全米王者の走りに注目!
こんにちは、青木タカオです。前回のMotoGP日本グランプリに続き、今度は全日本モトクロス選手権を観戦してきました。
この大会で最大の注目を集めたのが、なんといってもアメリカのAMA選手権で活躍する下田丈(しもだ じょう)選手の凱旋参戦です。日本人として初めてAMA250クラス(250SMX)のチャンピオンに輝いた、世界でもトップレベルのモトクロスライダーです。その走りをひと目見ようと、オフロードヴィレッジ(埼玉県川越市)には大勢のファンが詰めかけました。
ボクも実際に目の前で走りを見て、驚かずにはいられませんでした。
とにかく速い!
しかも、ただ速いだけではないのです。ジャンプやコーナリングで見せる華麗なライディング、無駄のないマシンコントロール、そしてレースの流れに合わせて自在にペースを変える巧みさ。国内のトップライダーたちを相手にしても、その実力は際立っていました。
さすがは全米チャンピオン。世界の頂点を争うライダーとは、これほどまでにすごいのか。そう思わずにはいられない、圧巻の走りだったのです。
日本を代表するアスリート

▲全日本モトクロス選手権シリーズ2026 第8戦 TOKIOINKARAMI Super Motocross IAクラスで完全優勝を果たしたHonda HRC Progressiveの下田丈選手。画像提供:HRC(株式会社ホンダ・レーシング)
下田選手がバイクに乗り始めたのは、わずか4歳のとき。幼いころから将来を期待される存在でしたが、さらなる高みを目指し、早くから海外へと活動の場を広げていきました。
その才能が大きく花開いたのが2016年。アメリカ・ロレッタリンで開催される「AMAアマチュア・ナショナル・モトクロス選手権」は、プロライダーへの登竜門として知られる重要な大会です。下田選手はここでスーパーミニ2クラスのタイトルを獲得。その快挙を足がかりに、アメリカのモトクロスシーンで着実に実績を重ねていきます。
翌2017年には、Factory Connectionのアマチュアプログラムに加入。そして2019年後半、いよいよプロライダーとしてのキャリアをスタートさせました。
プロ転向後も成長は止まりません。2020年にはAMAスーパークロス250SXクラスの東地区でランキング3位に入り、新人王にあたるルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。2021年には、日本人ライダーとして初めてAMAスーパークロス250SXクラスのメインイベントで優勝するという快挙を成し遂げました。
その後もAMAプロモトクロスで複数回の総合優勝を挙げ、シリーズランキングでも安定してトップ5入り。2022年、2023年にはランキング2位を記録しています。2024年、2025年もアウトドアで表彰台を争う安定した速さを披露し、2025年にはAMAスーパーモトクロス選手権250SMXクラスでタイトルを獲得!250クラスを代表するトップライダーとして、その地位を確固たるものにしました。
日本人アスリートが世界の舞台で頂点に立つ。その意味では、メジャーリーグベースボールで活躍する大谷翔平選手にも匹敵する、日本を代表するアスリートのひとりと言っていいのではないでしょうか。
じつはボク、昨年末に下田選手にインタビューする機会がありました(←自慢です)。そのときの模様は、ボクのYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひ、こちらもご覧ください。
全日本MXを席巻!

