400で登場した「ZRX」から遅れること約3年。満を持して「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」が1997年モデルとして大型二輪市場へと降臨〜! すでに「ゼファー1100」が切り拓いたビッグネイキッドジャンルには強力なライバルが出そろっていましたが新時代の水冷角Zは独自の魅力を構築し、世紀末覇者となるべく厳しい戦線へと殴り込みをかけたのです!!

●1996年12月に配布されたカワサキ「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」のカタログ(モデル的には1997年型)。【その1】で紹介した最初期「ZRX」カタログと同じくバイクの姿がどこにも見当たらない抽象的な表紙が、逆にカワサキの自信を物語っているようで非常にコーフンした当時モーターサイクリスト誌のニューモデル担当だった筆者でありました。みんな帰った深夜の編集部でニヤニヤしながら封筒を開けて資料を取り出す楽しさは格別でしたね〜(今考えれば変態チック)
カワサキZRXという好漢【その4】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
Contents
バイクライフもカーライフもコイツがなくちゃ始まらない……
ボクたちワタシたちが、我が日本国の公道を堂々と走るために必要不可欠なものと言えば?
そう、気合いと根性!
……ではなく適切な勉強と修練を積んだ上で難しい試験を受け、晴れて合格したら各都道府県の公安委員会が交付してくれる「運転免許証」……ですよね。

●晴れて免許を取得したら安全運転を励行してゴールド免許までいきましょう(特典もイロイロあります)!
ご存じのとおりバイクの免許は時代によってお上の裁量でコロコロと内容が移り変わり、ユーザーはいつも右往左往(涙)。
大きなところでは1975年から400㏄以上の車両へ乗るためのハードルがイッキに上がり(試験場での一発試験で限定解除することが必須に!)、多くのユーザーは泣く泣くチューメン……中型限定自動二輪免許の範囲内でバイクライフを謳歌するしかなくなったのです。

●1975年のバイク免許制度改正には当時、社会問題化していた暴走族の影響もあったと聞き及んでおります。タッチの差でナナハンが遠ざかったパイセンたちからは深き怨嗟の声が……
だからこそカワサキ「Z400FX」やヤマハ「RZ350」、スズキ「GSX400F」、ホンダ「CBX400F」などが大ヒットし、1980年代☆狂乱のバイクブームが巻き起こったとも言えるのですが……(^^ゞ。

●上で列記した車両たちに比べると少々影の薄い1981年に登場したスズキ「GSX400F」ですが、400ccの4気筒エンジンで初めて1気筒4バルブ(当時、小径ボアでは至難とされていた)を実現したのです! 翌1982年に登場した「インパルスGSX400FS」のほうが有名になっちゃいましたけど、ベースはこの車両なのですよ〜!
ビッグバイクが一気に手の届く存在になった免許制度の改正!
それから続いた長い長い忍従の日々が、いろいろあって突如終わりを告げたのは1996年のこと。
新たに「大型自動二輪免許」が制定され、試験場での一発試験以外にヨンヒャク同様、教習所でのビッグバイク免許取得が選択できるようになったのです!

●大型二輪の免許取得がイージーになったことにより、今回の主眼であるビッグネイキッド市場が急拡大したのですけれど、それに勝るとも劣らない勢いで伸びたのがハーレーダビッドソンを頂点とするクルーザージャンル! 足着き性の良さは強力なセールスポイントになりました〜
ぶっちゃけお金と時間さえ用意できれば(ほぼ)誰でも大型二輪に乗ることができる無敵のライセンスが買える(?)ようになったのですから、いち早く対応した教習所は押すな押すなの大盛況。
気軽に通える自動車学校で懇切丁寧な指導のもと、晴れて大型二輪を公道で操れる状態になった人々は当然のごとく憧れのビッグバイク購入へと動き出します。

●多くの場合、平日に試験場へ行き、緊張全開な一発試験に挑戦して落ちたら次回の予約をして……と、合格するまでその繰り返し。正直、限定解除は普通の社会人には無理ゲーでした。それが自動車教習所なら日にちと時間の融通も効きまくり!
スーパースポーツ、ツアラー、マルチパーパス、クルーザーにメガスポーツ……あらゆるジャンルが活性化いたしましたが、中でも高い人気を誇っていたのがビッグネイキッドのモデル群でした。
ビッグネイキッドの【カンブリア爆発】が始まった(^^ゞ!?
その先駆けとなった「ゼファー1100」は1992年に登場しておりベスト&ロングセラーモデルの座に君臨し、1996年にはスポークホイールの「ゼファー1100RS」も追加販売されました。

