いやぁ~焦らしに焦らされました。400の「ZRX」はデビューした1994年から実に4年後……「ZRX1100」も登場した翌年となる1998年。ついにファン待望のライムグリーンが降臨~ッ! そしてそれは「ネイキッドモデル=シンプルな単色であるべし」といった「ゼファー」の確立した呪縛からカワサキ自らが解き放たれる嚆矢となったのです!!

1988年型ZRX1100カタログ

●1997年12月に配布された1998年型カワサキ「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」カタログより。表紙にも誇らしげにライムグリーン+ビキニカウルの「ZRX1100」がフィーチャーされております。我々はもう見慣れてしまい当然のように受け止めていますが、よく考えてみれば緑色って相当に尖った色の選択ですよね。なぜこのカラーがカワサキレース活動のイメージカラーになったのか……。よく分かるサイトはこちら。「ウグイス」……(^^ゞ

 

 

カワサキZRXという好漢【その3】はコチラ!

 

カワサキZRXという好漢【その5】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

映画『タイタニック』やGLAY『誘惑』が大ヒットを記録した年に

 

1998(平成10)年……。

 

 

長野県で開催された冬季五輪スキージャンプ団体では日の丸飛行隊が感動的な金メダルを獲得し、

スキージャンプイラスト

「ふなきぃ〜!」……長野オリンピックで1回目の4位から大逆転でトップに躍り出たとき、最後のジャンパー船木和喜選手へ原田雅彦選手が送った絶叫応援。筆者も涙を流しながらテレビで観戦していました。あれから27年……。ナウなヤングライダーはまだ生まれてなかったのか!?

 

 

和歌山ヒ素カレー事件が起こり、パイレーツが「だっちゅ~の」とテレビで言いまくっていた(流行語大賞!)あのころ。

水着のお姉さん

●豊満な双丘を備えたお笑いコンビ(?)女性2人組が、時に水着でキメ台詞を放てばお茶の間はバカウケ……。いい時代でした!?

 

 

バイク業界は平成大不況下にもかかわらず、前年に教習所での大型自動二輪免許取得が可能になったことからビッグバイクブームが巻き起こり、引きずられるように(?)ビッグスクーターやクルーザー、トラッカーなどにも人気がシュシュッと着火……。

1996年型TW200

●1996年型ヤマハ「TW200」。元祖は1987年、極太タイヤで道なき道も進んでいける特異なオフ車として登場するも10年近く低空飛行を続けていたモデル……だったのですが、スカチューン(死語!?)の素材として大ブレイク! 叩き売られていた中古車は速攻で枯渇したものの、新車でさえ税抜29万9000円という低価格であることが発見されてしまい手のつけられない状況へ……。実際、1997年から2000年まで4年連続で250㏄クラスの登録台数ナンバーワンの座へ君臨し続けました。ちなみに木村拓哉さんがTWを駆ることで有名なドラマは2000年初旬放送ですから、その数年前からティーダバー(これも死語!?)ムーブメントは燃えさかっていたのです。モトショップ五郎さん……取材したなぁ(号泣)

 

 

ただし、排ガス規制が初めて施行されたのもこの年で、騒音規制も含めた環境諸規制がジワリジワリと二輪ギョーカイに暗い影を落とし始めてもいました。

 

「(排気量が)大きいことはいいことだ」という謎の風潮が……

 

そんな1990年代のどん詰まり、ゼファー、CB、XJRという高い人気を集めたネイキッドブランド御三家は、ZRXも加わった四天王(?)となり熾烈なシェア獲得合戦で鎬を削ることに。

1997イナズマ

「ゴルァ! オガワァ!! スズキをシカトすんじゃねぇぞ!」一部感染者様からお叱りを受けそうですが、そんなことは百も承知、二百も合点、三百……(以下略)。まず、当時のスズキ400ネイキッド戦線には「バンディット」と「GSX400インパルス」が存在しているなか新たに写真の「イナズマ」が1997年に投入され、ちょいと混乱をきたしておりました。このイナズマ、唯一無二の399㏄油冷エンジンを搭載しているので個人的には大ヒットしてほしかったのですけれど……

 

 

今となっては信じられないことですが、当時は同じジャンルなら排気量が大きければ大きいほどエライ!という意味不明な雰囲気が蔓延しており、ビッグネイキッドの世界でも1000(CB)1100(ゼファー&ZRX)より1200のXJRのほうが魅力的ィ!と感じるオーナーが数多く出現したのです。

イナズマ1200

●まさしくスズキも1998年に「イナズマ1200」をビッグネイキッ土俵へ上らせたものの……。全長は400版と同じ2140㎜(もちろん車体各部は強化済み)というコンパクトさで、パッと見どちらがどちらなのか分かりづらい。その点、前述の四天王は排気量ごとにしっかりスタイリングも区別化がなされており流石。「排気量が1300になったところで最高出力は自主規制により100馬力で横並び。だったら軽量コンパクトのほうがいいじゃん!」というスズキの主張は時代に黙殺されました(涙)。なお、1156㏄油冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンはしっかり100馬力で10.0㎏mというトルクを4500回転で発生し、シート高は780㎜。車両重量229㎏はライバルより大幅に軽い!