▲全日本モトクロス選手権シリーズ2026 第8戦 TOKIOINKARAMI Super Motocross IAクラスで完全優勝を果たしたHonda HRC Progressiveの下田丈選手。画像提供:HRC(株式会社ホンダ・レーシング)
2026年10月10日(土)/11日(日)、埼玉県川越市のオフロードヴィレッジで開催された全日本モトクロス選手権シリーズ2026第8戦 TOKIO INKARAMI Super Motocross(決勝レースは日曜日)。アメリカを主戦場とする下田丈選手が、Honda HRC Progressiveから参戦しました。
マシンはホンダCRF450R。パープルとイエローをあしらったスペシャルゼッケン#30を装着し、国内最高峰のIA1クラスで走りました。
普段はアメリカで世界の強豪たちとしのぎを削る下田選手が、日本のトップライダーたちと同じコースを走る。これだけでも、会場に足を運ぶ価値があるというものです。
大会名に「Super Motocross」と掲げているだけあり、コースには連続ジャンプがふんだんに配置され、見応えのあるコースレイアウトになっていました。ライダーたちがジャンプを飛び越えていく姿は迫力満点です。
熱視線を浴びる下田選手。ヒート1ではスタート直後の出遅れを挽回し、ヒート2ではホールショットから独走。ヒート3も早々にトップへ浮上して、そのまま勝利を手にしました。
結果は、3ヒートすべてで優勝! 世界トップクラスの実力を、日本のファンの前で存分に見せつけてくれたのです。
追い上げ、独走、そして巧みなレース運び。各ヒートで、勝ち方が異なっていたことに下田選手の強さを感じずにはいられませんでした。
出遅れを跳ね返したヒート1、スタートから主導権を握ったヒート2、そしてライバルを振り切りながらレースを組み立てたヒート3。3つのレースを振り返ると、下田選手の強さがより鮮明に見えてきます。
ヒート1:出遅れをものともせず逆転勝利

▲全日本モトクロス選手権シリーズ2026 第8戦 TOKIOINKARAMI Super Motocross IAクラスで完全優勝を果たしたHonda HRC Progressiveの下田丈選手。画像提供:HRC(株式会社ホンダ・レーシング)
最初のヒートで、下田選手は好スタートを決めました。しかし、第1コーナーでは大外のラインを選んだため順位を落とし、10番手付近まで後退してしまいます。
普通なら、ここからの巻き返しには時間がかかるところでしょう。ところが下田選手は違いました。
1周目のうちに6番手まで浮上すると、次の周には4番手へ。さらに3周目には3番手に上がり、横山遥希選手(カワサキ)、ジェイ・ウィルソン選手(ヤマハ)とのトップ争いに加わりました。
そして迎えた6周目、横山選手をパス。勢いそのままに7周目にはウィルソン選手もかわし、ついにトップへ躍り出ました。
全10周で争われたヒート1。スタート直後の順位を考えれば、まさに鮮やかな逆転劇でした。前を走るライダーをひとりずつ捉え、最後にはトップでチェッカーを受ける。あの追い上げには、世界の舞台で戦ってきた実力が凝縮されていました。
ヒート2:スタートから独走
続くヒート2では、スタート直後から下田選手が本領を発揮します。散水直後の滑りやすい路面状況にもかかわらず、見事にホールショットを奪取。レース序盤からトップを走ります。
2番手につけたのは内田篤基選手(カワサキ)。下田選手は自分のペースで周回を重ねていきます。1周ごとに1〜2秒ほどリードを広げ、後続との差を着実に拡大していきました。
スリッピーな路面では、わずかな操作ミスが大きなロスにつながりかねません。それでも安定した走りを崩さず、最後までトップの座を守り抜きました。
ヒート1では後方から追い上げ、ヒート2ではスタートからレースを支配する。まったく違う展開でも勝ち切ってしまうところに下田選手の強さがあります。
ヒート3:最後まで主導権を渡さず3連勝
最後のヒートでも、下田選手の勢いは衰えませんでした。スタート直後は4番手につけ、オープニングラップを終える頃には2番手へ浮上。次の周には前を走る内田選手をパスし、早くもトップを奪いました。
その後は横山選手が2秒以内の差で追走。簡単には逃がしてくれませんでした。しかし、下田選手は5周目に入ると徐々にリードを広げ、さらにペースを上げて後続を引き離していきます。
終盤に入ってからは、状況を見極めながらレースをコントロール。最後まで主導権を譲ることなく、トップでチェッカーを受けました。
圧巻の3ヒート完全制覇です!
