スーパーカブ110でダラダラと昭和のレトロなスポットを巡る連載シリーズ。今回は埼玉を出発し、茨城経由で栃木まで北上してみることにした。ちょっと調べてみたら、相当な「味」と「クセ」のある場所揃い(笑)。
まず向かったのは、有名な弁当の自動販売機があるお店(?)だ!

那須へ向かうついでに茨城をツーリングしちゃおう

'23年1月の「親子栃木編」以来、久々にツーリングへ出かけた。今回は昭和レトロ紀行シーズン4にあたる。自分にとって前回が濃すぎたせいか、ソロツーは久しぶりの気がする(笑)。

出かけることになった経緯はこうだ。ForRの中の人から、那須モータースポーツランドで行われる「ステップアップ試乗会」への取材依頼があったのがキッカケ。ついでにツーリングをしてしまおうという寸法だ(笑)。
まっすぐ向かうなら栃木を北上することになるけど、当連載で栃木は2回ツーリングしている。そこでお隣の茨城を経由することにした。

仕事絡みじゃないとツーリングに出かけない体になってしまったのがサミシイが、仕方ない(笑)。少しネットで調べてみると、なかなかに香ばしいスポットが揃っている! 果たして、どんなツーリングになるか……。

さて当日は、早朝から雨。私がツーリングする時は大体雨なのだが、今回も安定の雨だ。

最初の目的地は、自宅のある埼玉県川口市からほぼ真っ直ぐ東。霞ヶ浦の南端に近い茨城県稲敷市にある。その後の行程を考えるとかなり遠回りになるが、どうしても行きたくなってしまったのだ。

その名は「あらいやオートコーナー」。手作り弁当の自販機があり、安くてウマイことで有名らしい。いかにも昭和レトロなオートパーラーは私の大好物! 自分が呼ばれているような気がしたのだ(笑)。

↑自宅のある埼玉県川口市から目的地のあらいやオートコーナーまではほぼ真東の位置。※googleマップより


というワケで弁当に備えて朝食を摂らずに愛車のスーパーカブ110で走り出した。

↑千葉県流山市の流山橋でのひとこま。たまに雨は止むが、時に強く弱く降り続けていた。


流山市、柏市を抜け、利根川に沿って西進していく。堤防脇の道はクルマ2台がなんとかすれ違える程度の狭さだが、交通量は少ない。目的地の弁当を思い浮かべながら、いいペースで空腹をこらえてひた走る(笑)。

ん、ここは小屋じゃないんですか?

自宅から80kmほど、約2時間走り、ようやく目的地が近づいてきた。
ん、ここ!? グーグルが目的地として民家を示している……と思ったが、民家の隣に建てられたプレハブ小屋が店だった。

もうちょっと大きな敷地と建物だと予想していたのだが、非常にコンパクトだ。

↑「あらいやオートコーナー」の目立つカンバンがなかったらスルーしてしまいそう。営業時間は朝8時頃からで、売り切れたら閉店。定休日は基本的に無休のようだが、詳細は不明。■茨城県稲敷市境島529

↑自販機の裏にあるプレハブ小屋が店! 駐車場は狭く、クルマが2台停められるかどうか。左のクルマはお店のものなので、バイクはその後ろ辺りに停めるのがよさそう。

↑お店の横を走る国道51号側から見るとこんな感じ。2台ともお店のクルマ。


さぁ小屋、じゃなくて店に入っていこう。

↑店内は何やら暗い。手前のテーブルは電線などを巻く土台を再利用したもの! ワイルドだろ~。

↑アルミサッシの扉にはいきなり「自衛官募集」のポスターが。他は灰色なのに、ここだけ妙にカラフルだ。

↑向かって左側の店内。弁当の自販機は合計3台。年季が入りまくっている! 一番左側の自販機は故障中とのこと。壁には自衛隊のカレンダーも!

↑店舗右側にはスロットとゲーム機が。どちらも電源が入っていない。またしても自衛官募集のポスターが妙に眩しい。

↑店内の片隅にイートインスペース(笑)も完備。ここにも自衛隊のポスターとパンフが。ゲーム機のいすに座って食べてもよさそうなので、なんとか7名は店内で食べられるか。

↑照明もワイルドな裸電球!

↑灰皿は空の缶詰。これまたワイルド!

↑このイスもイイ。座面をベニヤ板に貼り替えてアンコ抜きしてある!?

↑なんとテーブルの上には「あらいやオートコーナー」の精巧なミニチュア模型が! 再現度はハンパないが、よく見ると段ボールなどの紙で作られている。お店のファンが作ったとのことで、熱烈に愛されているのだ!


