昭和の香ばしいスポットをスーパーカブ110でダラダラ旅する「昭和レトロ紀行」。今回は妻とタンデムで、群馬県太田市と大泉町を訪れた。ブラジル料理の洗礼を受け、フラフラで行ったのは、昭和の古風な「ビジネス旅館」。あまりにトンデモな宿で一夜を明かしたら、妻がいなくなっていた……! 衝撃の第2回!
前回はコチラ!
【昭和レトロ紀行】ここは日本じゃない!? 脂オブリガート、ブラジル料理の洗礼を浴びたゼ【群馬県太田市&大泉町編①】
Contents
リサイクルショップで日本にはない服をゲットせよ
ブラジルマーケットから次に訪れたのは「ハードオフ・オフハウス大泉店」だ。前回のキオスケ・シブラジル大泉店からは500m未満の距離にあり、スーパーカブを走らせて1分で到着!
ブラジルの方が売ったモノが売られているハズ。なので、日本ではお目にかかれない珍品があるに違いない。店内を練り歩くと、よく見る日本のリサイクルショップにはない、ド派手な服がチラホラと!
おっと、ココは田舎のおばあちゃんち!? 部屋の名前は「白鳥」
うーん、思いのほか変わりダネはなかったかな笑 ちなみに店内にはブラジルの方より日本人が多かった印象だ。
それにしても……「これは料理ではない、脂だ」という妻の暴言が飛び出したフェイジョアーダがまだ腹にたまって、歩くのが苦しい笑 そこで先に宿へチェックインすることにした。
今回泊まるのはForRのスタッフからオススメされた、歴史あるビジネスホテル(?)。となると、一筋縄でいかない宿なのは確実……と覚悟して行ってみた。
まだ16時頃で日が高い。こんな時間帯に悠々とチェックインするのは何だかリッチな気分だ。スバルの巨大工場や、「ラフィエット通り」なる道路を通り過ぎた。ラフィエット通りはブラジル絡みではなく、太田市の姉妹都市であるアメリカ合衆国インディアナ州ラフィエット市に由来して名付けられたようだ。
ハードオフからわずか15分で宿に到着。JR太田駅から徒歩4分という超好立地だ。外観は非常に雰囲気がある。
中に入ると暗い。客席に生活用品が置きっぱなしになっている。何度か声をかけると、おじいさんが中から出てきて、食事処のレジに座った。
宿泊代は先払いということなので、1名5500円×2を支払う。素泊まり1室の料金だ。HPには和室6畳で「2名6000円」とあったので、6000円で2人泊まれると思ったのだけど、違っていたようだ。
なお、HPでは「素泊まり4860円」とある。これは税抜きの表記で、税込みだと5500円になるのだ、と思っていた。だが、今計算してみると10%税込みでも5346円。どこから5500円という数字が出てきたのだろう? 単純に料金が変わったのかもしれないが……。ちなみに食事付きのプランもあり、2食付きだと6480円、夕食付きは5940円、朝食付きは5400円。
暗い店内を歩いて、2階へ。おじいさんは「鍵がない」と言って、どこかへ行ってしまう。
しばらくして、白髪のおばあさんが登場。「こちらです」と案内し、部屋の鍵を開けてくれた。部屋に入って驚く。
おばあさんによると、昭和44年に鳥料理専門店として創業。「昔は宴会がよくあったんだけど、そういうのが減ったんで、宴会場として使っていた2~3階を旅館にしたんです」という。各部屋に名前がついており、この部屋は「白鳥」だ。
それから部屋でしばしくつろぐことにした。ジックリ観察すると、やはりスゴイ部屋だ。壁のヒビ割れ、シミのできた天井、古びた畳。そしてフトンがペラい。
恐怖! 突然ピアノが鳴り出す! 内部を探検だ!
