、FI化を機に大幅値上げを敢行し、その後も細かく価格改定をしていった「ST250 E type」でしたが、もともと廉価な部類に入るモデルでしたし、フレームの塗色変更や車体各部の質感のアップ、加えてセンスのいいカラーバリエーションを適宜展開するという地道な努力が市場に認められ、一定以上のセールスを“ほくほく”と記録し続けていきます。

2012 カタログ

●上で紹介したものからたった5ヵ月後の2012年8月に配布されたカタログより。4モデル一緒くた8ページという体裁は同じなのですけれど、表紙には「SUZUKI STREET BIKE SERIES CATALOG」というタイトルが付けられ、「ST250 E type」は表紙裏トップでの紹介から最下位(4番目に登場)へと一気に格下げ……!? 少年ジャンプの掲載順なら打ち切り寸前のヤバイ位置なのでしょうけれど、新人が入ってこないので追い出されることもありませんでした(苦笑)

 

 

しかし……、さらに厳しい“EURO4”同等の排ガス規制値となるだけでなく、新たにOBD(車載式故障診断装置)まで搭載しなければならなくなった平成28(2016)年排ガス規制には屈するしかなく、2017年9月をもって「ST250 E type」の日本国内仕様生産終了がメーカーからアナウンスされました。

2014年型カタログ

●2014年6月に配布された「SUZUKI STREET BIKE SERIES」カタログ。2012年8月配布分ではトップを獲った「バンバン200」が3番目の紹介となっているのが非常にシビアですね。「ST250 E type」は安定の4番目ですけれど、この表紙を見る限りでは西の横綱といった風情を醸し出しております。なお、4車ともこちらが最終モデルとなり、仕様を変えぬまま3年以上販売されて2017年9月に全車とも生産終了となりました。合掌……

2014年最終

●上カタログの「ST250 E type」紹介欄。最終型に用意されたフォックスオレンジメタリック×グラススパークルブラックのカラーリングはタンクのグラフィックも凝りまくっておりますなぁ。ふと値段を見ると48万4920円……。「また値上げしたんか〜い!」と激オコしてしまうところですが、よくよく税抜き価格を凝視すると44万9000円のまま……。そうなのです2014(平成26)年4月1日以降、消費税が5%から8%へ引き上げられたからこそのプライス改定。分かっちゃいるのですが……「なんだかなぁ!」(加藤あい、いや阿藤快)

 

 

なお、排気量は違えど同様の空冷テイスティスポーツであるヤマハ「SR400」はこの平成末期の高いハードルを意地で(?)乗り越えたものの、令和の排ガス規制は……(詳細はコチラ。タイトルは「CB400SS〜」ですが実質「テンプター」と「SR400」の巻です)

2019_SR400

2017年モデルでいったん生産終了したあと、翌2018年11月に復活を遂げた新生ヤマハ「SR400」(写真)。前述「SUZUKI STREET BIKE SERIES」を全滅に追い込んだ平成28(2016)年規制に適合するため、タンクから自然蒸発するガソリンを大気へ出さないためのキャニスターを装備するなど各部を真摯に改良。エンジン最高出力こそ26馬力から24馬力へ下がったものの、音質にこだわり新開発されたマフラーのおかげで走行中の心地よさは大幅に向上した印象を受けました〜。しかし2021年、ついに白旗を掲げ歴史を閉じるときの“ファイナルエディション”フィーバーは記憶に新しいはず……

 

 

時は流れて2024年の250㏄クラス市場を俯瞰してみると、CBR、YZF、GSX、Ninjaというフルカウルスーパースポーツは相変わらず好調で、アドベンチャー系はVストローム250シリーズとCRFラリーが気を吐き、

Vストローム250SX

●26馬力/2.2㎏mを発揮する油冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンを搭載したスズキ「Vストローム250SX」(※消費税10%込み価格は56万9800円)。2気筒の「Vストローム250」との棲み分けもうまくいっているようでナニヨリ。全世界的にもヒットしているようですから、さらなるバリエーションモデルを提案できる余力はできてきましたよねぇ、スズキさん!?

