と、いうわけで2004年12月、転倒?と勘違いするほどバンクした車体が逆ハンでコーナーを駆け抜ける……。そんなド派手なビジュアル広告戦略とともに颯爽と国内デビューしたスズキ「DR-Z400SM」! 「ウッヒョ~ッ、カッコええ~っ!」と多くのライダーが即座に反応し、あれよあれよと超絶ハイパーウルトラ大ヒットモデルに……なっていたらよかったのですけれど、現実はNot so sweeeeeeeeeeeeetでした(涙)。

DR-Z400SM

●まさしくこの写真がバイク雑誌、表紙をめくってすぐの見開きだったり表4(本の反対面……裏表紙)だったりに配されたスズキ広告にドド〜ンと使われていましたね(どちらも雑誌のバプリシティ掲載料が一番二番で高いところ……毎度ありがとうございました m(_ _)m )。初見では「え? コケちゃってる!?」とビビったものです。アスファルト上のフルバンクカウンターステア走行なんて、なかなかお目にかかれないですから……。もちろん公道でこんな走りをしちゃダメ、絶対(by 逆ハンドリフト警察

 

 

DR-Z400SMというバケモノ【中編】はコチラ!

 

ふた昔前……250&400クラスには荒涼とした風景が

 

今から20年近く前の2005(平成17)年ころに、物心ついていたライダー(予備軍)諸兄諸姉におかれましては目をつむって当時を思い出してみてください、まぶたの裏にナニが見えてきましたか……? 

座禅を組むイメージ

●座禅まで組まなくてもオーケーですが、たまには心静かに過ぎ去った時をゆっくり思い出すのもいいものです。筆者は……あ、黒歴史しか出てこない(汗)

 

 

「フォ~~ッ!!」 レイザーラモンHGさんの一世風靡ギャグ……。最近はバイク好きな“RG”さんのほうが売れてますね。

 

『ハウルの動く城』が大ヒット? 興行収入196億円は歴代興行収入でも9位(2023年10月15日現在) でも、今やスタジオジブリは日テレの子会社になっちゃいましたね。

ハウルの動く城

●帽子屋の少女・ソフィー(倍賞千恵子さん)と動く城の持ち主である魔法使いのハウル(木村拓哉さん)を中心に繰り広げられていく冒険活劇『ハウルの動く城』。面白かったですね。筆者的には我修院達也さんが演じる火の悪魔・カルシファーがツボでした。ラヴラヴだったヨメさんと観に行ったっけなぁ……(遠い目)。ちなみに日本公開は2004年11月20日で、その11日後となる12月1日にスズキ「DR-Z400SM」が全国一斉発売されております

 

 

東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生? 最初は散々でしたがグングン強くなりましたね。

 

愛知万博開催? 「モリゾーとキッコロ」……懐かしいですね。2025年の大阪万博はどうなっちゃうんでしょうか………………って、違う! 

 

聞いているのはバイク業界における“あのころ”(2005年前後)です。

 

そう、前世紀にあれほど栄華を誇ったレーサーレプリカ群(ロードモデルだけでなく、2ストエンデューロ系も含む)はとうに死に絶え、250&400クラスはフルカウルモデルすらカワサキZZRシリーズを残すのみ

ZZR250

●今では信じられないことかもしれませんが、一時代を築いたレーサーレプリカの雄として最後の最後まで粘り続く販売を続けていたホンダ「NSR250R」が1999年にオサラバして以降、2008年4月にカワサキ「ニンジャ250R」が登場するまで、250㏄のフルカウルモデルはカワサキ「ZZR250」(写真は2005年型)だけだったのです。フルカウル復興の先駆けとなった「ニンジャ250R」様にはギョーカイ関係者全員、足を向けて寝られません!?