 

 

実際に1994年、1995年、1996年と「XJR1200」が登録台数ナンバーワンの座を3年連続で獲得するというモテモテぶりを発揮。

1996年XJR1200

金色に輝くブレンボキャリパーにオーリンズリヤサスというキラーコンテンツもしっかり備えて、完熟なった1996年型ヤマハ「XJR1200」。いやぁ、シュッとしておりますなぁ……。エンジンは1188㏄空冷4スト並列4気筒DOHC4バルブで97馬力/9.3㎏mというパフォーマンス。シート高780㎜、車両重量は255㎏でした

 

シェアトップを争うホンダとヤマハは「1300」で勝負してきた!

 

ならば!とばかり1998年3月にホンダがイッキに車名の数字を300も増やしてきた「CB1300 SUPER FOUR」をリリース。

CB1300SF

100馬力/12.2㎏mを発揮する1284㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンを中心に、練りに練った車体を構築することで見た目の迫力と乗りやすさを高い次元で両立! リヤサスペンションにはホンダの市販車として初採用となるダブルプロリンク機構を採用。2本ショックにリンクを介することで路面追従性を高めていました。グイッとえぐられた形状によりシート高は790㎜。ただし、凝った車体のせいかセンタースタンドも備えてないのに車両重量は273㎏……

 

 

この新生プロジェクトBIG-1モデルは、1993年の「CB1000 SUPER FOUR」以来となるトップセールスの座を1998年に奪還いたします(なお、1997年は1300スーフォアの露払い(?)として1997年3月、同じ1300エンジンを搭載して生まれたパワークルーザー「X4」が見事に獲得~)。

ホンダX4

●1997年型ホンダ「X4(エックスフォー)」。エンジンは翌年に出る「CB1300 SUPER FOUR」とほぼ共通ながら、点火時期や吸排気系は独自のもので最大トルクは0.1㎏m多い12.3㎏mでした。車両重量は270㎏ながら730㎜という低いシート高でリターンライダーへ強く訴求! 1997年のビッグバイクベストセラーモデルとして歴史に名を残しました。2000年にはさらに10㎜もシート高を落として720㎜とした「X4 Type LD」へモデルチェンジされましたが、こちらが最終型に……

 

 

ヤマハも「そろそろ来るな……」と考えていたのでしょう、なんと1300スーフォアと全く同一タイミングとなる1998年3月に排気量を拡大した「XJR1300」へとモデルチェンジを敢行!

1998年型xjr1300

1188㏄から1250㏄まで排気量が拡大された空冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは当然のごとく100馬力を発生し、最大トルクは10.0㎏mへ。パッと見で「XJR1200」と受ける印象はほぼ同じながら、よくよく観察すると全てが異なっているというモディファイのうまさよ。新車担当としてモーターサイクリスト編集部でポジフィルムを眺めた瞬間、思わず唸ったフルモデルチェンジでした! しかもシート高は従来型から5㎜下がって775㎜へ。車両重量も2㎏減って253㎏に(センタースタンド標準装備で)! 

 

 

この2台は以降も熾烈な頂上決戦を繰り広げてまいります。

 

シンプルかつ印象的な往年の名カラーリングを最新車へ昇華

 

対するカワサキは……。

 

 

1992年に登場してビッグネイキッドジャンルを切り拓いた「ゼファー1100」ですが、もともと水冷だった北米向けグランドツアラー「VOYAGER XII」(排気量は1196㏄)のパワーユニットをシリンダーとヘッドなどを大改造してダウンサイジング化を行ない1062㏄の空冷(!)4スト並列4気筒DOHC2バルブエンジンにしたという経緯があり、大排気量化は無理ゲー……というか本末転倒感がありあり(技術的にも困難だったとか)

ZG1200ボイジャー

●1986年型カワサキ「VOYAGER XII(ZG1200 VOYAGER〈ボイジャー〉とも)」。1983年にあの水冷1300㏄並列6気筒の「Z1300」エンジンを搭載する「ZN1300 VOYAGER」 が登場するも乾燥重量で約390㎏(※諸説あり)と重すぎたため、新開発の並列4気筒を組み込んで乾燥重量320㎏程度(アバウト大人ひとり分……約70㎏ものダイエットに成功!)となったこちらへモデルチェンジ。最終型となる2003年モデルまで安定した人気を誇ったとか

1996年型ゼファー1100

●どこをどう魔改造したら北米横断ツアラーが日本人大好きビッグネイキッドになるのか(^^ゞ。ボイジャーの水冷エンジンを空冷化しようと決めたカワサキ開発陣の発想と英断に拍手(写真は1996年型「ゼファー1100」) あ、結局「ゼファー1100」シリーズは93馬力〜86馬力で推移しつつ絶版となり100馬力バトルからは距離をとり続けたのです

 

 

実際、ゼファーの長兄は2007年のファイナルエディションまでスープアップを行ないませんでした

 

 

