はじめに。冬の北海道ツーリングには大きな危険がともないます。
ほぼすべての路面が凍結し、天気や除雪状況によって大きくコンディションが変わります。

記事中では筆者 高木はるかが実際に使った装備やルートをご紹介しますが、絶対的な正解ではなく、その日その時の状況に合わせて対応する必要があることをご了承ください。


先日の記事に書いた通り、年越し北海道ツーリングに行ってきました!
筆者にとっては4年ぶり、2度目の挑戦です。

レポートの初回である本記事では、バイクの装備をまるっとすべてご紹介します。
すべて筆者自身が実際に使用したものですが、北海道の厳しい環境の中、絶対的な正解というものはありません。

バイクや環境によっては適さない可能性があることをご承知ください。

バイクの装備をそろえよう

今回は夫と2人で出かけたため、バイクも2台で北海道へ向かいました。

旅の相棒はクロスカブ110とスーパーカブ90です。
車両選定の理由としては、もともと手元にあったからというのが一番なのですが、他にもタイヤの用意が比較的簡単で、2台一緒に軽トラックへ積載できるという事情もありました。

スパイクタイヤは必須アイテム

冬の北海道ツーリングのマスト装備といえるのが、スパイクタイヤ。
粉じん発生防止の観点から法律で禁止されていますが、全面禁止ではなく、地域や条件によっては使用が許可されているのです。

平成二年法律第五十五号によると、126cc以上(自動車に分類される)の場合、路面が露出していない状態…つまり、積雪または凍結の状態にある道路であれば使用可能。
125cc未満(原動機付自転車に分類される)の場合は規制がありません。

そんな事情からカブ用であれば市販スパイクタイヤも手に入るのですが、ピンが少なくグリップ力があまりありません。
筆者自身、前回の年越しツーリングでは市販品を使ったのですが、走行中は常にツルツルとスリップして生きた心地がしなかった思い出です。

基本的には自作、もしくは値が張りますが、専門店が作ったフルピン(タイヤ全体にスパイクピンが配置されている状態)のスパイクタイヤがマストなのです。


今回のツーリングでは、クロスカブとスーパーカブで違うタイヤを履かせてみました。2週間走ったあとの状態がこちらです。

スーパーカブ

年越し北海道ツーリングのパイオニアの一人、モトツーリング編集長のカン吉さんから譲っていただいたタイヤ。製作技術が素晴らしいのはもちろん、昨年作ったタイヤということでゴムが硬化していることからピンが抜けにくく、最後まで快適に走ることができました。



クロスカブ

筆者が作ったスパイクタイヤで、ベースはTIMSUNのTS808。トラクションがかかるリアタイヤはかなり消耗が激しいのがわかります。ブロックの形状や硬さなど、まだまだ改良の余地がありそうです。

 

クロスカブのタイヤの製作現場はこんな感じ。ブロックひとつずつに電動ドリルで穴を開けたところに、スパイクピンを手作業で差し込んでいます。



ちなみに、車と同様バイクにもスノータイヤやタイヤチェーンがありますが、長距離を走るには向いていません。
スノータイヤはアイスバーンをうまく走れず、チェーンはアスファルトが露出しているところを走ればすぐに切れてしまうのです。

スパイクタイヤを手に入れるには手間とお金がかかりますが、間違いなく一番重要な装備です。命を守るためにも最大限の準備をしましょう!

キャブレター車にご用心

我が家のクロスカブ110は2018年製と年式が新しく、インジェクション車。
そのためバッテリーさえ新しくしておけば、冬の北海道においても問題なくエンジンがかかるタフな仕様です。

ところがスーパーカブ90はキャブレター車。寒い場所ではエンジンがかかりにくいだけでなく、“アイシング”の対策が必要です。

アイシングとは、ガソリンが気化する時に周りの熱を奪い、吸気中に含まれる水分が凍って起きる不具合。
エンジンがかからなくなったり、かかってもすぐ止まったり、場合によってはスロットルを戻してもエンジンが高回転のまま戻らなくなったりしてしまうのです。
走行中にエンジンコントロールを失い、減速できなくなったらと思うと…恐ろしい!

対策方法は、キャブを温める&冷やさないようにすることです。

確実なのはキャブヒーターを取り付けることですが、幸い筆者のスーパーカブは2007年製。もともとキャブヒーターが付いている車両なのです。
レッグシールドの隙間をテープやゴムシートでふさぎ、キャブレターに直風が当たらないようにするだけでOK。最後まで調子よく走ってくれました。

古い消耗品は交換しておこう

厳しい環境が及ぼす影響はアイシングだけではありません。古くなった消耗品が限界を迎えて破損するケースもあるのです。
トラブルを防ぐためには部品の交換がおすすめです。

今回交換した部品は次の通り。

  • タイヤチューブ
  • バッテリー
  • スロットルワイヤー
  • ブレーキワイヤー
  • プラグ
  • エンジンオイル(ホンダG1で問題なく走れました)

特にスロットルワイヤーとブレーキワイヤーは、ワイヤー内に水が入ってしまった場合に凍って貼りついてしまう恐れがあります。
ワイヤーのはしにグリスを塗ることでも対応できるそうですが、筆者は念のために交換をしました。

タイヤチューブに関しては予備を持っておくと安心です。
万が一現地でタイヤがパンクした場合、気温の低さからパンク修理剤がまったく使えなくなるのです…!

また細かい点ではありますが、ブローバイホース・キャップ(燃料の燃え残りを排出するところ)の先に雪が詰まったり凍ったりして故障をするリスクもあります。
キャップやホースを取り外したり、穴を開けたりしておくと対策ができますよ。

クロスカブのブローバイキャップ。カッターで穴を開けて対応しました。

走行中の身体を守る防寒アイテム

走行中は超低温の風がビュウビュウと吹き付けてきます。
確実に体温を保つためには、スクリーンとハンドルカバーで風をブロックしておいた方が安心です。

今回はスーパーカブに旭風防製のスクリーン、クロスカブにデイトナ製のスクリーン、そしてどちらもラフアンドロード製のハンドルカバーを選びました。

ステーだけデイトナ製を使い、スクリーン部分は過去に使っていたものを流用しています。(転倒して新品のスクリーンが割れるのが嫌だったのです…)



ハンドルカバーの取り付け口からも風が入ってくるため、布を詰めて隙間をなくし、上からテープをグルグルと巻いています。(布テープとビニールテープを試しましたが、ビニールテープの方が使いやすかったです)
この状態でグリップヒーターを使うことで、極寒でも快適ツーリングを楽しめるのです。

寒さに負けないバイクを目指せ!

以上が北海道ツーリングにおけるバイクの装備でした。

ちょっと多いのですが、どれも冬の北海道の厳しい寒さと環境を無事に走り切るためには欠かせない装備です。
しっかり準備をしておくことで、トラブルが起きにくくなりますよ!

次回の記事では、防寒着や持ち物についてご紹介します。
どうぞお楽しみに!

【関連記事】
冬の北海道ツーリングでレッドバロンの電熱グローブ『ゼロスグラブ ヒート2』を使ってみた!
高木はるかの年越し北海道ツーリング:1 はじまりは寒波

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事