気温が高い上に、部屋の空気が淀んでいる。「カビくさい」と妻は言うが、鈍感な私はよくわからない。
そこで、窓を開けようとしたのだけど、網戸がないので蚊が入ってくるのは確実。一応エアコンがあるのでつけようとしたら、妻が「やめて」と懇願してきた。メンテナンスに期待できないし、カビやホコリが巻き起こるのを恐れているのだ。
仕方ないので、出入口のフスマを開け、廊下から丸見え状態で換気して過ごす笑(ただし鍵はかけられない)。それでも「廊下から中のカビくささが来るのであんまり変わらない」と妻。
思い出したように妻が「おじいさんは奥さん(おばあさん)の尻に敷かれているタイプだ」と言う。理由を訊ねると、鍵を探しに来たおじいさんに対し、おばあさんが“頼りにならないわね”とばかりに自分で行動したから、と答える。私は「なるほど」と言いながら、洞察力と想像力に冷や汗を浮かべていた。
やがて、近くでピアノの音が鳴り始めた!? 「怖ッ!」と、思わず妻と顔を見合わせる。「娘さんがピアノの練習をしているのでは?」「おばあさんが音楽教室を開いているのでは?」などと話し合う。
「これはアラベスクだ」と妻。ピアノでは中級者向けの曲で、よく練習に使われるそうだ。私にはよくわからないが、ヘタな感じはしない。20分もすると、ピアノの音が止まった。
妻が「ここはヤバい」と一言。
弁護するわけじゃないけど、妻はトンデモ宿に“耐性”がある。妻とはバックパッカーでユーラシア横断している際に出会い、半年ほどアジア各国を一緒に巡ることになった。そのため、相当ボロ宿(失礼)には慣れている部類なのだ。
まぁ確かにアジアの宿は施設が古くても、しっかり修繕してあった(網戸もあった)。いくらボロでも、客に少しでも快適に過ごしてもらおう、というもてなしの心があった。そんな妻が「ヤバい」と言うのだから、ヤバみがおわかりになってもらえるだろうか。
と言いつつ、妻は横になってウトウトし始めた。アンタもヤバいな、と思いつつ、私は内部を探検してみることにした。
3階にはいくつかの大部屋があり、合宿などもできそうだ。それにしても天井が破れていたり、あちこちが痛んでいる。
風呂は不思議な場所にあった。いったん2階から階段を下りて、中2階から妙に急な専用の階段を上った2階にある。高さとしては我々の部屋と同じ階にあるのだけど、増築を繰り返したせいなのか、ダイレクトに行けないのだ。
風呂は部屋と比べると新しくてキレイ。しかも24時間入浴OKと太っ腹だ。風呂にかけるホスピタリティは本物だと思った。
しかし「ビジネス旅館」との触れ込みだが、ビジネス要素はどこ? と小一時間問い詰めたくなってしまう笑 このカンジ、まさにあの宿と通じるモノがある。
気が滅入るので、部屋飲みはやめて居酒屋にゴー! そして……
19時になっても腹が空かなかったが、せっかくなので、またしてもブラジル料理屋に足を運んだ。
順番が前後してしまうが、この話は次回に譲ろう。
宿に戻ってきて、近くのコンビニに買い出しに行くことにした。宿で酒盛りでもしてやろうという腹づもりだ。宿は駅から近いだけあって、コンビニやファミレスが充実しているのはイイ。
コンビニで酒やつまみを物色していたら、突然「アソコで飲むのは気が滅入るな……」とユーウツになってきた。そこで妻を居酒屋に誘った。「オゴるゼ」と冗談めかして言うと、顔がパッとほころんだ笑 駅前だけに飲食店はそれなりにある。これまた鳥順の(数少ない)イイところだ。
行ってみたのは、おかみさんが一人で切り盛りしている居酒屋だ。スバルに仕事で来たのであろう、自動車部品関連の企業らしき4人が熱弁を振るっている。それも面白かったが、癒されたのがおつまみの数々。お通しの枝豆と漬物、梅きゅう、もずく酢、そば! シメに出されたスイカ……脂で満たされた胃袋と腸がスッキリ爽やかになっていく気がしたのだ。
居酒屋で久々に二人でサシ飲み。ブラジルについて、食について、そして昔のバックパッカー旅行話に華が咲く。いい気分で宿に戻って後は寝るだけだ。
真っ暗な階段を上がって部屋へ。夜になっても暑く、「カビくさい」と妻が言うので、出入口をオープン。つまり廊下から丸見えで就寝する笑 かなり不気味だが仕方ない。ツーリングの疲れ(と言っても大したことしてない)と酔いで、私はバタンキューという死語を使いたくなるほど、すぐ寝てしまった。
ふと目を覚ますと午前5時過ぎ。暗がりの中、横を見ると妻が……いない!?
【緊迫の次回に続く!】