押忍! 日本唯一のツーリング専門誌「モトツーリング」(内外出版社)の編集ディレクター、マロ兄だよ。まだ続いちゃってごめんな。今回もよろしく。

てなわけで、誰も待ち望んでないだろうけど、今回は視聴率アップ(?)の温泉回だよ!

温泉もツーリング中の立ち寄りスポットのひとつ

▲伊豆・河津の山間部に位置する谷津(やつ)温泉の噴泉塔。谷津温泉は約1500年前に行基が発見したと伝わる

 

さて、ツーリング雑誌で紹介するスポットネタにも定番カテゴリーってのがあるのね。モトツーリングの場合は、絶景、秘境、酷道・険道といったものに加えて「秘湯」というのもあって、年に1度は特集が組まれてる感じ。

ツーリング中の立ち寄りスポットとして温泉に行くかどうかは実はかなり意見が分かれるんだよね。湯冷めしやすい冬場は行かない、女性は髪が濡れるのを嫌うので行かない、湯に浸かると疲れが出てしまうので行かない… アンケートを見ているとこのような意見が一定数必ず挙がってくる。

それでも火山があちこちにある温泉大国ニッポンを旅するうえで、温泉の魅力は外せないんだよね。またモトツーリングの編集長は温泉ソムリエの資格も持っていて、まぁ毎回マニアックに紹介してるんですよ、これがまた。

▲谷津温泉「アミ・ドローラ」(旧 薬師の湯)の露天風呂は源泉かけ流し。泉質はナトリウム- 塩化物・硫酸塩温泉でpHは8.6。源泉温度が高いので冬でも加温の必要がない。(モトツーリング63号より)

編集・モデル・カメラマンは僕です(あはははは

▲伊豆・天城湯ヶ島温泉の老舗旅館、白壁荘。名曲「天城越え」が生まれた宿として知られる高級旅館。こういう施設にひとりで行くのはなかなか勇気がいるもの

 

というわけで、年に数回は温泉取材を行ってるんですが… これがまたけっこう、かなり大変なのよね。

まずアポ取りからして大変。日帰り入浴施設や宿泊施設(旅館・ホテル)に企画書を出すんだけど、撮影したい湯舟や施設(内観・外観など)を記載する。施設側としては撮影の規模を把握したいので、どんな機材で何人で撮影するのかも知りたい。カメラマンは? モデルは? 編集担当は?

「あ、すいません。僕がひとりで行きますんで…。僕が僕を撮る、みたいな~あはははは」(テヘペロ)

というと、たいてい少し驚かれる(あきれられる)のだが、この「あはははは」で今日までやってまいりました(フンス!)。

▲白壁荘は源泉掛け流しの巨石露天風呂(写真)と巨木露天風呂が名物だ。(モトツーリング62号より)

撮影に許された時間は30~40分ほど

▲伊豆・修善寺温泉の日帰り入浴施設「筥湯(はこゆ)」。営業開始前の早朝から撮影を始め、30分ほどで終了できた(モトツーリング62号より)

 

基本的に撮影は営業(入浴)時間外で行う。日帰り入浴施設なら営業開始前の早朝か終了後の夜、宿泊施設ならチェックアウトからチェックインの間だ。

源泉かけ流しでない湯舟は毎日お湯を抜いて掃除してから溜め直しを行うけど、この溜め直しにはけっこう時間がかかる(湯舟・湯量によっては数時間)。なので、撮影可能時間は30~40分くらいということが多い。

ひとりで湯舟につかりながらの写真を撮るには最低でも30分は必要だし、本当に30分しかない場合は複数の湯舟を撮影することはほぼ不可能だ。時間枠のすべてをメインカットの湯舟に使い、集中して撮影することになる。

湯舟が複数設置されている場合はふり〇んのまま撮影のはしごができることもあるが、こんなことはまれだ。

下調べをしてから現地に向かうのが鉄則

▲オクシズエリアの静岡市・口阪本温泉「民宿 明ケ島」の内湯。撮影時は外気温が低かったため湯気が抜けず、珍しく窓を半開けで撮影した(モトツーリング32号より)

 

湯舟のセルフ撮影に迷いは禁物だ。現地で迷っていたらあっという間にタイムアウト。なので現地に行く前に公式サイトなどで予め湯舟の造りと周辺の状況、撮影時間と太陽の方角から予測した光の具合などを確認しておく。

