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いよいよカリキュラムは“真髄”領域へ!
60㎞/hからの“入力一定”ブレーキングが思うようにいかず、少々心が折れたまま次の課題へ移行する短い間に、午後イチのミーティングで中井氏がおっしゃった注意点を脳内で必死に反すうします。
「制動特性の確認に引き続いての練習は『ブレーキングからコーナー』です。同じ直線を今度は80㎞/hで走って、ブレーキングをしながらスーッとコーナーへ侵入します。
道が曲がり込む前のストレート部分で減速をきっちり終わらせる、安全性を最優先した走り方も間違いではないのですが、よりスポーティにバイクを乗りこなすには、ブレーキを残しながらのコーナリングも必要……。というか皆さん、すでにそうやって走られています。
ですので、フロントブレーキの操作とバイクを寝かしていく操作をうまくリンクさせることを意識しつつ、その精度を上げていきましょう」……。

●「赤色の厚みはブレーキの強さだと思ってください。コーナーへの侵入時、フロントブレーキをしっかりかけ、バイクを寝かすに従ってフロントブレーキをじわっと緩めていく。フロントフォークがググーッと沈んだ状態を保ちながら旋回していくと、すごく気持ちのいいコーナリングができますよ」。まずはイメージを明確にして練習を繰り返すのみ!
認めたくない。されど現実は冷徹……
実技練習がスタート。いやもう笑うしかありません。
速度を出す→減速開始→同時に倒し込み→コーナーを抜ける。文字に書くとこれだけのことが呆れるほどうまくいかないのです。

●おっかなびっくり、肩も腕もガチガチなことが写真から伝わってきます。フロントフォークも伸びきっており、高い旋回性など望むべくもありません
目標の80㎞/hを出すことは簡単ですが、おぼつかない“入力一定”ブレーキングに気を取られていると、上体がガチガチとなり倒し込みがおろそかに。オーバーランするかもという恐怖から車体を直立させて再び強くブレーキをかけ、今度は減速しすぎて改めてスロットルを開けて、またバンクさせ……。笑うに笑えない、幻(であってほしい)の多角形コーナリングが完成です。
トボトボとスタート待機列の後ろに付くと、トランシーバーを介して稲垣インストラクターからアドバイスが飛んできました。
「肩に力が入りすぎてます。午前中に学んだ“操作と動作の連動”を思い出しながら、いったん速度も落として安全第一で走ってみましょう!」
“出来ること”を少しずつ広げていこう
そうなのでした。焦って転んでは全てがパー。
そして、うまくいかない部分ばかりに意識がいくと、できていたことまで不完全になり、ますます焦ってしまいがち。誠意ある金言をかみしめて深呼吸。幸いにして練習時間はたっぷりあります。
苦手なブレーキングは取りあえず及第点を目指し、倒し込みの部分で旋回したがるGSFの動きを邪魔しないよう心がけることにしました。つまりは下半身で車体を確実にホールドし、上体を楽にしてハンドルへは無駄な力を可能なかぎり加えないように……。

●本当に微妙な違いですが(笑)、先に載せた練習当初のカットより上体が若干前のめりになり少し戦闘的なポジションに。ハンドルへかかる力も精一杯抜くよう努力しています。もちろん、解決できていない課題は山積していますが……
おお! コーナーのクリッピングポイントへのアプローチを開始すべき場所にパイロンが置かれているのですが、不要な拘束から解かれた愛車は、そこからグイグイと曲がっていくではありませんか。
考えてみればすぐ分かることですけれど、ハンドルへ体重を預けないようにするとフワッとグリップ部分をつかむ感覚が得られ、ブレーキレバーやスロットルの操作も行いやすくなります。何を今さら、ですね(笑)。
「リーンウィズ」を極めるべし!
まるでモトクロスコースのような感情の起伏を味わったブレーキング関連の練習を終え、『ライン取り&フォームの検証』へと進みます。

