九州で人気のツーリング・エリアといったら、まずは熊本県の阿蘇周辺が1位か2位のどちらかに入るでしょうが、ちょっと待ってください。阿蘇へ行くには、どのルートで向かいますか? 本州から九州までフェリーで行くのなら、〈大阪⇔別府〉航路を利用するっていうライダー、多いのではないでしょうか。だとしたら、まずは別府エリア自体から存分に楽しんでみては? というのが今回のお話です。
圧巻の爽快ロード「湯布院日田往還」
手前の道にバイクが走っているの、見えますか? この道は大分県の県道11号・別府一の宮線。通称「湯布院日田往還(ゆふいんひたおうかん)」です。
別府市内から由布岳(標高1,583m)の南麓を横切るようにして湯布院へとつながる、この湯布院日田往還がなんとも素晴らしい。こんなに広い草原、そうそう見られるもんじゃありません。
画像はとある年の1月下旬に撮影したものですが、黄金色の草原が冬風に揺れ、陽光に優しく光る様子に目を奪われました。春が来れば、今度は一面の緑に覆われ、息をのむ景色が見られることでしょう。
日田往還、というのは、現在の大分県日田市が江戸時代に幕府の天領として九州の政治経済の中心だった当時、九州各地の重要地域と結ばれていた街道のひとつだったそうです。往還とは道を行き来すること。往来、往復、主要な街道、という意味もあるとか。
別府市内を出発し、この歴史的かつ美しい風景が続く「湯布院日田往還」を使って30㎞ほど西へ進みましょう。するとそこは、日本を代表するロング&ワインディング・ロードのひとつ「やまなみハイウェイ」のスタート地点となる水分峠です。つまり別府から阿蘇まで、爽快ルートが延々と続いていく、というわけです。
別府温泉の湧出量は日本一!
湯布院日田往還へと走り出す前に、せっかくですから別府市内も観光しましょう。別府といえば、なんといっても温泉。別府温泉は日本一の湧出量を誇り、その量、なんと一日に10万リットル以上だとか。源泉の数も日本一で、2800本以上の源泉があるそうです。
なので別府は、温泉旅館や日帰り入浴施設などの温泉施設が豊富。市内のいたるところから湯けむりも上がっています。細かく紹介していると大変なので、ここでは筆者が利用した、一風変わった温泉施設を一軒だけご紹介。
露天の泥湯で有名な「別府温泉保養ランド」
別府市街地の北、別府八湯のひとつ明礬温泉エリアにある、別府温泉保養ランド。健康ランドみたいな名称ですが、日帰り入浴も宿泊もできる、れっきとした温泉施設です。
ここの名物は、セメントみたいな色をした泥湯。
紺屋鉱泥といい、適度な噴気、腐食粘土層、ミネラル水という三大条件のもとにのみ産出される貴重な温泉なんだとか。画像はその鉱泥でたっぷり満たされた内湯(男女別)。成分が濃厚なので長湯は禁物、湯あたりしないように10~15分位で他のお風呂に移動するように、とのこと。また効き目が強すぎるので、小学生以下の入浴が禁止されています。
そしてこちらが露天風呂。画像は全体のごく一部で、本当はもっと広く、巨大な庭園のような造りになっています。湯船も、軽く100人以上は同時に浸かれそうな大きさ。そこに泥湯が満ちあふれ、目を見張るような景観。
湯船の底はドロドロしており、手ですくい上げてみると白い鉱泥がたっぷり堆積していました。
別府温泉保養ランドは建物も設備もかなり古く、巨大な露天風呂も男女混浴となっていて、人によって好き嫌いがはっきり分かれる温泉でしょう。特に混浴の露天。女性は、女性専用の内湯(泥湯)だけにしておいたほうが無難かも?
別府温泉保養ランド
別府にもご当地冷麺があったとは!
最後にご紹介するのは、別府名物のご当地グルメ「別府冷麺」。やっぱり旅に出たなら、旅先でしか味わえない〈旅めし〉をいただきたいじゃありませんか。
別府冷麺は昭和25年ごろ、満州から引き揚げた料理人が開発したものだそうで、現在は市内に60~70店ほど提供する店があるそうです。麺は小麦粉、そば粉、でんぷんを基本にし、冷麺専門店系では太麺、焼肉店系では細麺が特徴。魚介系スープは日本人にも食べやすいよう、和風アレンジされているのだとか。
筆者がいただいたのは、焼肉店系。筆者は岩手県盛岡市出身なので、舌と喉には盛岡冷麺の味が強く染み込んでいまして、この別府冷麺には強烈なカルチャーショックを受けました。見た目には共通点がいくつかあるものの、味はまったく別物。これはこれでクセになりそう。
というわけで大分県別府市。九州ツーリングの玄関口のひとつとしてだけでなく、ここ自体がツーリングの目的地になりえるほど魅力的だった、というお話でした。
さて今年は、どこへツーリングに行きましょうか。春はすぐそこです!
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