大地の息遣いが感じられる桜島
九州ツーリングにおける人気スポットのひとつ、桜島。鹿児島湾(錦江湾)にある周囲約55kmの島で、海沿いにバイクでぐるりと一周するのも良し、湯之平展望所(桜島の北岳の4合目)をめざしてゆるやかなワインディングを駆け上がってみるのも良し。今もなお噴煙を上げ、周囲に灰を降らす火山のおひざ元を走ることができるなんて、かなり貴重な体験といえます。
桜島は、島の東側が陸路で垂水市とつながっていて、西側では鹿児島市とフェリー航路でつながっています。フェリーの名前は「桜島フェリー」。24時間運航のカーフェリーで、桜島と鹿児島港を約15分で結び、最短15分間隔で発着。昼夜問わず、ひんぱんに行き来している、庶民の足ともいえる存在なのです。
ツーリング中に、ちょこっとばかり船に乗るって、これもまた貴重な経験でしょう。北海道や九州へ渡る長距離フェリーに乗船する機会はあっても、乗船時間わずか15分のプチ船旅。これがなかなかオツなんです。
オツといえば、もうひとつ。桜島フェリーには数多くのファンを有する、名物うどんがあるのです。お店の名前は「やぶ金」桜島フェリー内店。提供スタイルは、立ち食いうどんみたいな感じ。乗船時間15分ですから、注文を受けたら30秒で調理完了。客もチャチャッと平らげます。
船上で海風を浴びつつすする、うどんは格別
今回オーダーしたのは、かけうどん(500円)。かけとはいえ、素うどんじゃありません。さすが鹿児島、小さめですが、さつま揚げが1枚。さらに天かすと青ネギがぱらぱらと。他に天ぷらうどんや月見うどんもありますが、筆者の場合、本場のさつま揚げを本場で食べられるというのがうれしくて、いつもかけうどん。これこそが「旅めし」じゃありませんか!
これが、かけうどん。うどんメニューの中では一番お安い。あと50円追加して月見うどんにする手もあるけれど、残念ながらさつま揚げは選手交代となってしまいます。
とにかく旨いんです! 味がどうこう、麺にコシがあってとか何があってとか、そういうことではないのですが、妙に旨い。シチュエーションがそう感じさせるのでしょうね。できたてのうどんを受け取って、海風の吹きつけるオープンデッキに運んですする、この行為そのものがたまらない。猫舌さんも心配ご無用。麺がアツアツでも、フーフーする必要なし。箸でつまんで持ち上げれば、海風が麺を冷ましてくれます。
食べ終わったらどんぶりを返却して、再びオープンデッキへ。船尾に移動し、舌に残るうどんダシの味わいを噛みしめながら、少しずつ離れていく桜島の雄姿を眺めます。ああ今回も桜島へ来ることができた、「やぶ金」桜島フェリー内店のうどんも食えた、今度はいったい、いつ来られるだろうか……。
船上うどんの味の記憶は、旅の感傷と混じりあって脳裏に深く刻まれます。だから余計に旨く感じるのでしょうね。これぞ愛と追憶の旅めし。「やぶ金」さん、ごちそうさまでした!
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