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テーマは「リーンウィズの可能性を広げよう」!?
これまでに2回の「那須MSLライディングスクール」に参加した筆者(佐賀山敏行)。これはビギナーや安全運転技術を強化したいと考えているライダーに向け、年に数回、レッドバロンが運営する那須モータースポーツランドで開催されているスクールである。充実したカリキュラムは、今やベテランライダーと呼ばれるまでになってしまった僕でも目から鱗な内容が盛りだくさんで、思わずリピートしてしまった次第なのだ。
どうしても1年経つと忘れてしまうことも多く、一般参加者のなかにも、復習として毎年参加しているライダーが少なくないそうだ。
>那須MSLライディングスクールに2回目の参加① 「1年経てば、いろいろ忘れるね」編
>那須MSLライディングスクールに2回目の参加② 「今回もやっぱり目指すのは“クリッピングポイント”」編
で、僕も2年も連続でライディングスクールに参加したのだ。「そろそろ次のステップに進んでもいいんじゃない?」なんてことを思ったか思わなかったか……いや、正直に言うと、ForR編集部の担当Mさんに誘われて(笑)、今回「那須MSLライディングカレッジ」に参加することになった。
ただ、ライディングスクールに比べてライディングカレッジはスピードレンジが高く、我が愛車XR BAJAでは「少し厳しいかも」とのこと。そこで今回、僕が参加車両として選んだのは……
SUZUKI・KATANA!
そう、スズキさんから広報車(インプレッションや撮影用としてメディア向けに貸し出される車両)をお借りしたのだ。はっきり言って「役得」というやつです、すみません(笑)。
名車・GSX1000Sカタナを現代風のデザインセンスで再現したネオクラシックモデル。アップライトなハンドルバーは賛否両論あるものの、ツーリングでも疲れ知らず! 腰痛持ちのアラフィフライダーにも嬉しい仕様だ。
実際にこの日の早朝、栃木県那須塩原市の那須モータースポーツランドに向けて東京都小平市を出発したのだが、到着しても疲れ知らず! めちゃくちゃ元気で、これからはじまるカリキュラムにも何の不安もない状態だった。
というわけで、いつものように受付を済ませる。指定された位置にバイクを並べて、開講式。
レッドバロンが主催するスクールは大人気で、今回のライディングカレッジも定員いっぱいとなる30名が参加した。(※2025年からは40名に増員)
メインインストラクターはお馴染みの中井直道さん。熱心かつ的確、分かりやすい指導が好評だ。
ちなみにここでは「ライディングカレッジの位置付け」についての説明がされている。ライディングスクールがビギナーを対象した初級向けレッスンから安全運転技術の向上をメインにしているのに対し、ライディングカレッジでは安全運転技術の向上からスポーツ走行をターゲットにしていることがわかる。
さらにインストラクターの紹介などが続く。ちなみにライディングカレッジはライディングスクール同様、受講者に対してインストラクターが多いことも魅力のひとつ。中井さんの他、5名のインストラクターに那須MSLの竹内支配人をはじめとしたスタッフも参加することで、受講者ひとりひとりにきめ細やかなアドバイスができるのだ。
準備体操も念入りに! バイクは全身を使ったスポーツでもあるのだ。
特に今回はライディングスクールよりもスピードは速くなるとのことなので、しっかりと身体をほぐしておきたいところ。
続いて座学。着座位置や足の向き、乗車時の姿勢などを実車をまじえて教えてもらう。
ライディングスクールと違うのは、乗車姿勢を実演するバイクがスーパースポーツであるということ。この時、「担当Mさんの言うことを素直に聞いて、KATANAで来てよかった〜」とホッと胸を撫で下ろしていたのはここだけの話だ(笑)。
コーナリング時のライディングフォームについてもおさらい。スタンダードな「リーンウィズ」、オフロードバイクなどではお馴染み「リーンアウト」。そして今回はスポーツライディングだし、スピードもアップするということで、「リーンイン」や「ハングオン」に特化するのかと思いきや……。
中井インストラクターの口から出たのは「リーンウィズの可能性を広げよう」という言葉。そう、ライディングカレッジはあくまでも公道走行をよりスマートに走るためのスクールなのだ。速度域が高くなれば上半身を積極的に動かしてリーンインもおこなうが、あくまでもリーンウィズを基本にするとのこと。
リーンウィズで速度域の高いコーナリング? 言われてみれば“ワインディングで無理せずスマートに操っているめちゃくちゃ速いベテランライダー”を見かけることがあるけど……たしかにあんな風に走れたらかっこいいかも!? これは今からはじまるカリキュラムが楽しみだ!