 

 

1990年代に超ヒートアップしたネイキッドクルーザーの大ブームもすっかり落ち着いてしまった……という状況下で、代わりに勃興してきたのがビッグスクータートラッカーネオレトロという、いずれも「シャカリキになって速く走るのって、ダサくね?」という主義主張をプンプンに巻き散らかしている、やわらか戦車……いや、おだやか馬力軍団でした(その割に街を走る彼らの排気音は大きかったような……(^^ゞ)

 

一方で空前の“ビッグバイク”ブームも巻き起こっていた!

 

いや、それでもパワフルに快走したい!というライダー層は、もうとっくに大型自動二輪免許(1996年にスタート)を教習所で取得し、欧米市場での好調さを背景に4メーカーがバチバチ火花を散らしながら性能向上合戦を繰り広げていた1000㏄、600㏄の逆輸入スーパースポーツや、ハヤブサやニンジャZX-12Rといったメガスポーツ、排気量が拡大する一方のビッグネイキッドたちにゾッコン夢中……という図式が定着していました。

GSX1400Z

●ホンダCB-SF/SBは1000→1300へ、ヤマハXJRは1200→1300、カワサキZRXは1100→1200……。そんなビッグネイキッドの排気量ちょこまか拡大路線にトドメを刺したのが、やはりスズキでした。バンディット1200シリーズを軽く凌駕する油冷1401㏄エンジンを搭載した「GSX1400」を投入(写真は2005年型「GSX1400Z」。マフラーがバグって見える)! こちら、とても乗りやすいイイ車両だったのですが、当時の自分(しかもGSF1200Sオーナー)としては油冷エンジンなのに“電動のオイルクーラーファンが装備されている”ことが許せなかったですね。若かった……

 

 

学校にたとえると厳しすぎる校則(環境諸規制!?)のために元気はつらつヤンチャ軍団の退学者が続出

 

ある意味で浄化されてしまい、とても沈滞していた250&400クラスに、突然スポーツ万能、特に短距離ダッシュ過激なほどの方向転換が大得意な容姿端麗かつスタイルも抜群に過ぎるバケモノ的☆陽キャBOYが転校してきたら……そりゃ、浮きますわな。

バスケットボール

●少年漫画でよく見る展開では、スクールカースト(?)の頂点を狙うには卓越した運動神経か、学年1位を争うような学力が不可欠。筆者もどちらかを得て、モテモテな学生生活を送りたかった……って何の話でしたっけ(笑)

 

 

正直、バイク雑誌屋としても「DR-Z400SM」をどう扱っていいのか分からない雰囲気になりました。

 

悪魔的なバケモノは孤高の存在ゆえの悲哀すら味わって

 

もちろんデビュー時には単独の試乗インプレッション記事をちゃんと作りましたが、以降……お約束のライバル対決をしようにも250クラスの同時期モタードモデルはもちろん、3ヵ月後に出てきた同排気量&同ジャンルのホンダ「XR400モタード」(空冷エンジンで30馬力)も、絶対性能ではまるで勝負になりません

2004 250SB

●2004年型スズキ「250SB」のカタログより。同年にOEMモデルのカワサキ「D-トラッカー」が仕様変更されたことを受け、メーターバイザー、タンクシュラウド、リヤフェンダーなどのデザインが変更されて、より精悍なスタイリングに……。249㏄水冷4スト単気筒DOHC4バルブエンジンは29馬力/2.5㎏mを発揮していたのですけれど、398㏄で40馬力/4.0㎏mを絞り出す「DR-Z400SM」とは、さすがに同じ土俵へ立つには少々、力不足……

 

 

じゃあ絶景を探すバイク旅企画に……と考えても、シートの高さや薄さエンジンの元気爆発っぷりもあって、高速巡航を多用するようなロングツーリングへの使用には、先輩編集部員たちも二の足を踏むという困った状況に。

 

