愛車の潜在能力を引き出そう
目からウロコが落ちるとはこのことか。
二輪免許の取得から間もなく、素直にスキルアップしてきたライダーでも数十枚。
乗車年数だけは重ねたけれど日々“何となく”バイクを動かしてきた50歳過ぎの中年単車乗り(筆者がそう)なら、数千枚はウロコが剥がれ飛んでいきそうな鮮烈体験……。それが那須モータスポーツランド(以下那須MSL)で今年から開催されている「ライディングカレッジ」です。
不肖オガワが実際に参加をしてみて、カリキュラムから得られた数多くの学びと感動を、以降5回に分けて紹介させていただきます。
公道をスイスイ走りたい人へ
「ん? ライディングカレッジってナンダ? スクールとは何が違うの?」
ここまで読んで、頭の中にハテナマークが点灯している人も多いはず。筆者も最初はそうでした(笑)。
世に数多ある「ライディングスクール」は多くの場合、初心者やリターンライダーなどを対象に公道を安全に運転するためのベーシックな技術を習得できる場所となっています。
もちろん、どんな世の中になっても基本の大切さが変わることはありません。
実際に那須MSLでも2007年から14年にわたって安全運転のためのライディングスクールを開催しており、数多くのスキルアップライダーを輩出してきました(リピーターが多いことも自慢だとか)。
ライディングカレッジは、かくいう14年間の実績に基づき、「よりスポーティに走れるようになりたい」という参加者の声に応えるべく新たに生み出されたプログラムなのです。
本物のスキルを身に付けよう
同じ那須MSLという場所で行われる「スクール」と「カレッジ」との違いを端的に言ってしまえば、スピードレンジが違う、ということ。
8の字、パイロンスラロームにブレーキング練習……。カリキュラムの文字づらのみを眺めたなら、2つのイベントに大きな差はありません。
しかし、バイクという乗り物は特に運動エネルギーが少し増大しただけでも小手先のテクニックが通用しなくなります。
大切なのは絶対不変の物理法則に準拠した“正しい”乗りこなし。
揺るぎない基本の操作を反復練習で体に覚え込ませながら、頭で理想的なライン取りを構築していく。ひいてはそれが安全で楽しく、スポーティな走りに直結する……ということを学んでいけるのが、「スクール」の一歩先をいく「カレッジ」というわけです。
とはいえ主眼はサーキットでのタイムアップではなく、あくまで街中からワインディングといった一般公道を気持ちよく走れるかどうか。
レッスン中も自分なりのペースを保てますのでご安心のほどを。
上半身を解放する乗車姿勢とは?
さて、ライディングの基本中の基本中の基本のキ(しつこい)とも言えるのが「乗車姿勢」です。
愛車にどうまたがり、どのように車体をホールドするのか。こちらがいい加減だと練習の全てが台無しになると言っても過言ではないので、中井直道メインインストラクターの指導にも自然と熱がこもります。
よく“車体を直立させてステップの上に立ち上がり、ストンと腰を落としたところがいい着座位置”ともされていますが、那須MSL流は少し異なっていました。
中井氏いわく「シートの上へストンとお尻を載せるのも間違いではないのですが、カレッジでは立ち上がったあと、ゆ~っくりと太ももに力を入れながら腰を下ろしてください。
気持ち……ほんの数㎝だと思いますが、何気なくストンと座ったときより若干お尻の位置が前に移動しているはず。それがとても踏ん張りのきくポジションなんです」
操作と動作を連動させていこう
確かに、太ももへ力を込めてゆっくり座っていくと上半身は軽く前傾して戦闘的な雰囲気に(笑)。そのままグッとタンクを挟みこめば車体と下半身の一体化が完了し、ハンドルの高さが異なるどんなジャンルのバイクでも、フワッとグリップを握ることができるようになる……。
それはつまり、加速時に上体をタンクへ被せたり、減速時に視線を上げたり、小回りに有効なリーンアウトや、当然バイクへしっかり荷重をかけられるリーンウィズも自在に行えるようになるということ。
「下半身が決まったら、上半身を自由に活用できます。ですので今日は走る(加速する)、曲がる、止まる、それぞれの操作をするときには、必ずや上体の動きをリンクさせることを意識してください。それがライディングカレッジの大きなテーマでもある“操作と動作の連動”なのです」
大きく重たいバイクを高い速度域でも自在に操るために、自分を振り子にする!?
面白くなってきました! (つづく)
【参加者インタビュー①】 橋本康裕さん 38歳
>「飽きるほど(!?)に反復練習」 ライディングカレッジ体験記〈その2〉
>「きちんと止まるって難しい!」 ライディングカレッジ体験記〈その3〉