片や「ZZR1100」系の1052㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載する「ZRX1100」は1997年に登場したばかり

ZRX1100ミッドナイトパーフル

デビューした1997年型にのみ用意されたミッドナイトパーフルをまとう「ZRX1100」(この色は丸目一眼の「ZRX1100-Ⅱ」にも用意)。これはこれでカッコいいのですけれど、やはりこのスタイリングなら緑ベースの2本ライン入りカラーがほしいところ……

 

 

ライバルたちが心臓のキャパシティを次々に増大させてきたからといって、レーサーレプリカ全盛期のように1年単位でホイホイとパワーユニットを大改造することは難しい状況でした。

バブル崩壊イラスト

1991年に日本が好景気に沸いたバブル景気が終焉し、不動産の価格や株価が大きく下がり景気がどんどん悪化。するとやはりバイクも売れなくなるわけで……。当然、改良やモデルチェンジの頻度も減っていくというもの

 

 

と、なればここで伝家の宝刀を抜くしかありませんよね~。

 

 

そう、カワサキレース活動のイメージカラーとなっていたライムグリーンの登場です!

 

ライバルが正式に発売される前に超強力なカウンターパンチ!

 

ホンダ「CB1300 SUPER FOUR」、ヤマハ「XJR1300」ともども、1997年の10月25日から幕張メッセで開催された第32回 東京モーターショーにて華々しく参考出品車としてアンベールされており、「いつ発売されるんだろうねぇ!」と大盛り上がり……しているところへ、カワサキはファン待望のライムグリーンをまとった「ZRX1100」Z1000R ローソンレプリカにソックリ!~をガツンとぶつけてきました。

ZRX1100ライム

●1998年型カワサキ「ZRX1100」。「コレが(最初っから)ほしかったんだよぉ〜っ!」と歓喜するカワサキファンを何人も取材しました(^^ゞ。よ〜く見ると燃料タンク以降、サイドカバーやテールカウルに至るまで「Z1000R」とはまるで形状が違うのですけれど、特徴的な角目一眼ヘッドライト+ビキニカウルの造形とカラーリングが秀逸すぎてローソンレプリカにしか見えません(断言)。

 

 

モデルイヤー的には1998年型となりますが、その発売は1997年の12月

 

 

当然、こんな美味しいネタはバイク雑誌も大きく取り扱いますからインパクトも十分

1998年型ZRX1100カタログ

●1998年型カワサキ「ZRX1100/ZRX1100-Ⅱ」カタログより。「ZRX1100」はライムグリーンが追加されると同時にミッドナイトパープルがエボニーへ変更となり、メタリックセレストシルバーは継続されるという3色展開に。「ZRX1100-Ⅱ」も同様にミッドナイトパープルがエボニーへと代わり、キャンディワインレッドが廃止されて1色展開へ。全車とも新たにゴールドのチェーンが採用されて高級感が増しました。それでいて税抜き価格はデビュー時と変わらず94万円/92万円を維持……頑張ってたんだなぁ、と今さらながら感動してます

 

 

大排気量センサンビャクCBやXJRなびこうとしていた浮動票ユーザーを少なからずZRX側へ引き戻したことは間違いありません

 

 

弟分となるヨンヒャクの「ZRX」も1998年2月にマイナーチェンジを敢行した同タイミングでライムグリーンが追加され人気をさらに加速させました。

1998年型ZRX

●1998年型カワサキ「ZRX」。フロントブレーキにクラス初となる6ポットキャリパーを新採用し、兄貴分と同じアルミサイレンサーも導入! 車体各部にもキメ細かく改良を受けています(ノンカウル版も同様)。う〜む、カワサキは往年の名車を現代風にモディファイするのが本当に上手い……

 

 

ちなみに単色を貫いてきた「ゼファー」軍団もシリーズ10周年記念モデルとして1999年型「ゼファーχ」にツートーンカラーを初導入して以降、堰を切ったように往年のレジェンドカラー(ライン)を採用していきました。

1999年型ゼファーカイ

●1999年型カワサキ「ゼファーχ(10周年記念モデル)」がまとったルミナスチェスナットブラウン×ルミナスタンジェリンオレンジの塗り分け。火の玉カラーと呼んでいいものかちょいと迷ってしまうほどのさりげなさですけれど、ここから400だけでなく750も1100も怒濤のグラフィック展開でファンへ強烈なアピールを実施していきます!

 

 

結果、メーカーもユーザーもWin-Win! 

 

 

そのあたり、個別カラーの紹介などは次回にてたっぷりと……。

ZRX-Ⅱ

メタリックノクターンブルーの外装に繊細なゴールドのラインが……こんなんズルすぎるでしょ、泣いてまう

 

 

あ、というわけで1990年代後半のネイキッドモデルたちは環境諸規制強化のアオリもあまり受けておらず、狙い目とも言える世代! レッドバロンの『5つ星品質』中古車ならパーツの在庫アフターサービスも万全なので、ぜひお近くの店舗で相談してみてくださいね!

 

 

カワサキZRXという好漢【その5】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

カワサキZRXという好漢【その3】はコチラ!

 

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