北東北の自然豊かな十和田八幡平国立公園に、源泉の温度が130度以上という「日本一熱い温泉」があるのをご存じでしょうか。え? 水(湯)の沸点は、100度じゃないの!? 東北自動車道・盛岡ICから約46㎞、県道194号線の行き止まり近くにある滝ノ上(たきのうえ)温泉へ行ってきました。いやマジで熱かった!
その道は地熱発電所で行き止まり
滝ノ上温泉は、岩手県盛岡市の北西、雫石町にあり、途中には有名な観光名所「小岩井農場」がありますので、多くの観光客はそちらへ流れ、温泉までやってくる方はそう多くありません。
しかも向かう道(県道194号線)は狭く、滝ノ上温泉から1㎞ほど先で行き止まりとなるので、交通の便が悪いと言わざるを得ません。

これは、まもなく行き止まりとなる箇所にある、葛根田(かっこんだ)地熱発電所。
民家もない国立公園内の山奥に、なぜ行き止まりの道を通したのか。それはこの、地熱発電所のためじゃないかと想像してしまいます。エネルギーの乏しい我が国で、温泉の力で電気が作れるというのは貴重です。

葛根田川に沿って滝ノ上温泉へと向かう道中は、道端に名もない滝があったり、渓谷美が堪能できたり、自然の豊かさが実感できます。

地熱発電所は一ヵ所ではなく、複数にありました。近くにバイクを停めると、熱を感じます。注意喚起の看板には「高温・高圧の蒸気や熱水が流れていますので危険です」とあります。
滝ノ上温泉「滝峡荘」
さあ、いよいよ温泉だ! 滝ノ上温泉には、宿泊が可能な自炊宿の滝観荘(りゅうかんそう)と、日帰り温泉の滝峡荘(りゅうきょうそう)があり、今回は滝峡荘を利用しました。

まずは木造平屋建て、受付を兼ねた休憩室で入浴料700円をお支払い。

休憩室は洒落た山小屋風で、天井が高く、広々。4年前に建て替えたそうで、まだ木の香りが漂っていました。

休憩室の一角にはオーディオ・コーナーがあり、CDがずらり。好きな音楽をお楽しみください、とのこと。
湯上がりに、音楽を聴きながら休憩、というのもいいですね。

休憩室の裏口でサンダルに履き替え、裏戸を開けると、目の前に温泉棟が。
昭和20年代に建てられたものを修復し、再生させたもの。
建物の周辺にも温泉の湯けむりがもうもうと上がっています。
そしてこちらが浴場(滝ノ上温泉「滝峡荘」のホームページより)。
写真左が男性用で、右が女性用。泉質はナトリウム塩化物温泉で、浴槽はヒノキ材。
昭和20年代に建てられた浴場をリニューアルし、レイアウトはほぼ当時のままだそう。
洗い場にはシャンプーやボディソープがなく、昔の湯治場の雰囲気。洗い場の蛇口の下に、木製の細長い湯桶がありますよね? ここには熱々の温泉が満たされていますので、蛇口をひねって水を出し、適温まで下げてから身体を洗います。
そして浴槽。熱すぎて入れません。
約100度の源泉を、水を混ぜずに浴槽まで引いているそうです。そしてその源泉、湧出口の内部の温度は、気圧が高いために130度以上もあるのだとか。それが日本一熱い温泉の理由なのでしょう。
熱すぎて入れないので、これも蛇口から水を大量に出して湯温を下げます。
水を足したら、せっかく源泉100%だったものが薄まって、価値が下がるじゃないかという心配はご無用。この水は森の奥から引っ張ってきた天然水で、化粧水にも活用されるほどの超軟水とのこと。
源泉100%、プラス超軟水の天然水。ということで、効能はバッチリじゃないでしょうか。

滝ノ上温泉「滝峡荘」は、温泉の余剰熱を使った自家発電設備も5基、併設。
検査に来た作業員の方に話をうかがう機会があったので、いろいろ教えてもらいました。
5基のうち3基は蒸気を使って発電をするタービン発電機で、他の2基では熱水を使って発電し、合計625kWの電力を発生。
そして発電に使われた蒸気と熱水は、地下300mまで掘られた還元井(かんげんせい)を使って地中に戻しているとのこと。そうしないと、温泉の成分が川や土壌に悪影響を及ぼすから。
また、熱水を通す配管内部は2気圧なので、湯温も120度あるとのこと。
水(湯)の沸点が100度というのは、1気圧だった場合の話だったのですね。
逆に標高の高い山に登って気圧が1よりも低くなると、100度よりも低い温度でお湯が沸騰する。勉強になりました。
ということで日本一熱い温泉、みなさんも機会があればぜひ。
玄武洞(葛根田の大岩屋)
滝ノ上温泉への行き帰りでは、このあたりのもうひとつの観光地でもある玄武洞(げんぶどう)も見られます。玄武洞は通称で、正しくは葛根田の大岩屋(かっこんだのおおいわや)。国の天然記念物です。

県道194号線沿い、葛根田川の左岸に面した、高さ約10mの直立する柱状節理。
昔は柱状節理の下の部分がヒサシのような形になっていて、洞窟のように見えたことから玄武洞と、「洞」をつけた通称がつけられたのですが、1999年に大規模な崩落を起こし、洞窟状じゃなくなってしまいました。
蕎麦の名店「玄武洞茶屋」
そんな玄武洞の目の前にあるのが、手打ちそばの名店として人気の高い「玄武洞茶屋」。

週末はのれんの前に行列ができるほどの人気店です。
ようやく店内に入ると、まず目を引くのが店の入り口付近にある給水設備。

玄武洞の湧き水が、店内に引かれているのです。清らかな湧水はスッキリとしたのど越し。この水でそばをこね、茹で、洗うのですから、そばもうまいはず。

注文したのは、天ざる(1,390円)。この日のてんぷらは、エビ、キス、ごぼう、なす、かぼちゃ、春菊。
そば粉は機械を使わず石臼引きで、つなぎは一割以下。コシのあるしっかりしたそばで、食後のそば湯も滋味深いものでした。
営業時間は11時~16時、定休火曜(祝日の場合は営業)、冬は休業。
滝ノ上温泉の行き帰りに、ぜひお立ち寄りを!

