埼玉県教育委員会が主催する「令和8年度 高校生の自動二輪車等の交通安全講習」(以下、高校生バイク講習)の模様をレポートします。26年4月1日施行の改正道路交通法に対応した実技に加え、新基準原付で参加した生徒の姿も見られ、指導する側・学ぶ側の双方に変化が表れました。

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高校生バイク講習の「建て付けとスケジュール」

▲開講式の様子。関係機関からの挨拶も行われました(東松山会場)

 

埼玉県の高校生バイク講習は、多くの関係機関や団体による手厚い協力のもとで成り立っています。当日の体制や、今年度の開催日程・会場は以下の通りです。

【主催】
埼玉県教育委員会
【共催】
一般社団法人 埼玉県指定自動車教習所協会
【後援】
埼玉県警察本部
一般財団法人 埼玉県交通安全協会
一般社団法人 埼玉県二輪車普及安全協会
埼玉県高等学校安全教育研究会
埼玉県交通安全対策協議会
【日程・会場】
① 7月20日(月)西部地区:「東松山自動車学校」
② 7月27日(月)西部地区:「セイコーモータースクール」
③ 8月6日(木)東部地区:「埼北自動車学校」
④ 8月10日(月)秩父地区:「秩父中央自動車学校」
⑤ 9月21日(月)南部地区:「大宮自動車教習所」 ※台風により中止
⑥ 10月4日(日)北部地区:「トラック総合教育センター」
⑦ 10月18日(日)秩父地区:「秩父自動車学校」
⑧ 11月23日(月)南部地区:「うらわ自動車教習所」

今年度の変更点としては、これまで秩父地区で設けられていた3年生限定という枠がなくなり、同地区での開催が計2回(当初の体制)に戻ったこと、そして西部地区で2回開催されたことが挙げられます。

本記事では、7月20日開催の東松山自動車学校と8月10日開催の秩父中央自動車学校での様子をお伝えします。

改正道交法に対応した「実技講習」

講習会は、複数のグループに分かれて休憩を挟みつつ、実技講習(当日何らかの理由でバイクに乗ってこられなかった生徒は静的実技)、座学講義、応急救護をローテーション形式で受講するプログラムとなっており、全体で3時間から4時間ほどかけて実施されます。

実技講習の流れ

教習所のコースを用いて、安全運転と正確な運転操作の基本を学びます。実技の時間は休憩時間を挟んで計90分(45分×2コマ)です。

乗車前には、埼玉県警の白バイ隊員によるレクチャーが行われます。「ブタと燃料」という分かりやすい語呂合わせで日常点検のポイントを学ぶほか、正しい乗車姿勢、ヘルメットをはじめとする安全装具の重要性について指導を受けます。

▲エアバッグ・ベストの展開体験も行われました(秩父会場)

 

準備体操を終えた後は、設定されたコースを実際に歩きながら、交通安全協会二輪車安全運転推進委員会(略称、二推)の指導員による解説を聞き、白バイ隊員による見事なお手本走行を見学します。

▲法規走行コース内の交差点で行われた右直事故のデモンストレーション(秩父会場)

 

練習する課題は全部で7つあり、最後の法規走行を含めると計8つの項目を体験・学習します。

1. 千鳥走行
2. 坂道発進
3. Uターン
4. 遅乗り
5. スラローム
6. 急制動
7. コーナリング
8. 法規走行(道路交通法を正確に守りながらの走行)

▲指導員が見守るなかスラロームに挑戦する生徒(秩父会場)

 

法規走行では改正道交法に対応

法規走行においては、この春に施行された改正道路交通法の内容がしっかりと盛り込まれていました。これは道路交通法第18条に追加された「自転車などの交通事故防止のための規定の整備」に関する項目です。

具体的には、コース上に自転車を配置し、その周囲1メートル以上離れた場所にパイロンを設置。車両がその横を車線変更しながら減速(徐行)して通過する実践的な練習を行います。

▲道路交通法第18条に追加された「自転車などの交通事故防止のための規定の整備」への対応(秩父会場)

 

施行されて以来、現場でも様々な議論や問題視がなされている条文ですが、実際にどのような運転操作を行い、安全確認や合図をどう出すべきかを高校生の段階から正しく学べるのは非常に有意義です。

高校生は日常的に自転車を利用する機会も多い世代であるため、「自転車に乗る側」と「バイクやクルマで追い越す側」の双方が持つべき安全意識を同時に養える、とても頼もしいプログラムとなっています。

