安全で広いコース上だからできること

カリキュラムも大詰めとなる『ライン取り&フォームの検証』では、コース南側で細かく連なる第2~4コーナー、続いて大きく進路を変える第5コーナーで実施。ともに複数回行われたデモランを見学して得たイメージを脳内で再生しつつ、先導車を追走するという練習を繰り返します。

コース上のブレーキングポイントには赤いパイロン、アプローチ(倒し込み)の開始地点には青いパイロン、最もコースのインに付くべきクリッピングポイントには倒された赤いパイロンが配備されており、それらに従って走行すれば、誰でも自然と滑らかでスムーズなベストラインが描けるという仕掛けも施されています。

クリッピングポイントのパイロン

●クリッピングポイントの目印として置かれていたパイロン。そこを目指して走りを組み立てていくのですが、なかなか理想的な“インベタ”状態には持ち込めません。速度域が上がっていくとなおさらです

 

興味深かったのは、途中何度かインストラクターから「あえてベストなラインを外したり、リーンウィズではないフォームでも走ってみて下さい」という指示があったこと。

盲目的に講師の走りをなぞるだけでなく、自分の頭で考えながらバイクを操り、○○したときの挙動変化、××したときの旋回性の違いなどを体感して、ライディングスキルの引き出しを数多く作ってほしいからだとか。

これにはちょっと……いや実のところ相当に感動しました。難易度の高い連続コーナーを舞台に、違う走り方を何度も何度も検証できる機会というのは、そうそうあるものではありません。試行錯誤しつつ駆けているうちに、アッという間に規定の時間は終了です。

理にかなったコーナリングこそ正義

10分間の休憩後、ピットエリアのすぐ裏手にあるヘアピンコーナーに受講生全員が集合し、今一度ライン取りの重要性を訴求するデモランが行われました。

悪い例=コーナーが曲がり始めるやいなや倒し込みをスタートさせ(下写真、緑の丸部分)、カーブの頂点から相当手前の段階でインにベタ付きしてしまう(黄色い丸部分)。当然そこを通過してもコーナーは続いているため,飛び出してしまわぬようスロットルを閉じつつダラダラと旋回していくしかない。

ヘアピンでの悪い例

●ヘアピンの悪い例。緑丸の部分でアプローチを開始してしまったため、赤いパイロン「1」(黄丸)のところでインに付いてしまい、曲率が高い部分でコースアウトしないよう緩慢としたコーナリングに終始せざるをえない状態

 

良い例=コーナー全体が見渡せる曲率のところまで外側に位置し続け、そこから(下写真、青の丸部分)大きく回り込みカーブの頂点を超えた先でようやくイン付き(赤い丸部分)。そのときはすでにコーナー出口が見えているのでマシンを立てて力強く加速できる……。

ヘアピンのいい例

●良い例。青丸のところまでイン側に寄るのを極力ガマンしたあとグイッと方向転換を行い、赤いパイロン「2」(赤丸)のところで縁石ギリギリを通過。すると目の前にはなだらかなコースが広がるため、迷うことなく右手をひねり込むことができる

 

この“大きく入って小さく回る”という合理的で安全な走り方は、サーキット上だけでなく公道をスポーティに駆け抜けるときにも非常に有効とのことです。

学んだ全てをフルコース走行で試す!

カリキュラムの最後は、お待ちかねのフルコース走行……なのですが、単に「あぁ広いな、速いな、気持ちいいな〜」で終わってしまっては意味がありません。

小川の走行シーン

●美しい森に囲まれたバイク専用サーキットである「那須モータースポーツランド」。全長1146m、最大勾配4%、最大直線距離281mなどのスペックを持つテクニカルなコースを走ることは理屈抜きに楽しい……のだけれど、カレッジでのフルコース走行では徹底的に考えつつ多様なことを試すことが求められました

 

「皆さんは午前中から8の字、スラローム、ブレーキング、コーナーリングなど、さまざまなことを学んできました。うまくできたこと、できなかったことを思い出しつつ、自分の中で目標なり課題を持って総復習をするという視点を忘れないでください」と中井氏からも念押しが。

私の最重要課題は、とにかく下半身のホールドです(苦笑)。

走行はAグループとBグループに分かれて5周ごとに交代します。先導車のペースに無理に付いていかなくても大丈夫。もし遅れても同時に走行している遊軍インストラクターがすかさず隊列を整理してくれるので、安心してマイペースを維持できます。

ストレートでの隊列走行

●ベストラインを走る先導車に続いて隊列走行。そのスピードが怖いと感じたら迷うことなくスロットルは戻してオーケー。自分のペースを絶対に乱してはいけないと、講師陣から口を酸っぱくして言われ続けます(笑)

 

走行ごとに適宜順番を入れ替える場合もあり、余裕のある人がない人の後ろでずっとガマンを強いられる……というストレスの溜まる状況も皆無なのです。

自分の課題が見事に浮かび上がる

フルコースを周回することは、まさに朝から学んだカリキュラムを全力&ハイスピーとで“おさらい”していくことと同義でした。

十分に加速したストレートの終わりに迫り来るコーナー! 下半身での車体ホールド【乗車姿勢】を忘れず“入力一定”を意識した制動【ブレーキング】をしながら、視線をグッと先へと送り【ライン取り】、ハンドル舵角の自然発生を邪魔しないよう【スラローム】、リーンウィズで【フォーム】クリッピングポイントへとアプローチ【ブレーキングからのコーナリング】。大きく入って小さく回ると【8の字】、ナルホド車両を早く直立させられるので、タンクに覆い被さるよう上体を動かしながら【操作と動作の連動】、スロットルをワイドオープンしてフル加速……。

状況に応じて適当に流す……ではなく、理路整然と走りを組み立てることが、こんなにも面白くて、なおかつ難しいとは! 