やっぱり基本は「8の字」なのだ
インストラクターのデモンストレーションを見学。リーンインやリーンアウト、そしてリーンウィズとライディングフォームを変えながら、2本のパイロンを8の字走行でクリアしていく。
フォームの違いによって、微妙に回り方が変わる。そんなことは頭ではわかっているんだけどね、実際に見ると「なるほど、こういう風に曲がるのか」と、おおいに勉強になる。
リーンアウトだと、スーパースポーツとは思えないような小回りが可能。というか、スーパースポーツでリーンアウトって(汗)。自在に操るインストラクターに脱帽です。
いよいよレッスンがスタート!! まずは1列になって、コースを完熟走行。
コースを回り終えたら、1班3〜4人に分かれて、それぞれレッスンを受ける。
最初はもちろん「8の字」だ。
「これだとライディングスクールと同じでは?」と思った読者もいるだろう。じつはちょっと違う。
ライディングスクールではリアブレーキを使った回り方を教わったが、今回はフロントブレーキ。フロントブレーキをかけることでフロントに荷重をかけて曲がるキッカケを作るというもの。また、ライディングスクールの8の字はUターンを意識したものだったが、今回はコーナリングをスムーズにおこなうための8の字である。
ここではっきり言おう!
「8の字といえばリアブレーキだ!」と信じ切っていた僕は、いきなり「フロントブレーキを使いましょう」と言われたことに驚きを隠せず、慣れるまでに少し時間がかかった……。ライディングスクールからステップアップする方は、くれぐれもお気をつけください(笑)。
8の字でもメリハリは大切。短い直線でも前に伏せてしっかり加速する。そう、バイクはスポーツなのだ!!
パイロンもメリハリ&スピード!
ひとしきり8の字を走った後は、2班に分かれる。僕の班は奥のストレートに集合。
インストラクターから説明を聞き、さらにデモンストレーションを見学する。
これもライディングスクールと同じようだが、車体のコントロールの仕方などは微妙に異なる。やはり、より速く、メリハリをつけた走り方をするためのコントロール方法を教えてもらえるのだ。
というわけでスタート!
積極的に身体を動かし、車体の向きを変えてパイロンをクリアしていく。向かって右側で並走しているのはインストラクターだ。
走行が終わると、このようにアドバイスがもらえる。ちなみにこの時は「もっと車体を傾けて、キビキビと曲がりましょう」とのこと。
どうしてもパイロンをクリアすることに意識がいってしまい、動きがスローになりがちだが、ライディングカレッジではパイロンをただクリアするのではなく、よりスマートに車体をしっかりコントロールして曲がっていくことが大切なのだ。
繰り返すが、那須MSLライディングカレッジやスクールの魅力は、受講者に対してインストラクターが多いこと。インストラクターが順次受講者の後について見てくれているので、より多くのアドバイスがもらえるのだ。
「フロントブレーキを使って、きびきび曲がる……ふむふむ」なんて呟きながらも、なんとかレッスンをクリアしていく。
普段、いかに自分が頭を使わずに“なんとなく”乗っているかがよくわかる(苦笑)。もっとバイクを操ることを意識しないとなー。
なんて感じで、だいぶ慣れてきたところで、午前のレッスンは終了!
ブレーキングも重要だ!
1時間のお昼休みのあと、午後のレッスンがスタート。座学のあと、ホームストレートでレッスン内容の説明を受ける。
ホームストレートで60km/hまで加速し、パイロンに到達したらフロントブレーキをメインにしてブレーキをかける。そして、指示された位置で停止する。このとき、ブレーキを握る力は一定にすること。
ブレーキは速度が高いと効きにくく、低いと効きやすくなる。ブレーキレバーを握り始めて、徐々に強くしたり緩めたりすると、その特性を感じにくくなってしまう。そこでこのレッスンでは、一定の力でブレーキをかけることでブレーキ自体の特性や愛車本来の制動力を知ることができるのだ。
コースを使って、午前中に習ったポイントを思い出しながら周回する。途中で、一旦停止して半クラだけで進むポイントなどもある。闇雲に速く走ればいいわけではなく、ブレーキやクラッチなど、バイクの特性をしっかり知ることが大切なのだ。
「なるべくゆっくり走る」……簡単なようで、じつはかなり難しい。
【閑話休題】
レッスンとはズレるが、ここでちょっと前から気になっていたことをどうしても書きたい!!