 

 

クルーザージャンルは「レブル250」がグイグイと牽引。

レブル250

●2017年4月に登場し、2018年から2023年まで6年連続して126〜250㏄販売台数ランキングのブッチギリ首位の座に君臨しているホンダ「レブル250/S」(写真は平成32年(令和2年)排出ガス規制をクリアした2023年型「Rebel 250」※消費税10%込み価格は61万500円)。全国に300超の店舗数を持つレッドバロンでは中古車はもちろん、新車も購入できますよ〜!

 

 

ほかにもネイキッド、デュアルパーパス、スクランブラー、ビッグスクーターなどに、少なくとも1台は代表的な車種が存在しているなか、ポッカリ空いてしまった、ほかほかゴハンを彷彿させるテイスティなベーシックスポーツジャンル。

 

すでにカワサキがそこを狙った「W230」と「MEGURO S1」をスタンバイさせている状況下ではありますけれど、ここはひとつスズキさんにも頑張っていただきたいところ。

W230

●2023年10月に開催されたジャパンモビリティショーにおいて、ワールドプレミア(世界初公開)されたカワサキ「W230」。同時に発表された「メグロS1」の兄弟車という立ち位置で、デュアルパーパス「KLX230」ベースの空冷4スト単気筒OHC2バルブエンジンを搭載。往年の「エストレヤ」を彷彿させる端正かつ可愛らしいスタイリングは、もう絶対にウケるやん!と思わせる仕上がり……。気になる詳細情報はコチラ!

 

 

……ですけれど、同じテイスティ路線では面白くナッシング!

 

せっかく「ジクサー250」と「Vストローム250SX」で大好評を得ている油冷250シングルがあるのですから、空冷然としたフィンを追加するなんてコスト増なことはやめ、その分シャシーにお金をかけて令和の「ネオ☆グース250」を爆誕させるというのはいかがでしょうか……? 

グース250

●1992年1月に登場したスズキ「グース250」(30馬力の油冷エンジン搭載!)。全体としてノスタルジックな雰囲気も醸し出してはいますが、細部をよく見るとセパハン、バック(気味)ステップ、カチ上げマフラー、ペラッペラのウレタン1枚タンデムシートなどなど、ガチの変態的(いい意味)コーナリングマシン。実際、戦闘的なライディングポジションで“その気”になれましたし、コーナリング性能もハンパなかったです。しかし……

グース350

●250よりひと足お先の1991年12月に、フロント倒立フォークにリヤも高級なショックユニットを採用したこの「グース350」(33馬力の油冷エンジン搭載)が登場していたため、どうしても「250」が貧弱装備の廉価版に思えてしまったのですね。もったいない……。「もうジクサー250があるやん!」と言われてしまえばそうなのですけれど、スタイルがちょっと流麗に過ぎると個人的に思っているので、端正かつ過激な方向へベクトルを振って、足まわりをグレードアップすれば訴求力あるニューモデルになりうるのでは!?

 

 

美味しいゴハン油をふりかけてチャーハンにしてもデリ〜シャスなのですから! 

チャーハン

●美味しいチャーハンを作るときのキモは強い火力! バイクメーカーを動かす火力とは販売が好調であること! 面白いモデルを開発してもらうためにも今ある「スズキを買え〜ッ!」

 

 

さて、次回からは、今こそ見直されるべきヤマハのパラレルツインオールラウンダー!「TDM850/900」界隈について語らせていただく予定です。

TDM850

●いやもうホントに心底いつも思うのですけれど「いちいちカッコいいヤマハ」。「TDM850」のカタログもタメ息が出るビジュアルだらけであります……。乞うご期待!

 

 

あ、というわけでキャブ仕様、FI仕様を問わず「ST250/E type」と「グラストラッカー/ビッグボーイ」は、等身大でバイクと付き合いたいライダーにとって最高の相棒となる存在です。レッドバロンの『5つ星品質』な中古車群なら、部品供給もアフターサービスも全くもって心配する必要なし。バイクライフを楽しむことだけに集中できますよ!

 

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