現地についたら「よーいどん!」でこんな感じ。

①爆速で脱ぐ!(戦闘モード突入)
②湯舟を確認
・内湯で湿度と温度が高い場合は窓を開けるなどして下げる
 ※これをやらないとレンズが曇って結局撮影が遅れる
・湯舟の縁や床が中途半端に濡れていたら全部濡らす
③三脚とカメラを設置して画角を決める
④テスト撮影しながら露出を決める
 ※必要ならPLまたはNDフィルターをレンズに装着
⑤タイマー機器をカメラに装着
⑥かけ湯(マナー大事)をしてからタイマーONで湯舟へ
⑦タイマー機能により一度に複数枚を連続撮影
⑧湯船から上がって写り(画像)を確認
⑨お湯のアップやカラン、湯舟から見える景色など細部を撮影
⑩残りの時間で湯を体感(執筆するからこれ大事)
⑪爆速で服を着て撤収(冬場は大変…)

文字にすると改めてやること多くて草である。これを30~40分でやるんだから本当に現地で考え込む暇はない。

特に気を使うのが④の露出(シャッタースピードと絞りの組み合わせ)決定時。お湯は常に動いているのである程度シャッタースピードを上げる必要がある(上げないと湯面がぼける)が、内湯の空間は暗いことが多いのでシャッタースピードを上げ過ぎると露出(画像の明るさ)がどんどん暗くなる。湯面は光を反射するのでストロボも使えないことが多い。

じゃあ今度はISO(イソ)感度を上げようとやっていくと高感度耐性の限界が来て画像がどんどん荒れてくる(ノイズが多くなる)。ならシャッタースピードを下げればいいじゃない? と考えるが、これができない理由は前述の通り。

もちろんF値2.8以上の大口径レンズがあれば露出マージン的にはかなり有利だが、ぼっちツーリング取材に大きく重いレンズは不向き。ツーリング中に温泉だけを撮影するわけではないのだから。

このように、現地ではISO感度、シャッタースピード、絞りを駆使しての「最適な露出をいかに速く導き出す」かがカギになる。

▲伊豆・伊東温泉の老舗旅館「陽気館」の眺めのよい露天風呂。源泉かけ流しで最高なのだが写真に撮る場合はとても難しい条件。屋根の陰が落ちる手前と陽射しのあたる遠景を同時に写すためにHDR撮影を行った。(モトツーリング80号より)

 

▲温泉分析書も忘れずに撮影しておく。施設によっては歴代の分析書を掲げていることもあるのでなるべく新しいものを撮影する。これを見れば源泉の質がわかる(写真は奥多摩・民宿の宿 荒澤屋)

自分撮りの難しさ! 見えたらアウト!?

▲東京・奥多摩の幻の湯、鶴の湯温泉に入れる「旅館 荒澤屋」の内湯。お湯が無色透明で湯舟が小さい場合が一番きつい! どうしても隠せなかったので後ろ向いちゃいました汗(モトツーリング72号より)

 

自分で自分を写すことって難しい。例えば、○ん〇ん写ってたらアウトだしね。カメラマンがいれば「見えてっぞ!」って言ってもらえるけど。画角や露出が決まって「いい写真になったぜい!」と思ったら撮り直しってことも多い。足や腕でガードを試みても無色透明のお湯だとカバーリングがとても難しいのだ。

濁り湯や茶褐色の湯なら何の心配もないんだけど無色透明はあかんのよ。なのでこの場合お湯をわざとかき混ぜたりする。すると光の反射も相まって、いい感じにキラメキでカバーしてくれたりする。あ、なんか素敵。

もちろん光の反射を把握して自分自身が移動できるならそれが一番いいけど、自分を座らせたい位置と合致しないことも多いので、これは運。

▲運が良かった場合はこんな感じ(笑) 伊豆・伊東温泉の共同浴場「和田寿老人の湯」の内湯だ。採光のおかげでセーフ!(モトツーリング68号より)

 

えーと、こんなしょーもない話にお付き合い頂きありがとうございました。でもね、これまでのよもやま話の中でもかなりノウハウを求めらる部分なのは確かなんだよね。

そして最後に、これまでご協力いただいた温泉・宿泊施設の皆さま、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。では、また次回!

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