3月22日(金)〜24日(日)の3日、東京ビックサイトにて第51回東京モーターサイクルショーが開催され、会期中に11万3905人もの来場者を集めた。筆者も各種イベント&取材で結局3日間東京ビックサイトへ通うことになったが、毎度のことながらその人の多さにびっくり。近頃は“若者のクルマ離れ”なんて話を耳にするが、昨年よりも若者が増えている印象。楽しそうにバイクにまたがる若者を見ていると“まだまだバイクも捨てたもんじゃないな”と思う次第だ。

さて、そんなここ数年の東京モーターサイクルショーで僕が楽しみにしているのがバイク用品メーカーが作るキャンプ道具だ。このForRでも2022年の取材時には“デイトナとラフアンドロードがオリジナルテントを開発!”なんて記事を書いた。それまでもOEMやダブルネームのテントはあったものの、いよいよ二輪用品メーカーも自社オリジナルのテントを作るようになったぞ! と騒ぎ立てたのだ。

あれから2年が経った第51回東京モーターサイクルショーでは、キャンプブームがより熟成を重ねたことでアイテムが多様化。バイク用品メーカーからはテントやシュラフといった定番品だけでなく、予想の斜め上を行くようなユニークなアイテムが登場しだしている。前回はデイトナブースを紹介したが、今回はラフアンドロードのブースを紹介しよう!

ラフアンドロードのブース

第51回東京モーターサイクルショーのラフアンドロードブース。ラフアンドロードらしい機能性の高いツーリング用ウエアやツーリング用品を展示……するという従来どおり展示に加え、スタンプラリー的な要素や、アンバサダーのサイン会を行うなど、“モノ”だけでなく“コト”の展示を取り入れた。

ラフアンドロードは地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」がリリース間近!?

ラフアンドロードのブース

ラフアンドロードのブースを訪ねると、「谷田貝さんにおすすめのオモシロイものがあるんですよ」と、あやしい商人のようなセリフで旧知の広報担当さんに袖を引かれ、ブース裏へと連れ込まれる。バッグなどのツーリングアイテムのコーナーで「調子に乗ってこんなもの作ってみました」と、広報担当さんがニヤニヤしながら指し示すのはなんと畳(たたみ)だったのである。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

畳の大きさは30×40×2.5cm。この薄型サイズならシートバッグへのパッキングもしやすいだろう。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

オプションの「背もたれシート」は、内部に雨具などを挟み込むことで筒状になり背もたれや枕になる。

 

アイテムを見た瞬間に一瞬で合点がいく。キャンプには、折り畳み式のチェアやテーブルなど道具をたくさん持っていくようなスタイルがある一方で、最小限の荷物で積載物を極力コンパクトにするようなスタイルがある。ラフアンドロードでは、このチェアを持って行かないスタイルのライダーを“地べたリアン”なんて呼んでいるそうだが、どっちのスタイルを選ぶかでアイテム選びが根本的に変わってくる。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

実際に座ってみると程よい硬さでなかなか快適。またわずか2.5cm座面が上がるだけだが、これでものすごく胡座(あぐら)をかくのが楽になる。

 

この“地べたスタイル”では、チェアやテーブルなどのかさばるアイテムを廃することで荷物がかなりコンパクトになるのだが、キャンプサイトでくつろぐとしても、胡座(あぐら)か寝転ぶようなスタイルになるため、何かしらの工夫をしないと快適性が損なわれることになる。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

裏面には防水加工とともに面ファスナー仕様となっており、2枚目、3枚目と連結できるようになっている。

 

僕の場合、シュラフの下に敷くエアマットと組み合わせて使うサーマレストの座椅子でくつろいでいるんだけど、それだとちょっと困るのが焚き火だ。言うまでもなくキャンプの醍醐味は焚き火である。当然、キャンプでは多くの時間を焚き火の前で過ごすことになるわけだけど、火の粉で穴が空きやすいエアマットベースの座椅子だとちょっと焚き火の前で落ち着かないんだよね……。そこで今回の畳、“地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~(以下:畳)」”の登場である。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

オプションの「背もたれシート」を装着し畳を2枚連結してみたところ。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

座面の小ささのわりにかなりくつろげる印象。「背もたれシート」と畳が2枚あれば、肘を付いて横になるような場合はもちろん、仰向けになってもお尻がはみ出さないジャストなサイズ感。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

キャンプやピクニックでの使用はもちろん、車中泊などでもぞんぶんに活躍してくれそうだ。

 

この畳、時代劇などで、将軍が厚畳に座る姿をイメージして「武士~もののふ~」という名前をつけたそう。長ったらしいのでここでは“畳”と略させてもらうが、これがなんだか予想以上に具合がいいのだ。畳の厚みはわずか2.5cmなのだが、座ってみると座面の上がり具合がちょうど良く、靴のままあぐらをかくような場合にいい高さになっている。それにゴザ状の「背もたれシート」(以下:枕)を組み合わせれば、畳の後部が若干持ち上がり傾斜が生まれ、それがまた座り心地をアップさせるのだ。

……なんて御託を並べてみたが、兎にも角にも“畳”ってところが日本人としてのアイデンティティをくすぐられる。キャンプなんて“和”を感じる要素がほとんどない世界の中で、“畳”に座れるのである。ミスマッチというか斬新というか、とにかくこの畳が新しい風を吹き込んでくれそうじゃない? しかもその風は青畳の爽やかな香りがするのだからたまらない。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