●1996年型カワサキ「ゼファー1100RS」。1990年代の中盤は各メーカーとも大型バイクが身近な存在になることを見込んで多種多様なモデルを繰り出してきました。スポークホイール採用により乾燥重量はSTDの243㎏から6㎏増えて249㎏へ……。最高出力93馬力/最大トルク9.1㎏mというエンジンパフォーマンスは変わらず。ちなみにホイールベースは1495㎜でした
ホンダが打倒ゼファーを掲げて世に放った「CB1000 SUPER FOUR」は1992年11月に1993年モデルがデビューしており、1994年には「CB1000 SUPER FOUR T2」を導入。

●1994年型ホンダ「CB1000 SUPER FOUR T2」。全身をブラックアウトしつつ丸目一眼のビキニカウルを装着して精悍な雰囲気に〜。筆者的には「T2ってターミネーター2のイメージってこと(笑)!? メチャクチャかっこいいじゃん!」と喝采を送ったものですけれど、世間的には支持を得らなかったようで「T2」はこの年のモデルがそのまま最終型に……。93馬力/8.6㎏m、乾燥重量は237㎏。ホイールベースは1535㎜でした
ヤマハは1994年に「XJR1200」を土俵に上げ、素早く細かい改良を重ねていって人気を獲得(1996年には風防付き「XJR1200R」も!)。

●1996年型ヤマハ「XJR1200R」。「貴様らがビキニカウルなら、こちとらはハーフカウルじゃい!」とばかり開発陣が世に問うたペケジェイアール(方言?)の大型フェアリング仕様。いやもう小生、「GSF1200S」にするかこちらにするか夜も寝ないで昼寝して数ヶ月は悩み続けましたヨ。結局ワタシが選ばなかったせいなのか(自意識過剰)、速攻で絶版モデルに……。後日バクハツしたスーパーボルドール人気を考えると、もう少しだけ頑張っていてくれればとの妄想が膨らみます。乾燥重量は同年のSTD比で1㎏増の(ホントに!?)233㎏。97馬力/9.3㎏m、ホイールベースは1500㎜
スズキは1995年に「GSF1200」を送り出し、翌1996年には後の主流となるハーフカウルバンディットシリーズへつながる「GSF1200S」を……と笑ってしまうくらい規則正しくかつ続々と各メーカーの威信をかけた極上(バリエーション)モデルが爆誕していきます。

●フフフのフ、筆者がいまだに愛してやまない1996年型スズキ「GSF1200S」(写真は同年12月に日本メーカーとしては初となるABS搭載車として追加発売された「GSF1200S-ABS」)。このハーフカウルなスタイリング……多くの人は「ヤマハのほうがカッコイイ」となるであろうことは百も承知二百もガッテン(実際にワタシもそう思ってました)なのですが、取材と称して比較試乗したとき琴線に触れてしまったのですから致し方ナシゴレン。もうすぐオーナーになって丸30年かぁ〜
それぞれ持ち味を明確に主張する各メーカーのネイキッド旗艦
かくいう強敵ひしめくレッドオーシャンへ1996年末、1997年モデルとして打ち込まれたのがカワサキ「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」だったのです!

●1997年型カワサキ「ZRX1100」。あの「ZZR1100」をルーツに持ち、数々の改良が施されてきた1052㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力100馬力/8500回転、最大トルク9.8㎏m/6000回転を発揮! シート高790㎜、乾燥重量は222㎏、ホイールは前後とも17インチのものを採用。ホイールベースはなんと下で紹介しているヨンヒャク「ZRX」と同じ1450㎜! 燃料タンク容量は20ℓでした
先行して発売された400クラスの「ZRX」から実に約3年間ものブランク……。

●1994年型カワサキ「ZRX」。399㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力53馬力/11000回転、最大トルク3.8㎏m/9000回転。シート高785㎜、乾燥重量は185㎏、ホイールベース1450㎜(リヤホイールは18インチ……)。燃料タンク容量は1100より4ℓ少ない16ℓナリ〜
「ゼファー」シリーズのように400デビューから速攻でビッグバイク版が出るものだとばかり筆者も考えていましたが、どのように車両をまとめ上げるべきか……開発陣はライバルの出方を慎重に見極めていたフシがありました。
プロジェクトBIG-1を標榜するホンダの「CB1000SUPER FOUR」シリーズは巨大な燃料タンクと屹立する水冷エンジンが生み出す威風堂々たるスタイリングが特徴的で、なおかつウルトラニュートラルなハンドリングも美点。

●1992年11月に登場したホンダ「CB1000 SUPER FOUR」(実は同年4月に先行して「CB400 SUPER FOUR」がデビュー済み)。燃料タンク容量は23ℓ! 当然のごとく翌1993年の年間登録台数ビッグバイククラスでナンバーワンを獲得いたしました。注目の400㏄クラスももちろんCBですよね?……と思いきや、なんと1993年はホンダ「スティード400」がトップの座に! そう、何度でも言いますがその頃はクルーザージャンルもメチャクチャ人気が高かったのですよ……(^^ゞ
ヤマハの旗艦「XJR1200」は「ゼファー1100」と同じ空冷エンジン(こちらは1気筒あたり4バルブ)ながらデビュー当時ネイキッドスポーツ最大の排気量(1188㏄)であることを主張しつつ美しいスタイリングを構築し、走りはコーナー出口でもグイグイッと曲がっていく特性……。