ブレーキング&アプローチ開始とクリッピングポイントに配置された目印パイロンを横目に見ながら、休む間もなく次々に襲いかかってくる(?)カーブを攻略していくのですけれど、行うべき操作を実施するたび理想とはほど遠い反応が返ってくるばかりで「しくじった!」という思いの連続です。

そして、「ライディングカレッジ」という名前はダテではありません。

先導車付きとはいえ、スピードレンジがとてもハイレベル。後ろにも目があるかのようなインストラクター諸兄は、追走する我々の力量を推し量りつつジワリジワリとスロットル開度を大きくしていきます。

ヘアピン走行風景

●万が一、前を走る車両に何かアクシデントが発生しても大丈夫な間隔を確保しておくように講師陣からは口を酸っぱくして……(以下略)。とにもかくにも、安全であることが最優先。その上で、高い速度域で愛車が見せる挙動を体感することができるのです

 

少しずつアベレージが上がっていくほどに私の劣化したECU(脳味噌)もフル回転して必死に対応していきます。先導車付きのイベントによくある、欲求不満を溜めがちな“手綱を握られている感”は皆無だと言えるでしょう(笑)。

前にも述べましたが、速度が上がって運動エネルギーが増大すると小手先のごまかしは通用しません。物理法則に従った“操作と動作の連動”こそが、自分と愛車との関係性をワンランク高めてくれるのです。そのことが改めてよ〜く分かりました。

小川の最後の走行シーン

●フロントブレーキを引きずりながらのコーナリングが、どうしてもうまくいかない……。講師に相談すると「できるかできないかは別にして、意識するかしないかが一番大事ですよ。難しいと思うことがあるならそれを自分の課題として、常に意識しながらバイクに接してみてください」とのこと。御意!

 

フルコース走行は1回5周をたっぷり5セット。最後には目印パイロンを全て撤去しての総まとめランも行われました。

正直に書きましょう。下半身ホールドと上体を積極的に動かすこと、そしてハンドルに無駄な力をかけないようにするという点については十分上達できたと思います。しかし、ブレーキングが絡む操作とライン取りに関しては満足のいくレベルに全く届きませんでした。頼りにしていた目印パイロンの消える最後の総まとめランなど、もう盛大にとっちらかりまくり……。

チェッカーフラッグ

●最終セットのチェッカーフラッグが振られて全走行が終了。なお、旗係ほかの裏方に徹してカリキュラムのスムーズな進行を支えてくれたスタッフもおり、彼らのおかげで広い広いコース上、魔法のようにパイロンが並べられたり撤去されたりしたのでした。ありがとうございます

 

悔しい思いもありますけれど、自分の現状、新たな知見、これから立ち向かうべき課題をはっきり認識できたことは非常に有意義だったと断言できます。

最後に「まとめ」てみるならば……

さて今回、那須MSLライディングカレッジを体験して得た感想は、スキルアップを目指しているライダーなら、それこそ全員が全員に自信を持って勧められる内容だということ。

免許取り立てのビギナーさんや、運転に少なくない不安を感じている人でしたら“カレッジ”の前に一度は那須MSLライディングスクールを体験することを推奨いたしますが、一定の乗車年数や経験を積んだ人であれば老若男女、誰でも問題なく受講できます(詳しくはコチラをご確認ください)。

個人的にぜひ体験していただきたいのは、「オレ(ワタシ)ってもうベテランだし、相当にうまいからライテク講座なんて必要ないよ」と考えている人。

実際に那須MSLライディングカレッジを体験されて全ての課題を満足にクリアできたら、まさしくテクニシャン! 自信を持っていただいてオーケーですので、そちらを改めて確認するためにも一回、受けてみてほしいですね。

広くて安全なコースをフル活用して、ブレーキングからのコーナリング、そしてライン取りの練習を飽きるほど繰り返せたことは、筆者にとって非常に有意義でした。久しく忘れていた高い速度域における操縦のコツも思い出すことができ、帰り道のコーナリングや高速道路走行がとても楽になったことも明記しておきましょう。

せっかく教わった安全かつ爽快なライディングの秘訣を忘れぬよう、以降バイクに乗るたびに学んだことを思い出しつつ操縦したいと思います。

参加賞の集合写真

●カレッジ閉講後、アンケートに回答すると集合写真がいただけました。こういう小さな配慮もナイスですね〜

 

ぜひ次はアナタが、この感動を味わってください。目からウロコが数十枚くらい落ちることは確実ですよ(笑)。

以降の開催は8月14日(土)・15日(日)、11月1日(土)、2日(日)です。(↑イベントの詳細はこの文字列をクリック)

【参加者インタビュー⑧】  安納孝佳さん  54歳

Z H2 SEの安納さん

●今年の4月5日に納車されたばかりのカワサキ Z H2 SEで参加した安納さん。「4000回転くらいからスーパーチャージドエンジンならではの強大なトルクがわき上がってきますので、そのあたりをうまく活用したコーナリングができるように練習中です。スカイフックテクノロジーを実装した電子制御サスペンションの出来は素晴らしく、本当に路面に吸い付くような走りをしてくれますよ」

安納さんの走り

●荷重の掛け方を自らの課題として、積極的に各種スクールへ参加している安納さん。リターンしてからZ800、Z1000、Z H2を乗り継いできたという、生粋のZフリークなのでした

 

>「ワンランク上のライダーへ!」 ライディングカレッジ体験記〈その1〉

>「飽きるほど(!?)に反復練習」 ライディングカレッジ体験記〈その2〉

>「きちんと止まるって難しい!」 ライディングカレッジ体験記〈その3〉

>「制動と旋回をつなげるには!?」 ライディングカレッジ体験記〈その4〉

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