ライディングスクールもそうだが、ライディングカレッジでもコースのあちらこちらを使って、あらゆるレッスンがおこなわれている。コース中にはたくさんのパイロンが設置されているのだが、次のカリキュラムに移るときには、いつの間にかさっきまであったパイロンが撤去されていて、新たなレイアウトに変わっているのだ。これはライディングスクールでもそうなのだが、今回のライディングカレッジでも同様。スタッフの迅速な対応のおかげで、無駄な待ち時間などが一切ないのである。
那須モータースポーツランドのスクールやイベントはストレスフリーな進行カリキュラムで、僕は毎回感心させられている。
やっぱりあります!「アプローチポイント」と「クリッピングポイント」
レッスンもいよいよ大詰め!!
ライディングスクール同様、ライディングカレッジでもアプローチポイントとクリッピングポイントの重要性を示すデモンストレーションがおこなわれる。
見学するのは第9コーナーだ。
走るのはブルーとブラック、2台のGSX-R。先行するのはブルーだ。
ブルーはアウト側に設けられた青いパイロン【2】に接近する。これが「アプローチポイント」。
つまりブルーは、ここからコーナリングを開始する。
先行するブルーはすでにコースの中央あたりを走る。
対するブラックは、青いパイロン【1】をアプローチポイントとして、ここからコーナリングを開始する。
この時点ではまだブルーが先行。この写真だけを見ると、ブラックがアウト寄りなのでイン側を走るブルーが有利に見えるが……。
ブルーはどんどんイン側に入る。対してブラックはまだまだアウト側。
赤いパイロン【2】が、ブルーが最もイン側に寄ったポイント。つまり「クリッピングポイント」である。
ブラックは赤いパイロン【2】に近づく気配は一切ない。
徐々にアウトに膨らみはじめるブルー。ブラックはイン側に寄せてきた!
赤いパイロン【1】がブラックのクリッピングポイント! 縁石ギリギリを走る!!
ブルーはすでに大きく膨らみ、ブラックがその内側に入る。
ブルーは大きくアウト側に膨らんで失速。ブラックはスピードを落とさないどころか、むしろ加速していく。
抜いた! ブラックがイン側から華麗に抜き去った。
というわけで、コーナリングで大切なのはアプローチポイントとクリッピングポイントの見極め。
コーナー外側から大きく入って、クリッピングポイントからは小さく回る! ライディングスクールで習ったことと同じだが、今回はさらにフロントブレーキを使った技術を使うことで、より速いコーナリングを目指すのだ。
ひたすら周回!! 緊張感があるけど、楽しい!
最後は2班に分かれて、交互にコースを周回。もちろんレースではないので、前の車両を抜くのは禁止だが、けっこうペースが速い(汗)。
だけど別班が周回している待ち時間に順番の入れ替えが可能。自分のスキルに合わせて列の後方に下がったり、前方に出られるので安心だ。
前の車両についていこうと必死になると、せっかく習ったことが台無しになってしまうことも。
ここでは急ぐのではなく、クリッピングポイントやブレーキングを意識することが大切。そうすると自ずと速く走れるから不思議だ。
最後は「これでもか!!」っていうくらいに走れて大満足♪
疲れたら遠慮なく休んでいいなので、無理せず自分のペースで走ろう。ちなみに僕は、最後の走行枠では休憩していました(笑)。
午後4時にすべてのカリキュラムが終了。
ライディングスクール同様、充実したレッスンでスキルが大きくアップしたのがよく分かる。ワンランク上のライディングスキルを身につけたいと考えている人は、ぜひ参加してみてほしい!
【那須MSLライディングカレッジ】
参加車両:126cc以上のMT車両(カリキュラム実施のため、126cc以上でも参加できない車両あり)
料金:レッドバロン会員 11,000円、一般 13,000円(税込・見舞金制度あり)
装備:フルフェイスヘルメット(ジェットでも可だが、フルフェイスが望ましい)、プロテクター入りのジャケット・パンツ(後付けでも可)、くるぶしが隠れる高さと踵があるシューズ、指のあるグローブ
定員:40名(2025年より)
公式Webサイト