結局、積極的に走らせてナンボという記事ではなく、ウエア企画の小道具としてモデルさんの背景でチラリと露出させたり、そのころから一般化してきたシートバッグ&サイドバッグの“装着しづらい例”して登場いただくなどでお茶を濁したりしたものDEATH

タナックス

●ホント、2005年ころから一気に秀逸なツーリングバッグが増えてきた記憶がございます!  なかでもタナックスさんの製品はナンバープレートの裏に重ねて取り付ける“プレートフック”を併用すれば、細身だったりフックが少ない車両だとしても、ラクラクかつビシッと装着することができますヨ(写真はVストローム250での一例)。なお、日帰りツーリングやちょっとしたお出かけならレッドバロンオリジナルブランド“ROM”「ワンショルダーMCバッグ」がチョー便利です!

 

 

とまぁ、旧態依然としたバイク雑誌での掲載ページ数という点では不遇をかこった「DR-Z400SM」でしたが、その高い実力はインターネットで利用者が爆発的に増えてきていたブログや掲示板、mixi、GREEなどのSNS(ちなみにYouTube日本語版は2007年。FacebookとTwitter(現:X)の日本語版、初代iPhone日本発売は2008年からスタート!)などで拡散されていき、

SNSイメージ

●「知りたいこと」が明確なとき、SNSの力というのは絶大なものがあります。しかし、「意識の外にあった事象を、うっかり知ることができる」という紙媒体の美点もぜひ活用していただきたい……って何の話でしたっけ?

 

 

市街地やタイトな峠ではリッタースーパースポーツすら打ち負かす!といった都市伝説(?)効果も相まって、超絶大ヒット……とはならずとも、コンスタントに一定数が着実に売れていくというナイスな状況へ。

 

スズキ側も気合いが入っており、デュアルパーパスの“S”ともども、毎年のようにカラーチェンジを実施していきます。

KLX400

●これはオマケの話なのですが、海外ではエンデューロレーサー、スズキ「DR-Z400」のOEMとしてカワサキ「KLX400R」(写真)なるモデルが発売されていた時期もございました。さらに、ウインカーやテールランプ&リヤバッグを装備した(つまりまんまライムグリーンな「DR-Z400S」の)、「KLX400」というモデルも存在していたとか! なぜに国内導入しなかったのか……残念!

 

絶版カウントダウンが始まっても改良の手は止まらず

 

特に“SM”はデビュー時からずっとイエローだけでなくブラックのカラーバリエーションも持ち、2006年モデルからは青が追加されて3色展開へ。

2006年5月カタログ

●2006年5月に配布された「DR-Z400SM」カタログ(裏表紙)より。……2003年のカタログまで確認できたスズキのファン(ライダーズ)クラブ「JAJA-UMA CLUB」に関する内容が抜け落ちているのが寂しい。同様の組織としてホンダは「H・A・R・T」、ヤマハは「Y.E.S.S.」なんてのもやっていたのですけれど、現在残っているのはカワサキの「KAZE」のみ。嗚呼、JAJA-UMA……「ウマ娘」とでもコラボすれば会員数は爆発的に増えたのに!?

 

 

2006年5月に発売された2007年モデル(K7)では、テーパーハンドルアクスルシャフトスライダーを新採用する小改良を実施を行うとともに、

DR-Z400SMレンサル

●カタログ内には「■レンサル製ハンドルバー……路面から伝わる衝撃を吸収し、ライダーの負担を軽減するための「しなやかさ」とハードな走りにも対応する「高い強度」を両立するレンサル製のテーパー形状ハンドルバーを新採用。モトクロス競技のワークスマシンにも採用されるポテンシャルはDR-Zだけの走りの世界に新たなページを刻んでいく……。」とあります。現在なら単品で購入すると2万円ほどになる製品を標準装備化したり各部改良も施しつつ、税抜き価格を2000円しかアップさせない(69万8000円→70万円)とは……

 

 

専用のグラフィックをまとう「DR-Z400SMz」という特別仕様車まで追加で登場!

