日本一深い湖「田沢湖」のほとりを一周するツーリングは、実に楽しく、興味深いものでした。今回は今も語り継がれている「たつこ姫伝説」と、絶滅したと考えられていた田沢湖の固有種「クニマス」の泳ぐ姿を現地で見学できますよ、というお話。たつこ像って、佐々木希ちゃんに似てない?

田沢湖一周は快走ルート

田沢湖

 秋田県道でぐるりと一周することができる田沢湖。距離は20㎞ほどですが、信号機のある交差点がほぼありませんので、ストレスフリーで走ることができます。
 赤信号で停められることなく、好きなだけ走り続けることができるというのは、実に気持ちいいもの。しかもその間、常に美しい湖の景色が眺められるのですから申し分なし。

田沢湖

 美しいといえば、秋田美人。京美人、博多美人とともに「日本三大美人」と並び賞されているようですが、秋田は美人が多い。
 世界三大美女とされる中国の楊貴妃、エジプトのクレオパトラと並ぶ小野小町(平安時代の歌人)も秋田出身です。
 そしてここ、田沢湖にも、伝説と化すほどの美少女がいたそうです。その名は、たつこ。のちにブロンズ像が立てられるほどの美人だったという、たつこの伝説とは……。

たつこ姫伝説

 むかーし昔、田沢湖がまだここまで大きくなっておらず田沢潟と呼ばれていたころの話じゃ。
 この地に目を見張るほどの美しい娘、たつこがおったそうな。
 たつこはその美貌と若さを永遠のものにせんと、あるとき観音堂に百日百夜の願いをかけた。そして百日目、ついにお告げが。田沢潟のとある場所に湧く霊泉を飲めば願いが叶う、と。
 たつこはお告げの通りにその霊泉を手ですくい、飲んだ。ところがその霊泉は、飲めば飲むほど喉が渇く。たつこはたまらず飲み続け、ついには腹ばいになって霊泉が枯れるほど飲み続け……。
 気がつくと、たつこは巨大な龍になっていた。欲をかきすぎたせいかのう、龍と化したたつこは田沢潟の主となり、湖底深くに身を隠したという話じゃ。

田沢湖

 とまあ、そのような伝説が今も残っておりまして、田沢湖には「たつこ像」というブロンズ像も建てられ、撮影スポットとして観光客に人気です。
 さて、そのたつこ姫伝説、まだ続きがありまして……。

 夜になっても家に帰らぬ、たつこ。心配した母親は、松明(たいまつ)の灯りを頼りに、娘を探しに出かけたそうな。
 そして田沢潟へたどり着き、龍と化したたつこの姿を見た。なんということじゃ、美しい我が娘がこんな姿になってしもうて……母親は悲しみ、声をあげて泣き叫んだ。そして思わず手にしていた松明を湖に投げ捨ててしまう。
 すると、投げ捨てられた松明が魚へと姿を変え、湖を泳いでいくではないか。
 その魚が、のちに田沢湖の固有種クニマスになった、ということじゃ。

絶滅したはずが……!

 日本一深く、湖底が海面よりも低いという特殊な環境がそうさせたのか、クニマスは田沢湖のみに棲息する魚でした。ベニザケの陸封型のヒメマスに似たサケ類で、食味もよく、昔は「クニマス1匹、米一升」といわれるほどの価値があり、田沢湖の漁師にとっては重要な収入源でもあったそうです。
 ところが1940年(昭和15年)、農業用水と水力発電を目的に、強酸性の玉川の水を田沢湖に導入したところ、絶滅。

 それがなんと2010年(平成22年)、クニマスが70年の時を超えて生きていたことが判明。発見されたのは富士五湖のひとつ、西湖(さいこ)です。発見者は「ギョギョッ!」でおなじみのさかなクン。
 実は田沢湖に玉川の酸性水を導入する以前、西湖や本栖湖、琵琶湖などへクニマスを移植する試みがなされていたのです。そして結果的に西湖だけは移植に成功、ただし人間はそのことに気づかず、70年が過ぎていた、というわけ。

田沢湖

 田沢湖の湖畔に、そんなクニマスを飼育展示している施設があります。それが「田沢湖クニマス未来館」。
 できれば田沢湖に放してやりたいところでしょうが、田沢湖は酸性水の中和処理が済んでおらず、まだまだクニマスが棲めない状態。ですので、まずはここから、という感じでしょうか。

田沢湖

 館内で飼育されているクニマスを、水槽のガラス越しに見ることができます。
 地元の方にとっても、うれしいことでしょう。絶滅したといわれていたクニマスが、秋田から遠く離れた山梨でひっそりと生きていた。そして水槽内とはいえ、地元に帰ってきた。

田沢湖

 田沢湖クニマス未来館では、クニマスの生態や、当時の時代背景、クニマス漁を行なっていたころの漁具や丸木舟などを、パネルや実物展示で詳しく解説。とても興味深いです。
 田沢湖ツーリングの先はぜひお立ち寄りを。

元祖「みそたんぽ」のお店も

 田沢湖クニマス未来館のお隣りは、元祖「みそたんぽ」のお店として知られる「たつこ茶屋」があります。巨大な駐車場に面しているので、すぐにわかるはず。

田沢湖

 秋田名物きりたんぽは、鍋にしていただくのが一般的。みそたんぽは、串に差して味噌を塗り、炭火でこんがり焼いたもの。香ばしくて甘じょっぱい味噌が食欲をそそり、とてもおいしいもの。ツーリング中のおやつにはぴったり。
 あいにくこの日は休業しており、食べることはできませんでしたが、過去に何度か食べたことがありますのでご紹介した次第。定休日は火曜と水曜だそうです。ぜひこちらにもお立ち寄りを!

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