畳表は、屋外の使用を想定して丈夫な樹脂製で、デザインもライダーにはお馴染みのチェッカーフラッグ……というかカーボン柄でお馴染みの市松模様。内部のクッション材の一部に本物の藺草(イグサ)を使うコトで、青畳の香りがきちんとする(笑)。この藺草は畳製造時に出る端材を使用しているそうで、最近流行りのサステナブルってやつである。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

畳の縁(へり)は、「燻銀」、「紅燕脂」、「雅藍」、「兜銀」の4種類を想定。キャンプという非日常的な空間に純和風のテイストを組み合わせると言う発想が斬新。キャンプサイトで異彩を放つこと間違いなしだろう。

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」

製造元は青森の中村畳工店。同店は徳川時代から200年以上続く老舗で、八代目となる代表の中村渉さんは北海道日本ハムファイターズの投手として在籍したこともあるのだとか。

 

地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~(参考出品  4月下旬取り扱い予定)」
●価格:1枚4,500円、2枚8,100円(税込) ●サイズ: 30×40×2.5cm ●カラー:燻銀(イブシゴールド)、紅燕脂(クレナイエンジ)、雅藍(ミヤビアイ)、兜銀(カブトシルバー) ●オプション:「背もたれシート」:6,000円(税込)

超高性能火バサミ・フェニックスライズ「劔トング」

「焚き火の前に陣取る武将気分が味わえる“武士~もののふ~”にぴったりなのが……」と、矢継ぎ早にラフアンドロードの広報さんから紹介されたのがフェニックスライズ・「劔トング」。いわゆる焚き火の薪や炭をいじる火バサミの超高級版とも言うべきアイテムだが、驚くべきは金属加工メーカーであるフェニックスライズによる精度の高さにある。なんと紙のような薄いものもしっかり掴める精度を持ちながら、薪のような重量物も余裕で掴み上げられるくらいの高い剛性感があるのだ。

フェニックスライズ・「劔トング」

なんだかものすごく高級な火バサミという感じで物欲がそそられる「劔トング」。手元の真鍮製のロックをスライドすると閉じたまま固定することが可能。

 

個人的に気に入ったのは、その名の通り剣のように尖った剣先形状。というのも焚き火をしていて困るのは火バサミのロストだ。ロストといっても本当に紛失するわけではないのだが、焚き火を前にお酒を飲んでいると妙に酔いが早いもんだ。そんな中で薪をくべたり、組み替えたりするわけだが、酔っ払って作業しているから“火バサミ”を適当に置いてしまう。でもって酔っ払っているからどこに置いたか忘れてしまうというわけだが、火バサミは薪や小枝と同じ棒状であり、不用意に地面に置いてしまうたびに「あれ!? 火バサミは……」と探し回ることになる。そんな状況でも「劔トング」ならガツッと一閃。地面に突き立てておけば、酔っ払っていようが見失うことはない(……たぶん)というわけである。

しかも、手元に付いている真鍮製のロック機構の操作感がなんとも心地よい。焚き火も見ながら何時間でもカチカチとスライドさせていられそうなのだ。

フェニックスライズ・「劔トング」

見よ! この「劔トング」の剣先の精度の高さを! これなら安物の火バサミみたいにだんだん広がって薪が掴めなくなるなんてこともなさそう。またパッキング時にも荷物の隙間にもサクッと差し込めそうだ。

 

Phoenixrise「劔トング」
●価格:5,400円
●素材:アルミ、ステンレス、真鍮 ●サイズ: 全長363mm ●重量:約104g

 

ラフアンドロードの広報さんと話していてオモシロイと思ったのは、ラフアンドロードとこの2ブランドのコラボレーション関係だ。フェニックスライズ中村畳工店も共に青森県のメーカーで、フェニックスライズに関しては数年前からコラボレーションが実現しているが、中村畳工店さんとのコラボレーションは今回が初。なんでも件のラフアンドロードの広報さんと、フェニックスライズの代表、中村畳工店の代表はサウナ友達だそうで、今回発表した“地べたスタイルソロキャンパー用ミニ畳「武士~もののふ~」”も、そんなサウナ中の会議で発案されたものらしい。

そんな“場の勢い”みたいな出生だから「武士~もののふ~」をカタチにするまでには色々な苦労もあったみたいだが、こんな遊び心あふれるユニークなアイテムを製品化してもらえるのは僕らユーザーにとっては非常にありがたいこと。そんな応援を込めて、思わず「畳2枚と枕のセットを予約します!」とその場でオーダーしてしまった。まぁ、ユニークなだけでなく「武士~もののふ~」は焚き火キャンプはもちろん、車中泊アイテムとしても非常に良さそうである。そんなこんなでおもしろアイテムを続々と登場させるラフアンドロードからは今後も目が離せないぞ!

 

追伸:件のラフアンドロード広報さんから、この記事の公開直前に「例の畳ですがサイクルショーでの反応が大きく取り扱い開始が決定しました!」との連絡が入った(笑)。販売開始は4月下旬くらいとのことで、ラフアンドロードの公式ホームページでもゴールデンウィーク前に登場するようだぞ!

 

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