DR-Z400SMZ

●「DR-Z400SMz」は日本国内限定300台ポッキリ! グランブルーNo.2/ミスティックシルバーメタリックの車体色に加えて国内二輪初となるフルラッピング工法による専用グラフィック、ブルーアルマイト処理された前後ホイールが採用され、レンサル製ハンドルバーもブルーに……。それで税抜き価格の上昇分は2万円ポッキリポッキリ! 消費税が5%の時代でしたので税込み当時価格は75万6000円(STDは同73万5000円)でした。当時ソッコーで買われた方は……勝者です!

 

 

2008年モデルからは白と黒の2色展開になるものの、最終型となった2009年モデルまで斬新なグラフィックを採用し続けることで人気を維持していきました。

2009年型DR-Z400SM

●有刺鉄線デザインが痛々しい(?)2009年モデル……つまり「DR-Z400SM」の最終型。あ、ロングツーリングに使いたいユーザーの間では、リヤスプロケットをロング……小径(=歯数が少ない)にして高速巡航時のエンジン回転数を減らすというカスタムも流行ったそうで、もともとトルクフル&パワフルなエンジンのため相当にロングへ振っても大丈夫なんだとか。なお、2010年ころの売れ残り在庫“SM”は50万円台でたたき売りされていたとの情報もあり、切実にタイムマシンが欲しい……

 

 

「DR-Z400」に呼応した(?)250のモンスターがついに登場!

 

そんなライバル不在のバケモノ……孤高の存在であり続けた「DR-Z400SM」だったのですが、モデル末期にバケモノの子……と言っては失礼ですね、排気量こそ250㏄だったものの実力は間違いなくホンモノな「強敵と書いて友(とも)と読む」べきマシンが登場します。

 

そちらが2007年11月から2008年モデルとしてデビューした、ヤマハ「WR250X」だったのです!

2007_WR250X

●ど〜ですか、お客さん! このタダモノデハナイ感は……! 2007年9月6日に発表されたヤマハ「WR250X」は、広報写真をダウンロードした瞬間から画面に視線が釘付けとなりました(発売日は同年11月30日)。ボア77㎜×ストローク53.6㎜の249㏄水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力31馬力/10000回転、最大トルク2.4kgm/8000回転のパフォーマンスを発揮。乾燥重量は125㎏(車両重量134㎏)に抑え込まれ、シート高は870㎜、燃料タンク容量は7.6ℓ、タイヤサイズはフロント110/70R17、リヤ140/70R17となっていました。税抜き価格は69万8000円(消費税5%込み価格は73万2900円)……ちなみにこの価格、2004年12月デビュー時の「DR-Z400SM」とまったく同じ! 

 

 

いやもうこちらは誕生の背景までスズキの「DR-Z」シリーズにソックリ

 

公道走行不可なエンデューロレーサー「WR250F」のエッセンスを色濃く受け継いだ驚愕のオフロードモデル「WR250R」と基本コンポーネントを共通とし、前後17インチタイヤを装着した超本気のモタードバイクとして登場したのが「WR250X」という流れです。

2007_WR250F

●はい、こちらがヤマハ「WR250F」です。スズキで言えば「DR-Z400S」のベースとなったレーサー「DR-Z400」に当たるモデル……と思いきや、この「WR250F」と公道版の「WR250R(X)」とは全くの別物なんですね。最初はスズキ同様の流れでいこうと考えられていたそうですが、途中で公道版WRは完全新設計とされることに! ですので、ボア77㎜×ストローク53.6㎜は“F”と“R&X”で共通なのですけれど、“F”は5バルブ、“R&X”は4バルブと根本的に異なっているのです(後日、“F”も4バルブ化されましたが)。ともあれ「WR250F」は度重なる改良を受けつつ世界的なロングセラーブランドとなり、2024年モデルもすでに登場済み!