バイクと安全について学べる「座学・講義・応急救護」

静的実技

▲当日バイクに乗ってこれなかった生徒らは、二推の二輪車安全運転特別指導員から静的実技(座学)を受講しました(東松山会場)

 

実技講習と同様に休憩を挟み、90分間にわたって行われます。指導員による解説のほか、業界団体が制作した安全運転に関する啓発ビデオを視聴します。

自宅から教習所までの距離などの都合で当日のバイク乗車が見送られた生徒や、将来的に免許取得を目指す生徒も参加しているため、運転特性の基礎から実践的なリスク回避の知識まで幅広く網羅されています。

全体講義

▲参加生徒の全員が受講する埼玉県警本部による座学講義の様子。県内の二輪車事故の発生状況とその要因も学びます(東松山会場)

 

講習会に参加する全ての生徒が受講する「二輪車安全運転講習〜交通社会の一員としての自覚」と題した座学は、埼玉県警察本部交通部交通総務課が担当しています。

ここでは、二輪車による人身事故の発生件数や具体的な事故の傾向に加え、致命傷となりやすい損傷主部位(頭部と胸部で全体の約7割を占めるというデータ)について解説が行われます。その上で、安全基準を満たしたヘルメットやプロテクターを正しく着用することが、命を守る上でいかに重要であるかを学びます。

▲「すり抜け」と呼ばれる走行がさまざまな交通違反につながること、また、そうした行為が交通事故の要因になることも教わりました(東松山会場)

 

さらに、万が一交通事故を起こしてしまった場合に課せられる「3つの責任」(刑事上の責任・行政上の責任・民事上の責任)や、現場での救護義務についても教わり、深く考えさせられる内容となっています。

応急救護

事故に直面した際の応急救護についても、全員がもれなく学習します。心停止から約3分で死亡率(救命不可能率)が50%に達し、10分が経過すると生存率はほぼ0%になるという「カーラーの救命曲線」や、救急車が到着するまでの全国平均時間(約10分)といった現実的なデータを通じ、救命処置の重要性を認識した上でビデオを視聴します。

その後の実技では、訓練用人形を用いた胸骨圧迫(心肺蘇生法)や、心室細動の際に使用する医療機器「AED(自動体外式除細動器)」の具体的な操作方法を実際に体験し、万が一の際に体が動くよう練習を重ねました。

▲胸骨圧迫(心肺蘇生法)は、普通二輪免許の保有者は教習で経験している一方、教習所未経験の原付免許の生徒の多くにとっては初めて学ぶ機会となりました(東松山会場)

 

なお、やむを得ない事情により本講習会を受講できなかった場合は、「ベーシックライディングレッスン」(日本二輪車普及安全協会主催)をはじめとする、他機関・団体が開催する安全運転講習への参加をもって代替とすることが認められています。こうした柔軟性は、埼玉県教育委員会の取り組み姿勢における大きな特徴と言えるでしょう。

学校は通学OK! 新基準原付での参加者も

原付バイク通学を長年許可してきた県立秩父農工科学高等学校では、従来のガソリン50cc原付が生産終了(2025年10月末)を迎え、代替としての「新基準原付」区分が設置されたことを受け、通学許可車両の定義を「原付免許で乗車できる車両」へと改めました。

今回の講習会でも、新基準原付へ乗り換えたという女子生徒の姿が見られ、実際に乗ってみたメリットやデメリットを肌で感じつつ、新しい通学車両に対してとても好印象を抱いていました。

▲学校まで片道25kmを通学する女子生徒は、最近、父親の勧めで新基準原付「ホンダ Dio110 Lite」に乗り換えたそうです。「フルフェイスヘルメットがシート下に入らなくなったのは残念だけど、坂道を上るのがラクになりました」と話してくれました(秩父会場)

 

これからの高校生のバイク通学では、原付免許で乗車可能な新基準原付や電動原付一種スクーターなどが主流になっていくと考えられます。

学校・地域・関係機関がしっかりと連携し、安全性を担保できる交通安全教育を施した上で、移動手段に制約のある子どもたちが、家庭や地域の事情に合ったモビリティを選択して、通学や塾、アルバイトなどに安心して活用できる環境が整っていくことを切に望みます。

▲秩父地域の県立高校および特例としてバイク通学が認められた生徒のバイクに貼られている埼玉県の統一許可証

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