店内はコンパクトなのに見どころが多い。腹が減ったので早く食べよう! 自販機の貼り紙に「当店の焼肉弁当は国産豚ロース肉を使用」「当店のからあげ弁当は国産鶏肉を使用」と書いてある。期待が高まるが、自販機のボタンを見ると焼肉弁当しかないようだ。

↑いよいよ自販機へ! ボタン5つのうち、使えるのは右の2つ。この時は故障と思ったけど、土日には全部稼働するのかも。


お弁当は全品330円。注意書きが多い。
「売り切れランプがつきません。ボタンを押しても商品が出ないときは売り切れです」「商品はその都度取り出してください。機械のトラブルになります」「500円入りません」「お金は1枚ずつゆっくり入れて下さい」「10円 50円 100円 で 500円だめです」「電子レンジ使用不可 お弁当の容器は電子レンジ対応ではありません。ご家庭であたためる際は、別の容器に移し替えてください」。

サイフを覗いてみたら、ノーッ、小銭が320円しかない!
500円玉がダメなのだから、もちろんお札も受けつけてくれないし、両替機なんて代物もない。
だが安心を! 外の自販機で飲み物を買って両替すればいいのだ! アレ。お店の作戦?(笑)

↑気を取り直して弁当を購入。お金を入れると後付けのデジタルメーターが表示!


ボタンを押して、待つこと数秒。アレ? 出てこない? 故障? 売り切れ? と思って、取り出し口を覗いたら……。

↑音もなく弁当が出てキテターッ笑 ちょっと取り出しにくい。弁当は緑色の紙に包まれ、セロテープで留めてあるー。この装いもレトロだ。

↑割り箸はこんな感じで自販機にブラ下がってる。やっぱワイルドっス!

いよいよ実食! シンプルな家庭の味で満腹!

ちょうど雨が止んでいたので、テラス席のリビングテーブルで優雅なブレックファーストと洒落こもうか!

↑コチラがテラス席のリビングテーブルでございます(笑)。小屋、じゃなくて店内の椅子を外に持ってこよう。

 

↑いざ開封!

↑出ましたー、焼肉弁当! いさぎよく肉とメシのみ! サイズはちょっと小ぶりだけどミッシリ詰まっている。タレが飯に沁みているのがまたイイ。


お肉とご飯はほんのり温かい。お肉は甘辛いしょうが焼き風の味付けで、食が進む。家庭の味というか、かなり素朴。だからこそ飽きないかも。

↑肉とメシだけと思ったら、ちょこんと佃煮が鎮座。最小限ながら、これがいいアクセントになっている。


完食! 満腹だ。これで330円なら、コンビニ弁当やほっ○もっとより断然コスパがいいと思う。ちょっと休憩していると、時折お客がクルマで来て弁当を買っていく。大繁盛とはいかないが、平日なのに意外と客が来る。買ってすぐ帰る人、車内で食べる人とイロイロだ。

店主さんと遭遇、「廃墟みたいですよね」

やがて家の方から人が出てきて、「いらっしゃいませー」と挨拶してくれる。そして自販機を開け、弁当を詰め始めた! お店の人だ、と思い、作業のジャマにならぬよう話しかける。

店主さんはとても温和な雰囲気で、誰かに似ているなと思う。顔写真はNGだったのだが、よくよく考えてみるとForRでおなじみの佐賀山さんに風体がよく似ていらした!

自販機には一度(1列)に10個ぐらいしか入らないので、減ってきたタイミングでその都度、補充しているとのこと。
お弁当は、平日に100個ほどつくるけど、残ることもある。土日は200~300個と売れ行きにバラつきがあり、13時頃に完売することもあるという。

↑貴重な自販機の内部。

↑内部その2。下側だけ開けた状態だ。メカは非常にシンプルで、ボタン用の札なども入ってる。


そういえばと思い、「からあげ弁当は辞めたんですか?」と質問すると「これからなんです」と店主。からあげ弁当を食べたい人は、朝イチではなく、10時ごろに来た方がいいかもしれない。

お店のことも聞いてみる。創業したのは昭和47年(1972年)。私が生まれた翌年だ。
昔はハンバーガーやうどんの自販機もあり、建物自体も大きかったが、今は縮小したという。
「廃墟みたいですよね」とご主人。
「いやいや! そんなことは」と思わず返事してしまう笑

こうして店主は家に戻っていった。

そろそろ次の目的に向けて出発しよう。・・・・・・それにしてもミニマムながら強烈な店だ。昭和の頃はトラックドライバーなどの利用者が多かっただろうに、令和の現代では縮小してしまった。それでも評判をききつけ、わざわざ訪れる物好き(自分)や、愛用している客が一定数いる。

これは弁当が「ちゃんと美味くて安い」という商売の基本をおろそかにしていないことが理由だろう。その上で、抜群の侘び寂びが昭和レトロファンのハートに衝き刺さってしまった。気になったのは、いったいお客さんの中でどれだけ自衛官に志願する者がいるのか、ということだが……笑。

<次回 「ヤンキーピラフ」でシャバ僧に気合注入、押忍!【昭和レトロ紀行 茨城編②】 に続く!>

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