 

 

2007年9月に発表されたときから、「WR250R/X」のスペックにギョーカイはザワつきました。

 

「国内市販オフ車初のアルミフレームに、ハイオク指定の31馬力エンジンに、シート高895㎜(R。Xは870㎜)に、乾燥重量123㎏(同125㎏)に、税込み価格70万1400円(同73万2900円)……だとっ?」

WR250R

●2007年11月16日より新発売された「WR250R」のモデルコンセプトは、ズバリ「オフロードでのYZF-R1」!エンジン性能やガソリンタンク容量などは上の「WR250X」を参照していただきたいのですが、こちらの乾燥重量は123㎏(車両重量132㎏!)で、シート高は895㎜、タイヤサイズはフロント80/100-21、リヤ120/80-18。そしてそして税抜き価格は66万8000円(消費税5%込み価格は70万1400円)!! 250のデュアルパーパスモデルで70万円オーバー……。しかし、内容を考えると大バーゲン!ということが、ジワジワと広がっていきます

 

 

「こんな250クラスが沈滞しているご時世にヤマハはご乱心めされたかッ!?」……と。

 

とはいえ、「まぁ、いうても250㏄バイクでしょ?」と筆者は侮っていました。

侮りイラスト

●2007年当時、「カワサキのKLX250やD-トラッカーは29馬力だから、WRの31馬力ってそこから2馬力上がっただけでしょ?」と……。しかし翌年、FI化されたKLX250やDトラッカーXは24馬力になり、2気筒のニンジャ250Rが31馬力で登場とワケが分からない状況に

 

 

2007年11月、宮城県スポーツランドSUGOのインターナショナルモトクロスコースで開催された「WR250R発表試乗会」に参加するまでは……。

スポーツランドSUGO わいわいモトクロス

●伝説の角川映画『汚れた英雄』のレースシーンが撮影されたことでも知られる「スポーツランドSUGO」は多彩な体験が楽しめるバイク(とクルマ)のワンダーランド! サーキットやモトクロスコースだけでなくビギナーズフィールドなどを活用した各種スクールやレンタルのバイクやカート、子供もよろこぶアトラクションも用意されているので、ぜひ行ってみましょう〜(写真は「2023 わいわいモトクロス」ウェブサイトより)

 

 

文字どおり「(250㏄)クラスを超えた」高性能を獲得!

もちろん限界性能をチェックするメイン原稿はプロフェッショナルライダーにお願いしたのですけれど、「オガワも担当ついでに走って一般人代表としてプチインプレしてよ」と編集長に依頼され、慌ててヘルメットやウエア類を用意。

 

編集部のある東京は八丁堀から約5時間、340㎞強プロボックス(社用車)を運転して♪は~るばるぅ来たぜぇ〜〜宮城県は村田町菅生ぉ~……(気分的にもホントに遠いのよ)。

 

試乗会当日、会場に到着して、置き撮り(マシンの静的撮影)して、説明会に参加して、開発者インタビューこなして、弁当食べて(うたた寝して)、プロライダーの足着き&ライディングポジション撮影して、コース横に出張りつつプロの豪快な走りをカメラマンに依頼して……などなど、一連の取材ルーティンをヒーヒー言いながらこなしたあと、ついに自分のライディングタイムです。

WR250R プロの走行

●はい、コチラはヤマハの広報用カットですが、冗談抜き実際に土煙巻き上げつつのカウンター走行や、モトクロッサーもかくやの大ジャンプも楽勝で(プロは)こなしていたのを目前にして、「こりゃぁ、250クラスにとんでもないマシンが出現したぞ……」と、誤った認識が急速に改められていくことを感じていました

 

 

「オフロードモデルにおけるYZF-R1を作る!」という明確に過ぎるコンセプトを貫き通した「WR250R」は、エンジンがアイドリング状態でもタダモノではないパルス感で周囲の空気を振るわせます。

 

「ま、あ、い、う、て、も、250㏄……だよね?」と今一度自分に言い聞かせながら、クラッチをミートすると……ンババババッババ~ッ!!弾かれるように前へ進んでいくではありませんか! 