追い上げて勝つことも、スタートから独走することもできる。接近戦を制し、状況に応じてレースを組み立てることもできる。勝つために必要なものを、すべて備えている。そんな印象を強く受けました。
今回のスポット参戦は、日本のモトクロスファンにとって、世界で活躍するトップライダーの走りを間近で体感できる貴重な機会となりました。
何より、ボク自身がその走りを現地で目の当たりにできたことが嬉しかったです。映像で見るのとは違う、スピード感やマシンコントロールの鮮やかさ。やっぱりレースは、現場で見るに限ります。
ウィルソン選手の強さも見逃せない
下田選手が圧倒的な強さを見せつけた今回の大会ですが、もうひとり、忘れてはならないライダーがいます。YAMAHA FACTORY RACING TEAMのジェイ・ウィルソン選手です。
IA1クラスの3ヒートすべてで2位を獲得し、総合でも2位となりました。下田選手に3連勝を許したものの、すべてのヒートで表彰台の中央を争う位置につける安定感を見せました。
ウィルソン選手はオーストラリア出身です。2022年に来日してヤマハと契約し、IA2クラスでいきなりチャンピオンを獲得しました。翌2023年には、450ccマシンで戦う国内最高峰のIA1クラスへステップアップ。こちらでも初年度からタイトルを手にし、2024年にはIA1クラス3連覇を達成しています。
速さだけが、ウィルソン選手のすごさではありません。後進の育成やマシン開発にも積極的に携わり、ライダー個人の成績にとどまらず、チーム全体の底上げや強化にも貢献してきました。レースで勝つことはもちろん、チームにとって大きな存在だったのです。
最終戦は見逃せない!
ところが、この大会の後、驚きのニュースが飛び込んできました。YAMAHA FACTORY RACING TEAMが、ウィルソン選手との契約を2026年シーズンをもって終了すると発表したのです。
2026年10月31日/11月1日、宮城県のスポーツランドSUGOで開催される全日本モトクロス選手権の最終戦 MFJ-GPが、ヤマハでの最後のレースとなる予定です。
2026年シーズンのIA1クラスは、チャンピオン争いが大詰めを迎えています。2025年のIA1クラスを制したのは、Honda Dream Racing Bellsの大倉由揮選手です。2026年シーズンも、ウィルソン選手と大倉選手がタイトルを懸けて激しい争いを繰り広げています。
第8戦終了時点のポイントランキングでは、ウィルソン選手が638ポイントで首位に立ち、621ポイントの大倉選手が17ポイント差で追いかけています。勝負の行方は最後までわかりません。全日本選手権の頂点を懸けた最終決戦からも目が離せません。
首都高の小さなPA
さて、今回もレース観戦にはバイクで出かけました。レッドバロン葛飾で新車購入したホンダCRF250L(S)です。オフロードレースを見に行くのですから、こちらもオフロードバイクで気分を盛り上げたいじゃありませんか。
ところが、レースを見始めると夢中になってしまい、またしても自分のバイクの写真を1枚も撮っていないことに気づきました。帰り道になって、ようやく「あっ、写真を撮っていなかった!」と思い出す始末です。
そこで立ち寄ったのが、首都高速5号池袋線の志村パーキングエリア(上り)。トイレ休憩を兼ねて、ここでようやくCRF250Lの写真を撮ることができました。
志村PAは、都心方向へ向かう上り線にのみ設けられたパーキングエリアです。志村料金所の手前、右側にひっそりとあるため、知らなければそのまま通り過ぎてしまいそうです。そんなちょっと変わった立地も、知る人ぞ知るスポットといった雰囲気があって、ボクのお気に入りです。
ボクはバイクに乗るとき、ひとりで出かけることが多いのですが、こうしたこじんまりとしたパーキングエリアが好きです。観光客が大勢立ち寄るような雰囲気ではなく、利用しているのも仕事中らしき人が多い印象です。ショッピングモールのように家族連れで賑わうサービスエリアとは、ずいぶん趣が違います。
ひとりで走っているときは、あまり華やかすぎない場所のほうが落ち着くのです。ソロで大型のサービスエリアへ入ると、なぜか自分の居場所がないような気分になることもあります。
その点、志村PAには素朴な空気があります。必要なものだけがコンパクトにまとまっていて、余計な飾り気がありません。
設備も実にシンプルです。トイレと自動販売機のほか、ETC利用履歴発行プリンターやAED、インフォメーションのマシンを備えるのみ。大型商業施設のような充実した売店や飲食店はありません。
けれど、さっと立ち寄って、すぐに出発したいライダーにとっては、トイレがあって飲み物が買えれば十分なこともあります。少し休んで、また走り出す。それだけでいいのです。
レースを観戦するのも、バイクで会場まで走るのも、帰り道にこうして自分が好きな場所へ立ち寄るのも、ボクにとってはすべてがバイクライフの楽しみなのかもしれません。








