GSFよ、そんなに曲がりたかったのか

1話目はコチラ

新美南吉作「ごんぎつね」のクライマックスシーンが頭に浮かんでくるほど、感涙にむせぶ瞬間が突然やってきました。

あることに気をつけて車体を倒していくとハンドルが勝手に切れていき、バイク自体が意思を持っているかのようにグイグイと曲がっていくではありませんか!

 

ウエットで走るGSF

●ウエット路面で、ある程度のスピードを維持しながらパイロンを交わしていく……。今までなら恐怖しかなかったはずの状況が面白くてたまらないとは!

 

GSF1200S、いや二輪車が本来持っている特性と現象“セルフステア”をいかにこれまで自分は邪魔し続けていたのでしょう。那須MSLライディングカレッジ午前中の基本レッスン(8の字&スラローム)で深く気付かされ、火なわじゅうでドンと打ち抜かれたような気分を味わったのです。

講師との距離感が、ほぼマンツーマン

〈その1〉で紹介した、開講式、乗車姿勢のレクチャー、基本レッスンのデモ走行見学が終わったあと、いよいよ自分の車両にまたがり那須MSLを走り出します。

インストラクターの模範走行

●午前中、雨が降り出す前に行われたロング8の字の模範走行では、山本陽大(あきお)インストラクターがGSX-R1000を自在に操る姿を披露。本当にスムーズ!

ライディングフォームの図解

●各フォームの特徴を使うべきシチュエーション別に分かりやすくレクチャー。ライディングカレッジでは正しいリーンウィズの習得を徹底的に目指していきます

 

参加者全員でコースをゆっくり2周した後、4~5人ずつのグループに分けられ、コース上だけでなく駐車場にも設定された合計6つの8の字セクションへ移動。それぞれのグループに精鋭インストラクターが付いてくれるのですから心強いことこの上ありません。実際にとても濃厚な指導を受けられました。

あえて小回りをせずメリハリを強調!

8の字走行と言えばライテク教習において定番中の定番メニュー。2本のパイロンを目印にしてグルグルと回っていく……だけですが、奥の深さは日本海溝クラス!? 

目線の送り方、スロットル操作のメリハリ、ブレーキングから旋回への移行、ラインがはらんでしまったときのリヤブレーキ操作など、ライディング上達へのエッセンスが詰まっています。

そして「スクール」ではない「カレッジ」が行うのは「ロング8の字走行」で、パイロンの間隔をスクールのそれより約1.5倍に広げて実施するというもの。

「通常の初心者向けレッスンでは、速度を極力落としてからリーンアウトでパイロンを小さく回ってもらっていますが、ロング8の字ではリーンウィズのまま荷重をかけて大きく曲がってもらいます。旋回時に自分の体重をバイクへ垂直に掛けることを意識してください」と中井氏。

リーンアウトでの旋回風景

●中井氏いわく「股下でバイクを寝かしていく」リーンアウトは、ハンドルの舵角も付けやすいため低速でUターンするときなど実に有効

リーンウィズでの旋回風景

●刻々と変化する一般公道の状況にすぐ対応でき、安全にスポーティな走行も目指せる高い汎用性からカレッジが太鼓判を押すリーンウィズ

根拠のない自信が瓦解していく……

言葉で聞けば簡単そうに思えるものの、実際にやってみると非常に難しい! 

リーンウィズでしっかり荷重をかけるには、当然ながら旋回速度を上げる必要が出てきます。そのために広げられたパイロンの間隔です。しっかりと加速しつつ、なおかつそのスピードを落としすぎることなく曲がらなくてはなりません。

駐車場で華麗に舞う久下沼さん

●スズキGSR750を駆り、駐車場に設置されたパイロンをキッと見据えてターンモードに入る久下沼元晶さん。那須MSLライディングスクールもすでに体験済みのリピーター参加者

 

意識するほど走りにほころびが出てきて「コンナハズジャナイノニ」という悔しい思いも頭に浮かびますが、それに囚われているヒマはナッシング。8の字10周ほどグルグルして待機列の最後尾に並んでも、同じセクションにいるメンバーはごく少数なので、すぐに順番が回ってくるのです。

「絶対に無理はしないでください。リーンウィズでの旋回が難しければ、リーンアウトで小さく回ってもいいんです。動作と操作の連動を意識して、自分なりにいろいろ試してみてください」とは私のいるグループを担当してくれた稲垣インストラクター。個別に的確な要修正点を伝えてくれるので、モチベーションが高く維持されます。

稲垣氏のレクチャー風景

●メガホンを駆使する稲垣氏の図。6名のインストラクターは皆さん弁舌も滑らかで、アドバイスがスッと頭に入っていく。素晴らしい講師陣でした

反復練習で自らのリミッターを外す

ままよとばかり、より意識して上体を振り回してみることに。

スロットルオンのときはべったり伏せて、すぐ来るブレーキングポイントではグッと下腹部に力を込めて起き上がる。そのままハンドルへ無駄な力をかけないようにして目線をパイロンへ定めると……。おおっ、旋回力がメリハリを付ける前より格段と高まったではないですか! 