WR250R走り

●はい、こちらも筆者激走シーンではなくヤマハ関係者による走行……ですが、広くて安全なコースですので自分なりに限界を探っていけ、10数分後には上写真のような雰囲気くらいは出せるようになりました。なんとまぁ、よく動く前後サスペンションと意のままに推進力を調整できるエンジンであったことか。私でさえソッコーで分かりました「こいつぁ、“レベチ”だ」

 

 

オフロードコースだったため適度にリヤタイヤが空転して「DR-Z400SM」とのファーストコンタクト時のようにフロントがめくれ上がったりはしなかったのですけれど(周囲にベンツもいなくて安心)、発進加速の凄さといったら忖度なく「DR-Z400」シリーズといい勝負だと感じました(走行状況によってトルクの差は明確になりますが)。

 

スロットル操作に対するレスポンスの鋭さは、以前少しだけ乗った250㏄4ストモトクロッサーに匹敵する勢いがありましたね〜。

 

なんというかピストンを押し下がる混合気の爆発、いや急速燃焼パワーが、ほぼ弱まることなく地面をかきむしっていく感じ……といったら少しは伝わるでしょうか?

 

ビッグスクーターとトラッカーとネオレトロという、おだやか馬力軍団ばかりが幅をきかせていた250&400クラスに、排気量こそ小さいけれど「DR-Z400」シリーズと同等(以上!?)の熱量を持つモンスター的☆ヤンチャBOYが爆誕したのですから驚いたのなんのって!

2000_マジェスティ

●1999年10月、写真の2代目ヤマハ「マジェスティ」の登場から加速を始め、2002年の「マジェスティC」発売でバイク業界全体を巻き込む大ブレイクを果たしたのが“ビッグスクーターブーム”でした。ヤマハの「WR250R」公式リリースにしっかり書かれていたので改めて驚愕したのですけれど、2007年当時、国内軽二輪(125㏄超250㏄以下)市場は約10万台のうち60%前後がビッグスクーターによって占めていたのですと!

 

デビュー作が最高傑作だったため改訂は10年間皆無

 

もちろん、その「WR250R」と基本を同じにするスーパーモタード仕様「WR250X」だってとんでもない出来映え。

WR250X横カット

●初代「WR250X」……なんといちいちカッコいいヤマハなのでしょう。デザイナーは2009年型〜のYZF-R1(ギョロ目のアレ)も担当した方と同じとのことで「さもありなん」とプレスカンファレンスにて納得した記憶が。オフロード版の“R”とは異なり、前後ホイールリムはブラックアルマイト処理、フレームやスイングアームはブラック塗装と配色も独自路線を貫いたことで精悍さもバキバキです。それにつけても前後フェンダーとタイヤ上辺との間隔の空きっぷりよ……超スカスカだけれども、これをスカチューンとは呼ばないようです(^^ゞ

 

 

詳細は写真下のキャプション(説明文)に譲りますが、足周りのセッティングは当然、ブレーキも“X”専用品、エンジンの出力特性を司るECUマッピングまでオンロードでの扱いやすさを重視したセッティングへ変更……とヤマハ開発陣の気合いはマックス・ビアッジです。

WR250Xアルミフレーム

●「WR250X」はセミダブルクレードル型の新設計アルミフレームが採用され、“R”とは異なる精悍なブラック塗装処理を実施。3分割式のフレーム構成で、アルミ製のメインフレーム(写真)と鋼管製のダウンチューブ/リヤフレームが組み合されていました。市販コンペティションモデルの「YZ250F」「WR250F」で採用された高度な技術が注入されており、中でもメインフレームは前後ふたつの鋳造アルミパーツと鍛造アルミパーツを相互に高精度溶接するという変態的(←いい意味)ユニット! 2008年のリーマンショック前夜、全世界的に好景気だったことが背景にあったとしか思えない贅沢ぶりでしたねぇ