●天候は完全に回復。青空の下、バイクを置いてコースわきを少し歩き、デモランが一番よく見える場所へと移動します
舞台はピットロードと対極にある南側・第2~4コーナーのエリア。「ライン取りのポイントは大きく入って小さく寄せること。クリッピングポイントできちんと向きを変えて加速しましょう」と中井氏。まさしく古くて新しい、安全かつスポーティな走行のための鉄則。こちらも“言うは易し行うは難し”なのですけれど……。
そして今回、筆者が頭をハリセンで思い切り引っぱたかれたような衝撃を受けたのが、ライディングフォームについての言及でした。
インストラクター陣の一貫した主張として、「一般公道ではリーンウィズが大前提。ハングオフ(オン)はオススメしない」「お尻を動かすハングオフは下半身のホールドが難しい」「なので慣れないと上半身がガチガチになる」「サーキットを走るため、本質を理解して練習を重ねた上でのハングオフでなければリスクが高まるばかり」……。

●右〜左〜右と小さなカーブが連続している第2〜4コーナー。テンポ良く切り返して少しでも直線を作り上げ、しっかり加速していくことが目標です。ダラ〜ッとメリハリなく走ると、通過速度は遅いままで気持ちよくもありません
ヒザすりに憧れて革ツナギもしつらえ、大きな尻をよいしょと動かし、ミニコースでは“無理ヒザ”をすれるようになって有頂天。峠道でもこれみよがしに腰をズラしまくっていた自分は何様だったのでしょう(←バカ殿様!?)。
ライン取り、そしてフォーム。
諸注意の直後でそれぞれのいい例、オススメしない例をインストラクター陣が華麗なデモンストレーションランで披露してくれます。目標とすべき走りを肉眼で確認でき(本当に目の前を快走!)、脳裏に刻み込むことができる利点は計り知れません。

●模範走行をしたり、参加者の前でレクチャーしたり、走りをチェックして個別指導を行ったり……。インストラクターの皆さんは本当に八面六臂の大活躍。背中に背負った小型メガホンも“粋”に見えてきます
カレッジはいよいよクライマックスへ……。
【参加者インタビュー⑥】 寄瀬尚子さん

●3年前から那須MSLスクールの熱心なリピーターだという寄瀬尚子さん。「昨年はコロナ禍で全くバイクに乗ることができず、なまりきった体を鍛え直そうと2週間前のスクール、そして今回のカレッジと連続で参加しました。スクールと比べて、のびのびと余裕を持って走れるのがいいですね。今日は女性の参加者が少ないですが、1度でもスクールを経験した方なら全く問題なくカリキュラムにはついていけますので、女性にこそカレッジはオススメだと私は思います!」

●ホンダRVFで気持ちよくコースを駆け抜けていた尚子さん。ワンランク上のライディングスキルを身に付けたいという熱い想いが伝わってきました
【参加者インタビュー⑦】 寄瀬達也さん 50歳

●「バイクに乗ったら、とにかくヒザを擦ってみたかったんです」という筆者と全く同じ想いを激白いただき、意気投合してしまった寄瀬達也さん。「無理ヒザでも何でも構わないので経験をしたくて、革ツナギも用意した上で某ライテク講座にて夢を実現しました。以降もそういうイベントではタイムアップどうこうよりヒザをする楽しさを優先させています。今回のカレッジでは基本に戻り、リーンウィズでの峠の走り方を学ばせてもらいました」

●スズキRF900Rに惚れ込んで、当時、まだ大型二輪免許を持っていなかったのにレッドバロン東京大田で新車を購入。以降30年近く、オールペンやカスタムを楽しみつつ、長く楽しんでいるとか

●こちらで紹介したお二方はご夫婦。共通の趣味をご一緒に深くエンジョイされているとは羨ましいかぎり。幾久しくお幸せに……!
>「ワンランク上のライダーへ!」 ライディングカレッジ体験記〈その1〉
>「飽きるほど(!?)に反復練習」 ライディングカレッジ体験記〈その2〉