走りがこなれてきた小川

●タンクにべったり伏せているつもりでも、写真で見ると全然……

 

まだまだ流れるような連動にはほど遠いものの、たっぷり50分近く用意された8の字練習時間のなかで、個別指導を受けつつ反復練習すると得られるものは少なくありません。

スラロームもあえて高い速度域で

引き続き実施されたのはパイロンスラローム。これもライテク講習の王道コンテンツながら、カレッジで行うのは“ロング”な直列スラロームとオフセットスラロームとの混合技です。

いったん全員が集合してから中井氏が説明をした内容は……。「通常のスクールでは直列スラロームのパイロン間隔を5mほどにしているのですが、カレッジでは7mにしています。バイクなら3台が余裕で入る長さですね。先ほどのロング8の字で練習したメリハリある加速とリーンウィズでの旋回を意識しながら行ってください」

直スラを走る稲垣講師

●理想的なリーンウィズでパイロンをクリアしていく稲垣氏。通過時にはすでに視線と前輪の舵角は次のパイロンへ向かっていることが分かります。

 

直列スラロームを走り終わったら、そのままオフセットスラロームへ移行します。「コース上にジグザグに配置されたパイロンを大きく切り返し、左右交互にかわしていく課題です。動作と操作の連動を考えつつ実践していきましょう」とのこと。

ちょうどスラロームのデモ走行を見学していたとき、空がにわかに黒くなって大粒の雨が降り出しました。コース上は瞬く間にウエットへ……。すかさず中井氏、「操作をていねいに、かつ上体をしっかり使えば、濡れた路面でもバイクのタイヤはしっかりグリップしてくれます。いい練習になりますよ」と提言。百戦錬磨のインストラクターぶりに感動さえ覚えました。

愛車が持つ本来の性能にほれぼれ

水をたたえた路面に緊張しつつも、直列スラロームとオフセットスラロームへ挑戦。

広いコースを2分割して参加者も二手に分かれます。分割したコースのそれぞれにスラロームのセクションが設定されているので、8の字のときと同様、サクサクと走る順番が回ってきます。

オフセットスラロームの走行風景

●Bグループのオフセットスラロームはヘアピンコーナーを舞台にアトランダムに置かれたパイロンを縫うように走っていく(写真は完熟走行時の風景)

 

ひととおり走り終わって列の最後尾に付くと“直スラ”の出口で走りをチェックしているインストラクターから無線を使ってのアドバイスが届きます。これで燃えなければライダーではありません(!?)

下半身のホールドを心掛け、上体の動きで車体をコントロールしてハンドルの動きを妨げないように……。

十数回目かの走行中、オフセットスラロームの後半部分で冒頭のアハ体験シーンが訪れました。ハンドルが「スコン!」とフルロックの位置まで動いて大きな舵角をつけ、ウエット路面だというのに恐怖を微塵も感じることなく愛車がグググッと旋回してくれたのです! 

「こんなに曲がりたかったのか……」

GSFを購入してから四半世紀、初めて到達した境地でした。(つづく)

GSFで走る小川

●「スコンとハンドルがフルロック!」という瞬間ではありませんが、コースが水を含んでいることなど全く気にならなくなってきたころのカット。ただし、午後になるとまたGSFと意思疎通ができなくなってしまい……(涙)

【参加者インタビュー②】   橋浦邦典さん 25歳

YZF-R1の橋浦さん

●これまでスクール体験歴はゼロ。今回のライディングカレッジが人生で初めてのライテクレッスンだったという橋浦さん。「これまで独学だったので、一度プロの方々に教わってみたかったのです。体の使い方やコース取りなど、全てがとても有意義でしたので、来て良かったと思います」。珠玉のスーパースポーツ、ヤマハYZF-R1を安全かつスポーティに乗りこなしてください!

橋浦さん撮影風景

●筆者と橋浦さんは8の字のとき同じグループで、お互いに動画撮影し合った間柄。真摯にバイクと向き合っているナイスガイでした

【参加者インタビュー③】   プリン さん 50歳

プリンさんとNSR250R

●プリンさんは取材日の2週間前に開催された那須MSLライディングスクールへ参加して、ものすごく面白かったのでカレッジにも申し込んだのだとか。「30年弱のブランクがあるリターンライダーですので、とにかく上達したい気持ちがいっぱい。ハンドル位置がとても低いバイクをいかに操作すればいいのか、クリッピングポイントはどう取るのかなどを集中して学ぶことができて大満足です」

プリンさんの走り

●レンタルのプロテクターを装着して走行したプリンさん。「首都圏から那須まで自走するのは少々大変だけれど、前泊そして後泊とも温泉宿を予約したので全く問題ないですよ」とのこと。次回は筆者もマネしたい……

 

>「ワンランク上のライダーへ!」 ライディングカレッジ体験記〈その1〉

>「きちんと止まるって難しい!」 ライディングカレッジ体験記〈その3〉

>「制動と旋回をつなげるには!?」 ライディングカレッジ体験記〈その4〉

>「考えながら走るぞフルコース」 ライディングカレッジ体験記〈その5〉

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事