WR250Xエンジン

●そう、「WR250」シリーズはこれから厳しくなっていく排ガス規制を見越して最初からFI(フューエルインジェクション)が前提のエンジンを新規開発。効率のいい吸入空気量確保による優れたレスポンスを実現するためダウンドラフト・ストレート吸気方式を採用し、チタン製がおごられた吸気バルブによって高回転域でのカムシャフトへのバルブ追従性と最適リフト量を確保、かつ250としては破格な77㎜という超ビッグボアなピストンの導入などが相まって、アクセルに対するタイムラグが少なくシャープな吹け上がり特性を実現……いやマジで。さらに二次減速比はローレシオとなる3.230に設定(“R”は3.307)されていたのですから、そりゃもう発進、即時鬼加速ですよ!

WR250Rフロントフォーク

●前後サスペンションは当然のごとくフルアジャスタブル式を採用。倒立式フロントフォークはインナーチューブ径が46㎜で、17インチハイグリップタイヤとの組み合わせを考慮して減衰特性を最適化。バネレートを“R”比でやや高くし、制動時のノーズ沈み込みを抑え込んで良好な走行性を引き出していました。リヤは大径シリンダーのリンク式サスペンションで、イニシャル荷重調整機構だけでなく伸圧の減衰力調整機構も装備(当然、減衰特性&バネレート設定は“X”用に最適化)され、かつショックユニット長を“R” 比でショート化することで870㎜のシート高を実現! また、フロントブレーキには大径298㎜のウェーブ(花弁式とも呼びますね)ディスクをおごり、コントロール性に優れたストッピングパワーを実現したのです(ちなみに“R” のフロントディスク外径は250㎜)

WR250X走り

●当然、筆者のフルバンクカット……ではなく広報写真byヤマハ関係者なのですけれど、長大に過ぎる前後のホイールストローク量を生かしたコーナリングというのは、これまた新鮮そのものでライディングセオリーどおりの荷重変化が決まったときには“脳汁が出る”ほどの快感に酔いしれました。まぁ、理想的な挙動は100回のうち2〜3回程度あれば……という確度だったのですけれど。それでも残り97〜98回のイマイチコーナリングでさえ誤魔化す手法が山ほどあるためヘルメットの中でニヤニヤが止まりませんでしたよ〜。なお「WR250R/X」は2008年モデルとして登場してから最終型となった2017年モデルへ至るまでカラー&グラフィックチェンジはしょっちゅう行ったものの、モデルチェンジは1回もなし。なおかつ両車とも税抜き価格は10年間不変(消費税が5%から8%になったので販売価格は変化しましたが)! これはホント〜にエライ!

 

 

ラフな操作をすれば楽勝でフロントタイヤがポンポン離陸しちゃいましたからね……WR、ハンパないって! 

 

とまぁ、かくいう本気のライバル「WR250R」と「WR250X」が登場したことで、「DR-Z400S」も「DR-Z400SM」も多くのバイク誌で再びページ露出が増え、そのバケモノぶりが“再発見”されたところはございます。

DR-Z400SとジェベルXC

●登場から6年が経過し、さすがに「DR-Z400S」が“ピン”の豪華カタログは難しくなったのか、2006年6月に配布されたカタログでは「スズキオフロードシリーズ」としてまとめられ、「ジェベル250XC」と一緒に紹介されるという状況になってしまいました。笑ってしまうほど目指すベクトルの異なる……いや、正反対と言っていい2台なのですけれどね。中身のキャッチコピーは「進路は、自分で決める。」とあり、なるほどな、と(笑)。ちなみに5%の消費税税込み当時価格は「DR-Z400S」が69万900円、「ジェベル250XC」が52万3950円でありました〜

