前回に続き、国土交通省都市局街路交通施設課が進めている「まちづくりにおける駐車場政策のあり方検討会」と、その下にあるワーキンググループ(WG)での検討事項/今後の方針について紹介する。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
多様なバイク駐車環境ニーズに対応すべく改定!?
この検討会には、有識者/関係団体/地方公共団体らが集まり、さまざまな角度と視点から今後の駐車場政策について検討されているが、その内容の膨大さから、駐車問題の大きさと広さを実感する。自工会の二輪車委員会もWGに参加しているので、バイクの駐車環境に関する調査報告データや課題も共有されている。
さて、2023年7月に始まった検討会も、2024年の3月に第2回が開催され、その間に実施された各ワーキンググループ(需給マネジメントWG/施設デザインWG)での検討結果や課題を踏まえて、今後の検討方針である「駐車場政策のあり方(案)」が示された。
【今後の駐車場政策のあり方(案)】「第2回検討会事務局資料」(2024年3月27日 国土交通省都市局街路交通施設課)8ページより引用
2025年度を目途に、省令(特定路外駐車場移動等円滑化基準)の改正と技術的助言(まちづくりと連携した駐車場ガイドライン/標準駐車場条例(※1)の改定に動くとともに、引き続き検討する課題として、駐車場データの活用/需給の適正化とマネジメント/原単位の計算方法の適正化に向けた調査検討に取り組むという。なお、ここでいう原単位とは、地方公共団体の附置義務条例(※2)における、車両1台分の設置基準となる床面積のことだ。
(※1)標準駐車場条例:国交省が定めた条例で、路外駐車場や建築物の附置義務駐車施設に関して地方公共団体が定める駐車場条例の雛形となっているもの。(※2)附置義務条例:該当地区内で一定規模以上の建物の新築/増築の際には、敷地内に駐車施設が必要という附置義務制度に基づいて地方公共団体が定めた条例。
二輪車枠への転用は、駐車場に付加すべき機能
専門用語もあって小難しいが、要は、少し時代に合わなくなった駐車場を今後求められる形に変えていきやすくするために、国が示してきた基準/ガイドライン/条例といったものを見直していくということだ。
駐車場は、街づくり(クルマの流入/人流/住環境等)や都市計画に直結している施設だ。高度経済成長期以降、地方公共団体による附置義務条例の効果もあって、マイカー(普通車)向けの駐車場が都市部で爆発的に増えていったが、そこに付随する法律/条例/省令(しょうれい)/ガイドラインも複雑化している。
これらの決まりごとが、エリアごとの賑わいの創出/新しいモビリティの運用/バリアフリー/荷捌き/観光バスへの対応といった多様なニーズに対応したいという際に、足かせになることもあるのだ。
モビリティ革命のなか、駐車場の設置と運用について、地方公共団体や民間事業者が今以上にフレキシブルかつ多様で細かなニーズに対応するために、今見直しが進んでいる。これが検討会の背景であり意義だ。
なお、自動二輪車に関する大きな方向性は2つ。「標準駐車場条例の改正」では、都市部の附置義務駐車場が余り気味という実情をふまえて、余った四輪用駐車枠を二輪車用に“転用”すること。
もうひとつは「ガイドラインの見直し」で、多様なモビリティへの対応に関連し、共同住宅への附置義務とインセンティブ事例の紹介、新基準原付に対応していくことが示されている。
とくに、既存の四輪駐車枠に自動二輪車枠を設けることは「既存の駐車場に付加すべき機能」と位置づけられている。今後に期待だ。
【都市部の地下で見られる四輪からの“転用”】附置義務条例により作られた普通車用駐車場の一部を二輪車用に転用するケースは徐々に増えている。都心部ビルの地下駐車場で採用されることも多い。
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