●1994年型ヤマハ「XJR1200」。デビュー当時からオーリンズ製リヤショックユニット(ライセンス生産で国産化したもの) を採用していたのですね。こちらも1993年3月に「XJR400」をデビューさせ、ちょうど1年後に1200版が登場するという流れでありました。燃料タンク容量は21ℓ。なんと1994年、1995年、1996年と連続してビッグバイククラスの登録台数ナンバーワンに君臨! 特に1996年は400クラスが「ドラッグスター400」、250クラスも「マジェスティ250」がトップに輝き、ヤマハは三冠王を達成しました〜!
そして自らの陣営である「ゼファー1100」は大柄で流麗な重たい物体をエイヤッと振り回す楽しさにあふれた操縦安定性がすでに高い人気を博していたので、同じ方向を目指す必要はありません。

●写真は1992年のデビューから5年が経過した1997年型「ゼファー1100」。もはやザ・定番といった風格が醸し出されていたころ……ですね(^^ゞ。フロント18インチ、リヤ17インチという組み合わせのホイール&タイヤが生み出す独特なハンドリングは「これでなくては!」という熱心なファンも獲得していきました! 燃料タンク容量は19ℓ
ライバルモデルたちを徹底研究して導き出された最適解とは!?
と、いうわけで「ZRX1100」はゼファー、CB、XJRというビッグネイキッド御三家とは明らかに異なる、転舵がクイックで☆スパッと車体が寝て☆クルクルッと旋回していく……という、超軽快かつ安定しているハンドリングを実現させてきました。
なんとホイールベースはヨンヒャクの「ZRX」と同じ1450㎜!

●1997年型カワサキ「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」カタログより。筆者も何度か取材で走らせる機会を得たのですけれど、いやもうスーパースポーツ系もかくやといった俊敏なハンドリングにドギモを抜かれました。先述のビッグネイキッド御三家と比較試乗した日にゃ「これ……同じジャンルですか?」と顔が引きつるほどに。駄菓子菓子! 同等……いやそれ以上に過激なビッグネイキッドも存在していたのですよ。それがスズキ「GSF1200/GSF1200S」!!

●1995年型スズキ「GSF1200」。1156㏄油冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力97馬力/8500回転、最大トルクはなんと4000回転という脅威的に低い回転域で9.8㎏mを発生。シート高795㎜、乾燥重量は208㎏(軽い!)、ホイールベースは「ZRX1100」より15㎜も短い1435㎜! 燃料タンク容量は19ℓ……。日常的な用途での走行性能では並み居るライバルたちより圧倒的に勝っていたと個人的に思うのですけれど、リヤがモノショックだったり全体的なスタイリングがなんかこう……アレな感じだったりして大人気を得るところまではいきませんでした
かくいうビッグバイクらしからぬスーパーコンパクトなシャシーに、直近「GPZ1100」譲りの100馬力エンジンを組み込んで、もう絶対にウケることが確実なローソンレプリカ風味の角Zボディをドッキング。

●1997年型カワサキ「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」カタログより。メカ解説部分……ほかの写真より解像度を上げておりますので拡大して読んでみてくださいませ m(_ _)m
もちろんカワサキが誇るハードな実走テストで、各種セッティングがバッチリ煮詰められていたことは間違いありません。

●1997年型カワサキ「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」カタログより。コンパクトなボディなのですけれど、各パーツの造形が巧みで押し出しの強さもピカイチ! あえてライムグリーンを避けたカラーバリエーションとしているところに余裕を感じましたね〜
念のため角目一眼+ビキニカウルだけでなく丸目一眼仕様も用意して、タイムラグなしの同時発売スタート!

●1997年型カワサキ「ZRX1100-Ⅱ」。丸目一眼ヘッドライトというウケるネイキッド文法により則った仕様も用意してきたところがまた憎いというか何というか。ビキニカウルの「ZRX1100」が税抜き94万円、乾燥重量222㎏のところ、こちらは92万円で221㎏……。色もしっかり2色ずつ用意されていたのですよ
生き馬の目を抜くビッグネイキッドマーケットで、確たる存在感を高めていきました……。
さて次回は空前のビッグバイクブームを俯瞰しつつ「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」だけでなく、「ZRX/ZRX-Ⅱ」の変遷まで含め、与太話全開(!?)にて述べてまいりましょう!

●1998年、ついに……ついに!
あ、というわけで一大ブームを巻き起こした当時のネイキッドモデルたちは、各メーカーの気合いがこもっており走行性能もいまだ一線級! レッドバロンの『5つ星品質』中古車ならアフターサービスも万全なので、ぜひお近くの店舗で探してみてくださいね!
カワサキZRXという好漢【その4】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