 

 

バケモノは死なず、ただ去りゆくのみ(@日本)……

 

そして、キャブレター車ということもあり、厳しい排出ガス規制が適用される2008年9月以降は新車の購入できなくなるというウワサも流れはじめ(結局は真実だったのですけれど)、興味を持っていた人たちの間には「今のうち買っておかねば!」という機運が高まったようです……が、圧倒的大多数のライダーには危機感が伝わっておらず、いざ生産終了が本決まりになってから駆け込み需要が発生するといういつものパターンへ陥りました。

 

スズキも「バンディット1200/S 油冷ファイナルエディション」のように「DR-Z400S/SM ファイナルエディション」!とでも銘打ち、ちょこちょこっとステッカーチューンで特別感を出して例年より大幅増……3倍くらいのロット数で生産しておけば、いい商売ができたのではないのかなぁ?……と門外漢ゆえの勝手な想像をしてしまいます。

バンディット1200S 油冷ファイナルエディション

●写真は2006年9月に登場した「バンディット1200S ABS 油冷ファイナルエディション」。100馬力/9.5㎏mを絞り出していたバンディット向け1156㏄油冷エンジンが、環境諸規制強化を受けて終焉を迎えるタイミングで設定された特別仕様車(ネイキッドの「バンディット1200」にも設定あり)は、ABSと金ピカホイールと特別ステッカーを装備して速攻で売り切れたと聞いております。まぁ翌2007年には同じボディに水冷エンジンの「バンディット1250」シリーズが登場し、2020年には“新油冷”を標榜した「ジクサーSF250」「ジクサー250」が国内導入されたわけですが……。いつだって今を生きているスズキ、大好きです(^^ゞ

 

 

ともあれ結局、「DR-Z400S」、「DR-Z400SM」はともに2008年6月6日に発売が開始された2009年モデル(ツウはK9と言ったりします)をもって国内向けモデルの生産&販売が終了いたしました。

 

それでもこの限界が知れない過激なバケモノたちを愛してやまないマニアはまだまだ数多く、さらには新しくオーナーへなろうとするライダーさえ次々に生まれてきています。

ヨシムラマフラー

●ヨシムラジャパンが「DR-Z400SM」をベースにした「M450R Super Motard」というコンプリートマシンを作っていたことは有名な話。そして令和5年の今でも「DR-Z400S/SM」向けのパーツを複数販売しております。写真は両車に共通の「Tri-Cone チタンサイクロン」(公道走行可能)で材質やカバーの違いによって1.2㎏〜1.5㎏の軽量化と出力特性(スペシャルキャブレターほかの各種パーツを装着すればさらに)と音質の劇的改善を実現!

 

 

もし上玉と出会えたなら迷うことなく捕獲して、うまく飼い慣らせるよう精進してみましょう……そうすればアナタ自身がバケモノ級のスキルを身に付けることだってできますよ!?

 

さて次回はモタードつながりということで、ホンダ「XR50/100モタード」について語らせていただく予定です。実は筆者も100㏄版を所有しており、思い出したとき走らせるたび「○さ」に「○○」しております……。ご期待ください!

XR100モタード

●いやいやいや、メチャクチャカッコよくないですか? 筆者も磨き上げるたびニヤニヤしております〜

 

 

あ、というわけでメーカーが「公道でも乗れるファクトリーマシン」を目指して作り上げたスズキ「DR-Z400S/SM」や、ヤマハ「WR250R/X」などは、これからその価値が上がることはあっても、その逆はないと言い切れる圧倒的な完成度を誇っております。レッドバロンの良質な中古車中古車なら、アフターサービスもバッチリで部品供給も心配なし! まずはお近くの店舗で車両の検索からお気軽にご相談を~!!

 

XR100モタードという小さな巨人【前編】はコチラ!

 

DR-Z400SMというバケモノ【中編】はコチラ!

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